2022.10.14
ビジネスにおけるレジリエンスとは?意味や高めるための手法を解説!
目次
「レジリエンス」は、変化の激しいこの時代を生き抜くために重要なスキルです。和訳すると「回復力」「弾性」にあたる言葉で、ストレスや困難を経験しても回復する強さを指します。この記事では、なぜ今ビジネスにおいてレジリエンスが注目されているのかに注目しその背景を探っていきます。また、レジリエンスの高い組織づくりのポイントも紹介します。
レジリエンスとは何か?定義と意味
「レジリエンス」は「回復力」「弾性」などと訳される言葉です。ストレスを受けたり、困難に直面したりした際に、どれだけ早く回復できるかの能力を指します。レジリエンスが高い人は、同じような困難に直面した人の中でも回復が早く、かつ柔軟に乗り越えられます。
レジリエンスという言葉は、もともとは物理科学の分野で使われてきました。物理的な衝撃や変形に対して、物体が抵抗する力を指して用いられていたのです。そこから派生して現在では経済学、社会学、心理学、生態学など、他分野の学問においても使われるようになりました。
たとえば生態学では、ダメージを受けても素早く回復して安定を取り戻す、生態系の持つ力を表す言葉になっています。また人間科学の分野では、ある社会システムが何らかの困難に直面した際に、変化を克服し、正常なオペレーションを取り戻す能力を表すようになりました。
なお、ビジネスの文脈で語られるレジリエンスには「個人のレジリエンス」と「組織・ビジネスのレジリエンス」の2種類があります。個人のレジリエンスにおいて重要になるのは、困難な状況を受容し、柔軟に対応しながら決断し、前向きに行動し続けることができるマインドや能力です。一方で組織のレジリエンスにおいて重視されるのは、環境の変化に柔軟に対応し、自己変革していくことができる組織文化や環境です。本記事においては、組織のレジリエンスに焦点を置いて解説します。
ビジネスにおけるレジリエンスとは?
なぜ今「レジリエンス」がビジネスの文脈で注目を集めているのでしょうか。企業や個人を取り巻く環境の変化から解説します。
ビジネスにおいてレジリエンスが注目される背景
ビジネスにおいてレジリエンスが大きな注目を集める背景にあるのは、ビジネスを取り巻く状況が日々変化していることだと考えられています。 例えば、コロナ禍を振り返ると、行動制限による業務の停滞や、サプライチェーンの寸断、資材の不足、職場の感染対策など、企業はさまざまな困難に直面しました。他にも、自然災害や地政学リスク、破壊的イノベーションによる市場の変化など、困難な状況はいつどのような形で発生するのか予測がつきません。だからこそ、これまで以上に、ビジネスにレジリエンスを備えておく必要性が高まっているのです。 また、ビジネスの変化によって、労働環境も変化していきます。労働環境の変化によるストレスや困難に柔軟に対応しながら個々の従業員が業務を遂行し、組織全体でビジネスを前に進めていくためには、個人にとってのレジリエンスも重要です。
ビジネスにおけるレジリエンスの重要性
なぜビジネスにおいてレジリエンスが重要なのかというと、事業環境の変化に柔軟に対応し、ダメージから素早く回復しながらビジネスを存続させていくためです。そして、ビジネスにレジリエンスを備えるためには、ビジネスを行う組織をレジリエントな状態にしておくことが必要です。
たとえ組織の中にレジリエンスの高い個人がいたとしても、組織全体がレジリエントでなければ、事業環境の変化に対応することは難しいでしょう。レジリエンスを備えた組織をつくるためには、組織の構造や意思決定のプロセス、業務のプロセスといった制度や仕組みの面と、組織の風土や文化などのソフト面の両方からアプローチする必要があります。次の章で詳しく見ていきましょう。
レジリエントなビジネス組織づくり
事業環境の変化やビジネスの変化に柔軟に対応できる組織を、どのように実現していくのでしょうか。ここでは、企業における主体を「現場・チーム」、「全社・経営」、そして「部門」の3つに分け、重要なポイントについて整理していきます。
現場・チームレベル
「意思決定と選択に“あそび”があること」
変化やトラブルに強い現場とは、問題解決の手段にさまざまなバリエーションがあるということです。まず大前提として、そうした現場での対応において意思決定の権限が委譲されていること。その上で、状況に応じて様々な意思決定を行うことができるよう手順やルール、スケジュールに“あそび”を持てると、予期せぬ事態に動じず対処することができます。
