プロジェクトベースドラーニング(PBL)の必要性とは?結果を出す人材育成のポイント
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プロジェクトベースドラーニングという学習方法をご存じでしょうか。ビジネス界でも注目されており、文部科学省が推進する「アクティブラーニング」の1つとして知られています。
学校教育現場では生徒が自発的に問題を発見して解決する能力を養うことを目的として導入され、座学とテストという教育手法の応用である「答えのない教育」が注目されています。急速に環境が変化する現代のビジネスに対応できる人材を育成するため必要な学習形態あり、プロジェクトベースドラーニングを企業内の人材育成の際に取り入れる企業も増えています。ここでは、プロジェクトベースドラーニングの知識から企業での活用方法までで詳しく解説します。
プロジェクトベースドラーニングの定義とは
プロジェクト(課題問題)ベースドラーニング(Project Based Learning 以下PBLと表記)とは、「課題解決型」の学習方法で自発性、創造性、知識の応用力、コミュニケーションスキルを身につけることができる教育方法です。米国の教育研究機関「PBLWorks」によると、「実社会の中で個人的に意味のあるプロジェクトに積極的に参加することで学ぶ教育方法」と定義されています。
従来、日本の学校教育は、座学で教師の説明を受けて重要な点を暗記し習熟するという暗記型が一般的でした。これは、サブジェクト(科目)ベースドラーニング(Subject-based Learning 以下SBLと表記)ともいわれています。これは、学年や受講者の属性に併せて教科書に沿って学習しテストで学習習熟度(暗記度合い)を確認するスタイルです。それに対してPBLは、与えられた課題問題についてグループでディスカッションし、調査・情報収集・知識の共有を行います。
また、サブジェクトベースドラーニング(SBL)は学習内容の理解度をテストで判定しますが、プロジェクトベースドラーニングは問題解決や結果で理解度と実践度、成果を判定します。つまり、成果=答えが、複数存在します。そのため、答えを導き出すまでのプロセスが能動的な点において従来の暗記型とは異なります。この方法は、正解がひとつではないビジネスの現場で注目されており、従業員のトレーニングとしても実践されています。プロジェクトベースドラーニングを企業に取り入れることで、従業員が問題を主体的に発見して解決するアプローチ方法の習得が可能です。
プロジェクトベースドラーニング(PBL)とサブジェクトベースドラーニング(SBL)が、学習プロセスにおいて、目的と手段に大きな違いがあります。サブジェクトベースドラーニングは、科目を学習したのであれば成果や結果を出せるはずであるという考え方です。一方で、プロジェクトベースドラーニングで課題や成果を達成したのであれば、学習ができたはずである。プロジェクトベースドラーニングは、実際の問題や課題を解決する事が主目的に置いた設計であり、サブジェクトベースドラーニングは学習自体が主目的に設計されているわけです。
プロジェクトベースドラーニングの学校教育事例
三重大学では、少人数(4人〜8人)のグループ学習で、提示された事例問題に対して、生徒主体で学習計画の立案と授業時間外での自己学習を行い、問題解決案の作成とその成果の報告をしています。全15回の授業において、受講生用の共通テキストも作られています。(詳しくは、参考:「三重大学版プロジェクトベースドラーニングマニュアル」をご参照ください。)それぞれの授業は高等教育創造開発センターの専任教員が担当しており、効果の高いプロジェクトベースドラーニングが行われました。
また、仙台高等専門学校では、約3ヶ月のインターンシップを通して行いました。事前に研修や講習を実施し、与えられた課題の調査、計画立案を企業側の指導を受けながら実務を行い、課題解決について最終発表を行うことにより、どのように知識をアイデアへと変換し、実務に繋がるスキルを身につけられるかを競い合います。同時にコミュニケーション能力の向上も見込まれ、企業と生徒側における相互的な成果に期待できます。
