2024.08.09
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社内コミュニケーションの課題とは?原因から解決方法まで徹底解説!
目次
働き方改革や仕事の複雑化、コロナ禍によるテレワークの導入など、私たちの働く環境は数年で大きく変化してきました。環境変化に合わせてコミュニケーションの取り方も進化を続けており、年代によってコミュニケーションの捉え方の違いが生まれています。
そのような状況の中で社内のコミュニケーションについて課題を抱えている企業も多いでしょう。「社内コミュニケーション」を問題視する声はあがるものの、何が原因なのか不明確であることが非常に多く見受けられます。そこでこの記事では、社内コミュニケーションに課題が生まれる原因から解決方法まで徹底解説します。
社内コミュニケーションの一般的な課題とは
HR総研が2022年に行った「社内コミュニケーションに関するアンケート」では、7割以上の人が「社内のコミュニケーションに課題を感じている」という結果となりました。さらに、9割以上の人が「社内のコミュニケーション不足が業務の障害になる」と答えています。社内コミュニケーションは業務を円滑に進める上で必要不可欠の要素であり、コミュニケーション不足が業務の生産性に大きく影響していることがわかります。
昨今、とくに社内コミュニケーションの課題を感じる人が増えています。その理由としては、コロナ禍によってテレワーク勤務が増加したことです。対面でのコミュニケーションは減少し、業務以外の雑談をする機会も少なくなりました。
社内のコミュニケーション不足は、社員のストレスやモチベーション低下にもつながるので、普段から豊富なコミュニケーションを取れるように対策が必要です。
社内コミュニケーションのビジネス面での課題と背景事情
社内コミュニケーションのビジネス面での課題にはどのようなものがあるでしょうか。昨今、ESGやDXなど、企業に要求されるビジネスの要件は複雑化しており、それに伴い多くの部署やチームが抱える課題や解決手段はより専門性と即時性が高まる反面「サイロ化」を引き起こしました。
情報や言葉の意味、前提となる考え方が非対称性を産む組織全体では重複業務が増えました。サイロ化が進むにつれ内部での専門用語が増え、サイロ間の共通言語を必要とします。
また、グローバル化社会や外部とのコミュニケーションの課題を生んでいます。多文化/多言語でのコミュニケーションが必須となり、お互いの文化や歴史を知らない状態でのコミュニケーションは、文脈を伝えることにおいて困難を極めます。伝える側と受け取る側の微妙なニュアンスのズレを引き起こしやすくなるのです。
これまでの日本経済は年功序列、終身雇用、企業内組合という日本的経営のもとに醸成された強烈な同質性の上に成り立っていました。
しかし、グローバル化によりコミュニケーションの対象が海外にも広がっています。そのような多様性の中で協同していくためには、円滑なコミュニケーションによって個々の多様性をつなぐことが求められているのです。
社内コミュニケーションの人材面での課題と背景事情
現在では、労働人口の中心となる40代〜60代と20代〜30代との間で社内コミュニケーションの手法や考え方にギャップが生まれ、そのギャップが企業経営に悪影響を及ぼしています。
ミドル〜シニア世代(40代〜60代)の社内コミュニケーションは、対面でのコミュニケーションが大半を占めていました。コミュニケーションツールはなく「直接話すこと」が中心であり、遠隔でのコミュニケーションは電話が基本です。文字で連絡を取り合うことに慣れておらず、リモートでのビジネス環境に順応しにくい世代ともいえます。
さらに、業務以外の時間を活用してきた世代でもあります。喫煙所での会話や飲み会でのやり取りからビジネスチャンスをつかみ、生きた情報のインプット/アウトプットを繰り返して仕事の目的を実現してきた世代です。
一方、1995年以降生まれはデジタルネイティブやZ世代と呼ばれ、物心ついたときにはスマートフォンやインターネットが当たり前に存在していました。ささいな返答は言葉でなく「いいね」ボタンや「スタンプ」、「絵文字」で済ませてしまうことが一般的です。余計なコミュニケーションは望まず、簡潔に意図を伝えあうことを求める世代です。さらに若年世代では、わからないことを周りの人に質問せず、インターネット検索で解決しようと試みます。
