リーダーシップの具体例を紹介!これからの時代に必要なリーダーの在り方
目次
ビジネスにおいて、リーダーシップという言葉をたびたび耳にすることはないでしょうか。リーダーシップという言葉の意味はわかるものの、具体的にどのようなリーダーシップがあるのか、求められるスキルは何かといった踏み込んだ部分までは理解している人が少ないのが現状です。本記事では、リーダーシップの意味や種類を始めとして、リーダーシップを発揮するために必要なスキルなどについて詳しく解説します。
リーダーシップとは?
リーダーシップとはどのような意味を持つのでしょうか。リーダーシップという言葉は、人や組織によって様々な捉え方があり、社会全体で共通の認識があるわけではありません。
グロービスが運営するMBA経営辞書においては、リーダーシップを「自己の理念や価値観に基づいて、魅力ある目標を設定し、またその実現体制を構築し、人々の意欲を高め成長させながら、課題や障害を解決する行動」と定義づけています。ウォーレン・ベニスは「リーダーシップとは、ビジョンを現実に変える能力である」と言っています。そのため、リーダーシップは、「人々や組織をあるべき状態へするための一連の行為や影響力」と言えるでしょう。
リーダーシップは抽象的な概念であるがゆえに、古くから研究対象とされており、様々な調査結果や論文が存在します。
しかし、リーダーシップが先天的な資質によるものなのか、訓練によって身につくものなのかは意見が分かれており、現時点でも明確になっていません。
リーダーシップについて理解するためには、抽象的な概念であることを前提に、リーダーシップ像が多岐に渡ることやそれらに求められるスキルを把握することが重要です。
具体的なリーダーシップの種類
リーダーシップには多種多様な定義があり、多くの分類が存在します。ここでは、代表的なリーダーシップの種類について8つ紹介します。自分自身に合うリーダーシップ像は、おかれた立場や取り巻く状況によって様々です。どのリーダーシップが自分の個性や強みに合致しているかを考えてみましょう。
民主的リーダーシップ
民主的リーダーシップとは、言葉通り組織のメンバーが意思決定のプロセスに参画し、合意形成を図るスタイルです。
民主的リーダーシップには、メンバーの心理的安全性を確保し、自由に意見を出せる雰囲気作りが重要となります。また、ディスカッションや対話などを通した意思決定に参加しやすい環境づくりも求められるでしょう。米国の心理学者レヴィンは、自らが提唱した3つのリーダーシップの中で、民主型リーダーシップが最も優れていると結論付けています。
民主的なリーダーシップの下では、メンバーは自分の意見が尊重されていると実感し、組織への帰属意識を高めるでしょう。また、組織全体での定着率や仕事に対する士気を高める効果も期待できます。しかし、ディスカッションや対話などを通して組織内での合意形成を図る必要があります。そのため、意思決定が非効率となり、時間とコストがかかるという側面もあります。
独裁的なリーダーシップ
独裁的なリーダーシップを掲げるリーダーは、メンバーに対して明確な指示と目標を与えます。このケースでは、リーダーとその周辺の幹部クラスにあらゆる決定権が集中しているため、トップダウン型の意思決定がされるのが一般的です。多くの場合、メンバーにはトップから降りてきた指示を忠実にこなすことが求められています。
また、独裁的なリーダーシップの下では、意思決定が迅速に行われるため組織全体でこなせる仕事量は増え、短期的にはパフォーマンスの向上を期待できます。
独裁的なリーダーは、明確で直接的なコミュニケーションを行うため、メンバーにとってはやることが明確になり、業務上の迷いが少なくなります。また、トップダウン型で意思決定がなされるため、組織全体を迅速に動かすことができるでしょう。
しかし、組織における責任を全て自分自身が負っているという自覚があるため、多大なストレスを感じる傾向にあります。また、組織の方向性がリーダーの価値観に依存しているため、組織の柔軟性が欠如し、仮にミスリードした場合、現場の混乱は言うまでもありません。
自由放任的リーダーシップ
自由放任型リーダーシップは委任型リーダーシップとも呼ばれ、問題のない範囲でメンバーに裁量を与え、自分自身のスタイルで仕事を進めることを推奨するリーダーシップです。独裁的なリーダーシップとはまさに正反対の概念といえるでしょう。
自由放任型のリーダーが率いる職場では、仕事に前向きに取り組み、常に創意工夫を続けるタイプの人が力を発揮できるでしょう。一方で、リーダーとメンバーのコミュニケーションが不足してしまうと、メンバーに対する統制がとれなくなるというリスクもあります。
メンバーの独創性や創造性が育つ機会を与え、リラックスした職場環境を提供します。また、多くの場合はメンバーの定着率を高めるという効果もあるでしょう。
その反面、経験の浅い社員が組織内にいる場合は注意が必要です。新人には丁寧な指導と実践的なサポートが必要なため、リーダーに放任されてしまうと自分が組織から見放されていると感じてしまう可能性があります。