三重大学、仙台高等専門学校ともに、現場ごとの状況に合わせた様々な方法を採用しており、カリキュラムも幅広く多方面で活用されています。従来のインプット(詰め込み式)でのテストの点数を上げることを目的とした教育とは違い、学習計画の立案から問題解決案を自ら作り出し、さらに課題解決のため郊外の人と協働することで、双方にとって実りある学習になるのではないでしょうか。
参考:「三重大学版プロジェクトベースドラーニングマニュアル」
文部科学省「インターンシップ好事例集 ―教育効果を高める工夫17選―」
探求学習プロジェクトベースド(問題解決型)とサブジェクトベースド(科目進行型) の違いと必要な学習とは
社会に進出してから、はっきりとした正解のない様々な問題に向き合うことは多くあります。こうした課題にぶつかった際には、主体的に問題を捉え、解決にアプローチする能力が、求められます。そこで、下記の表にもある プロジェクトベースド(問題解決型)とサブジェクトベースド(科目進行型)との違いを踏まえ、必要な学習について説明します。
知識、技能を得るためのサブジェクトベースドラーニング(Eラーニングなど教材学習)
サブジェクトベースドラーニングは、講師などから考え方の指導を受けながら、テストで学習の理解度の把握を行います。このようなドリルやテキストで学ぶ学習は正解が日々変化する現代のビジネス環境では、「正解・解答のある課題に取り組み知識、技能を得る」という学習スタイルでは対応できません。
現在の企業内研修や階層研修は旧来型の教育法である科目進行型学習(サブジェクトベースドラーニング)といっていいでしょう。人材像があり、各階層に必要な能力項目に沿って集合研修(授業)が進められます。一般的な知識を学習した後、戦略財務やマネジメントなどを学び、実践(課題)へと進むのが特徴です。
そのため、ビジネスが安定して成果を出す人材像が明確で継続的に成長している状況だからこそ有効な学習です。現代の不安定な社会情勢、経済状況を見ても将来が不透明な今の時代では、急速に変化していく時代への対応力が必要となります。
学ぶ環境を自ら作り出すプロジェクトベースドラーニング(実際の課題解決活動)の必要性
それに対し プロジェクトベースドラーニング は参加型の学習方法で、事例を基に目的・状況を設定して学習者中心の考え方で答えを導き出します。テキストを用いず、問題解決・知識の分析・統合、知識の想像・評価という過程で学びます。常に学習過程に積極的に参加し、学ぶ環境を自ら作り出すという自主的な方法です。
つまり、企業内の問題課題の中から自ら問題を発見し、それを解決する「課題解決型学習」が必要であり効果的となります。 売上減少時における問題解決、チーム・組織力が低下した時のコミュニケーション問題、離職問題やパワハラセクハラ、デジタルスキルの格差問題、ミスが多発した時の予防策、トラブルやシステム障害の対応といった、今、そこにある自社の問題が研修のテーマになります。
ビジネスを拡大していくためには、同じ考え方で多くのスキルを持ち合わせた人材を教育することが求められます。しかし、現在のビジネスにおいては社会構造の変化により、問題を解決するためスキルや技術も劇的に変化しています。正解を出すことのできる人材ではなく、課題形成に必要な知識やスキルを持っている人材を集めて、解決行動の実践をするなかで学ぶことのできる「実践型の人材」が必要です。つまり、「解決しながら学ぶ」というアプローチが重要になっているということです。一方で、基礎や教養、会社の理念共通言語などこれまで通り組織を維持していくためには「科目進行型学習」が必要です。
経験学習プロジェクトベースドラーニングの学習ポイント
プロジェクトベースドラーニング(問題解決型)の学習形態は複数の人間が参加する形態が多いです。学習と実践が同時に行われるため、サブジェクトベースドラーニン(科目進行型)の学習よりも習熟度や理解度が高くなります。ここでは、 プロジェクトベースドラーニング( の学習ポイントを解説していきます。
プロジェクトベースドラーニングを実際に存在する企業の問題を設定する