たしかに効率的ですが、上司と部下との会話時間は減少し、コミュニケーションは希薄になります。そのような状況でミドル~シニア世代の社員は対面で直接的な報・連・相を求めるため、ここにコミュニケーションのギャップが生じてしまいます。
社内コミュニケーションの環境面での課題
テレワークの普及により、従来と比較して社員同士の会話の時間が減り、情報の取得機会が減っています。今までのなんとなく行っていた雑談が減り、社員同士のお互いを理解し合う時間を作れないのが現状です。上記でも解説したように、お互いを理解しない状態でのコミュニケーションは、文脈を伝えることにおいて非常に困難です。
このような状況から、社内コミュニケーションに問題を持っていない企業はないと言っても過言ではないでしょう。そのため、企業はオンラインとオフラインのハイブリッドな働き方を前提に、社員同士のコミュニケーションを促す必要があります。
社内コミュニケーションの多様性から生まれる課題
高度経済成長期が終わり、産業の成熟期に入ると大企業は多角化が進みました。業界を越えた連携が必要となり、これまでの経験則では判断できない問題や事象が急速に増えてきています。
そのため、対面での「阿吽の呼吸」でコミュニケーションを取っていた時代とは違い、組織としてコミュニケーションの課題を認識し、環境を改善することが必要不可欠となっています。
コミュニケーションの手法にも変化が起きています。かつては対面で話すことが当然でしたが、チャットやメールを活用した文字でのコミュニケーションが増え、それらでは表情や声色で感じ取ることができなくなりました。文字の背景にある感情を読み取る能力もコミュニケーション能力の1つとされており、経験値やスキルだけでは補えなくなっています。
現在でもコミュニケーションを「個の能力」に頼っており、属人的なスキルに位置付けている組織が多くあります。急激に変化する社会・多様化の浸透・世代間による考え方のギャップと、企業をとりまく社会環境は変化をしているにもかかわらず、個に頼ったコミュニケーションのみで変化の波を受け止めるには限界がきていることに気付かなければなりません。
社内コミュニケーションがない人とビジネスの多様化はサイロ化しか生まない
ここ近年で、業務は高度に分業化され、仕事やスキルはより専門的になっています。さらに、個々人の個性や歴史的背景などの価値観から、企業は多様性の受け入れを促進しています。しかし、人それぞれ違う考え方や価値観を知り理解することは困難であり、そのうえで共感できる人はほんの一握りかもしれません。
多様性を重視するということは、ビジネスも人もバラバラであることを受け入れ、これを構造的な仕組みや制度でマネジメントする必要があります。そのため、バラバラな社員や職場を社内コミュニケーションでつなぐことが重要となり、その結果イノベーションや自由な働き方が実現できるのです。つまり、職場内がバラバラのまま、もしくは社内コミュニケーションが不足したまま、ただ不確実性や多様性を標榜する組織は、生産性の低下につながるうえにモラルやコンプライアンスなどの問題を増幅させる可能性もあります。
社内コミュニケーションの活性化が必要な理由
社内コミュニケーションの活性化が必要な理由は多岐にわたり、組織全体の健全な発展に不可欠な要素です。積極的に取り組むべき課題と言えます。
社内コミュニケーション活性化の必要性について詳しく見ていきましょう。
組織の効率性や創造性が高まる
社内コミュニケーションが活発になることで、まず情報の共有や意思決定のスピードが向上します。情報が適切に伝達され、業務の進行がスムーズになります。これにより業務プロセスが効率化され、組織全体の生産性が向上します。
さらに、従業員同士の連携やチームワークが強化され、チームメンバーがお互いに意見を交換し合い、問題解決に取り組むことで創造性が引き出されます。異なる視点やアイデアが集まり新たな発想が生まれ、革新的な解決策やサービスが生まれる可能性が高まります。
また、従業員のモチベーションや満足度にも影響を与えます。社内コミュニケーションが活性化している環境であれば、意見やアイデアを発言しやすいでしょう。そのうえで自分の意見が尊重されるのであれば、従業員はよりやりがいを感じ、自発的に業務に取り組む傾向があります。これにより、結果として組織全体のパフォーマンスが向上することが期待されます。
