2023.03.13
職場の人間関係の悪化を招く原因と起こり得る問題とは?改善する方法も解説
目次
職場における人間関係は、仕事の成果に影響するものです。関係性が悪化すると、社員のモチベーションの低下、精神的なストレスや疲労などにより生産性が低下することが懸念されます。ここからは、職場で人間関係の悪化が起きる要因と悪化した人間関係が組織にどのような影響を及ぼすのか解説します。さらに、人間関係が悪化した場合の改善方法も紹介するので参考にしてみてください。
職場の人間関係に悩む人はどのくらいいるのか?
職場の人間関係に悩みを抱えている人はどのくらいいるのでしょうか。日本労働調査組合が行った調査によると、職場での人間関係に疲れ・悩み・ストレスを感じている人は、全体の29.2%にのぼることがわかっています(2021年7月実施のアンケート)。さらに同調査では、職場の人間関係に悩んだ結果、退職を検討した経験がある人の割合は、全体の約6割であることが明らかになりました。
社員が職場の人間関係に悩むことは、モチベーションの低下、精神的なストレスにつながり退職を検討する要因になります。社員が働きやすい組織づくりや離職率を下げるためには、職場で良好な人間関係を築くことが重要です。
職場の人間関係の悩みやストレスが心身に及ぼす影響・症状
職場での人間関係は、その会社に勤めている限りほとんど毎日続いていきます。人間関係がうまくいかないと慢性的にストレスが溜まり、心身に影響を及ぼしてしまうでしょう。ここでは、人間関係に悩みやストレスを抱えた場合に考えられる影響や症状について解説します。
精神的影響
まず考えられるのは、精神的な影響です。人間関係に悩みを感じているのに毎日同じ人と関わり続けなくてはならないことは、大きなストレスにつながります。場合によっては、強い恐怖感や焦燥感を感じるケースもあるでしょう。日頃からストレスを感じていれば、次第に職場に行くのが嫌になり、職場に対する貢献意欲や、モチベーションの維持が難しくなります。悩みを抱えたまま無理をしてしまうと、うつ病や適応障害に陥る可能性もあります。
肉体的影響
人間関係のストレスが原因で肉体的な症状が出現するケースもあるでしょう。例えば、動悸が激しくなる、頭痛や腹痛、めまいがするなどの症状が考えられます。
また、具体的な症状として現れなくても、慢性的な倦怠感を感じたり、疲れがなかなかとれなかったりという身体の変化を感じることもあります。ストレスを感じる職場に勤務することで、体調面にも悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
行動的影響
精神的・肉体的な影響が起因して、行動にも影響が出ることがあります。集中力の低下や、思考がうまく働かない結果、仕事上のミスが頻繁に起きることが考えられます。また、遅刻や早退、欠勤が増えることもあるでしょう。さらに、急に身だしなみに気をつかわなくなったり、周りの人とのコミュニケーションを遮断したりという変化が生じる可能性もあります。いずれにしても、目に見えて変化がわかるものなので、周囲が変化に気づき対策を取ることが大切です。
職場の人間関係が悪化するほとんど原因はコミュニケーションエラーによるもの
職場の人間関係の悩みは精神的なものだけでなく、肉体的、行動にまで悪影響を及ぼします。そのような事態を未然に防ぐために、まずは人間関係が悪化する原因について理解を深めましょう。改善方法として挙げられるのは「コミュニケーションエラー」を防ぐことです。
コミュニケーションエラーとは?
