2022.04.22
合意形成の方法を解説!必要なスキルやポイントとは
目次
ビジネスにおいて、互いの意見を双方が納得のいく形で一致させるために、合意形成は欠かせません。以下では、合意形成の意味や定義を説明したのちに、合意形成を実現する方法やそのために必要なスキルについて解説します。
合意形成とは
合意形成とは、意見が食い違っているときに、互いの意見を納得のいく形で一致させることです。合意形成のあとには、最終的に一致した意見や提案に従った行動が求められます。状況によっては、それぞれが一定の妥協を求められる場合もあります。合意形成の善し悪しは、目的の達成具合によってわかります。たとえ満場一致で合意形成をした上で行動したとしても、その結果失敗していれば「良い合意形成だった」とは思えないのが実際のところでしょう。逆にいずれかが妥協した上でも、結果的に目的を達成できれば、その合意形成は成功したものとみなされるはずです。
つまり、合意形成はプロセスよりも結果が良いか悪いかで判断されることが多くあります。
では、「結果良ければ全てよし」なのでしょうか?
合意形成はなぜ必要なのか
合意形成は、経営会議の意思決定や何かプロジェクトを計画するとき、そして共通の目的を持って業務を行うときに、参加者それぞれが理解・納得したうえで進めるために必要です。
合意形成がなされていれば、それぞれが当事者意識を持ち、同じ熱量で業務に取り組んでもらえるようになるというメリットがあります。反対に合意形成に失敗し、目的や手法に理解や納得、共感が得られずに、一部の人が疑問や不満を抱えたまま物事を進めると、プランを進める途中で認識や意見の食い違いによりミスや軋轢が生じる可能性があるので注意が必要です。その結果、スケジュールの遅延や計画が頓挫、誤謬といったリスクも考えられるでしょう。
また、合意形成に成功するためには、それぞれの考えを整理するために合意すべき内容が理解されており、そして合意すべき内容が納得されている状態が不可欠になります。
合意形成は、スムーズな意思決定や行動につなげるために重要なプロセスです。合意形成に関わる関係者の持つ多様な前提を明確にし、それぞれの考えを合意形成に取り入れられる方法はないか、しっかりと議論する必要があります。
つまり「論理」と「心理」の両方が必要であるということです。
合意形成の方法
合意形成に向かって進むときには、関係者の意見を理解することから始め、共通の目的を探したうえでアクションプランを選定するなどステップを踏む必要があります。ここでは合意形成をするための具体的な方法をご紹介します。
関係者の意見を理解するという事は反対意見をもらうこと
合意形成を目指すためには、自らの提案や意見を理解してもらう前に、まず関係者らの意見を聞いて、できる限りの情報を集めて理解することが大切です。
合意すべき内容は、関係者に提示する前の段階ですでに反対意見や別の切り口の意見を想定しているでしょう。相手がどのような状況にあり、どのような意見を持っているのかを知ることなく、自らの提案をのませようといった姿勢で臨むことは早道に見えますが、内容の理解という面と心理的な納得の両方を損ないます。
まずは相手の意見に耳を傾け、理解する姿勢を持ち、多くの異論・反論や文句を受け取ることが合意形成においては早道です。
そのため、相手の意見を聞くときには可能な限りオープンな姿勢で回答の前提を制限しないことも重要です。
例えば「商品Aのリブランディングをするよう上層部から指示が出ていますが、どのような方法がいいと考えますか?」と聞いてしまうと、リブランディングすることを前提とした回答しかできなくなってしまいます。「商品Aってどう思われますか?」「リブランディングを検討するようにと指示が出ていますが、どのように考えますか?」などと質問すれば、リブランディングに反対する人も意見を述べやすくなるでしょう。
これは合意形成の内容の前提から問いを立てながら、意見や議論を深めていく方法です。ただ関係者らが問いを立てながら進めていくので、心理的な納得が高い反面で、論理的におかしな議論や結論になったりすることがあるので注意しましょう。
まったく逆に、自分の意見を詳細かつ各論まで提示することも、合意形成を得る上で有効な手段です。これは、いわば反対意見や不満を誘発するやり方です。たたき台やプロトタイプのようなものを作ることで、関係者らの反対意見や不満をよりクリアにするだけでなく、関係者らの理解も向上します。ただ、提示内容が陳腐である場合や逆に完成度が高すぎることで、意見がまったく出ないということもあり得ます。その場合はディベートなどのゲームにおいてそれらのテーマを取り入れるなど工夫をしましょう。
