社内コミュニケーションで重視するポイントは会社と従業員で違う?社内調査の重要性とは

自社の社内コミュニケーションは、経営トップ層にとって納得いく状態となっているでしょうか。もし現状は納得できるものだとして、果たしてそれが現場の社員にとっても同様であるといえるでしょうか。
社内コミュニケーションで重視するポイントが会社と従業員では異なることが、国が民間企業に対して行った調査で明らかになっています。すなわち、お互いに求めるものが違うため、ミスコミュニケーションが発生するリスクが高い状態に陥っているといえるでしょう。
このような状況において、自社のコミュニケーションの健康状態を把握する方法が「社内コミュニケーション調査」です。本記事では、社内コミュニケーションの実態について概説したのち、社内コミュニケーション調査の重要性と調査を実施する際のポイントについて解説します。

なぜ社内のコミュニケーションを調査する必要があるのか?

社内コミュニケーションの実態を知るためには、ミクロな視点ではなくマクロな視点での把握が必要です。ここでいうミクロな視点とは「社員個々の会話にフォーカスしたもの」であり、マクロな視点とは「社内調査」が該当します。
コミュニケーション調査における調査対象は、社内の会話だけに留まるものではありません。無数に行われる会話の中からいくつかをすくい上げて検討する方法では実態が断片的にしかわからないため、組織全体としてどのような傾向にあるかを知るには、コミュニケーション調査という手法が適切だと考えられています。

そもそも社内コミュニケーションとは

社内コミュニケーションとは、「社員同士がおたがいの知識やノウハウ、スキルを共有し、密接な関係を築き、企業の利益へ還元される」という、組織にとって意味を持ったビジネス上のコミュニケーションです
社内コミュニケーションの種類を、ここではAs is/To beのフレームワークを用いて解説します。「As is」は「現状」を意味し、「理想」である「To be」の対として言及されます。

As is:トップの意思決定をやり抜くためのスタイル

現状の社内コミュニケーションは、トップの意思決定をやり抜くためのスタイルであるケースが多いです。このスタイルには「Penetration(浸透)」「Co-operation(協働)」、「Feedback(上申)」のプロセスが存在します。
「浸透」では、トップ層が経営の方針や戦略を決定し、現場へと落とし込みます。「協働」では、トップ層が決めた方針や戦略を遂行するために協力して業務にあたります。そして「上申」では、業務遂行の中で現場の意見をトップ層に申し送りするという流れです。

To be:現場の意見を集めて意思決定し推進するスタイル

「To be」すなわち「あるべき姿」としての社内コミュニケーションは、意思決定プロセスと遂行プロセスに分類されます。
意思決定プロセスは、現場の状況や社外の情報を収集してトップ層へと迅速に提案する「Feedback(提案)」から始まり、トップダウン型である現状と真逆です。そこから「Co-operation(共創)」、ここでは対話によって価値を生み出します。そして得られた価値を集めてトップ層が意思決定、すなわち「Decision(決定・遂行)」を行うという流れです。
こうして行われた意思決定は遂行プロセスにおいて速やかに「Execution(遂行)」され、「Co-Operation(協働)」され、そして再度「Feedback(上申)」されることになります。現場発のFeedbackからスタートした意思決定ですから、現場での推進力も強力なわけです。
現状と比較すると、意思決定がトップダウンではなくボトムアップであることが大きな違いといえるでしょう。

上の画像は弊社で実施している「社内コミュニケーション調査(PCF調査)」の各社平均のデータです。社内のコミュニケーション・情報流通・関係性の状況を、「Penetration:トップダウン・浸透的コミュニケーション(オレンジ色の項目)」「Collaboration:コラボレーション・協創・連携的コミュニケーション(黄色の項目)」「Feedback:フィードバック・提言・現場発信的コミュニケーション(右側の青色の項目)」という3つの属性別に整理しています。左のオレンジの項目のトップダウンの数値が全体的に高く、黄色の項目、コラボレーションのうち、トップダウンに近い、部門レベルのマネジメント⇒部下の取り組みにあたる項目が高く、フィードバックに近い、各社員の実践にあたる項目が低く、また青の項目、フィードバックは全体的に低い数値が見られます。

海外のインターナルコミュニケーション支援企業が出している調査データでは、この全体のバランスが変わり、トップダウンが弱いとされるものもあります。あくまで従業員の認識のデータではありますが、日本国内の企業の多くが、トップダウンに偏重し、現場の自由な発言・行動は阻害されている傾向にある、もしくはトップの抽象的な指示に対し、現場が思うように動けていないという傾向が分かります

社内コミュニケーションがもたらす効果

そうした組織内の各階層・各関係性における社内コミュニケーションが改善されることによって、以下のような効果が期待できます。

  • 社員エンゲージメントの向上
  • 業務生産性の向上
  • イノベーションの創出
  • 企業文化の変革
  • 情報共有の活性化(社内コミュニケーションコストの軽減)
  • 企業ブランドの向上と企業リスクの低下

詳しくは過去の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

社内コミュニケーションについて現場はどう思っているのか?

