ビジネスにおけるファシリテーションの重要性とは?目的やスキルを高める方法を紹介

企業で開かれる会議やミーティングなどにおいて、「時間をかけた割に成果が出なかった」といった経験はないでしょうか。とくに定期的に行われている会議などでは、目的があやふやで議論がブレる、予定時間内を大きく過ぎる、水掛け論のような言い合いになるなど、成果が得られない会議になっていることが多くあります。
そのような会議になるのを避け、スムーズに議論を成功に導くために必要なのがファシリテーターです。効率的で無駄がなく、生産的な議論を遂行するためには、ファシリテーションスキルを駆使して話し合いをリードするファシリテーターの存在が不可欠と言えるでしょう。
この記事では、ファシリテーションの目的を始めとして、ファシリテーターの役割や求められるスキルについて解説していきます。

ファシリテーションはビジネスの土台になるスキル

ファシリテーションスキルとは、会議やミーティングなどを下支えし、スムーズな進行を促すスキルのことを指します。また、ファシリテーションスキルを用いて議論をリードする人を「ファシリテーター」と呼びます。ファシリテーターの役割は、議論から良質な結論を導き出し、さらに参加メンバー全員の合意形成を図ることであるため、議論の進行を目的とした司会とは分けて考えられています。
ビジネスにおける生産性には会議の質が大きく関係しているため、質の高い議論をリードできる「ファシリテーター」の存在は重要視されており、とくに近年では社員にファシリテーションスキルの習得を促す場合もあります。目的意識を持った会議をスムーズに合意形成に導くことで、素早い意思決定と実行に期待ができます。

なぜビジネスでファシリテーションが必要なのか?

昨今のビジネスシーンで注目されているファシリテーションスキルですが、なぜビジネスにおいて必要とされているのでしょうか。ここでは、ビジネスにおいてファシリテーションが必要とされる理由について見ていきます。

ビジネスの複雑化

ファシリテーションが必要な大きな理由の1つに、ビジネスシーンにVUCAの時代が到来し、複雑で変化の激しい状況になったことが挙げられます。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの意味の頭文字を取った概念です。テクノロジーの進化や働き方の改革によって既存のビジネスモデルを維持するだけでは通用しなくなり、時代の変化に対応した正しい判断が求められています。
そこで注目されているのが、ファシリテーションです。たとえば、リモートワークの普及によるコミュニケーションの衰退が自社の課題としてある場合は、コミュニケーションツールを全社で導入するなどが解決策として挙げられます。そのような意思決定を行う際は、課題を解決するという目的のもと、会議で合意形成を図る必要があります。課題に対してスピード感ある意思決定と実行に取り組むためには、会議をスムーズに進行して成功に導くファシリテーターの存在が求められます

日本型の経営の限界

従来の日本型の経営は、同質性を持ったトップダウンの経営スタイルが特徴的でした。大まかには、経営層や上層部が組織全体をコントロールし、社員はその指示に従うことによって成立する経営スタイルです。
しかし、日本型の経営は組織的な連帯感・統率を強くする一方で、個人の能力を活かした活動や創造性を抑制することが指摘されています。とくに、単純作業やルーティン作業のデジタル化が進んでいる昨今、社員の特性や創造性といった能力が企業の業績向上のために重要になっています

また、終身雇用制度や年功序列型賃金体系、企業内組合の崩壊といった、これまでの制度や体系にビジネスパーソンが頼ることができなくなった点も挙げられます。現代では転職(キャリアチェンジ)は当たり前で、副業などで稼ぐ人もいます。
このような時代背景の中、企業が柔軟に利益を出しながら社会に価値を提供し続けるためには、建設的で生産的な話し合いを生むファシリテーターの役割が非常に重要です。

企業内において多様な意見をまとめなければならない

前項で伝えた内容を踏まえ、企業の目的を達成するためには、社員やステークホルダーが持つ多様な意見やアイディアをまとめながら合意形成に導くファシリテーターの存在が必要です。ファシリテーターは議論を建設的で生産性の高い内容にするために、客観的かつ中立的な立場を取り、参加者全員から意見を集めます。

また、多様化に伴うデメリットとして、部署やチーム同士が分断するサイロ化が挙げられます。サイロ化が企業内で定着してしまうと、社内の連携が機能せず、事業や活動が思うように進まない状態になってしまいます。そういった事態を防ぐために、社員同士を繋いだり、説得したりと橋渡し役になるのがファシリテーターです。ファシリテーターは、自社の社員が担う場合もありますが、外部のコンサルティング会社に依頼する場合もあります。
ファシリテーターがいれば合理性・感情・企業の理念や価値観といったものを上手く包括しながら意見を引き出し、参加者全員が納得する合意形成を得ることができます