情報が適切に共有される
情報が適切に共有されることは、組織内での効率的な業務遂行や意思決定に不可欠です。適切な情報共有が行われなければ、重要な情報が漏れ誤解が生じるといった可能性があります。これにより生じるトラブルや損失のリスクが高まります。また、情報の偏りや不正確な伝達によって、意思決定の質が低下し、結果として組織全体の業績に影響を及ぼす恐れがあります。さらに、部門間や個人間の連携が困難となり、業務の効率性や柔軟性が損なわれる可能性があります。
そのため、社内コミュニケーションを活性化させ、情報が円滑に共有される環境を構築することが重要です。定期的なミーティングや報告会、情報共有システムの導入、部門間のコラボレーション強化などを通じて情報の透明性や可視化を図り、情報共有の質を向上させることが求められます。
モチベーションやエンゲージメント向上につながる
社内コミュニケーションが円滑に行われる環境では、従業員同士の情報共有がスムーズに行われます。それによって従業員は業務に対する理解が深まり、自らの役割や責任を明確に認識することで、従業員のモチベーションが向上し、業務への取り組み姿勢も前向きになるでしょう。
またチーム間や部署間での連携が強化され、情報や意見の交換が頻繁に行われることで信頼関係が築かれ、協力体制が確立されます。このような体制が整うと業務の効率化や品質向上が期待できます。従業員が協力し合いながら業務に取り組むことで成果に対する満足感や達成感が高まり、結果としてモチベーションやエンゲージメントが向上するでしょう。
社員同士の関係性が良好に
社員同士の良好な関係性は、チームワークの向上や効率的な業務遂行に直結します。コミュニケーションが活性化されていることによって社員同士の信頼関係が構築され、円滑に業務が回り、問題・課題の対処や意見交換なども速やかに行うことができます。
また、社内のコミュニケーションが盛んに行われ、社員の関係性が良好であれば職場全体の雰囲気が良くなり、モチベーションの向上やストレス軽減にもつながります。さらに社員同士が協力し合い、お互いを尊重し理解しようする雰囲気がつくられることで生産性や従業員満足度、定着率の向上が期待できます。
社内コミュニケーション不全により生じる課題
社内コミュニケーションの課題を解決するためには原因を把握することが大切です。環境の変化によって引き起こされた社内コミュニケーションの変化を感じ、課題が生じる兆候をキャッチアップします。原因が組織的なものなのか、環境なのか、または個人によるものかを分析し、組織的な解決手法を検討することが必要です。
部署間で情報共有の不足
業務を遂行する上で、1つの部署で案件が完結するケースは少なく、他部門との連携によって価値を生み出すことが一般的です。普段から部署間でのコミュニケーションが取れていないとお互いの情報が分からずに連携を取ることができません。規模が大きい企業ほど部署間のコミュニケーションが難しい傾向があります。
昨今のHRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)という職業が注目されています。 HRBPは企業における人事機能の1つであり、人事観点とビジネス観点の両面で事業成長をサポートする役割を担います。 注目される理由として、ビジネスにおいて人的資源が重要性の高まりと人的資源活用の複雑性から、現業と人事をつなぐ必要が出てきたからです。
とはいえ、この2つを交差させ情報共有し、人事組織と現場個別課題という双方が専門性が高い内容をコラボレーションするのは非常に難しいと言えます。
会話する機会が少ない。話題がない
昨今、社内で会話をする機会が少なくなっています。組織には、縦の関係(経営層や上司)と横の関係(同僚や部署間)があり、どちらともコミュニケーションが不足しています。
上位者が「コミュニケーションが取れている」と感じていても、下位者では「コミュニケーションが取れていない」と一方通行のコミュニケーションになっていることはよくあることです。「理解しているけど、できない・やらない」と「理解していないので、できない・やらない」は結果は同じですが、問題はまったく違います。
