2024.10.07
職場コミュニケーションを活性化させるには?改善方法や事例をご紹介
目次
「職場コミュニケーション」とは、職場での社員同士のコミュニケーションを示す言葉です。コミュニケーションはスムーズな業務進行にも関わる重要なものであり、「業務や執務を遂行するという合理性の側面」と「従業同士の人間関係や社会的空間という側面」をつなぐ役割を担います。
本記事では、職場コミュニケーションについて詳しく解説します。また、職場コミュニケーションを活性化する方法についても紹介するので参考にしてみてください。
職場の意味と定義
職場の意味や定義はどのようなものなのでしょうか。ここでは、職場の意味と定義について詳しく解説します。
職場の意味と定義
数多くある組織と呼ばれる集団の中でも、常に顔を合わせて直接的なコミュニケーションを取れる少人数の集団が職場です。職場は業務遂行や目的達成という合理的側面と情愛や関係線という精神的側面が両方併存している場です。現在の職場のような物理的資本より人的資本が生産性やイノベーションのカギを握る産業構造の場合において、組織の人的資本のパフォーマンスを向上するには、職場における機能や合理的側面と情愛や精神的側面の均衡が重要です。均衡を調整するのはコミュケーションであり、職場で必要なコミュケーションスキルを身に付けることが良い職場の形成につながります。
そのため、均衡を取る為のコミュケーションは、個々人の属人的な考え方やコミュケーションスキルに頼る部分が非常に大きく、特に職場のリーダー(最小単位の長)のコミュケーションが、強く影響します。この均衡とうまく付き合うためには、大まかに言えば、経営陣や会社と従業員とのコミュニケーションを通じて精神的な関係性や深めることが必要です。
組織と職場のコミュニケーションの違い
「組織」と「従業員」とのコミュニケーションと「職場」内での「従業員」のコミュニケーションは、厳密には異なります。明確に違うのは、そのスタイルです。「組織」と「従業員」のコミュニケーションは、全員の顔と名前が一致するような小さな組織でない限りは、社員は経営陣と直接的に関係性を構築することや組織全体状況を理解することも困難です。従って、情報を多くの社員に届ける必要があり、抽象度が高く演出的なコミュニケーションになる傾向にあります。一方、「職場」内における「従業員」のコミュニケーションは、頻度も多く直接的な方法が取られます。
ドイツの社会科学者のフェルディナント・テンニースは、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトという2つの概念で、家族、集団、組織もしくは国家も含めてあらゆる人の集まりを類型化しています。ゲマインシャフトは、血縁、家族や地域集まり、村落、社内サークル、創業期のベンチャーなどの情愛や精神的意思でつながる集団や組織です。ゲゼルシャフトは、都市国家機関や政党機関、大企業などの目的機能や合理的意思でつながる集団や組織です。平たく言えば、ゲマインシャフトは構成員の精神的意思で集まる集団であり、ゲゼルシャフトは合理的意思で集まる集団です。
「職場」内での「従業員間」コミュニケーションは、直接顔を合わせて会話ができる環境を考えると、頻度も多く直接的で従業員同士の人となりが色濃く反映されます。つまり、職場は形態自体が、ゲマインシャフト(精神的情愛的)に近く、従業員同士は否応なく精神的な繋がりが求められるようになります。職場と個人の距離を空けることは、組織のように整理できない要素を多く含んでおり、職場の独特な問題の要因と言えます。ゲゼルシャフトとゲマインシャフトの双方の側面を持つ職場でのミュケーションは、自職場の一人ひとりの属人的な価値観や考え方に影響を大きく受けます。
「この人と仕事している」「○○さんがいるからこの会社にいる」と発言する事は多いのではないでしょうか? 「何をしているか?」よりも「誰とやっているか?」が重要な側面はないでしょうか?
