2023.04.20
コンサルタントによる伴走支援を利用するメリット【企業事例】~シリーズ「変革する人には伴走者が必要だ」④
目次
「プロジェクトを推進するために外部の伴走者からから支援を受ける」ということは、急速な事業環境変化への対応やこれまでに試したことのない取り組みの推進など、答えのない課題に直面した際に企業にとって一つの選択肢です。
この記事では、どのようなケースにおいてコンサルタントによる伴走支援が役立つのか、伴走支援を受けることでどのようなメリットがあるのか、実際に私たちが支援を行ったお客様の生の声や、エピソードを交えてご紹介します。
コンサルタントによる伴走支援が有効なケース
企業の直面している課題によって、伴走支援の効果を最大限に引き出せる場合とそうでない場合があります。
前回の記事「伴走支援は万能薬か? 伴走される人、伴走する人の条件とは」でもご紹介したとおり、伴走支援が適するケースは以下の4種類です。
- 何が問題なのかが明確でない場合
- 組織内では前例のない、まったく新しい取り組み
- 多様な組織や関係者に影響し、合意形成が困難な課題
- 既存の取り組みの統廃合などにかかわる、センシティブな課題
当社に伴走支援を依頼したお客様が当初どのような状況にあり、ソフィアの伴走支援を通じて状況がどのように変化したのか、お客様の声やエピソードからご紹介します。
何が問題なのかが明確でない場合
2019年、もともとお取引のあった三井不動産株式会社から、新規事業開発提案制度の活性化を支援してほしいとの依頼をいただきました。当初、同社が取り組みの効果指標として設定していたのは「提案制度への応募数」でしたが、なぜ応募が増えないのか、現状の問題は明確になっていない状態でした。その後、提案制度のご担当者とソフィアのコンサルタントが対話を重ねる中で、「そもそも、イノベーションマインドを持った社員が増えなければ、提案への応募も活性化しないのではないか?」という仮説が生まれました。
そこで、まずは制度の関係者を集めて「イノベーションマインドを持った社員とはどのような人か」を定義するためのワークショップを開催。そこで描いた社員像をもとに、必要な施策を提案していきました。
その後、新規事業提案ポータルサイトの立ち上げ、新規事業に関連するコンテンツの制作と発信、効果測定と改善などを継続的に支援し、ご担当者とともに組織のイノベーションマインド醸成に取り組んでいます。
組織内では前例のない、まったく新しい取り組み
2019年に大規模な事業構造改革を行った後、組織風土改革に着手した鳥居薬品株式会社。取り組みを担当した経営企画部では新しいビジョンの浸透や組織風土改革の経験がなく、何から手をつけたらよいのかわからない状況でした。そこで、多数の企業においてビジョン浸透や組織風土改革に向けたインターナルコミュニケーション施策を支援した経験と実績のある当社に声がかかりました。具体的な提供サービスや成果については下のリンクよりインタビュー記事をご覧ください。
多様な組織や関係者に影響し、合意形成が困難な課題
ある精密機器メーカーでは、業績の停滞に危機感を抱いた経営陣の中で、組織風土改革への機運が高まっていました。しかし経営陣が指揮を執って現状を変えようとすると、マネジャー層が現在行っているマネジメントや、その下で行われている一般社員の取り組みを否定することになってしまうため、関係性が崩れることを恐れてなかなか実行できずにいました。
そんなとき、たまたま経営陣の一人が現状をぼやいているのを聞いた一般社員が、別件で取引のあったソフィアのコンサルタントに相談。その社員は、第三者の視点としてソフィアの見解を盛り込んだ組織風土改革の提案書を作成して経営陣へ提案を行いました。そして、各方面からの批判を受けながらも最終的には社長承認が下り、実施が決定しました。
上層部の中では合意形成が困難だったことが、ソフィアという第三者を巻き込んだボトムアップの提案によって、会社を動かしたのです。これをきっかけに各部門長へのヒアリングや全社のコミュニケーション調査を実施し、その後、組織風土改革へ向けた継続的な支援につながりました。
既存の取り組みの統廃合などにかかわる、センシティブな課題
これまで継続してきた取り組みに対し、思い切ったテコ入れを行うのは難しいものです。とくに、社内に多数の利害関係者が存在する場合はなおさらです。そんなときは外部のコンサルタント新たな視点でプロジェクトに関わり、ご担当者に伴走することでスムーズに進む場合があります。