業務や報・連・相に代表されるタスクコミュニケーションがビジネスの前提ではあるものの、関係性がそのパフォーマンスに影響することは誰もが理解するところでしょう。
しかし、業務内容は知っているがチームやメンバーを知らないということはよくあります。それにはまず働く仲間の周辺情報(属性や趣味など)や価値観などを知ることです。会話がないのは「相手を知らないので共通の話題がない」ということが多くの原因です。
自由に発言できない雰囲気がある
組織の中に自由な発言ができない雰囲気があるとコミュニケーションの発生を妨げてしまいます。職場において気軽な雑談から新しいアイデアが生まれることもあります。
また、ランチや飲み会を通して悩みを聞き出し、話を聞くだけでもお互いを理解することができます。自由に発言する場が減少すると考えていることを自分の中に溜め込んでしまうことになり、社員のモチベーション低下やストレスの原因になってしまいます。
自由に発言しにくい雰囲気は社内風土に要因があります。上司が発信する機会を減らし、傾聴する意識を持ってコミュニケーションを取らなければ社内のストレスは解放されていきません。
社員のモチベーションが低下している
同期や上司、部下とのコミュニケーションが不足すると帰属意識が下がり、モチベーションが低下していきます。部署間で交流がないと、他部署での行動が見えず組織の現在地を俯瞰してみることができません。
自部門の狭いスコープだけの情報では考え方も狭くなってしまいがちです。コミュニケーションを取ることで相手の考え方を学び、組織の進むべき方向性を肌で感じることができます。
また、相談する相手がいないと悩みを抱え込んだままモチベーションが低下していきます。同僚との些細なコミュニケーションから気付く発見も多くあり、新しい発見が仕事へのヒントや意欲へと変わっていきます。
離職率が高い
組織内で起こる多くの問題は人間関係によるものです。人間関係の悩みを相談する人が近くにいない場合、自分の中だけで解決しようとしてストレスが蓄積されていきます。ストレスが溜まると会社に行きたくなくなり、働くことへの意欲が生まれません。その結果、離職率が高くなってしまいます。事前に悩みを聞くことができれば防ぐことができた事例も多くあります。意見のすれ違いがあっただけで、コミュニケーションさえ取れていれば解決できた問題ほど悔やまれるものはありません。
ミスが多発している
コミュニケーションが不足している組織では意見のすれ違いやミスが起こりやすくなります。ミスの原因を相手の責任だと考える傾向が強まり、真因分析ができないまま再発防止策を打つことができません。何度も同じミスを繰り返すことで社員にはストレスが溜まり、モチベーションが低下した状態で再度ミスが起こるという悪循環を引き起こします。
また、気軽にわからないことを相談できない環境では「聞けば解決した内容」が放置されてミスが起こりやすくなります。社内コミュニケーションが不足している職場では円滑な連携が取れず、ミスを繰り返すことで社員は疲弊していきます。
アイデアが出てこない
コミュニケーションが取れていない組織では、新規事業や企画立案の際にイノベーティブなアイデアが生まれにくくなります。個人に頼った企画立案は客観的思考がなく偏ったアイデアになりがちです。アイデアは、コミュニケーションを通してブラッシュアップされ続けることで顧客志向の企画へと成長していくものです。
また、コミュニケーション不足はナレッジマネジメントにも影響します。社員が経験してきた知識やスキルは組織にナレッジとして蓄積されていかなければなりません。ノウハウや知識の共有ができずに業務の品質低下につながります。
顧客満足度が減少している
組織内のコミュニケーション不足は顧客満足度の低下を引き起こします。部署間で連携を取らず、上司部下の報告・相談が欠けていると、本来求めている価値を顧客に提供できなくなってしまいます。納期遅延、品質低下、ニーズの誤りなど、成果物にさまざまな悪影響を与えてしまいます。部署間のコミュニケーション不足は営業機会の損失や企業のイメージダウンにつながることもあります。
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社内コミュニケーションを課題として明示するには?