プロジェクトベースドラーニングは、課題がない場合は学習が成り立ちません。つまり、課題を設定する必要があります。社内で実際には展開する場合は、今現在に組織や事業に実際には存在する課題や問題を取り上げることが一番効果的です。理由はいくつかあります。自社の事であるは自分ゴトがしやすく動機につながりやすく、課題や問題に関して歴史的経緯や状況の文脈も理解できています。ちょっとズルい言い方になりますが、プロジェクトベースドラーニング(が研修の枠内で実施すれば、副次的に事業にインパクトのある業績や成果を産み出すことができれば、学習と業績を獲得できます。もし、研修としての成果や結果だけであれば、問題にはなりません。又、情報集から課題形成、学習、解決策など一連の問題解決を実施するわけですから、いくら自主的な学習とは言え、ロジカルシンキングやクリティカルシンキング、ラテラルシンキング、ディスカッションなど、基礎的な問題解決の思考やコミュニケーションスキルはメソッドとして学習できるように環境を整えましょう。
プロジェクトベースドラーニングは学ぶ過程が重要
プロジェクトベースドラーニング は、課題の解決にたどり着く過程が重要です。課題に取り組む過程で問題を見つけ出し、把握、調査、計画、立案を行います。様々なアプローチ方法で自ら探し学習し正解のない問題解決へと到達する必要があります。この過程で、問題解決に必要なあらゆる可能性を主体的に探り、取得し、考え、実践するため、知識学習と経験学習が並行的に行われます。すなわち自主的かつ協働的に問題を発見し、解決する力を自ら探し身につけることが可能です。
また、その際に「活用した知識」や「問題に適用した能力」、「具体的な解決方法」などをメタで振り返りをする機会を創ることで、経験を一般化することができます。これにより再現性の高い知識や能力を獲得することが可能になります。
課題を通して、学習したことやプロジェクトの進行を振り返り、得た知識の活用法、また課題内容の再検討といった試行錯誤を繰り返す過程も重要です。問題解決への過程において、コミュニケーション能力の向上、自主性、積極性など、さらにビジネスへの関心を身につけることができます。これらの過程で身についたスキルが組織に及ぼす影響は大きく、組織改善・業績向上といった効果が期待できます。
研修転移企業においてプロジェクトベースドラーニングを活用する方法
プロジェクトベースドラーニングを企業内で活用する上で、学習に参加する意欲の動機付けが重要となります。「なぜ学ぶのか」という動機付けができなければ積極的に学習参加することができずに、意味のない研修となってしまう場合が多くあります。 その際に、必要となる要素として動機付けの仕掛けと快適な環境を念頭に置く必要があります。具体的には「受講者がコミットする問題設定」「焦点を絞り白熱させる仕掛け」「視点を変える仕掛け」などです。研修を受けなければならないという受動的で義務感を感じるような研修では無意味です。研修を受けることで自主的、能動的でモチベーションが生まれる環境を作ることが重要です。
快適な環境は「受講者と事務局、ファシリテーターとの良好な環境(場)」「多様な知識やフレームワークが自由に適宜取得できる環境」「物理的に快適な研修環境」です。タイミングを見て、事務局は、適宜アンケートやヒアリングを参加者に向けて行います。個々の受講者のプロジェクトの進捗成果、没入度、個々の関係性など、日々の状況に合わせて学習環境を変える必要があり、学習プランも受講者の立場や状況に合わせたアジャイルな組み立て方が必要になります。 そのためには業務で自己学習を行い、問題を解決する時間が必要です。
PBLの学習を会社負担、自己負担で行うかは雇用形態にもよります。しかし、既存の詰め込み型の研修の効果は30年以上明確な答えが出ていないという現状ですが、プロジェクトベースドラーニング(は将来を見据えた理想的な学習方法であり、企業成長に必要不可欠な人材育成の投資となります。
まとめ
劇的な変化を遂げる現在の環境に対応できる人材育成は重要な経営戦略であり、従来の人材トレーニングから一歩前進した学びが今の時代には必要です。仕事への関心、モチベーションを上げることだけではなく、正解がない問題を解決するスキルが身につくこの学習方法は今後のビジネスシーンに必要不可欠な人材を育成することが期待できます。
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プロジェクトベースドラーニングの必要性についてよくある質問
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株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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