これは「冗長性」とも表現できます。秒単位の生産性を追い求めてきた企業活動においてはネガティブな意味にも感じる言葉ですが、短期的な効率よりも不確実な時代における長期的なリスク管理という観点において徐々に重要視されるようになりました。
より具体的には、
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- 「納期にバッファを持たせる(そのための交渉が出来る)」
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- 「同じ業務を担える人や拠点を複数抱えておく」
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- 「複数のマネタイズの手段がある」
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- 「チーム内で指示の変更が受け入れられる」
- 「結果を重視し、プロセスは信頼して任せる」
などの方策があります。ポイントとなるのは、こうした「現場のレジリエンス」の成否はマネジメントの手腕にかかっているということです。納期やプロセスを厳格に管理し、少数精鋭で年間、あるいはさらに長期間において一つのやり方を突き詰めていくというのが、従来の効率性マネジメントの基本でした。しかしこれらの“冗長さ”を管理するには、マネージャーからメンバーへ、より抽象的で視座を高めたコミュニケーションが必要となっていきます。マネジメント側の工夫、というだけでなく、次に挙げる経営レベルでの取り組みによってそれをサポートしなければなりません。
全社・経営レベル
「抽象的で高次元な目的意識の浸透」
何が起こるか分からない環境においては、「計画」という言葉の意味合いが変わることもあります。経営が掲げる事業計画においても同様で、変化に応じて計画を修正することができる、あるいは予め多産的に計画を検討しておく必要があります。
重要なのは、変更を前提に計画が共有され、かつその背景やより高次の目的・ビジョンについての理解が浸透していることです。それにより、全社レベルでのレジリエンスの根本を支えることができます。
そのためには、「中期経営計画がどのようなビジョンに立脚しているのかを知ることができる」「自社に影響を及ぼしうる社会の動きについて、社員が主体的に考えることができるような情報の支援がある」「現場での日々数多くの意思決定の根拠となれる理念や価値観が浸透している」など、レジリエンスの高い組織を創る上で経営が全社に対して果たすべき役割は非常に重要です。
部門レベル
「異なる専門性の連携によってさらに多様な手法を取る」
企業全体として、単一よりも、複数の事業やサービスを持っていることを指してレジリエンスが高い状態であると言えます。雨傘を売っているお店は、雨が一年間一滴も降らない異常事態においては商売になりませんが、もし日傘も売っていればなんとか売り上げが確保できます。より複雑な状況の変化や予期せぬ事態に対して、企業が有する各部門、それぞれの専門性を自在に活かすことが求められます。
ところが多くの国内企業は、“サイロ化”とも言われるように部門間の壁は厚く、互いの状況や業務内容についてほとんど共有されていません。まして各々の部門別の目標達成のために仕事を囲い込み合い、奪い合っている状況では連携が生まれるはずがありません。
部門間の連携を促すためには、WEBアプリケーションなどを活用しながら、各部門の情報を共有しましょう。そして、部門間連携を促進するに至るような評価・目標管理の仕組みが必要です。先述の現場レベル・経営レベルの取り組みともつなげながら、部門の壁を超えたコミュニケーション(単なる“会話”ではなく、さまざまな粒度の情報のやり取り)が活性化している状況を作り出さなければなりません。
人材育成や企業風土といったソフト面の変革が必要
レジリエントな組織を作る際にネックとなるのは、人材育成や企業風土といったソフト面です。いくら仕組みや制度を整えたところで、重要な情報が特定の人や部門に独占されていたり、上意下達の指示系統を絶対として現場が受け身の姿勢になりがちだったり、ハイコンテクストなコミュニケーションが主流で人材の多様性を排除するような文化があれば、レジリエントな組織になることはできません。
