2023.01.26
従業員エンゲージメント指標とは?指標に関する要素や調査方法を紹介!
目次
組織に対する従業員の貢献姿勢を指すのが、従業員エンゲージメントです。それを数値化したものが、従業員エンゲージメント指標となります。
従業員エンゲージメント指標はどのように調査をするのか、また高い水準にするためにはどうしたらいいのかを紹介していきます。
従業員エンゲージメント指標とは
従業員エンゲージメントとは、会社への信頼度・愛着度を指数化したものです。つまり、会社と従業員の関係性が良好かどうかを数値化したものと言えるでしょう。
よく使われる「従業員満足度」という言葉がありますが、従業員満足度は、従業員からの一方的な評価です。経営側から与えられた仕事を楽しくやっているのか、機械的な仕事であっても満足してこなしているのかなど、従業員の心情が問われます。
一方で、従業員エンゲージメントで問われるのは、会社の目標について従業員が共感しているかどうかです。従業員エンゲージメントが高ければ、会社とともに従業員もリスクなどを負う姿勢があると言えるでしょう。「人が資本」である組織を形成できているという証にもなります。
ただし従業員エンゲージメント指標を取る際には、どうしても経営目線に陥りがちであることに留意する必要があります。現場の感情に寄り添う姿勢を保ち、正しくエンゲージメントを把握するためのポイントです。
また、「ワークエンゲージメント」という言葉も、従業員エンゲージメントと同じ意味で使われることが多くあります。ただし、従業員エンゲージメントが「個人と組織」に対して求められるのに対して、ワークエンゲージメントは「個人と業務」に対して用いられる言葉だという違いがあります。
このワークエンゲージメントは、オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli 教授らが提唱した概念です。「仕事から活力を得ていきいきとしている(活力)」、「仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)」、「仕事に熱心に取り組んでいる(没頭)」、この3つが揃った状態が、ワークエンゲージメントの高い状態であると定義されています。従業員がポジティブな気持ちで業務に携わっているか を示すもので、研究機関がデータをとって発表しています。
これに対し、従業員エンゲージメントは、企業と人がどれだけ信頼・理解し合っているのか、共感し合っているのかを表すものです。ワークエンゲージメントのデータのデータは研究機関が集めているのに対し、コンサルティング会社などがデータを取っていることが特徴的です。従業員エンゲージメントが高いという状態はつまり、理念やビジョンへの共感があり、職場、同僚、仕事に対する感情的なコミットメントがあるという状態のことを言います。
従業員エンゲージメント指標に関係する要素
これらを踏まえ、従業員エンゲージメントが高く、生産性の高い組織を目指しましょう。まずは従業員エンゲージメント指標は何に左右されるのか、関係する要素をお伝えします。
働く環境
まずは、働く環境です。たとえばコミュニケーションが取りやすい環境であれば、業務上の不自由がなくなるだけでなく、精神的なつながりを感じながら仕事ができます。それによって企業への愛着が高まり、エンゲージメントが向上すると考えられます。他にも、残業の有無、プライベートの時間が確保できるかどうかなどによって、エンゲージメントは大きく左右されます。評価の面では、正当な評価が受けられる環境であることが、組織への貢献意欲に大きく関わるでしょう。
また、コミュニケーションの活性化を促すためにはデジタルワークプレイスを取り入れ、より質のよいコミュニケーションを重ねましょう。
と同時に、働く環境は組織風土や文化に大きく影響を受けます。社員の成長意識が低い、社内の雰囲気が暗く社員間のコミュニケーションがない、などの場合は早急に組織風土や文化を改善しなければなりません。
やりがい
業務へのやりがいは、エンゲージメント指標に直結します。やりがいを高めるためには、まずは各々の業務における成果を認めることが大切です。成果が認められることで「自分は企業に貢献しているのだ」という意識を持ち、それが企業への愛着につながっていきます。
また、やりがいを高めるためには、社員の業務に対する納得も必要となります。会社の理念やビジョンに共感でき、業務に対してしっかりと納得できていれば自然とやりがいも出てきます。
ビジョンの共感
企業ビジョンと従業員の方向性が一致しているかどうかも重要です。従業員が企業ビジョンに共感している場合は、仕事に対して積極的に取り組むことができます。
