2022.06.10
意思決定プロセスとは?具体的なプロセスと促進させる4つのポイントを押さえよう
目次
企業の成功は、「意思決定」の質にかかっています。しかし、最適な意思決定を下すというのは、決して簡単なことではありません。課題の選定や解決案の選定など、数々のフェーズを経る必要があるだけでなく、組織内の意見がばらついて議論が紛糾することも考えられます。だからこそ、意思決定を下す際は、正しいプロセスとコツを把握してから進めることが重要です。
そこで、この記事では、組織マネジメントを支援するソフィアの見解を交え、意思決定プロセスについて解説していきます。
意思決定プロセスとは
意思決定とは、目標を達成するために、複数の選択肢から最善の手段を導き出す行為です。大きくわけて、明確な根拠が存在する「コントロールできる要素における意思決定」と、根拠が不明確な「コントロールできない要素における意思決定」の2つに分類されます。
アメリカの経済学者・社会学者であるハーバート・サイモンは、“コントロールできる意思決定”を「構造的問題」、“コントロールできない意思決定”を「非構造的問題」と定義し、両者の中間にあたる“仮説によって成り立つ意思決定”を「半構造的問題」と定めています。
また、同じく経営学者のアンゾフは、“経営層が下すもの”を「戦略的意思決定」、“中間管理職が下すもの”を「管理的意思決定」、“現場社員が下すもの”を「業務的意思決定」と定義しており、そのうち「管理的意思決定」「業務的意思決定」の2つがコントロールできる意思決定であるとしています。
意思決定プロセスとは、上記のような意思決定を行うためのプロセスを意味します。では、実際に意思決定は、どのようなプロセスで行われているのか、下記で詳しく見ていきましょう。
「意思決定」についてさらに詳しく知りたい場合は下記の記事をご覧ください
意思決定において一般的な7つのプロセス
意思決定までの一連の流れは、多くの場合、下記の7つのステップに分解して考えることができます。
①意思決定が必要な対象を明確にする
意思決定を行う最初のステップは、「解決したい課題」や「答えが欲しい問い」などを特定することです。具体的な課題が定まったら、可視化して組織内で共有していきます。可視化することで、プロセスを進めていくうちに課題に対する認識の相違が起きるリスクを軽減することができ、軸がブレずにゴールへと向かえるため有効です。
この際、解決したい課題を広げすぎないように留意しましょう。広げすぎてしまうと、後のプロセスでつまずく原因となってしまいます。
②情報を収集する
課題が定まったら、解決に向けて必要になりそうな情報を収集します。社内事例や外部ソースなど、幅広い視野を持って収集することが重要です。また、情報には信ぴょう性が必要です。信ぴょう性を裏付ける情報を収集し、チームや組織内に共有しましょう。
③その課題に対して必要な解を特定する
情報収集ができたら、定めた課題に対する解決策を検討していきます。複数の解決策がある場合、組み合わせて新しい一案にするのもいいでしょう。この時点では、解を1つに絞らず、いくつかの案を特定していきます。
④解とエビデンスを照らし合わせて吟味する
特定した複数の案が本当に有効なのか、吟味していきます。社内事例がある場合は、失敗・成功を問わず分析し、判断のエビデンスとしましょう。案を吟味するなかでデメリットが見つかりそうな場合は、すべて洗い出し、潰していくことが重要です。
⑤最も適切だと思える選択肢を選ぶ
案を吟味し終えたら、その内容を踏まえて、最も適切な選択肢を選定します。ここが、意思決定のプロセスにおいて命運を左右する重要なステップです。
⑥実際の行動に移す
施策決定を下したら、まずはそれを達成するための具体的な計画を策定します。「プロジェクト計画」を立ててタスクを割り振り、期間を決めて進捗を確認していくという流れがおすすめです。タスクが決まったら、実際に取りかかりましょう。
⑦意思決定を見直す
上記で決めた期間が終了したら、結果をアウトプットします。当初の目標と実際の成果を照らし合わせ、達成できていてもいなくても、良かった点と改善点を洗い出し、次につなげていくことが大切です。
意思決定プロセスにおいての重要ポイント
上記のプロセスで意思決定していくことがほとんどですが、現在のような不確実性や複雑性をはらんだ環境下では、意思決定自体が確実なものではありません。焦点を当てて最適な意思決定をすることは非常に難しくなります。
そのため、上記のプロセスを踏めばいいという事ではなく、いかに早く意思決定できるかが重要です。例えば、「情報を収集する」というプロセスも、情報の取得に時間がかかる組織と 常に情報がオープンになっている組織とでは早さが全然違います。時代の変化を捉えて、適切な経営を行うためには、組織内外の情報管理をいかに行うかが課題となります。
意思決定プロセスはなぜ難しいのか?