共通の目的探しと詳細の議論を行ったり来たりする
関係者の意見を聞き十分理解したら、そのうえで共通する目的を探して共有します。例えばリブランディングすると決まった場合でも、商品パッケージを変更するのか、商品デザインを変更するのかによって、議論の方向や取るべきアクションプランは異なります。
合意形成の共通の目的を探すことは、詳細の議論と前提(目的)の議論を繰り返す活動です。それは一見無駄なようで、実は共通の目的の解像度を上げていく活動にほかなりません。
アクションプランの選定と理由の共有
共通する目的を見つけたら、実現に向けたアクションプランを立案・選定します。
共通の目的を見つけたとしても、合意形成した内容をアクションしたことによるリスクや結果的にうまくいくかどうかは不確定です。
アクションにおいては、心理的な納得が行動の動機になり、論理的な理解が行動の正確さを生み出します。アクションした結果がもし間違っていたとしても、それは変わりません。
そのため、なぜそのアクションプランを選んだのか、理由まで共有することが大切です。「顧客アンケートでの男性の回答のうち、パッケージが女性向きで買いにくいとの意見が70%を占めていた」ことが理由であることが共有されれば、「男性でも買いやすいパッケージデザインにする」というアクションに対する納得感を得やすくなります。
どこまで合意できたかを確認
アクションプランを実行する前に「ここまでは合意している」と互いの認識にズレがないか、その都度確認することも重要です。認識をそろえたうえで、次に合意を得たい事項を提案し、これらのステップを繰り返し積み上げていきましょう。
ご紹介したプロセスを進める中でも、当然ながら立場や意見の食い違いは起こり得ます。
論理的な食い違いだけでなく、心理的な食い違い、または両方が入り混じった場合もあるでしょう。
「討論やディベート」はどの主張が論理として正しいかを見極めるものですので、「意思決定」などの目的に着地するために行います。ただ、議論を尽くし、論理として正しいとしても、意見の違いが完全に埋まるわけではありませんので、場合によってはどちらかもしくはお互いが妥協することも必要です。
しかし、これは果たしてよい合意形成といえるのでしょうか。
かたや、心理として相違を埋めるための「対話・会話」は、お互いの前提や意見の違いをわかり合うために行います。しかし、心理的な共感が高まれば合意形成のコミットは一時的には高い状態になりますが、プランが穴だらけであれば結果が伴っていない状態ですので、お互いが空気を読みすぎるがゆえに、誰も望んでいない方向に進んでしまう“アベリーンのパラドックス”になってしまいます。
ここで最も注意すべき点は、感情的高揚感は集団行動の動機になりますが、結果が良くても悪くても、仮説に論理やデータがなく、学習には繋がることもなく、当事者意識にも醸成しません。
心理と論理、もしくは両方の混ざった意見を、最終的にどうやって合意形成をしていくかどうかが重要であるということです。
合意形成を進める際のポイント
合意形成をスムーズに進めるためには、批判を許容し、意見を出しつくしておくなど、いくつかのポイントがあります。
批判は必要不可欠だと理解する
さまざまな立場の人が複数関わる事柄で合意を得ようとするときには、意見の食い違いはつきものです。批判されることを恐れたり、批判を退けたりしていては、関係者との合意形成は困難を極めるしょう。不満や疑問があるにもかかわらず内に秘められてしまうほうが不健全で、のちのち大きな問題にもなりかねません。むしろ、批判が出るのは当然のことと認識し、実際に批判が出た際には合意形成に不可欠な要素として歓迎する姿勢を示しましょう。
意見は出し尽くす
合意形成に至ったと思っていたのに、あとになって別の意見や観点が出てきてしまうと、それまでの努力が無駄になりかねません。そのような事態を避けるためには、合意形成を目指す段階で、徹底的に各所の意見を聞く姿勢を示してすべての意見を引き出しておくことが重要です。そのためには、意見を言いやすいと思ってもらえる態度や雰囲気作りがポイントになります。意見を言ってもどうせ否定されるだろうと感じると、誰しも口をつぐみ不満をため込んでしまいます。そのような状態では、合意形成に成功したとはいえません。
ここで重要なのは、理論的な意見と心理的な意見を分けて考えることです。
論理的な意見を出し尽くすだけでは、心理的な共感は埋まりません。お互いの意見や価値観の相違を埋めることを目的に、対話や会話を重ねているということを意識しましょう。
判断の理由を1つ1つ説明する
