自律型組織の必要性は?メリットやデメリットと実現する方法!

近年、注目を集めている「自律型組織」は、従来の企業に多くみられるトップダウン型の組織とは異なる新しい組織の形態で、マネジメントに頼らない組織として注目を集めています。
本記事では、自律型組織について長所と短所を踏まえながら詳しく解説します。これからの組織のあり方について考えていきましょう。

マネジメントに頼らない自律型組織とは

マネジメントの力に頼らずに自ずと正しく機能する組織のことです。

従来、多くの企業は階層型の組織形態を形成し、トップの指示や許可を受けつつ現場の社員が実働するシステムでした。しかし、自律型組織には、このような組織上の上下関係はありません。一人ひとりの社員に意思決定の裁量が分散され、自らの考えのもとで行動を決定していくのです。

言ってしまえば自律型組織におけるマネジメント層は、細かな指示を出さずに部下を自由放任します。あえて放任することで、部下は自分自身の行う仕事に対して責任を負うことになり、より主体的に仕事にコミットするようになるのです。加えて、意思決定の際に社内答申をする必要がないのでスピード感を持って業務に取り組める点も、自立型組織の長所です。

ただし、現場に裁量を預けることで、組織の意図に反した社員が出てくるというリスクもあり得ます。そこで自律型組織では、社員一人ひとりにビジョンを浸透させ、組織の目指す方向に向けて動いてもらえるようにコミュニケーションをとることが大切になります。

自律型組織の種類

自律型組織を細分化すると4つの組織形態があります。自律型組織を運営したい場合は、以下の4つの中から組織に最適な形態を選ぶと効果的でしょう。ここでは、各形態について解説します。

アジャイル型組織

    アジャイル型組織とは、小さな単位で実行と見直しをループさせながら、アウトプットの質を高めていく組織形態です。裁量を社員それぞれに分散することで、意思決定の際に上層部の承認を待つことなくスピード感を持って業務を進めることができます。素早く課題を解決したい場合に最適な形態です。

ティール組織

ティール組織は、組織をひとつの自然界のエコシステムのように 、各セクションの従業員や経営層、また株主などでその組織を形成しています。ティール組織には
組織上の役職は存在せず、指示や命令というものもありません組織全体が信頼しあい、従業員それぞれが企業のビジョンに従って行動することで、適切な運営を目指します。
上層部への答申や形式的な会議を繰り返さずとも意思決定ができるので、業務効率の高い組織形態であると言えるでしょう。また、柔軟なアイデアを出しやすく、現場から改革が生まれることを期待できる組織形態であるとも言えます。

ホラクラシー組織

ホラクラシー組織とは、ティール組織の一部として存在する組織形態です。組織全体が信頼関係で結ばれて、フラットな状態で業務を進めます。特徴的なのは、プロジェクト単位でメンバーを定めることです。そしてプロジェクトが完了したらメンバーを入れ替え、新たなプロジェクトメンバーを選定します各プロジェクトに最適なスキルを持ったメンバーを集められるので、業務を効率的に行うことができる組織形態です。

DAO

DAOは、従来の組織とは根本的に大きく異なる組織形態でウェブ上でPJを推進する特徴を持っています 。Web3で期待される新しい組織形態として、昨今大きな注目を集めています。DAOは日本語に置き換えると「自律分散型組織」となります。ウェブ上でプロジェクトごとに組織を発足し、トークンを発行しながら独自のコミュニティを作り目的実現へと動きます。数あるDAOの中から自分で挙手して参加するので、自分の興味のある仕事に参加できるという点が、従業員サイドにとってのメリットです。副業をしている人も多い時代ですので、その気軽さも相まって今後ますます浸透していくでしょう。

自律型組織の必要性

現代は「VUCA」の時代が到来したと言われています。「VUCA」とは、
「A:Ambiguity(曖昧性):物事が常に揺らいでいる状況」
「C:Complexity(複雑性):企業のグローバル化で問題が複雑になり、解決策が明確ではない状態」
「U:Uncertainty(不確実性):雇用の多様化・キャリアの多様化による不安定」
「Volatility(変動性):テクノロジーの進化に伴う価値観の変化」
の頭文字をとった言葉です。つまり、外部環境がハイスピードで変化して、少し前まで正解だとされていたことが、もう正解ではなくなることが起こる時代となります。外部環境の変化に伴い、企業に求められるニーズや、企業がとるべき行動も日々変化します。企業が存続していくためには、変化を正確に捉えて対応していくこと、また意思決定を素早く行うことが重要になるのです。