ビジョンには本来「将来の見通し」や「展望」といった意味があります。企業の「あるべき姿」や「理想像」を明文化したものがビジョンとなるため、従業員に対するビジョンの浸透は重要です。ビジョンを浸透させ、共感を促すことにより、「社員のモチベーションが向上する」「社員一人ひとりが適切かつ迅速に判断できる」「意見をまとめやすくなる」などのメリットがあります。企業のビジョンは社員に一体感をもたらし、モチベーションを向上させる役割を持つため、積極的かつ丁寧にビジョンへの共感を促しましょう。
従業員エンゲージメントの指標
従業員エンゲージメントには、主に3つの指標があります。以下では、それぞれについて説明します。
- エンゲージメント総合指標
会社を他人に勧めたいかどうかを聞く「eNPS(従業員ネットプロモータースコア)」の調査や、会社に対して総合的にどのくらい満足しているかを聞く「総合満足度」の調査今の会社で継続して働きたいと思っているかどうかを聞く「継続勤務意向」これらの調査を行い、エンゲージメントを総合的に測定した指標です。
- エンゲージメントレベル指標
仕事に対する熱意や没頭の度合い、活力などを測定した指標です。
- エンゲージメントドライバー指標
仕事に満足している、貢献していることを実感できているかを測定する指標です。組織・職務・個人に分かれていて、「組織ドライバー」は、人間関係や職場環境の状態を指します。「職務ドライバー」職務の難易度を指します。「個人ドライバー」は、個人的資質が業務に及ぼす影響を指します。
従業員エンゲージメントの調査方法を紹介
では、従業員エンゲージメントはどのように調査されるのでしょうか。主な調査方法を紹介します。
従業員エンゲージメントサーベイ
従業員エンゲージメントサーベイでは、1年に1回などの長いスパンで、一度にたくさんの質問を行います。質問数が多いため回答者にとっては負担が大きいものになりますが、それだけたくさんの情報を得られます。
従業員パルスサーベイ
従業員パルスサーベイは、週次、月次といった短いスパンで従業員に対する質問を行う調査方法です。短い間隔で行うため、変化や傾向を把握するのに適しています。
従業員エンゲージメントの質問例
従業員エンゲージメントを調査する際は、どのような質問を投げかけるかが重要です。質問事項の例を以下に挙げます。
質問は、下記のような項目で行うのが一般的です。
- ウェルビーイング
- リーダーシップ
- ワークライフバランス
- インターナルコミュニケーション
- 個人的キャリア
- リテンション
【従業員エンゲージメントの調査方法の質問例】
- 今の会社で働くことを誇りに思いますか?
- 今日の仕事についてどう思いますか?
- 自分のスキルやキャリアが伸びているのがわかりますか?
- 今の会社が働きやすい会社だと家族や友人に推薦する可能性はどれくらいですか?
- 他の会社に就職することをどのくらいの頻度で考えますか?
- 毎日出勤することにワクワクしていますか?
- 今後2年間今の会社で働く予定はありますか?
- 経営陣は従業員とうまくコミュニケーションしていると思いますか?
- 給与と福利厚生に満足していますか?
- 職場で意思決定を行う権限があると感じますか?
- 職場であなたを刺激し、元気づけるものは何ですか?
- あなたのマネージャーは素晴らしいリーダーだと思いますか?
- 今の会社での仕事は意味があると思いますか?
- 職場でアイデアや意見を共有することに抵抗はありませんか?
- あなたのチームは協力して作業を完了していますか?
- 問題を提起したり、上司に助けを求めたりすることに抵抗はありませんか?
- あなたのマネージャーはあなたのキャリア志向に興味を持っていると思いますか?
- あなたの仕事量は合理的だと思いますか?
質問を投げかける際は、「はい/いいえ」で答えられるようにするのがコツです。もしくは、「思っている・多少思っている・どちらでもない・あまり思っていない・思っていない」など、5段階で質問する方法もあるでしょう。その際に、中間傾向を外すため、「どちらでもない」を排除するのもおすすめです。他には、自由記述や、データを見せてコメントするという回答方法も考えられます。
また、社内アンケートは「本音が書けない」「本音を書かない」という従業員もいるため注意が必要です。組織内の信頼関係がない場合、誰も本気で答えてくれず、意味のないデータしか出てこない恐れがあります。アンケートの結果次第では、場合によっては「うちの会社は信用できない」と、相互不信が深まることもあるでしょう。そのため、従業員の本音を聞きたいのであれば直接ヒアリングしたほうが良い場合もあります。
従業員エンゲージメントを向上するには?