ビジネスにおけるファシリテーターとミドルマン

現在、ビジネスにおいてファシリテーターと共にミドルマンという存在が重要視されています。ミドルマンとは企業においてどのような役割を果たすのでしょうか。ここでは、ファシリテーターとミドルマンについて詳しく解説します。

DXやサスティナブルに必要なミドルマンの存在

昨今、ビジネスの世界で推し進められている概念にDX(Digital Transformation)やサスティナブルがあります。急速なITテクノロジーの進化と普及に合わせ、ビジネスの現場ではテクノロジーによる効率化と自動化、さらに人々の意識の変化を投影した概念によって環境・人類社会が持続可能な状態を目指すことが一般化しています。

しかし、これらの概念を社会に実装・普及するためには、ファシリテーターとは別に第三者「ミドルマン」による手助けが不可欠です。ミドルマンは、アメリカの社会学者ポール・ラザースフェルト(1901~1976)が提唱した概念です。簡単に説明すると「専門家の難しい考えをわかりやすく説明・イメージ化する人」という意味があります。事実としてDXやサスティナブルにはコンサルティングが存在しており、さまざまな企業や団体がその力を借りています。

現代においてミドルマンとファシリテーターの掛け算が重要

ミドルマンは現代の企業活動において重要な存在です。企業が行う事業においては、ミドルマンとファシリテーターが掛け算された状態で成立します。ミドルマンが存在することで、情報を受け取る側は、自分たちと直接関係のない情報でも聞き入れやすくなります。同時に、情報を発信する側にとっても、彼らを通じて情報を広めることができるため、ミドルマンは極めて重要な存在です。

組織においては、社員全員が特定の領域の専門性や知識を身に着けているわけではないため、必要に応じて専門用語や方法論について解説・説明・要約するミドルマンの存在が必要なのです。ミドルマンには、膨大な情報の中から重要なポイントを要約して他者に伝える役割もあります

現代の企業は、ITテクノロジー、SDGsやESGなどの社会活動、コンプライアンスやポリティカルコレクトネスといった意識の高まりなどにより、求められる専門性が広がると同時に、経営の指針や方向性も見失いやすい状況であると言えます。そのため、ミドルマンという存在が重要視されているのです。ただし、ミドルマンが提供した情報を基に合意形成をする場合には、円滑な会議運営スキルを持ったファシリテーターが必要になることもあります。

ビジネスでファシリテーションを行う目的

ファシリテーションの目的の大部分は、多くの意見を集約し合意形成に導くことですが、結論に至るまでの過程にも、さまざまな効果が期待できます。ここからは、ビジネスにおけるファシリテーションの目的について詳しく解説していきます。

メンバーが納得感を持てるようにする

ファシリテーションを行う目的として、話し合いに参加するメンバーの「納得感」を生み出すことが挙げられます。たとえば特定のメンバー同士が強い言葉で言い合った場合、片方の言い分が正論でも、双方が納得することは難しいものです。また、議題への理解度に差がある場合も、全員が納得して結論に到達することは難しいものでしょう。
そのようなコミュニケーション上の軋轢や、知識・理解度の差から起きうるすれ違いを防ぐために、話し合いの場をコントロールすることがファシリテーターには求められます。
参加者全員が主体的に議論に参加し、納得感を持って結論が出せる状態を創ることがファシリテーションの目的です。ファシリテーターが上手く機能して、円滑に納得感のある結論を出すことができれば、企業としても意思決定能力や問題解決能力の向上に期待ができます。

会議の生産性の向上

ファシリテーターが話し合いをリードする議論の場においては、「時間を掛けたのに成果につながるような結論が出ない」といった不毛な状態を避けることができます。なぜなら、論点のズレはその都度ファシリテーターが軌道修正し、結論が上手くまとまらなかった際にはファシリテーターが主導となって結論を導き出すため、会議などの話し合いを一定の生産性を保ったまま終えることができるからです。