会社のトップ層が考える社内コミュニケーションと現場における実態、すなわち従業員の捉え方との間にはズレがあることが調査からわかっています。

会社が社内コミュニケーションで重視する内容

厚生労働省の「令和元年労使コミュニケーション調査」によれば、会社が社内コミュニケーションで重視する内容は、回答が多い順に「日常業務改善」75.3%、「作業環境改善」72.9%、「職場の人間関係」69.5%となっています。社内コミュニケーションの本来の意味である「企業利益」の部分が色濃く反映されていることがよくわかるでしょう。

下表:事業者側が労働者とのコミュニケーションにおいて重視する項目

従業員が社内コミュニケーションで重視する内容

同調査によると、会社が企業利益を重視する一方で従業員が社内コミュニケーションで重視するのは回答の多い順から「職場の人間関係」66.2%、「日常業務改善」57.7%、「賃金、労働時間等 労働条件」53.0%です。これには、「本人の働きやすさ・待遇」の面が強く現れているといえます。

下表:労働者が社内のコミュニケーションにおいて重視する項目

社内コミュニケーションは面従腹背の状態になっている?

調査からわかるとおり、会社内で求めるコミュニケーションには会社と従業員との間で乖離があります。会社は利益を追求したいと会社を第一に考える反面、従業員はできるだけよい環境で働きたいと自身を第一に考えています。こういった視点の違いから、表向きはうまくいっているように見えても、従業員はトップ層が期待するほどには業務改善に熱心ではない、といった意識のギャップが生まれている可能性が考えられます。目的を明示しさえすればその実現に向けて邁進して欲しいという経営の期待に対して、目的そのものが社員自身にとって共感できるものになっておらず、具体的になっている指示のみを履行するという、面従腹背状態になっている可能性があります。

社内で意識調査と対策を行うことが重要

このような意識のギャップを見過ごしたままでいると、社内における改善や改革の推進力は低下していきます。もしあなたの会社に「トップの意向が現場に届かない」「現場の声が経営に伝わらない」「進めるべき取り組みがなかなか進まない」など問題の兆しが表れているのなら、問題の解消に向けてただちに手を打ったほうが良いでしょう。そのためにまず行うことが自社の現状把握であり、その手段として冒頭で述べたマクロな視点での意識調査が重要になってきます。
調査結果をもとに社内コミュニケーションの実態と課題を可視化し、まずは社内で実施可能な対策でPDCAを回しながら改善を進めて行きましょう。

社内コミュニケーション調査の方法

会社・経営の思惑と、現場の意識や感覚には、どうしても乖離が発生してしまいます。今現場はどう感じているのか、何を求めているのかを把握した上で、施策を検討する必要があります。そのための社内調査において、実施する際のポイントについて解説します。

現場の具体的な状況を把握する

社内コミュニケーション調査では、社内でのコミュニケーションに対する満足度を確認する調査項目を作成します。
会社によって置かれている状況や現場の状態がさまざまなことから、調査は自社に合わせて具体的に設計する必要があります。その一方で、社内で調査設計を行う際には設計者のバイアス(認知の偏り)がかかってしまう懸念もあります。そのリスクを回避するために、既存の調査の枠組みを取り入れて自社用にカスタマイズすることで、より精度の高い調査結果を得ることが期待できます。社内コミュニケーション調査を実施している専門企業に相談し、導入を検討するのもよいでしょう。

満足状態と不満足状態の2つの回答テキストを作成

社内コミュニケーション調査では、コミュニケーションに不満足な状態において現場に何が起きていて、そこで従業員が何を考えどう行動しているのかを細部まで把握する必要があります。
そのために、まず調査前の仮説として、社内コミュニケーションに満足している自社の社員と不満足な社員それぞれの具体的な社員像、すなわちマーケティング領域でいう「ペルソナ」を設計します。現状の社内コミュニケーションに満足している社員と不満足な社員がそれぞれ調査に対して何をどのように答えるかを想定して、調査に対する回答文を作成してみましょう。これが社員の「本音」となります。もちろんこの本音にバイアスが影響してしまっては意味がありませんので、外部のフレームワークを活用することが効果的です。

最後に質問項目を作成

質問項目は回答文のあとに作成します。これは、先ほど挙げた「本音」をうまく引き出すために適切な質問項目を作成するためです。先に質問を列挙して調査を作ってしまうと、得られた回答と調べたかった内容にズレが生じてしまい、せっかく得た回答を利用できない状況が生じやすくなります。聞きたいことを聞く、という単純な設計では、調査は失敗しやすいのです。

原因を把握し、手段を考える

質問項目が完成したら調査を実施します。そして回答を統計的に分析し、社内コミュニケーションの実態から不満足の原因を把握し、解決するための手段を検討します。
なお、社内コミュニケーション調査の結果は全社に公表し共有するようにしましょう。本音を引き出す必要のある社内コミュニケーション調査では、会社と従業員の間に信頼関係がなくては本音の回答を得ることは困難です。調査を行う際には、調査を実施する理由と調査結果、調査で明らかになった問題への対応策までしっかりと説明することで、現場からの納得感を得やすくなります

まとめ

もし、現場の考え方や行動に対して経営側が満足しておらず、なぜそのような状態になるのか理解できていないのであれば、自社の社内コミュニケーションにおいて現場との間に認識の相違が起きている可能性が高いといえます。社内コミュニケーション不全は徐々に、しかし確実に会社を崩壊させるというリスクを、トップ層や人事担当者はしっかりと理解しておきましょう。
なお、ソフィアでは社内アンケート調査に関する記事も掲載しています。あわせてご覧ください。

関連記事:従業員調査が従業員満足度を低下させる!?~アンケートに本音を書かない・書けない理由~

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