エンゲージメント調査や従業員満足度調査やコミュニケーションプラットフォームのログではなかなか見えてこない実質的にエンゲージメントを産み出しているのは職場です。社員と社員の関係性や職場のリーダーとの関係性のような個別でユニークな内容が各職場に存在します。職場に発生する日々の問題を、適宜解決している中で、エンゲージメントが育まれる場合もあり、崩壊する場合もあります。つまり、社員とのエンゲージメントを産み出すラストワンマイルは職場に存在し、ラストワンマイルは最小単位である職場内のエンゲージメントに他なりません。それは、ビジネスモデルや業績と言った理屈では収まらない個別に人情溢れる関係性です。職場や会社に対するネガティブな声や全体最適と部分最適のジレンマを吸収する役割を職場が担っているということも実態です。職場は社員にとってラストワンマイルでありながらセーフティネットでもあります。
職場コミュニケーションについて
職場コミュニケーションとは、言葉通り「職場にいるメンバー同士のコミュニケーション」のことです。職場コミュニケーションの活性化には、従業員が働きやすい環境を形成することや、社員のエンゲージメントを高める効果が期待できます。ここでは、職場コミュニケーションが注目されている背景や重要性について解説していきます。
職場コミュニケーションが注目されるようになった背景
HR総研が実施した「社内コミュニケーションに関するアンケート2022」によると、「社内コミュニケーション不足は業務の障害」と思う人は9割以上、「自社の社内コミュニケーションに課題あり」と考えている人は7割以上にのぼりました。
職場コミュニケーションがうまくいっていないと業務に支障をきたすことがわかっていながらも、実際多くの組織が課題を抱えています。このアンケートからも、いかに職場コミュニケーションが問題視されており、業務実績にも関わる重要なものであることがわかります。だからこそ、多くの組織で職場コミュニケーションへの関心が高まっているのです。職場コミュニケーションがうまくいっていない場合、人間的な感情面や精神面に要因が内在化されていると認識する必要があります。
職場コミュニケーションの重要性
職場コミュニケーションは業務実績の向上を目指すために重要な役割を果たします。活発な職場コミュニケーションが組織に与えるメリットを見ていきましょう。
職場コミュニケーションが活発な場合、従業員はストレスを感じにくく、一体感をもって働くことができます。働きやすさを感じ、組織に対する帰属意識が生まれるでしょう。また、一体感のある職場では、業務上の情報共有がスムーズに行われます。
コミュニケーションが取れていない職場では、わからないことがでてきた際にスムーズに課題を解決できず、業務に遅れが生じる可能性があります。職場コミュニケーションが取れている場合、上下関係を気にせず、アドバイスを求めることが可能です。また、事前に必要な情報が共有されていることによって、効率的な業務が可能になり、実績向上につながります。
離職する社員の心境と段階
コミュニケーションが上手くいかないケースが積み重なった結果、離職してしまう従業員も生じてしまうということは多くの人が認識しているでしょう。
しかしながら、その経緯を理解している人はあまり多くないかもしれません。離職者本人からすれば特段、離職するということは計画されてもいないし、キャリアプランに離職も織り込んでいたとしても、計画通りに進める人はいないでしょう。離職には予兆があり、原因があり、きっかけがあるのです。詳しく見ていきましょう。
離職は大半の社員が意識している
大前提として、企業に戦略やビジョン、文化に対して全社員が矛盾や問題意識なく、完全に満足するということ自体、不可能です。職場や集団上の人間関係は複雑であり、社員は今いる場所に対して、下記のような不満や不安を大なり小なり持っているものです。
- 労働条件が良くない
- 人間関係でストレスを感じている
- 会社の将来に対する不安がある
- 事前に聞いていた話と違った
- 帰属意識を持てない
- 昇給やキャリアアップが期待できない
- 十分な引き継ぎや育成体制がない
上記内容は、全社的に施策で簡単に解消できるのでしょうか?