ここまで、従業員エンゲージメントの調査方法を紹介しましたが、そもそもエンゲージメントを向上させるにはどうしたらいいのでしょうか。いくつかの要素にわけて解説します。
ビジョンを共有・浸透させる
企業理念や経営ビジョンに共通認識を持つと、組織に貢献したいという気持ちに結びつきます。
ビジョンは掲げるだけではなく、しっかりと浸透させることで、企業をあるべき姿へと導くことができるものです。ビジョンが社内に浸透していれば、企業が岐路に立たされたとき、社員の意見をまとめやすくなります。また、統一されたビジョンは社員に一体感をもたらします。結果、モチベーションを向上させるためのトリガーとなるのです。
ビジョンが組織に浸透し力を得ていくプロセスは、「認知」「理解」「共感」「実践」「協働/影響」という5つのフェーズをたどると考えることができます。まず重要なのはビジョンの存在を周知したうえで理解を促し、その内容に共感してもらうことです。そのあとで初めて、従業員はビジョンを実践します。そして各々がビジョンを実践するようになれば、組織には協働意識が芽生え、組織はより強固に団結していくのです。
社内コミュニケーションの活性化も重要
社内コミュニケーションを活性化し、従業員にとって働きやすい環境を作ることも大切です。
企業の規模やオフィスの形態、社員の人数などによって社内コミュニケーションを活性化させるためにできることは異なります。そのため、導入目的を明確にしたうえで、企業にあった取り組みやツールを選ぶことがポイントです。
特にチームで関わり合うことが多い企業では、上司や同僚とのコミュニケーションを円滑にし、良好な関係性を作れるよう支えていきましょう。相談や雑談がしやすい環境を作ると、ちょっとしたもやもやが解消され、エンゲージメントに作用するはずです。そのためには、1on1ミーティングを実施したり、ランチミーティングを日常的に取り入れたりするのがおすすめです。また、社内イベントを実施して、普段の業務とは違った環境でコミュニケーションの機会を作るのもいいでしょう。
また、コロナ禍の影響で、ここ数年で多くの企業が在宅勤務を開始しました。在宅勤務が続くと、コミュニケーションが希薄になりがちです。そのまま放置すれば、企業の生産性低下や離職率の高まりを招くリスクがあります。ビジネスチャットツールを導入したり、オンラインイベントを実施したりし、テレワークという新たな働き方に対応できるよう、コミュニケーション方法の最適化に努めましょう。
コミュニケーションが深まって働きやすくなれば、自ずと組織への帰属意識が高まるでしょう。
従業員エンゲージメント調査を行う
従業員エンゲージメントの実態を定期的に調査し、把握することも大切です。誰が見てもわかりやすいように実情を可視化し、課題を明確にしていきましょう。
ただし調査の際は、従業員が本音を書けるようなものにするように工夫が必要です。いくら組織をよくするための調査であっても、従業員がその調査にメリットを感じなければ、回答する行為そのものに不満が募ります。設問数が多くて煩雑なアンケートには、答えたくないと思う人も多いため、「答える側のメリット」を明確に示しながら調査を進めることが大切です。
また、調査をしても悪い回答にフタをして良い回答だけを報告するというようなことがあると、従業員の不信感は募るばかりです。従業員の本音に愛を持って耳を傾ける姿勢を示すことで、従業員エンゲージメントを高めるきっかけになるはずです。
働きやすい職場環境を作る
職場に愛着がわくように環境を整えることも重要です。
職場環境は、組織の風土に左右されます。もし組織風土に問題がある場合、求心力が低下し、さまざまな悪い兆候が現れるでしょう。たとえば社員の成長意識が低かったり、雰囲気が暗かったり、さらにはコミュニケーションが希薄で各々が勝手な判断で物事を進めていたりします。このような場合は、まず社員インタビューや意識調査によって状況を把握した後、改革の重要性を経営層から説く必要があるでしょう。そして組織に合った具体的な行動指針を示し、各々の意識変革を促していきます。
他にも、休みが取りにくかったり、残業を強いられたりするような環境では、従業員の不満が募りエンゲージメントが低下するというケースがあります。この場合、フレックスタイム制を導入したり、リモートワークなどの柔軟な働き方を許容したりすることで、従業員のワークライフバランスを整えていきましょう。自分で働く環境を選択できると、従業員の気持ちは明るくなります。とはいえ、選択肢を増やしすぎてしまうと不安や混乱につながりかねません。上司や同僚と相談しながら、環境を選べるような状態が理想的です。
エンプロイーエクスペリエンスも重要