多くの日本企業は、意思決定に課題を抱えています。なぜうまくいかないのかと言うと、日本企業では多くの社員が、下記の4つのパターンに陥っているからです。
- 時間がかかるからという理由で情報収集を怠り、データを精査せずに判断を下してしまうパターン
- 未来予測をせずに、過去の成功事例を踏襲するかたちで意思決定を下してしまうパターン
- 意思決定者が当事者意識を持っておらず、周囲に言われるがまま決定を下してしまうパターン
- そもそも意思決定者に十分な知識がないなど、前提として想定が甘かったというパターン
日本の企業や社員の傾向として、本質を考えずにただ言われたことをこなすだけという人が多いため、意思決定が難航してしまいがちです。上記のような状態に陥っていると、意思決定を下したつもりであっても、問題は永久に改善されません。実質的には課題を放置している状態になってしまいます。
意思決定プロセスを促進するための4つのポイント
では、正しい意思決定を下すためには、どのような点に留意すればいいのでしょうか。意思決定プロセスにおけるポイントを解説します。
①問題を明確にする
解決策に注目するのではなく、まずは問題を具体的にアウトプットし、明確にしておくことが重要です。現状をいかに丁寧に把握するかによって、自社に適切なプロセスを描きやすくなります。
②論理的思考(ロジカルシンキング)や批判的思考(クリティカルシンキング)を促進する
収集したデータについて、論理的かつ批判的に思考することも不可欠です。ディスカッションでは、チームリーダーが「なぜそう思うのか?」「証拠はあるか?」といった質問を投げかけ、チーム内で互いに理解を深めることが重要です。
意思決定を行うためには、データと論拠を提示しエビデンスをベースに議論しなければなりません。論理的かつ批判的に議論している組織もありますが、データが抜けていては最適な意思決定を下すことは難しいでしょう。
可視化されたデータを元にエビデンスをもって議論することで、より最適な意思決定を行うことができます。そのためには、データの正確性と情報の共有が重要です。すなわち、インターナルコミュニケーションの充実が組織内の意思決定の迅速さにつながります。
③意見の不一致を想定・考慮する
意見の不一致を排除していないか、先入観や決めつけで、前例のない考えを否定的にとらえていないか留意することも大切です。性別や年代によって意見が違うのと同じように、社員の考えは十人十色だと認識しましょう。
また、「上層部の経験上こうだから」という判断も危険です。オハイオ州立大学教授の Paul Nutt 氏の研究では、「経営層は 70% の確率で代替案を1つしか考えない」ことが明らかになっています。しかし、3つ以上の選択肢を検討すると、決定の質が劇的に改善されるというデータも同時に取られているのです。このことから、たとえ意見が一致しなくとも、幅広い意見の中から検討していくことに意味があるということがわかります。
④意思決定は繰り返させる
組織内の意思決定を、その時の状況に応じて変化させることも重要です。「朝令暮改」という言葉はネガティブな意味で使われますが、必ずしも悪いことではありません。現代は、環境が日々変化しますし、不確実性も高い時代です。意思決定を繰り返して頻繁に変えることは、環境に上手く対応できている組織ということでもあるのです。
意思決定プロセスにはインターナルコミュニケーションが重要
意思決定のプロセスを促進するためには、組織の置かれている状況・データが、現場に伝わることが重要です。また反対に、組織のトップ層に現場の状況が伝わることも大切です。その両方を叶えるためには、コミュニケーションの質や量を上げるよりも、まず何よりもスピードを高めることが不可欠になってきます。
組織のコミュニケーションスピードを高めたい場合に有効なのは、インターナルコミュニケーションを充実させることです。
たとえば、自社工場の月間製造量が前月比で5%落ちているという課題があるとします。
原因として、製品Aに使う部品調達が遅れているという現状がわかっています。このままでは供給が需要に追いつかず、欠品が生じてしまう可能性があります。
この課題に対して議論を始めるとして、議論の前の段階では、どの方法がもっとも適切なのか、意見が異なることもあるでしょう。
Aさんは「製品Aを外部の工場に発注すべき」という意見で、Bさんは「部品の調達ルートを他に探すべき」と思っているようなかたちです。
このように意見が不一致な状況であっても、組織としてなんらかの意思決定を下さなくてはならないのです。
インターナルコミュニケーションを充実させてスピーディーに意思決定を下すことができれば、実際にどの手法が適切なのかを確かめ、組織として学習していくことができます。個々の単位では最初の考えを改める必要が出てくるかもしれませんが、組織としてはプラスの方向に向かうのです。
まとめ
意思決定は、企業の課題を解決するために重要なプロセスです。コツをおさえながら、スピーディーかつ正確に決定を下していきましょう。
組織として意思決定を下すには、異なる意見をまとめていくことが重要です。そのためにも、根底であるインターナルコミュニケーションを充実させる必要があるでしょう。しかし、インターナルコミュニケーションは、企業や組織によって最適な取り組み方が大きく異なります。お困りの際は、ぜひソフィアまでお問い合わせください。
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よくある質問
- 意思決定とは何ですか?
「ある目標を達成するために、複数の選択肢から最善のものを導きだそうとする行為」です。意思決定とは目標などを達成する最善の方法だと認識して行うものであり、過去や現在ではなく未来に対する仮説にもとづいておこなわれるものでもあります。
- 意思決定プロセスはなぜ難しいのですか?
本質を考えずにただ言われたことをこなすだけという人が多いため、意思決定が難航します。例をあげるとすれば、
・時間がかかるからという理由で情報収集を怠り、データを精査せずに判断を下してしまう
・未来予測をせずに、過去の成功事例を踏襲するかたちで意思決定を下してしまう
・意思決定者が当事者意識を持っておらず、周囲に言われるがまま決定を下してしまう
・そもそも意思決定者に十分な知識がないなど、前提として想定が甘かった
などがあります。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
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