株式会社NTTデータの事例では、働き方変革に対する社員の「面従腹背」状態を解消するために、現状の調査やコミュニケーション施策を支援しました。
コンサルタントによる伴走支援を導入するメリット
ここまで、伴走支援が有効に働いた事例において、お客様が直面していた課題を当事者の声からご紹介してきました。
コンサルタントによる伴走支援を導入することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。ここからは、伴走支援を導入するメリットを、実際のエピソードからご紹介していきます。
自社の状況を客観的に把握し、変革につなげることができる
ある小売りチェーンでは、「顧客志向の組織への変革」を社長方針として打ち出しましたが、現状の課題が何なのかが明確になっておらず、具体的な施策が打てずにいました。
そこでソフィアは社員や取引先、フランチャイズオーナーなどさまざまなステークホルダーに対してヒアリング調査やアンケートを実施。顧客ではなく企業の上層部の顔色を見て意思決定を行っているマネジャー層の姿勢に問題があることを明らかにし、改善に向けてさまざまなインターナルコミュニケーション施策を展開しました。
組織内の人が調査を行うと、立場上どうしても本当の問題を指摘できなかったり、自分が関わっている問題を過小評価したりと、報告内容にバイアスがかかりがちです。また、外部のコンサルに調査を依頼すると、現状の問題についての指摘や、施策についてのアドバイスはしてくれるものの、実際に現状を変えるような対策を打てるかどうかは企業任せになってしまうケースが多々あります。
しかし、伴走者による調査であれば、第三者の視点で客観的に状況を把握できるだけでなく、組織の内部のさまざまな立場の人の事情を汲み取りながら、実現性の高い施策に落とし込むことができます。社内の合意形成をサポートしつつ、施策の実行も後押しすることで、調査結果を変革につなげることができるのが大きなメリットと言えます。
現状を変革するために実行可能なノウハウやアイデアを得ることができる
社内にないノウハウやアイデアを得たいとき、単に外部の専門家を起用するのと、伴走支援を受けるのとではどうちがうのでしょうか。
外部の専門家は、企業からの相談内容について専門家の知見からアドバイスを行い、施策の提案を行います。しかし、その施策が本当にその企業の組織風土や現在の状況に合っているのか、問題なく実施できるかどうかは未知数です。
ある化学メーカーで新しい業務システムの導入を行った際のことです。
グループ全社を挙げての大規模なDXの取り組みで、多大な費用と時間をかけているにもかかわらず、なかなか各グループ会社の現場の協力が得られず、プロジェクトが停滞していました。
そこでソフィアは現場のヒアリング、社内メディアの活用、イベントの実施などを通じて、現場の社員を巻き込んでグループ全体でのDXの機運を高め、取り組みの促進を図りました。しかし、その中で、なかなか取り組みの進まない部門がありました。
関係者との対話を重ねる中で、その部門には強力な上意下達型の文化が根付いており、他の部門では有効だったボトムアップの取り組みとは相性が悪いことがわかりました。そこで、部門トップから繰り返しメッセージを発信し、目標数値を設定して取り組む方針に変更したところ、一気に取り組みが進みました。
伴走支援を行うコンサルタントは、専門家の知見は持ちつつ、半分は社内の人間として組織の内部に入り込み、定量データには表れない組織の歴史や文化、関係者の業務内容や人間関係、仕事に対するこだわりや、現在の感情なども把握していきます。そして、組織の中の一人として状況に共感しながら、現状に対して有効な施策を探ります。外部の視点を持ちながら組織の中に身を置くことで、組織のどの部分に対してどのようなアプローチをすれば全体がうまく動き出すのかを具体的に考えることができます。「一般的にはこのような施策が有効だが、この組織にはこちらの方が適している」ということも、根拠を持って提案することができるのです。
基幹システム導入に対する業務改革 ~チェンジマネジメントの風土醸成とコミュニケーション施策~