とくに会議でありがちなのが、惰性や定例で会議を開き、実のある意見やアイディアが出ないまま終了しているパターンです。多くの企業でこの現象は起こっており、会議が本来の意味や目的を見失った形骸化したものになっています。
ファシリテーターは参加者から意見を引き出し、必要があれば軌道修正を行い、結論を導き出すことで、会議本来の目的達成に貢献します。つまり、会議の生産性を高めて、実際の成果につなげることがファシリテーションの目的です。

新たなアイディアを出しやすくする

参加メンバーが発言しやすい場を創り、新たなアイディアを出しやすくすることもファシリテーションの目的です。議論にはさまざまな情報、価値観、経験値を持った立場の違う人が参加するため、議論が上手く機能した際には、これまでにない斬新な結論が導き出せることもあるでしょう。

また、まったく別の部署や立場の人同士が議論し合うだけでも意義があります。異なる背景を持つ人同士がコミュニケーションを取ると、自分たちの業務の非効率な部分に気づいたり、他の部署のやり方を応用した改善策など、これまで気づかなかった方法に辿り着けたりすることもあります
議題に対する新しいアイディアはもちろん、それ以外の業務の部分にもポジティブな効果を引き出すのが、ファシリテーターが話し合いをリードする目的です。

ビジネスにおけるファシリテーションで必要なスキル

ビジネスにおいて、ファシリテーションで必要なスキルにはロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどがあります。
ファシリテーターとして話し合いをリードする力を向上させるためには、目的(結論)に到達するまでの道筋を明確にする論理的思考力が重要になります。また、相手の話をよく理解した上で、自分の考えを正確に伝えるという対人関係スキルも必要です。参加メンバーが伝わりにくい意見を述べた場合に、「それは具体的にどういうことでしょうか?」「詳細を教えていただけますか?」など踏み込んで聞き直し、意見を参加メンバー全員に伝わる形に変え、補完することも重要になるでしょう。

さらにファシリテーターは、参加者を把握し、会議や打ち合わせに求められるタスクや成果を理解して、プロジェクト全体の流れを設計しなければなりません。そのためにも多くのスキルが求められます。
下記の記事では、ビジネスにおけるファシリテーションで必要なスキルについて詳しく解説しているため、是非ご覧ください。

ビジネスにおけるファシリテーションスキルを高める方法

ファシリテーションスキルを高めるには、個別の能力を独自に磨くよりも既存のサービスや仕組みに頼る方が確実でしょう。ここからは、効率的にファシリテーションスキルを高める方法を紹介します。

資格を取得する

ファシリテーションスキルの資格を取得してみるのも、ファシリテーションスキル習得には有効です。代表的な資格として、一般社団法人日本プロカウンセリング協会の「FITファシリテーター資格認定講座」があります。資格取得のために講座を通して学習を進めるため、ファシリテーションスキルについての知識や考え方が身に付きやすいのがポイントです。
すでにファシリテーターとして会議等をリードする業務を担っている人にとっても、学び直しとして有意義なものになるでしょう。資格取得は、自主学習だけでは不安な人や、体系的にしっかりと学びたい人におすすめの手段と言えます。

研修に参加する

ファシリテーションについてレクチャーする、ワーク、研修、セミナーに参加することも有効です。前述のとおり昨今では、ファシリテーションスキルがビジネスの現場で注目されている背景もあり、ファシリテーションについて学べる場も増えています。
その分野の専門家が教壇に立って教えてくれるため、より効率的にわかりやすく学習することができるでしょう。また、インプットだけでなく実戦形式のアウトプットの場も用意されているため、疑似的にファシリテーターとなり、覚えたスキルを試しながら学べる点も有意義です。

まとめ

この記事では、ビジネスにおけるファシリテーションの効果や目的、ファシリテーターの役割や必要なスキルについて解説しました。会議や打ち合わせを頻繁に行ってはいるが、業務改善・業績向上につながるような結論が出せていないというケースは多く見られます。そこで重要になるのが議論をリードするファシリテーターの存在なのです。
ファシリテーションスキルを用いることによって参加者の意見を引き出し、明確な結論を導き出すことができます。特に現代ではビジネスが複雑化し、企業内において多様な意見をまとめなければなりません。また、ファシリテーターがいることにより、参加メンバーが発言しやすい場を創り、新たなアイディアが出やすくなります。
チームをサポートして議論を活性化させるファシリテーターは、これからの時代にリーダーシップをとっていくことのできる優秀な人材とも言えます。ソフィアでは、企業における次世代リーダーの育成や組織変革の支援を行っていますので、お困りの際はぜひご相談ください。

株式会社ソフィア

先生

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人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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