2022.04.22
不確実性を減らすのは不可能?不確実の要因をとらえ組織を強化しよう
目次
「不確実性」は、将来の予測が困難なことを意図して使われる言葉です。不確実性が高まり未来の予測が難しくなれば、当然ながら経営判断もより難しくなります。そもそも不確実性とは何か、不確実性にはどのような種類があるのか、また不確実性を減らすことはできるのかについて、以下に解説していきます。
不確実な時代の経営とは
失敗させるつもりで新たな事業をはじめる経営者はいないでしょう。しかし、成功の筋道を立ててスタートした事業でも、失敗は起こります。それは、事業成功への筋道を立てた際の前提や、業界の構造、市場トレンドなどが変化しうるためです。このような予測が困難な要因のことを「不確実性」といいます。「不確実性」が高まれば、未来の予測や経営判断がより難しくなります。
では実際に、不確実性は増しているのでしょうか。
(引用元:独立行政法人経済産業研究所https://www.rieti.go.jp/jp/database/policyuncertainty/)
独立行政法人経済産業研究所が毎月発表している「日本の政策不確実性指数」を見れば、不確実性の増加が常態化していることがわかります。「政策不確実性指数」とは、政策をめぐる不確実性や政策との係わりで高まる経済の先行き不透明性を定量化するために作られた指標です。
今の日本は不確実性の高い社会であり、それが常態化しているといえるでしょう。
不確実性の高い社会を表現する言葉に「VUCA(ブーカ)」があります。VUCAは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の略称で、不確実性が高く、将来の予測が困難な状況を示す造語です。
現代社会はVUCAの時代です。このような不確実性の高い現代社会において、経営や事業運営には不確実性を正確にとらえて不確実性に振り回されない能力が求められています。
以下に、不確実性の要因や、不確実性に振り回されない組織のあり方について具体的に解説していきます。
不確実性の要因とは
不確実性が増大している社会において重要なことは、不確実性を減らすことに注力するのではなく、「不確実性」の正体を正確に捉えることです。
そのためには、まず不確実性の要因を知ることが重要です。
不確実性には、主に「未来という不確実性」と「他人という不確実性」の2種類があります。それぞれについて解説していきます。
環境不確実性
向き合うべき不確実性の要因の1つとして、環境不確実性があげられます。環境不確実性とは、未来における環境変化の不確実さを意味しており、未来への不安と言い換えることもできます。“実際に起きるまでどうなるかわからないこと”が未来という不確実性における課題です。
未来の不確実性を語る上で良い例があります。
アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関であるFRB(The Federal Reserve Board:米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、2021年4月の時点でアメリカのインフレは一過性のものであるとし、対策の必要はないと明言していました。
しかし、その約半年後の11月30日の議会において「インフレは一過性のもの」といった発言を撤回し、金融政策が必要であると語ったのです。FRBの綿密な分析をもってしても数ヶ月単位の未来を予測するのが難しいと言っているのです。
通信不確実性
2つ目の不確実性の要因として、通信不確実性が挙げられます。これは他人への不安と言い換えられます。通信不確実性には次の3つの課題があります。
まず「他者理解の不確実性」です。これはコミュニケーションにおいて、一方がもう一方の思考・意向を正確に把握できないことから生じます。
次に「伝達の不確実性」です。これは伝えるべき、または伝えたい情報がすべて相手のもとに到達するとは限らないことを意味します。
そして「成果の不確実性」が挙げられます。もし仮に上記の不確実性を乗り越えて情報の伝達、理解がされたとしても、情報の受け取り手が想定したとおりに動いてくれるとは限らないということです。これらの不確実性が原因で、従業員間や部下、上司間で情報の非対称性が生まれます。
そのうえ、人は自身の知っている情報の範囲内で合理的な行動をとろうとする(限定合理性)ため、情報の非対称性が生じているものの間で「正解」の解釈が異なるという問題も起こります。
不確実性に振り回されない組織づくりの方法と注意点
不確実性には、「未来という不確実性」と「他人という不確実性」の2つの種類があることがわかりました。では具体的に、この2つの不確実性に振り回されない組織づくりをするためには、どのような手法や考え方が重要になるのでしょうか。
それぞれの注意点とポイントなどについて解説していきます。
不確実性に振り回されないために必要なデータ化
不確実性の高い未来に対応するためには、必要なときにフラットな情報やデータがすぐに手に入る体制を用意することが必要です。しかし人間は実に200以上のバイアス(偏見・固定概念)があり、それによって自身が下す判断が影響を受けます。そのため本当にフラットなデータというのは存在しえないといえるでしょう。
さらに、人間の思考の特徴として、ポジティブな事象よりもネガティブな事象に注目し、負の側面を過大評価する傾向があります。人間は、楽しい出来事より、つらく悲しい出来事を記憶します。これは、同じ失敗を繰り返さないために備わった人間の機能です。また、バイアスによって自身に関心がある情報や、手に入れやすい情報のみで判断してしまうのも人間の特徴です。さまざまな観点の情報を集め、それに基づいた判断をするというよりも、自身の仮説を支持するような情報ばかりを集めてしまうのです。