大企業は賃上げ可能でも、中小企業は資本力がなく、実現できません。労働条件を良くするということはコストが上がるということです。コストの増大はビジネスモデルや事業の問題にまで波及してしまいます。さらに人間関係などは個別具体的なものであり、全社的に対処できるのできるものではありません。
この手の組織内における「矛盾」を低減する経営施策は重要でありながら、完全には無くすことはできません。つまり、常に社員が離職する可能性を孕んでいる状況にあるということになります。
離職の原因ときっかけ・アクシデント
離職の原因ときっかけには、明確なアクシデントや長期的な不満が影響します。年齢やライフイベント(結婚、介護、住宅ローン)などの変化がきっかけとなることもあるでしょう。また、辞令や異動などの組織的な変更も離職の引き金となる場合があります。
一方で、改善されない不満や長期間の不安が積もった結果、最終的には個人的なアクシデントや突然の出来事が離職の決定打となることもあります。これらの原因は企業側が全て把握するのは難しいため、信頼できる上司や同僚との密なコミュニケーションが鍵となります。
職場のリーダーは、タスクや仕事の管理だけでなく、見えない社員の心理状態を察知する能力が求められます。社員の些細な変化に気づき、何気ない声掛けや変化に対して機敏に反応することが重要です。これは、ゲマインシャフトを築くための基盤となります。
離職者はしばしば視野が狭くなり、未来の創造が難しい状況にありますが、現職の職場は依然として重要な拠点となっています。そのため、心理的な配慮やちょっとした気配りが欠かせません。1on1の面談を通じてしっかりとコミュニケーションを取り、コミュニケーション不足による離職を防ぐことが求められます。
離職者のサンクコスト
優秀な人材であれば、転職市場におけるスカウトだけでなく、個人的なネットワークからの誘いがあることも多いものです。こうした状況においては、離職候補者は他の選択肢を探し始めますが、現職よりも悪化する条件や状況を選ぶ人は少ないのが現実です。転職市場では、その人材の市場価値が算定され、適切なオファーが行われます。
しかし、転職先で現在の職場と全く同じ条件やパフォーマンスを期待することは現実的ではありません。実際には、元の職場と同じ状況を再現することは難しく、新しい環境において異なる状況や課題に直面する可能性が高いでしょう。このため、離職者はこれまでに積み上げてきたコストと、転職後にかかるであろうコストを天秤にかけて検討します。これは主に打算的な判断であり、市場価値が高い人材や若手のポテンシャルがある人材ほど、このサンクコストの影響が大きくなります。
サンクコストの概念は、1990年代のエンゲージメント調査や組織コミットメント、社員満足度の研究において取り上げられてきました。サンクコストは、現在の企業が改善すべき重要な要素ですが、マネジメントによる対応には限界があることも考慮しなければなりません。
離職者のエクスぺリエンス
離職者のエクスペリエンスは、一般的に、以下のような過程を辿ることがほとんどです。
1. 存在的な問題の表出化
組織の価値観と個人の価値観の不一致、キャリアの停滞、職場での人間関係の問題など、根本的な問題が表面化します。これらの問題が徐々に積み重なり、不満がたまってきます。
2. きっかけとなるアクシデント
上司との衝突、急な業務負担の増加など特定の出来事やトラブルが問題の認識を促し、離職を考えるきっかけとなります。これに対する企業側の対応やサポートが求められます。
3.対応が不十分な場合
企業側の対応が不十分であると、問題は解決されず、状況がさらに悪化します。これにより社員の不満が増大し、離職意向が強まります。
4.新たな職場の探索
離職を考える社員は、新たな職場やキャリアの機会を探し始めます。この過程で、自分に合った条件や職場環境を求めて情報収集や面接を行います。
5.離職の決定
上記の要素を経て、社員は最終的に離職を決定します。新たな職場への移行が進む一方、既存の職場に対する最終的な決断を下すことになります。
離職を検討している従業員が上記の現在どの位置にいるのか企業側が把握するのは不可能と言っても過言ではありません。しかしながら、1と2の段階でしっかりと対応ができていれば離職を防げることもあります。上で述べてきたように、密なコミュニケーションで日ごろから部下の状況を把握することが重要なのです。
職場のコミュニケーションが改善しない原因