コミュニケーションエラーとは、コミュニケーションがうまく機能していないことを意味します。
例えば、上司が部下に対して資料作成を依頼したのに、なかなか完成しない状況があったとします。そこで上司が部下に進捗を確認すると、「わからない点があったため滞っていた」と答えました。このとき上司は「なぜ早く相談しなかったんだ」と、相談に来なかったことを叱るでしょう。しかし、部下は自力で解決しようと努めていたのであれば、叱られるのは不本意に思うかもしれません。そもそも上司が「根本的な知識を最初に教えてくれればよかったのに」と考えに擦れ違いが起きてしまうこともあります。
もし、仕事を依頼する段階できちんとコミュニケーションが取れていれば、このようなトラブルを回避できたでしょう。互いがどのような姿勢で仕事に取り組むべきかを、擦り合わせてから業務を始めればよかったのです。しかし、コミュニケーションエラーが生じると、上記のようなトラブルが発生し、その結果、人間関係が悪化する可能性があります。一度トラブルがあるとその人とコミュニケーションが取りづらくなり、関係の悪化に拍車がかかっていきます。
コミュニケーションエラーが起きる要因
コミュニケーションエラーを防ぐために着目したいのが「可視化できない要素」です。
業務を形成するために必要なプロセスには、業務ステップやタイムスケジュール、タスクの割り振りなどの可視化できる要素と、モチベーションやコミュニケーション、職場の雰囲気や人間関係といった、可視化できない要素があります。可視化できる要素は、多くの業務現場でケアされています。しかし、可視化できない要素は把握や改善が難しいためケアが後回しにされがちです。
そもそも職場とは、功利に基づいた契約的な関係と精神的関係性に基づいた人間的関係のバランスの上に成り立っており、その調整は組織全体の建前のようなコミュケーションではなく、嘘偽りのない、詭弁やごまかしのないコミュニケーションです。
組織のコミュニケーションは、多くの情報を多くの社員に届ける必要があるため、抽象的かつ演出的な形式をとります。そうしなければ、全員の顔と名前が一致するような小さな組織でない限りは、情報を伝達することが困難であるためです。組織と個人は、物理的に距離があるため、職場と比較して割り切った関係性のコミュニケーションを取ります。
一方で職場の場合、コミュニケーションをその場ですぐに取ることができます。そのため職場内のコミュニケーションは、具体的かつありのままで、時間的に空間的にも同期化されています。
しかし、リモートワークの導入などによって労働環境が大きく変化している現代の職場では、従来は考える事のなかったコミュニケーションに関する問題が生じています。職場は組織内における小さな組織です。そのため、職場の問題は、最終的に組織の問題へとつながっていきます。特に、現代の多くの職場では、さまざまな業務をメンバーが入れ替わりで行うようになり、新しいプロジェクトが発生するたびに人間関係が新たに構築される傾向が強くなっています。だからこそ、可視化できない要素についても重要視する必要が生まれています。
職場の人間関係が悪化することで起こる問題
コミュニケーションエラーの回避は、円滑な業務運営のために欠かせない要素です。社員が不必要なストレスを感じない職場を目指すためには、目に見えるものだけでなく、目に見えない人間関係や雰囲気についてもケアすることが求められます。
現代の職場は、人間関係が悪化しない方が不思議なくらい、難しい環境におかれています。上記でも解説しましたが、組織のコミュニケーションは、多くの情報を多くの社員に届ける必要があるため、時間的にも空間的にも分離された環境で、抽象的かつ演出的なスタイルをとることになります。一方で職場でのコミュニケーションは、具体的かつありのままのスタイルで、時間的も空間的にも同期された環境の中で行われます。つまり、組織のコミュニケーションと、職場のコミュニケーションは、そもそも大きく違ったスタイルになっているのです。
組織が大きくなればなるほど、スタイルの違いは顕著になります。2つのスタイルに優劣の差はありませんが、双方のバランスを調整する必要があります。バランスが悪くなれば、まず職場に問題が起こり、それが最終的に組織の問題へとつながるでしょう。
特に現代の職場は、社会課題やSDGsなどの複雑で曖昧な課題が多くあり、仕事の目標や意味付けが不明確になりがちです。さらに職場の人間や働き方も多様化していて、自分の役割を把握することも困難になっています。このような難しい環境の中で、GDPの約7割はサービス業であり、人材自体が付加価値になるビジネスが増えているのも事実です。そのため、職場のコミュニケーションや人間関係に、より注力してアプローチする必要があるのです。
職場の人間関係は自分でつくっている?