しかし、ある程度の不確実性はデータ化することで対応できる部分が多いものです。
例えば、日本の人口における高齢化は、統計データに裏付けられている確実なもので「不確実性が低い」ものだと判断できます。
不確実な事象が発生した際を想定し、様々なシナリオを用意するためにも、社内の業績・KPIデータや社内のコミュニケーションを記録しておくことが重要な対応策になります。
未来という不確実性を捉えるには
次に、未来という不確実性を捉える方法について解説していきましょう。未来という不確実性は、主に経験主義と仮説思考の2つの方法に基づいて捉えることができます。
経験主義とは、まず行動に移し、その結果から情報を得て次の施策に活かすことです。仮説思考とは、上記の経験主義を伴いながら、少ない情報からも仮説を立て、それを検証することです。このように経験主義と仮説思考を活用して行動すれば、未来という不確実性を捉えることができるでしょう。
他人という不確実性を捉えるには
最後に、他人という不確実性を捉える方法について解説していきましょう。他人という不確実性を捉えるには、主に3つの方法があります。
1つ目は、コミュニケーションにおける不確実性に対応する能力を、組織内の人材に育むことです。
2つ目は、できるだけ少人数の対話を用いて情報伝達することです。これにより、情報の非対称性を減らすことができます。
3つ目は、不確実性(不安)に向き合うことを前提として、互いに共有できる組織とチーム内の文化を醸成することです。これらの課題にバランスよく取り組み、不確実性を最大限減少させましょう。
不確実性を味方にしたアジャイルでレジリエンスな状態を目指す
不確実性には、「未来という不確実性」と「他人という不確実性」の2種類あることがわかりました。またそれぞれの不確実性を味方にするための具体的な考え方や注意点も明確になりました。以下では、不確実性に向き合う手段としての「アジャイル」と「レジリエンス」という考え方について解説していきます。
アジャイルとレジリエンスとは
不確実性に向き合う手段として「アジャイル」と「レジリエンス」という考え方があります。アジャイルとは、変化率の大きい環境に組織やチームが適応し、不確実性に柔軟に対応することを指します。
一方「レジリエンス」は、しなやかさや弾性を意味する言葉で、変化に対して柔軟に対応できる状態を意味します。
購買行動の多様化・複雑化により、プロジェクト進行中に市場が大きく変化してしまうこともある時代です。「アジャイル」と「レジリエンス」で不確実性に積極的に取り組んでいる組織は、このような時代に目指すべき組織として評価されます。何が起こるか予測困難な、不確実性の高い社会において、組織はあらゆる不確実性を想定して戦略を練らなければなりません。起こる確率が低いことでもあらかじめ想定しておかないと、実際にそれが発生したときに素早く適切な行動を取ることができません。冗長的で非効率に思えるかもしれませんが、不確実性の高い時代には「あらゆる事態」を想定した戦略が必要です。
アジャイルでレジエリエンスなチームや組織の要素
では実際に、「アジャイル」でレジリエンスなチームや組織に必要な要素とはどのようなものでしょうか。まずは、ある理想状態を実現するために、チームで不確実性に対し柔軟に対応しながら前進できていることが重要です。
不確実性に適したチームをつくるには
多様なプランを立てながら不確実性に対応できるアジャイルな組織やチームを作るには、綿密で崩れない戦略を立てるより、都度起こる事態に必要な対応を可能にしておくことが大切です。「柔軟性のある組織」と言い換えてもいいでしょう。それを実現するために、組織内での密で濃いコミュニケーションが重視されます。
まとめ
不確実性の増大が常態化している現代社会では、「不確実性」を正確に捉えて柔軟に対応する能力が必要です。しかし人間には「情報バイアス」があり、自分に都合の良い情報を元に判断し、行動してしまう欠点があることは先にご説明したとおりです。
実はこの情報バイアスは人間だけではなく、組織にもあります。組織や企業を見て「どうしてこんな判断ミスをしてしまうのか?」「どうしてこんな簡単な問題を解決できないのか?」と疑問に思ったことがあるでしょう。
それは、組織の「情報バイアス」が原因です。その組織に都合のいい情報のみに意識が偏りがちになるため、簡単な問題でも判断ミスをしてしまうことが少なくありません。そしてこの「情報バイアス」は、各個人や組織に確実に存在します。情報バイアスの問題を解決するには、「外部からの客観的な判断」を取り入れることが重要です。内側からではバイアスによってわかりにくくなっている問題点も、外側からの視点なら簡単にわかることは往々にしてあります。
VUCA時代に対応するための組織づくりにお困りの際は、どうぞソフィアまでご相談ください。不確実性に対応できるチーム・組織づくりをサポートいたします。
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よくある質問
- 不確実性とは何ですか?
確実性が証明されていないということ、起こるかもしれないし、起こらないかもしれないこと、確信がもてないこと、どちらに転ぶか分からないことなどが挙げられます。細かい捉え方の違いはありますが、総じて未来が分からない常態として捉えます。
- 不確実性に振り回されない組織づくりの方法とは何ですか?
不確実な事象が発生した際を想定し、様々なシナリオを用意するためにも、社内の業績・KPIデータや社内のコミュニケーションを記録しておくことが重要な対応策になります。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
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