2022.11.08
リモート研修とは?目的や普及状況、今後の展望から導入の必要性を押さえよう
目次
コロナ過を経て、リモートワークやテレワークが普及し、企業が行う従来の集合研修はリモート研修に変化してきました。リモート研修はこのまま定着するのでしょうか。それともオンラインとオフラインを複合させたハイブリッド式になるのでしょうか。
この記事では、需要が高まっている「リモート研修」の基本や目的、必要になった背景、普及状況、今後の展望などについて解説します。
リモート研修とは?
リモート研修とは、インターネットを介して行う研修のことです。受講者側は好きな場所で好きな時に視聴でき、講師側は何度も同じ内容の講義をする必要がない、といったように、双方にメリットが多い方法です。リモート研修を行うためにはパソコンやスマホ、インターネット環境を準備する必要があります。将来的にはVRなど先端のデジタル技術やさまざまなデータを活用して研修を行うことが可能になっていくでしょう。
リモート研修の種類
ここでは、以下の図を参考に、A:従来型集合研修スタイル、B:OJTスタイル、C:ウェビナースタイル、D:コンテンツ学習スタイル(Eラーニングや動画教材などを使った研修)、という4タイプの研修について説明します。
従来型集合研修スタイル
Aにあたる従来型の集合研修スタイルとは、その名の通り一定人数が集合し、講師と受講者がリアルな場で対面して行う研修のことです。コロナ以前ではこの形式が主流で、研修と言えば集合研修でした。カリキュラムとしては、テキストに沿って何かを教える講義タイプや、チームに分かれてロールプレイングやグループディスカッションを行うワークショップタイプなどがあります。
また、集合研修終了後に、職場実践とフォロー研修などを入れるプログラムも一般的です。これは、AからBのOJTスタイルへとつなげ、研修で学習したことを業務に転移させる仕掛けです。
OJTスタイル
BはOJTや実践学習です。今までの企業内教育では研修や学習というインプットを、Bを通してアウトプットできるよう試行錯誤してきました。しかし、デジタルワークプレイスの普及により、業務の現場がオフラインからオンラインに変化している企業もあります。これにより、必要なEラーニングコンテンツや過去の講義内容動画などを活用しながら上司が部下にOJT指導をすることもできるようになりました。つまり、教える側の個人の力のみに頼るのではなく、組織的な学習が可能になってきています。
ウェビナースタイル
Cにあたるウェビナースタイルは、Web会議システムを介して行う研修のことです。Web会議システム上で講師と受講者、受講者同士がコミュニケーションを図ることができ、質疑応答やディスカッションもできます。コロナ過により、半ば強制的に従来型の集合研修はほぼウェビナースタイルになりました。
現在は、従来型の集合研修とウェビナーとのハイブリッド型で研修を実施するケースも増えています。研修やワークショップのセッション内容や目的、参加者に合わせて、従来の対面型の集合研修スタイルとウェビナースタイルを使い分けている企業も増えています。
ウェビナースタイルは、オンラインで行う研修を録画して二次利用することでDにつなげることもできるのが特徴です。
コンテンツ学習スタイル(Eラーニング、動画教材など)
DはEラーニングや動画教材などのコンテンツ学習スタイルのことです。オンラインでリアルタイムに研修を受けるCとは違って、講師が事前に収録したEラーニング教材やビデオ教材を視聴します。何度も視聴でき、業務中に講義内容を参照・確認したいときにも視聴可能です。しかし、オフラインの研修とは異なり、講師や研修事務局(人事部など)が遠隔における受講者の反応や状況を確認するには、ログやLMSなどのデータを通じて把握する必要があります。
リモート研修とその他の研修との違い
では、リモート研修とその他の研修との違いはどの部分にあるのでしょうか?