概要 / Overview 企業規模: 企業グループ 人数規模: 10,000名以上 目的は『システム導入…
社内の人間には言いにくいことを代わりに言ってもらえる
プロジェクトを進めるうえで、さまざまなステークホルダーに対して「社内の人間には言いにくいこと」を第三者の立場からズバッと言ってもらえることも、伴走者を起用するメリットです。
「社内の人間には言いにくいことを言う」のは、組織との利害関係がない第三者であればだれでも可能です。ただし、その言葉が組織やステークホルダーを動かすかどうかは「誰がどのように言うのか」によって変わります。こちらの事情をよくわからない人から理想論を掲げられても、誰も納得はしないでしょう。その点、半分社内の人間という立場で、組織の事情を実感を持って理解している伴走者は、問題の当事者に響くように伝え方や言葉を練り上げて伝えることができるのです。
鳥居薬品の事例では、事務局(経営企画部)が発言すると角が立ちそうな意見を、ソフィアのコンサルタントから伝えることで議論の流れを変えることができました。
また西武ホールディングスの事例では、同社社員であるプロジェクト事務局メンバーがなかなか疑うことができない社内の「当たり前」を、ソフィアのコンサルタントが指摘することが、取り組みを前に進める力につながっています。
困難にぶつかったときに意思決定のヒントをもらえる
アイデアはあるがどう実現したらいいかわからない、立ちはだかる問題をどう解決したらいいかわからない、そんなときに思考の壁打ちをする相手が得られるのも、伴走支援を導入するメリットです。
これまでにはなかった問題に立ち向かう際は「これをやればうまくいく」という明確な答えがありません。仮説をもとにトライアンドエラーを繰り替えすのは簡単なことではなく、なかなか成果が出なければ社内で厳しい立場に立たされることもあるでしょう。
そんなとき、一緒に知恵を絞って是々非々でディスカッションできる伴走者の存在は、立ち止まらずに取り組みを前に進めるエンジンとなります。伴走支援を行うパートナーは、答えを出す存在ではなく、担当者と同じ地平に立ってともに現状を問い続ける存在です。同じ問題意識を持った人間とディスカッションし続けることで、頭の中が整理され、本当にやるべきことが見えてくる場合もあります。
さらに、組織の課題は往々にして、全体像が見えないものです。1つの問題を解決すればすべてがうまくいくわけではなく、すぐに次のレベルの課題が見えきます。そのため、1回限りの支援ではなくプロジェクトメンバーの一人として継続的に組織の課題に取り組む、伴走支援が有効なのです。
伴走を受ける側、伴走する側の双方に求められる「本気」
この記事では、企業の課題に対して伴走支援が有効なケースと、企業がコンサルタントを伴走者として起用することで得られるさまざまなメリットを、ソフィアが支援した実際の事例やご担当者の声を通じてご紹介してきました。
前回の記事でもお伝えしましたが、伴走支援を成果につなげるには、「この課題を解決したい」という強い意志と、成果に妥協しない姿勢が「伴走される側」「伴走する側」の双方に求められます。伴走者を起用するということは、決して「担当者が楽をする」ことではないのです。
最後に、そんな両者の関係性が垣間見える、当事者の言葉をご紹介します。
ソフィアの伴走支援についてより詳しく知りたい方は、ぜひ当シリーズのバックナンバーもお読みください。
組織や仕事の変革に「伴走者」が求められる理由 ~シリーズ「変革する人には伴走者が必要だ」①
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株式会社ソフィア
代表取締役社長、チーフコミュニケーションオフィサー
廣田 拓也
異なる世界にある共通項を見つけて分断をつなぐことが得意です。最近ではソフィアがこれまで培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、地域の教育分野に力を注いでいます。思考回路と判断基準は、それが面白いかどうか。そして指示命令は、するのも、されるのも嫌いです。だけど、応援を要請されたら馬車馬のように動きます。
株式会社ソフィア
代表取締役社長、チーフコミュニケーションオフィサー
廣田 拓也
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