従業員エンゲージメントの向上には、エンプロイーエクスペリエンスが大きく関わってきます。
エンプロイーエクスペリエンス(Employee Experience)とは「従業員の経験(体験)」を意味する言葉です。従業員の満足度をはじめ、育成状況や所有スキル、心身の健康状態など、会社組織の中で従業員が関わるあらゆる経験を指します。元々は「顧客体験」を意味する「カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)」から派生して生まれた概念です。
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エンプロイーエクスペリエンスとは「従業員の経験(体験)」。社員満足度・育成状況・スキル・働き方・心身の健康状態…
昨今エンプロイーエクスペリエンスが注目されるようになった背景には、働き方の変化があります。ひとつの会社で定年まで働き続けるといった働き方はすでに過去のものとなり、会社員は自分のスキルアップやワークライフバランスのために、環境のよい企業、自分の価値観に見合った企業を選んで積極的に転職をするようになりました。これにより企業は、自社の貴重な人材を他社へ流出させないために社員との良好な関係性を構築することに全力を挙げなくてはならない状況に置かれ、エンプロイーエクスペリエンスを重視するようになりました。
エンプロイーエクスペリエンスが充実したものになると、従業員は企業に対して帰属意識を強く感じるようになり、エンゲージメントが高まると考えられています。ただし従業員エンゲージメントは、無理に管理できるものではありません。むしろ、無理にコントロールしようとすればするほど下がるものです。意図してコントロールするのではなく、工夫が必要です。たとえば「何をどの程度までできればどう評価されるのか」「何を達成すれば昇進や待遇のアップにつながるのか」という基準を明示すると効果的でしょう。さらに、評価基準を決めるプロセスそのものに携わらせることも、エンプロイーエクスペリエンスを充実させるフックになるはずです。
エンプロイーエクスペリエンスの向上のためには、エンプロイージャーニーマップの導入も有効です。エンプロイージャーニーマップとは、人材の募集、採用、入社したのちの研修、現場での実務、日々のコミュニケーション、業務形態の変容(働き方改革やテレワークの導入など)、育成やキャリアアップ、人事評価、そして退職までを一連の「フロー」として可視化し、それをベースに従業員の経験をデザインするものです。従業員の希望を踏まえつつ「目指すべき人物像」を明確に提示することで、従業員の意欲を高水準で維持することができるでしょう。
まとめ
従業員の会社への信頼度・愛着度を指数化したものが従業員エンゲージメントです。これを高めることで優秀な人材の定着率が向上し、結果として企業のパフォーマンス向上にもつながります。従業員エンゲージメントを高めるためには、職場環境やビジョンへの共感などの要素が不可欠です。 ポイントを整理した上で、自社のエンゲージメントについて実態を調査していくのがおすすめです。
エンゲージメント向上のためには、エンプロイーエクスペリエンスを充実させることが大切です。変化の多い時代の中で組織の改革を目指すのなら、自社に合った効果的な手法を取り入れていく必要があります。ぜひソフィアまでお問い合わせください。
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よくある質問
- 従業員エンゲージメント指標とは何ですか?
従業員が現在働いている会社をどれだけ信頼しているか、会社にどれだけ貢献したいと考えているかという意味で活用されます。
- 従業員エンゲージメントはどのように調査しますか?
●従業員エンゲージメントサーベイ:
1年に1回などの長いスパンで、一度にたくさんの質問を行います。質問数が多いため回答者にとっては負担が大きいものになりますが、それだけたくさんの情報を得られます。●従業員パルスサーベイ:
週次、月次といった短いスパンで従業員に対する質問を行う調査方法です。短い間隔で行うため、変化や傾向を把握するのに適しています。●従業員エンゲージメントの質問例:
質問は、下記のような項目で行うのが一般的です。・ウェルビーイング
・リーダーシップ
・ワークライフバランス
・インターナルコミュニケーション
・個人的キャリア
・リテンション
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
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