職場の人間関係が悪くなってしまった場合、その職場について「なぜこんな職場なのだ」と不平不満を感じる人も多いかもしれません。しかし、そもそも職場の人間関係は、いったい誰が形成しているのでしょうか。
ここでは、スペインの哲学者であるホセ・オルテガ・イ・ガセットの考え方を参考にします。彼は、人の存在について「人間とは、人とその周囲の環境である」と定義しています。つまり、人間が環境をつくり、その環境に、人間はまた影響されます。人間と環境はどこまでも不可分な関係であり、両者を独立したものとして考えるのは無理があるのです。
職場の人間関係に不満がある場合も、その悪い雰囲気を形成しているのは、職場を構成する一人ひとりであると考えることができます。だからこそ、不満があれば、それを改善するために自らがアクションを取るべきかもしれません。自身が人間関係を改善するきっかけになれるかどうか、検討してみることも大切です。
職場の人間関係を改善する方法
ここからは職場の人間関係を改善する方法について解説します。そもそも、上記で触れた職場の人間関係や雰囲気は、目に見えないものであり、アプローチするのが難しいものです。そのため、可能であれば組織を作る初期段階から「職場の設計」にこだわっておくことがおすすめです。職場の設計が悪いと、どんなに優秀な人たちで構成されたチームであっても、目的を達成できない、成果が上がらない場合があります。
また、人間関係が悪化する要因にもなりかねません。すでに組織の人間関係が悪化してしまった場合は、人事改革に着手するのも手段のひとつです。特にリーダーは職場にとって大きな存在であり、雰囲気やチームカラーにも影響を与えます。職場のリーダーが変わることで、組織が良い方向に向いた事例は多くあり、リーダーをはじめ、構成員を変更することは、組織の業績向上につながる可能性があります。また、リーダーは、下記の要素に注意しながら組織に改革を起こしていかなければなりません。
共通言語を作る
同じ組織にいても、一人ひとりは違う人間です。価値観の違いや、考え方のズレがあるのは当然のことです。価値観が違うことで理解の擦れ違いが起こることもあり、擦れ違いが慢性化すれば、互いに滞りを持った関係性へと発展しかねません。
異なる価値観の人同士が円滑に意思疎通をするためには、組織内に共通言語を設けることが効果的です。共通言語を持っておくと、コミュニケーションの際にあれこれ相手の意図や反応について考える必要がなくなり、心理的なハードルも下がるでしょう。結果、効率的に気持ちや情報を伝え合える関係になれます。
業務以外のつながりの場を作る
業務上の人間関係が行き詰まった場合は、雰囲気を変えて業務以外のつながりを深めるのもいいでしょう。勉強会や社内レクリエーションなど、業務とは離れた場所でコミュニケーションが取れる場を設けましょう。業務から離れた環境であれば、仕事上の上下関係や立場を忘れてコミュニケーションを取ることが可能になるかもしれません。一度フラットなつながりを作ることができれば、業務に戻っても心置きなくコミュニケーションが取れる関係になるきっかけになります。
コミュニケーションツールを取り入れる
人間関係を構築し直したい場合には、コミュニケーションの頻度を上げることも大切です。気軽に意思疎通できる環境があれば、気持ちの擦れ違いが減り、信頼関係を構築しやすくなるでしょう。コミュニケーションにおける心理的なハードルを下げるためには、コミュニケーションツールを活用しましょう。例えば、ビジネスチャットや社内SNSなどがおすすめです。メールや電話とは違い、些細なことでも意思疎通できるようになり、コミュニケーションの頻度が自然にアップします。
コミュニケーションスキルを向上させる
職場の人間関係の悪化を防ぐためには、コミュニケーションスキルを向上させることも重要です。以下のようなスキルを身につけると、スムーズに人間関係を構築できるでしょう。
- ファシリテーション
- 対話
- ディスカッション
- ディベート
「ファシリテーション」はプロジェクトメンバーの支援や社内外の関係者との調整・折衝を行う役割を果たします。「対話」はお互いの立場や意見の違いを理解し、そのズレを擦り合わせる際に重要なスキルです。「ディスカッション」のスキルを高めると、対立せずに意見を出し合うことで、納得できる結論を見いだすことができます。「ディベート」では、特定のテーマについて論理的に意見交換することで、相手にわかりやすく物事を伝えるスキルを身に着けることができます。
このようなスキルを身に着けることでコミュニケーションが円滑に進み、仕事の成果も高まるでしょう。
まとめ
職場の人間関係は、企業の業績を左右するほどの重要なものです。組織のリーダーは、良好な人間関係を作ることに意識的に取り組むことで、組織力を高めていきましょう。職場の人間関係を良くするためには、共通言語を作る、業務以外でつながりの場を作ることが効果的です。また、コミュニケーションツールを取り入れるなどして、社員同士の相互理解を深めていきましょう。
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よくある質問
- 職場の人間関係悪化の原因は何ですか?
職場の人間関係が悪化するほとんど原因はコミュニケーションエラーによるもの
互いがどのような姿勢で仕事に取り組むべきかを、擦り合わせてから業務を始めればよい。
- 職場の人間関係を改善する方法はありますか?
共通言語を作る
業務以外のつながりの場を作る
コミュニケーションツールを取り入れる
コミュニケーションスキルを向上させる
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
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