ここからはA、B、C、Dそれぞれを下記の項目別に比較していきます。
学習の実施環境
まずは、研修を開催する環境についてです。Aの従来型集合研修は会議室などの研修会場で行われます。BのOJTスタイルは多くの場合、実践に近い現場で行われます。
対してウェビナースタイルのCとコンテンツ学習のDは、どこでも好きな場所で受講することができ、空間の制限がないことが共通しています。また、Dは好きな時間に受講できますが、それ以外は時間的な制約があり特に、AとCは関わる人数が多いため、開催時間の制約も大きくなります。
研修の主体
次に、研修の主体についてです。AとCは、講師や研修事務局が主体となって研修を運営し、受講者は決められた時間に、決められた会場へ出向いて研修に参加します。対して、BとDは、受講者が主体となり研修に参加します。つまり、オンラインによる研修のモチベーションは、受講者の動機に依存するということになります。
研修の目的
続いて、研修の目的についてです。AとCは、企業が求める能力要件をもとに「受講者がスキルを習得する」ことを目的として開催されます。研修後のアンケートでは受講者の「学習の習熟度」を測り、研修の目的が達成されたかを確認します。
一方、BとDの目的は多くの場合「問題解決」です。上司などから与えられたタスクに対し、それができるようになるための方法を学習者が自ら学びます。タスクが遂行できるようになる方法を自身で探すためには、Web上にあるすべてのものが教材になるでしょう。研修目的が達成されたかどうかは、実務に生かされているかどうかで測ります。
研修の意義
最後に、研修の意義について確認しておきましょう。AやCは、講師や事務局側が「これを学べばこれができるようになるはず」という考え方で、研修を実施しています。
対して、BとDは、研修の成果を「研修を通して得たスキルを実務で活用できる=身についている」と捉える、実務に紐づく考え方です。Dにおいては、講師セミナー動画は社内のWeb上にあるあらゆる教材の中の1コンテンツにすぎず、「講師が教える」という考え方ではないということになります。
上記のABCDをまとめると以下のようになります。
学習研修の実施環境 | 研修の主体者 | 研修の目的 | 研修の意義 | |
---|---|---|---|---|
A. 従来型集合研修スタイル | 会議室や研修会場 | 講師が主体 | スキルを習得する | 知識レベルでのスキルの習得 |
B. OJTスタイル | 実践に近い現場 | 受講者が主体 | 問題解決 | 実務で活用できるスキルの習得 |
C. ウェビナースタイル | 好きな場所で受講可能 | 講師が主体 | スキルを習得する | 知識レベルでのスキルの習得 |
D. コンテンツ学習スタイル | 好きな場所で受講可能 | 受講者が主体 | 問題解決 | 実務で活用できるスキルの習得 |
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リモート研修にオンデマンド式の学習コンテンツが必要な理由と背景
DにあたるEラーニングや動画教材などのコンテンツ学習スタイルは、社員一人ひとりに最適な学習コンテンツを提供できます。研修の機会を待つことなく、社員が自ら思い立った時に、いつでもどこでも学習することができるのです。これは、人がより早く成長できる機会があるとも言い換えられます。
ではなぜ、企業は人材の急成長を求めなければならないのでしょうか。VUCA時代への突入や社会のデジタル化、企業のDX化など、現代の社会は予測不可能かつ変化の激しい不安定な時代になりました。そのため、経済の安定期に考えられた目的やビジョンはすでに時代遅れとなっていることがあり、多くの企業において存在価値や提供価値の見直しが図られています。
企業のあり方や人材育成は、今まさに転換期を迎えているのです。職業能力の再開発・再教育が注目される中、より効率的に学習の成果を上げていかなければなりません。そのためには、成果を上げるための研修のスタイルを、企業側がしっかりと検討して実施していく必要があります。
リモートワークとリモート研修の普及状況
ここで、コロナ前とコロナ渦におけるリモートワークの普及状況を見てみましょう。
社会システム研究所が発表した「新型コロナウイルス感染症流行下でのテレワークの実態に関する調査動向」によると、2019年時点のテレワーク導入率は全国的には20%ほどで、商業の中心地である東京都でも25%に留まっています。DXが叫ばれるようになり、「リモート」という概念や利用は年々広がってはいましたが、普及しているとはいえない状態でした。
また、テレワーク導入企業を対象とした調査では、2019年時点でリモートワークを利用している従業員の割合を「30%未満」と答えた企業は8割でした。以上のことから、コロナ前におけるテレワーク導入率は2割程度、実際の実施率は1割にも満たないほど低かったことが推測されます。