情報を可視化したり意思疎通を迅速化したりするためにデジタルツールを導入するなど、ハード面を変えることは難しいことではないでしょう。しかし、企業風土は時間をかけて醸成されていく部分も多く、簡単には変わりません。人材育成のプログラムを変えても、それぞれの職場の中で行われているコミュニケーションが変わらなければ組織は変わらないのです。
変化に対応するスピード感や、前例のないことに取り組む柔軟性には、職場内でのコミュニケーションや人材育成、組織の風土といった、可視化されないソフト面が大きく関わっています。そのため、組織のレジリエンスを高めるためにこれらのソフト面に着目する必要があります。組織の目指す方向性を経営側が明確に打ち出した上で、コミュニケーションツールなどのハード面と、人材育成や職場内のコミュニケーションといったソフト面の変革に向けた施策を検討しましょう。
ビジネスにおけるレジリエンスとアジリティ
最後に、ビジネスにおいて今重要視されている「アジリティ」という言葉にも触れておきます。「レジリエンス」と、セットで使われることも多い「アジリティ」とは、どのような関係にあるのか解説します。
アジリティとレジリエンスの関係性
組織のアジリティとは、状況の変化を捉えて柔軟かつ迅速な判断と行動ができることを指します。アジリティがあれば、新しいリスクや機会をいち早くキャッチし、競合他社より先に戦略を見極め、行動に移すことができます。DXが進む昨今、自社のビジネスがどのような状況にあるのかデータから把握することが容易になり、政府やさまざまな公的機関によるオープンデータからも環境の変化を察知しやすくなりました。そのため、ビジネスにおいて俊敏な意思決定ができる組織アジリティの効力は、以前より増しています。
アジリティがスピードを重視するのに対して、レジリエンスを高めるにはビジネスの冗長性も求められるため、一見この2つの用語は逆行する概念のように感じられるかもしれません。しかし、いずれも「状況の変化に素早く対応する」という意味では、目指すところは同じです。 将来の見通しがつかない現在においては、双方の優れた点を生かした「レジリエンスでアジャイル」な組織を目指すのが賢明かもしれません。「柔軟で迅速な行動をとりつつ、何かが起きた時のための余力も持っていく」そんな姿勢があると安心でしょう。これまでの経験を学びや知恵に変えながら、組織の競争力を高めていきましょう。
まとめ
現状のビジネスは、組織として最適化されたバリューチェーンの枠組みで回っています。この枠組みの中で改善策を繰り返し、売上・利益を増大させてきた企業にとって、ビジネスに冗長性や多様性を持ち込むことは、非効率に思えて抵抗があるかもしれません。しかし、業績を求めるばかりでは、組織としてのレジリエンスは手に入りません。目先の業績とレジリエンスは、基本的にはコンフリクトする関係性にあるのです。レジリエンスを得るためには、経営を非効率にすべき局面もあるということです。
アジリティの向上とレジリエンスの向上のためには、いずれも組織の可変性や人材の自立性、コミュニケーション能力等が重要であり、共通する点も多々あります。デジタルツールを用いた情報の可視化や、コミュニケーションスピードの向上などは、組織のアジリティとレジリエンスのいずれにも寄与するでしょう。
レジリエンスは、変化の激しい困難な時代だからこそより一層求められています。そして、ビジネスの過渡期である現在は、「レジリエンスでアジャイル」な状態を目指すことが重要です。組織づくりのヒントをお探しの場合は、どうぞソフィアまでご相談ください。
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よくある質問
- レジリエンスとは何ですか?
「個人のレジリエンス」と「組織・ビジネスのレジリエンス」の2種類があります。個人のレジリエンスにおいて重要になるのは、困難な状況を受容し、柔軟に対応しながら決断し、前向きに行動し続けることができるマインドや能力です。組織のレジリエンスにおいて重視されるのは、環境の変化に柔軟に対応し、自己変革していくことができる組織文化や環境です。
- レジリエントなビジネス組織づくりは何ですか?
現場・チームレベル 「意思決定と選択に“あそび”があること」
全社・経営レベル 「抽象的で高次元な目的意識の浸透」
部門レベル 「異なる専門性の連携によってさらに多様な手法を取る」
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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