従来のピラミッド型の階層組織では、一定以上の規模の意思決定をする際、社内承認を獲得するのが一般的でした。しかし現代では、会社としての意見が確定するのを待っているうちに状況が変わってしまい、下した意思決定が時代に遅れた無意味なものになってしまう可能性があります

自律型組織であれば、社会の状況を踏まえた意思決定を早急に下すことが可能です。組織の目指す方向を認識して、かつ裁量を持ち主体的に行動することができるので、スムーズな判断ができ時代の変化に対応が可能です。従業員に対して多くの決定権を与えるのは、従来の組織からすると難しいことに思えるかもしれません。しかし、これからの時代に判断速度が鈍ってしまっては、外部環境に対応することができません。だからこそ時代の変化に合わせ、スピード感を持った意思決定ができる「自律型組織」を目指す必要があるのです。

自律型組織の運用とメリット

自律型組織のメリットは、意思決定スピードの速さです。チームや個人でなにかを決める際に上司や経営層の確認を細かくとる必要がないため、階層型組織と比較すると圧倒的に速く案を実行に移すことができるでしょう。また自律型組織では、ある程度の裁量のもとで自ら責任を持ち、業務に取り掛かります。階層型組織では、指示や命令を受けて仕方なく動くというケースも多く見られました。しかし、自律型組織では誰かに言われたから働くのではなく、自分の考えを実現するために行動します。従業員が主体的に考え、判断ができるようになり、新しいアイデアも生まれやすくなるでしょう。企業としても、熱量の高い従業員が増えることで、社内全体のモチベーション向上や利益の向上に期待することができます。

ただ、現場に権限を移行していくと、組織としてはどうしても統制がとりにくくなってしまいます。現場に権限を移譲したことが理由で、組織になんらかのトラブルが起こる可能性も十分にありえます。自己組織化と口で言うのは簡単ですが、どうやって組織の質を管理するのかについては、やはり課題が残るのです。とはいえ、ルールで全体を統制するような既存の組織を続けても、現状の課題は解決できないでしょう。また、経営者が社内に起こることを詳細に理解する知識や時間を持つことは難しいでしょう。だからこそ、権限移譲のリスクと葛藤しながらも、自律的な組織という新しいポリシーを掲げていくことが重要になるのです。

自律型人財や自律型組織の必要性は、数十年前から問われてきました。しかし、実際に自律型組織を運営するとなると相当の難しさがあるということを理解しておきましょう。

自律型組織のデメリット そもそも実現できるのか?

「自律型組織が重要である。」ということに対して、民主主義を行きわたった国々の方々は、異を唱える人はいないでしょう。自律型組織という言説の中で、組織の中でいる個人は、究極的に自立できるか?という問いなのだと思います。組織の中にいる限りは、個人は、その組織と共有する部分や個人と組織と利害がある中で、究極的な自立ができず、時間的な経過や関係の変化から、知らず知らずのうちに依存関係になっていきます。個人間や個人と組織に依存関係は、組織内に必ず既得権益をうみます。例えば、「人事権」などです。しかしこれは、自然原則でないでしょうか?つまり、放っておいても組織が拡大成長し継続性を維持する中で、依存と権限の関係は、組織につく「澱(おり)」や「ホコリ」のようなもので、安心安定をうみつつ、モノや変化・活力はなくなるため、営利集団としての企業としては、これを是正するための自律型という標榜なのだと思います。

自律型組織を実現する方法

では、実際に組織を自律型組織に変えていきたいと決めた場合、どのような施策を取り入れるといいのでしょうか。自律型組織を実現するために必要となる主なポイントを3つ紹介します。