社内コミュニケーションを課題として明示するためには、現状のコミュニケーションを整理することが重要です。事業の戦略や働き方など、経営テーマから今のコミュニケーションのフィットギャップが明確にならない限り解決しません。
経営層が感じる現状の課題だけでは真の課題とはいえず、客観的な視点で考えなければなりません。コミュニケーションの課題を整理して可視化するとどのような問題があるのか見えてくるようになります。
しかしコミュニケーションの課題を認識していても、要因を整理して説明できる人はほとんどいません。表面の課題だけを見て解決に導いたとしても真の要因を解決したことにはならず、効果が生まれなかったり、再発してしまったりします。要因が見えておらず突き詰めていない場合は、いくら施策を打っても効果はありません。
多くの社内コミュニケーションの課題は認識と感情のズレにある
コミュニケーションの問題に対して、社員の感情と認識の間で正しく整合性が取れていなければ社内コミュニケーションの問題を解決する手段は効果を発揮しません。
問題を正しく認識し、整理していくことが大切です。社内コミュニケーションの課題は多くの場合「事象や行動」の背景にある「感情や文脈」です。この場合は「感情や文脈」の問題を捉えない限り課題解決はしません。
たとえば何か情報が伝わっていない事象は、主に以下の4つの問題が想定されます。
- 認知されていない
- 理解されていない
- 共感されていない
- 実践されていない
たとえば、情報が「認知されていない」状態は、そもそも情報が伝わっていない状態です。コミュニケーションをリーチしていない状態です。
コミュニケーションしている情報そのものが認識されていない場合は「知らないからできない、動けない」ということになります。
情報が「理解されていない」状態は、伝え方や表現方法、情報設計、もしくは相手と共通言語でコミュニケーションが取れていない状態です。わからない、理解していない状態となります。
「共感されていない」状態は心理的に拒否されていることが考えられます。「理解しているけれど、したくない」という状態です。人間関係が悪い者同士でコミュニケーションを取るときに起こりやすい状態です。行動だけ促しても効果は生まれません。まずは人間関係を構築することが重要になります。
「実践されていない」状態には、実践できない理由があるはずです。やりたいけどできないのか、自信がないのか、原因を丁寧に分析する必要があります。
また、大きな組織では「周囲に影響を与える」ことも重要です。
情報は伝わっているし、伝えたことが実践されていても、集団としての動きにはなり得ていない、波及できていない状態になることもあります。
このような状態が起きないように経営者や各部署のリーダーは、しっかりとコミュニケーションを取り、社員の意識を同じ方向に向ける必要があります。
社内コミュニケーションの課題を解決するには?
社内コミュニケーションの課題を解決するためには、さまざまな施策を行う必要があります。単発的なものではなく、風土改革や環境改善といった根本から解決に働きかけるような対策が必要です。コミュニケ−ションは指示型ではなく自発的に改善されていくべきであり、そのための環境構築をしていきましょう。
自社の社内コミュニケーション可視化する
社内コミュニケーションの課題を解決するためには、まず自社のコミュニケーションを可視化しましょう。
社内コミュニケーションは状態であり簡単に良し悪しを判断できるほど単純なものではありません。「イノベーションが生まれやすい組織にするために社内コミュニケーションを活性化させたい」などのように、組織の達成する目的やビジョンが前提にあってはじめて優劣をつけることが可能になります。
つまり「人と組織がどのような状態になることが組織全体の目標を達成する上で最適なのか」ということを検討した上で、コミュニケーションをデザインしなければなりません。
上記の目的やビジョンを前提に現状の社員同士のコミュニケーションを整理、可視化すると、社内コミュニケーションの問題点が見えてきます。まずはこの問題点を洗い出すことが重要です。
インターナルコミュニケーション設計し実装する
インターナルコミュニケーションとは、同一の組織内における広報活動のことです。「社内広報」や「インターナルコミュニケーション」「エンプロイーリレーション」とも呼ばれます。
インターナルコミュニケーションは、組織の価値観や文化に対する社員の知識・理解を深めることにつながります。会社のビジョンを外部に向けて主体的に発信することのできる社員を育成し、組織全体を良い方向へと導く取り組みとしてインターナルコミュニケーションが行われます。