昨今、職場コミュニケーションの難易度は、以前よりも増していると考えられます。要因のひとつは、ITの発達です。IT技術発達によってルーティンワークが自動化されるようになり、人間はより複雑で難易度の高い問題解決や意思決定、創造的な企画業務を担わざるを得ない状況になりました。その結果、専門性が高いメンバーや多様な背景を持つメンバーと協働して業務を行うケースが増えていることに伴い、コミュニケーションも高度化していることが考えられます。
また、新型コロナウイルスの影響で、テレワークが大きく普及しました。その結果、直接顔を合わせてコミュニケーションを取る機会が減ったことも、コミュニケーションの難易度を高めています。 このような環境の中で職場コミュニケーションを改善するためには、業務ステップやタイムスケジュール、タスクの割り振りなどの目に見える要素だけでなく、モチベーションやコミュニケーション、職場の雰囲気や社員同士の関係性といった、目に見えないものにも注目する必要があります。
特に、現代の多くの職場では、マルチタスクで業務をこなさなけらばならず、多様なメンバーと共に仕事をすることや、新しいプロジェクトが発生するたびに人間関係が新たに形成される傾向が強くなっています。だからこそ、目に見えない要素を重要視する必要性が生じてきているのです。
職場における見えるものと見えないもの
組織においては、業務を形成するために必要なプロセスを2つに分けて考えることができます。
1つ目は、業務プロセスやスケジュールの作成、誰がどの業務を担当するのかという役割分担など、目に見える要素です。
2つ目は、モチベーションやメンバー間のコミュニケーション、職場の雰囲気や人と人との関係性など、目に見えない要素です。
目に見える要素は把握しやすいので、意識的にケアがされていると思います。しかし、目に見えない要素については、どうしても後手に回りがちです。職場の雰囲気や従業員の関係性に問題があると、想定外のことが発生した場合の対応力が弱くなります。こうした目に見えない部分を支えているのがコミュニケーションです。
特に、現代の多くの職場では、業務が複雑化し、外部も含めたさまざまなメンバーが関わるようになっていることから、人間関係を新たに構築しなければいけない場面が増えています。そういった事からも職場内のコミュニケーションの重要性は従来以上に高くなっていると言えるでしょう。
お互いの立場や意見の違いを理解し、そのずれをすりあわせる際に有効なのが対話です。対話の場では、通常の会話とはちがい、自分の行動や発言の根源にある感情や考え方、価値観などについて掘り下げて語ります。それは、普段の生活では自分でもあまり意識することのないものを言語化し、相手の言葉と同じ地平に並べ、客観的に見てみること、つまり外在化することです。どちらが正しい、正しくないといった理論理屈で片付けようとすると角が立つような問題を取り扱うときや、あちらを立てればこちらが立たないというような利害関係の袋小路にはまってしまった際に、対話は効果的なコミュニケーション手法となります。
職場コミュニケーションを活性化させる方法
職場のコミュニケーションを改善するチャンスのひとつは異動などのタイミングになります。人の異動でコミュニケーションを改善できることもあるでしょう。また、職場コミュニケーションを活性化させるためには、リーダーの行動が重要になります。リーダーは積極的にコミュニケーションの場を作るように意識しましょう。
目に見えない要素の可視化には、アンケートの実施や、パルスチェックを行うことが有効な手段です。また、リーダーは積極的に職場をデザインし、自身が模範となる行動をしなければなりません。リーダーのコミュニケーションスキルが高ければ、各々が積極的に業務にあたることができ、明るく活発な雰囲気で満ちている組織を作れるでしょう。コミュニケーションスキルについては下記記事で紹介しているので、気になる方はぜひご覧ください。
まとめ
職場コミュニケーションは、業務実績にも関わる重要なものと認知されています。しかし、現状多くの企業がコミュニケーションに課題を抱えています。コミュニケーションが円滑に取れないことで、社員のモチベーションが下がり、業務上のやりとりがスムーズに行われなくなってしまう可能性が高くなります。コミュニケーションを活性化させることは、組織や従業員のパフォーマンスを向上させ、職場の雰囲気を高める効果が期待でき、従業員にとって働きやすい環境整備につながります。職場コミュニケーションの向上により、従業員エンゲージメントを高め、組織力の向上を目指しましょう。
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株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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