しかし、2020年以降はコロナ渦の影響を受け、テレワークの状況は一変します。総務省が発表した「令和3年版 情報通信白書」によると、新型コロナ感染症の拡大に伴って緊急事態宣言が施行されたことで、テレワークの実施率は60%程度まで上昇しました。その後、緊急事態宣言解除後に実施率は低下しましたが、2回目の緊急事態宣言時には再び38.4%に上昇しています。コロナ渦におけるテレワーク導入率は割と急速に普及し、今ではテレワークは一定程度定着傾向にあります。
続いて、コロナ禍におけるリモート研修の普及について解説します。コロナ禍以前は対面型研修(集合研修)が主流でしたが、コロナ渦の影響で企業研修のオンライン化も急激に加速しました。パーソル総合研究所が発表した「企業におけるオンライン集合研修の実態に関する調査」によると、2020年の1年間でリモート研修の実施を増やした企業は75.0%にものぼります。このように、コロナ禍以降の社内研修の形式は、リモート研修が主流となっています。
リモート研修の必要性と今後の展望
今後、たとえコロナ禍を脱したとしても、オンデマンド式の学習コンテンツによるリモート研修の普及は進むでしょう。
しかし、身に付く研修を行うためには経験や実務が必要です。人材育成には「ロミンガーの法則」とも呼ばれる、「70:20:10」の法則というものがあります。
アメリカのリーダーシップ研究機関であるロミンガー社が「何がリーダーとして成長の役に立ったか」を調査したところ、「仕事での経験」が70%、「他者からの学び」が20%、「研修や学習」は10%であると結果が出ました。
これは、研修や学習に効果がないという研究結果ではありません。回答者の多くは、「仕事での経験、他者からの学びに、研修や学習による学びと気付きを加えることで今の活躍がある」と回答しているのです。
リモート研修はLMS(Learning Management System:学習管理システム)やコーチング、AIなどの技術や考え方を活用することで、より受講者の学習レベルや進捗段階に寄り添うものとして充実していくとの見方も強まっています。それに伴い研修のスタイルもより実務に転移しやすい研修となっていくでしょう。実務での経験が成長に重要であれば、必要な教育コンテンツや素材をタイミングよくアクセスできる環境にすればいいのです。
実際に、学習コンテンツやコミュケーションなどのデータログから、受講者に今必要な学習内容を示唆することも可能になっています。デジタルワークプレイスがより普及すれば、ウェビナーやOJTスタイルの区別もなくなり、ハイブリッドな学習が可能になり、中期的にはオフラインでの研修は減るでしょう。また研修転移や効果性の観点から、研修の場として非日常空間を用意する必要性もなくなり、ほぼ全てOJTスタイルBに集約されていくのではないでしょうか。そして、講師の役割は、受講者に伴走するコーチャー、または学習コンテンツのキュレーターと変化していくのでしょう。
まとめ
リモート研修は、講師・受講者の双方にメリットがある研修スタイルです。今後も形態を変化させながら一層需要が高まっていくと推測されます。
研修は会社と社員との接点として非常に重要な役割りを持っています。学習者である社員にとってより良い研修になるように、研修の設計を見直すことも検討しましょう。
また、リモート研修を実施する方法についてはこちらも合わせてご覧ください。
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よくある質問
- リモート研修の必要性は何ですか?
人材育成には「ロミンガーの法則」とも呼ばれる、「70:20:10」の通り「仕事での経験、他者からの学びに、研修や学習による学びと気付きを加えることで今の活躍がある」と回答しています。これは研修や学習に効果がないという研究結果ではなく、他者からの学びや仕事での経験とあわせて研修がいきてくることを表しています。
- リモートワークとリモート研修の普及状況はどうですか?
リモート研修はLMS(Learning Management System:学習管理システム)やコーチング、AIなどの技術や考え方を活用することで、より受講者の学習レベルや進捗段階に寄り添うものとして充実していくとの見方も強まっています。それに伴い研修のスタイルもより実務に転移しやすい研修となっていくでしょう。実務での経験が成長に重要であれば、必要な教育コンテンツや素材をタイミングよくアクセスできる環境にすればいいのです。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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