社内コミュニケーションツールの導入
コミュニケーションツールにはテキストチャットやビデオ会議システム、社内SNS、グループウェアなどがあります。これらは社内でのコミュニケーション不足を解消するために多くの企業が導入しているツールです。ツールの導入で社内のコミュニケーション活性化を促すことができます。
社内コミュニケーションツールについては以下の記事を参考にしてください。
「社内コミュニケーションに役立つデジタルツール12選!」
コミュニケーションの機会を作る
社内でコミュニケーションの機会を作ることでコミュニケーション不足を解消できます。
社内報やサンクスカード、社内SNSなどメディアを通じたコミュニケーションの機会を作ることが大切です。メディアを通して情報を知り、お互いの活動を共有する場面を作ることができます。
コミュニケーションの機会については、以下の記事を参考にしてください。
「社内コミュニケーションを円滑にする手法16選 実際の事例もご紹介」
社内イベントの開催
社内イベントの開催をすることでコミュニケーション不足を解消するきっかけを作ることができます。社員に非日常の体験を届けることで、企業ビジョンの浸透や部署間での交流が期待できます。また、通常業務では話すことがなかった人同士で会話することができ、お互いの個性や考え方を知る機会になります。
社内イベントの開催については、以下の記事を参考にしてください。
「社内コミュニケーションを活性化させるイベントとは?成功事例に学ぶポイント」
社員のコミュニケーション能力の育成
日本では社会の中でコミュニケーションスキルを学ぶ機会が乏しいため、業務の遂行に必要な社員のコミュニケーションスキル育成は会社の中で計画を立てるしかありません。
組織におけるコミュニケーションの課題や、社員のコミュニケーション能力が低い要因はさまざまです。
そのため、他社の成功事例やビジネストレンドをそのまま自社に取り入れても成果につながらない場合があります。コミュニケーションのどのような問題が自社の課題につながっているのか、社員にはどのようなニーズがあるのかを把握した上で、どのようなコミュニケーション能力を育成したいのかをあらかじめ定義しておく必要があります。
また、コミュニケーションスタイルは時代によって変化しています。そのためマネジメント層が過去の成功体験をもとに社員のコミュニケーションスキル教育を行っても現代のコミュニケーションスタイルに合わない可能性があります。人材の多様化が進んでいる中、プランを立てているマネジメント層の思考が変化していかなければ、組織を変えることは難しいでしょう。
社員のコミュニケーション能力向上は一朝一夕に実現できるものではないこと、そして社員だけでなくマネジメント層に対しても現代のコミュニケーションスタイルに合わせたコミュニケーション研修を行う必要があることをぜひ押さえておいてください。
社内コミュニケーションの課題解決における成功事例
三菱電機株式会社
三菱電機株式会社では、全社的な組織風土改革の取り組みの一つとして自分自身のパーパス「マイパーパス」を見つけるワークショップを開催しました。
プロジェクトグループが設置された生産システム本部に、会社からマイパーパス(自身のパーパス)を考える活動を各職場で展開するように依頼がありました。自分たちのやりたいことを言語化するためにも、各職場により適した形で取り組みを行えるようなワークショップを設計する運びとなりました。
まずは課長層の方が実際に体験し、各自職場に持ち帰って実施しました。継続的に行っていくためにも内製化の仕組みを重視し、また円滑な実施のため所長・部長クラスの方とも議論を重ね、あえてトップダウン気味に施策を展開しました。
「本当にやるの?」といった不安の声もありましたが、結果全ての職場で実施に至り反響は予想以上でした。自分自身を見つめ直すよいきっかけになったようです。
今回のプロジェクトを通して直接トップと素早いコミュニケーションが可能だということが実証できました。上層部も現場の考えていることを知りたがっています。そのため、お互い同じ視座で話すことで、Win-Winな形でコミュニケーションがとれるようになるのです。
三井不動産ビルマネジメント株式会社
三井不動産ビルマネジメント株式会社は、2016年からブランドビジョン「ビジネスシーンの明日を変えていく」を掲げ、総務部を中心に社内外に向けた浸透活動をはじめました。そして2023年6月、今後のブランドビジョン推進のさらなる取り組みとして1泊2日のチームビルディング合宿を開催しました。