ビジョンの浸透

ビジョンの浸透が大切です。ビジョンを把握することで、現場のメンバーだけで意思決定をしても、組織の方向性が大きくずれることを防ぐことができます。ただし、単純に周知するだけでは、従業員の共感を得られないかもしれません。企業がそのビジョンを目指す理由、ビジョンの先に期待している世界など、思いを込めたメッセージを発信するように工夫しましょう。従業員の心に響くメッセージをつくるには、ストーリーテリングの手法が効果的です。ストーリーに仕立ててプレゼンテーションをすることで、さまざまな立場や感性を持つ従業員に想いを周知・浸透できるでしょう。
命令や指示がない環境で、組織の目指す方向に業務を推進してもらうためには、会社のビジョンや方向性を、社員全員にしっかりと把握してもらうこと

価値観を共有するコミュニケーションの仕組み

自律型組織でもっとも大切なのは、行動指針や共通の価値観をもって働くことです。仮に離れた場所にいても、メンバー同士の関係性が希薄であっても、全メンバーが同じ価値観で組織に関わり続けることが必要なのです。つまり、必ずしもメンバーが相互に信頼し合っている必要もありません。「弊社の社員であれば、こういう意思決定をするだろう」「弊社の社員は、こういうスタンス・価値観である」という同じ認識を持っていることだけで、ルールや制度に依存しない組織づくりができます。

目標の共有

自律型組織では、命令や指示がない分、強制力のある仕事もありません。だからこそ各々が高いモチベーションを持たないと、組織としての動きが停滞してしまいます。階層型組織よりも、現場のモチベーションが組織に大きな影響を与える組織形態です。
社員が自分自身でモチベーション管理するためには、目標を持つことが大切です。課題がなければ、何を努力すればいいかわからず、漠然と業務に取り組んでしまいます。まずは社員同士で課題意識を共有し、その解決のために動くというスタンスを持ちましょう。なお課題解決に取り組む際は「あと少しで解決できるかも」というレベルにまで課題を細分化することが大切です。達成が近くに感じられると人間はフロー状態になることができるので、モチベーションにつながります。そして課題は、刻々と変わる性質のものなので、常にアップデートしていきましょう。

自律型組織を実現するためにはコミュニケーションが重要

ビジョンやバリューを浸透させること、個人の課題を設定することが、自律型組織を実現するために重要なポイントであると述べました。これらのポイントを実現するために何よりも重要なのは、組織内のコミュニケーションです。

バリューやビジョン、そして日々の業務は、不確実性の高い現代において、常に変化にさらされています。そんな中で毎回正しいバリューやビジョンを見つけそれに従って動くというのは、とても苦労することです。

そこでメンバー同士が密にコミュニケーションを取り合い、正しい意思決定を下せるようにサポートし合う必要があります。自律型組織を実現するということは、コミュニケーションにコストをかけることでもあるため、コミュニケーションの活発化を後押ししましょう。そのためには、コミュニケーションを行う場づくりが必要です。場の提供によって社員が情報発信、相互交流し、社員がお互いを知るきっかけが生まれます。まずはコミュニケーションの機会を増やすことで、社員間の相互理解が進み、「失敗を許す風土」を作っていきましょう。さらに業務以外のつながりを持てるようにすることも必要です。部活動や勉強会、TGIFなど、組織内で業務とは別の人間関係を構築できる場があると、仕事上の上下関係や部署や部門といった枠を超えたコミュニケーションを促す効果が期待できます

まとめ

自律型組織は、従業員それぞれが企業のビジョンやバリューに向かって自主的に動く組織です。変化の激しいこの時代にふさわしい、スピード感のある業務推進が実現できます。

また、自律型組織を実現するためにはコミュニケーションが課題となります。仕事上の上下関係や部署や部門といった枠を超えたコミュニケーションを促す方法を取り入れていきましょう。

よくある質問
  • 自律型組織とは何ですか?
  • 現場の社員が事業の現状について問題意識を持ち、自分事として考え、発信・行動し、経営への提案・提言を行えるような組織が現代に求められている自律型組織です。市場の成熟に伴い、既存事業を保ちつつも、新しいサービスを生み出すことを両立させなければならない状況です。これまでのように計画の実行に強みを持った組織運営方法では、求める成果をあげていくことは困難になりつつある中、自律型組織が注目を集めいています。

  • 自律型組織を実現する方法は何ですか?
  • 1.ビジョンの浸透
    2.価値観を共有するコミュニケーションの仕組み
    3.目標の共有

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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