合意形成に至るには、関係者すべての意見を取り入れるのは困難です。そのため必然的に、共通の目的や意見・観点として取り入れられるものと取り入れられないものが出てきます。その際、なぜこの意見を採用したのか、あるいはしなかったのか、必ず理由を説明しましょう。この理由については誰しもが納得するような、合理的なものであることが大切です。そのうえで、採用できなかった意見に関しても、指摘してくれたことに対する感謝の気持ちを伝えましょう。
合意形成は所詮その時点での合意であって、仮説にすぎません。
つまり合意形成した結果は、データとして残すために「1.討論、2.対話、3.合意形成」というサイクルで学習につなげることが求められます。
合意形成に必要な3つのスキル
営業の場面や会議などにおいて、合意形成をリードするには、人から信頼される、相手に自身を持たせる、相手に合意を選ばせるといったスキルが求められます。
信頼されるスキル
議論の場においては、「何を言うか」よりも「誰が言うか」が印象の決め手になることが少なくありません。いくらまっとうな意見を言っても、信頼に足る人物だと思ってもらっていなければ、その意見が通ることはないでしょう。合意形成を目指すのであれば、信頼してもらう力、主導者として提案する力が必要です。
信頼されるスキルを身につけるためには、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、ラテラルシンキングなどの能力を開発することが効果的です。
相手に好印象を持たせるスキル
自分の意見を聞いてもらうためには、相手に「自分は丁重に扱われている」と感じてもらうことが大切です。「自分の意見は重要なものとして聞いてもらえる」という感覚を相手に与えると、こちらの提案や共通項を探すプロセスに対しても好意的・協力的になるでしょう。そのためには、的確に褒めることや、あなたは重要な人物であるというメッセージを伝えることが重要です。例えば褒めるときには、「説得力のある意見ですね」のように漠然と褒めるのではなく、「定量的、定性的データの双方を分析しているため、強い論拠が得られていますね」のように具体的に褒めましょう。そのうえで、どのような意見でもないがしろにすることなく重要な意見として受け止め、理解しようとする姿勢を見せましょう。
具体的には対話としての傾聴、アクティブリスニング、コーチング、問いを立てる能力が必要となります。
合意を選んでもらうスキル
上記2つのポイントを十分に踏まえたうえで、最後は相手が議論に屈して「合意させられた」とネガティブに感じるのではなく、「自らの意思で合意を選んだ」というポジティブな感覚を持てることが重要です。合意形成するうえでは、最終的には相手に合意を「選んでもらう」スキルが必要になるのです。
これは状況判断と介入のスキルにあたり、コミュニケーションのプロでも難しい領域です。具体的には、討議の流れの中で、相手や会議体参加者が「主体的に合意形成しているかどうか」を判断して、リード/介入を図ります。
議論が煮詰まっている場合は、別の視点を提示してみたり、相手や自分、もしくは会議参加者間の関係が悪い場合は、あえて感情を整理して可視化し一般化したりと、いろいろリードする方法はあります。
しかし、ここで重要なのは合意形成においてどれだけ介入するかです。
つまり、あなたがリードし、介入をすればするほど、参加者は「あなたに操作された」と感じ、「自らの意思で合意を選んだ」という感情が持てなくなってしまいます。
まとめ
合意形成は、それぞれが納得感と当事者意識を持ってビジネスを円滑に進めるうえでは欠かせません。合意形成を成すには関係者の意見を理解するところから手順を踏む必要があり、さらに信頼を得る、相手に自身を持たせるといったスキルも必要です。合意形成を進めるスキルを身に付けたい、合意形成を成すトレーニングをしたいといった方は、ソフィアまでご相談ください。
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よくある質問
- 合意形成とは何ですか?
意見が食い違っているときに、互いの意見を納得のいく形で一致させることです。合意形成のあとには、最終的に一致した意見や提案に従った行動が求められます。状況によっては、それぞれが一定の妥協を求められる場合もあります。合意形成の善し悪しは、目的の達成具合によってわかります。
- 合意形成のポイントは何ですか?
多種多様な意見を意見は出し尽くした後に実施している。
合意形成の背景を説明できる。
参加者の論理的且つ心理的な納得に努める。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。