オフィスを離れて観光地で滞在し、チーム全体で率直に意見を交換しました。2日目のグループワークでは会議室を飛び出し、グループごとに湖畔を散策しながら意見交換を行うなど非日常的で印象的な経験でした。入社1年目のメンバーは、先輩たちが本音で語っている様子を見て、異なる角度から意見を出し納得させるといった場面があり、本人の自身にもつながったことでしょう。
合宿が終わってからの若手メンバーは自ら意見を出し、自分が主体となって仕事を進める場面が増えました。合宿によって心理的安全性が確保されたようです。
ブランドビジョン推進の取り組みを進めるうえで共通の価値基盤、共通言語を作り、今はそれを使ってチーム内の足場を固めていっています。
ウシオ電機株式会社
ウシオ電機株式会社では、経営(ESG)浸透ツールの制作にあたり、以前から発行しているウシオ電機が発行するグローバル社内報「Ushio Power」の制作、ウシオ電機社内にのみ配布している「Ushio Power 単体版」の再創刊、web社内報のリニューアルを進めました。また、今後の施策に生かせるようweb社内報のリニューアル後にログ解析を行う方向で動いています。
社員に対して発信する社内報は、どういう反応が来るかわからない難しさがあります。とくに会ったことのない海外グループ社員に対してはどうつながりを持つのか、そういった部分に焦点を当てていくことも大切です。お客様はもちろん、社員も大事にしていく流れが生まれていてインターナルコミュニケーションを会社でも重視するようになってきました。人と人とのつながりを社内報でもちゃんと表現していくことの重要性を実感ました。
三井不動産株式会社
三井不動産による新規事業創出支援の一環として三井不動産株式会社のビジネスイノベーション推進部は、企業風土の改革を目指し、情報ポータルサイト「WARP PORTAL」を立ち上げました。かつて同社では体育会系の文化が強く、創造性やクリエイティビティを十分に発揮しにくい状況でしたが、ここで新たな取り組みが行われました。
「WARP PORTAL」は社内の新規事業事例を紹介し、様々な起業家に取材を行い、記事を掲載することで企業文化の刷新に貢献しています。この取り組みにより挑戦する気持ちを持つ人々を支援し、新たな風を吹き込む文化が育まれています。
社内報など会社がオフィシャルに発信する情報と比べると「WARP PORTAL」は少しエッジが効いていて、ぶっちゃけトークや「あるある」話ができるような、そんな場にしていくための雰囲気づくりを目指しています。
鳥居薬品株式会社
鳥居薬品株式会社は2019年、 事業環境の激変に直面して大規模な事業構造改革を実施しました。構造改革後の少ない人員で事業を継続・発展させていくためには、個人のパフォーマンスを向上させることで会社全体のパフォーマンスと成果につながっていくと想定し、社員が力を発揮できる環境づくり、風土づくりをスタートさせました。
新たな風土を醸成するにあたって事務局で課題をまとめたり、社員が大切にする価値観「TORII’s POLICY」を策定したりと、浸透に向けてさまざまな施策を行ってきました。また、価値観策定のために行った合宿でのディスカッションでは、事業構造改革に対する参加者の思いで、白熱した議論が繰り広げられました。
社員で大切にしたい価値観「TORII’s POLICY」の策定と同時に、経営陣で膝突き合わせた議論を行い「鳥居薬品の志」という企業理念も策定しました。現状、何か問題があったときには「TORII’s POLICY」に立ち戻り、状況をよくするために実践して企業理念の実現を目指そうとしています。
まとめ
社内コミュニケーションの課題を解決するためにはコミュニケーションが問題になった原因を正しく理解することが大切です。組織のコミュニケーションに課題があると感じている企業は、課題の要因分析をして整理し、可視化するところから始めましょう。
コミュニケーションの課題が可視化されれば、取るべき対策も明確に見えてきます。コミュニケーションは単発的な改善ではなく継続的な取り組みによって好循環を生み出していきましょう。
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株式会社ソフィア
先生
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人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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