官僚的なリーダーシップ
官僚的なリーダーシップにおいては、メンバーに対してあらかじめ定められた規則、ルール、手順を正確に順守して業務を進めることを求めます。
また、メンバーが手順通りに仕事を進めることを厳しく求め、手順からの逸脱を許さないという点では、独裁型のリーダーシップに近いと考えることができるでしょう。金融、医療などの規制が厳しく、ミスが許されない業界において効果を発揮するリーダーシップです。
官僚的リーダーシップは厳格なルールや規制に従って手順通りに業務を進める必要がある組織では効率的です。また、感情が入り込む余地がないため、確実に与えられた業務をこなしていくことができます。しかし創造性や独創性が入り込む余地がないため、一部のメンバーは非常に息苦しさを感じてしまう可能性があります。さらに、組織に変化をもたらさないため、新たな環境への適応が求められる状況においては、官僚的リーダーシップが不利に働くでしょう。現在の不確実な状況やデジタルの活用される時代に、人間よりも機械の方が優れているのではないでしょうか。
コーチングリーダーシップ
コーチングリーダーシップとは、コーチングの心得を持ったリーダーが発揮するリーダーシップです。コーチングとは、メンバー1人ひとりの目標達成に伴走し、自発的な成長を促すスキルです。メンバーが自発的に目標達成に向かって動くようになれば、組織全体のパフォーマンスも大きく上がるでしょう。
このタイプのリーダーシップは、リーダーとメンバーにとって最もメリットが多いとされています。
しかし、コーチングの技術そのものが一朝一夕で身につくものではないことから、あまり活用されていないのが実情です。仮にコーチングのスキルを持っていればメンバーの強みを把握し、新たなスキルの開発につなげることができます。その結果、個々のメンバーが自分自身に自信を持つようになり、活気のある環境を実現できるでしょう。
コーチングリーダーシップには多くの利点がある一方で、ヒリヒリとした議論やメンバーとのコンフリクトが求められるシーンでは本領を発揮できません。指導や指示が必要なメンバーにおいては別のアプローチが求められます。
サーバントリーダーシップ
サーバントリーダーシップとは、メンバーに対する奉仕を前提にした上でメンバーを導くことに主眼を置いたリーダーシップ像です。サーバントとは、日本語で奉仕者や使用人という意味であり、このことからリーダーからメンバーへの奉仕が重んじられていることが分かります。
リーダーの尽力によって、チームメンバーが働きやすい環境が実現すると組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。また、サーバントリーダーシップにおいては、メンバーから厚い信頼が得られる可能性があることも特筆すべき点です。サーバントリーダーシップにおけるリーダーは、メンバーへの奉仕を通じて、メンバーの忠誠心、仕事への士気、生産性を高めることが可能です。また、メンバーが力を発揮できる環境づくりを重視することから、メンバーの能動的な試みや主体的なアクションを促進することができます。
ただサーバントリーダーシップにおけるリーダーは、自分のことよりもチームへの奉仕を優先させる傾向にあるため、リーダーに負荷が集中し、疲弊して燃え尽きてしまうリスクがあります。一歩間違うとサーバントと標榜しながら、メンバーに責任や実行を押し付けているかもしれません。
ビジョナリーリーダーシップ
ビジョナリーリーダーシップとは、メンバーに中長期的なビジョンを示すことによって刺激を与え、組織に変革をもたらせるリーダーシップです。
リーダーが掲げる新しいアイデアに対してメンバーからの信頼を獲得することにより、変革に向けて強力な推進力を獲得することができます。中長期的なビジョンに基づく先見の明を持ったリーダーは、組織において強力な絆を確立し、一丸となって目標に向かっていくことができます。
ビジョナリーリーダーシップを持つとされるリーダーは、自分が掲げたビジョンに納得感を持ってもらうために、組織のメンバーとのコミュニケーションを重視し、常に信頼関係を育むよう努めています。ビジョナリーリーダーシップは、中長期的なビジョンが組織全体で共有されることにより、組織に一体感をもたらすことができます。特に、時代遅れの組織風土や慣行に対して抜本的な改革を行いたい際に、ビジョナリーリーダーシップの効果を発揮するでしょう。ビジョナリーリーダーシップによって率いられる組織では、中長期的なビジョンが重視されるため、直近で差し迫っている課題や短期的な目標が軽視されてしまうリスクがあります。つまり、視座の高さゆえに、現実にある壁や問題が見えにくい一面もあります。また信頼関係で手にしたメンバーのモチベーションを思いのままにしてはいないでしょうか?
リーダーはこうあるべきだは間違いかもしれない
リーダーはこうあるべきだというリーダーシップ論が、世間一般には溢れています。しかし、実際にはこのような一般論で説かれるリーダー像が必ずしも正しくないことがあります。特に、リーダーは一人が担うべきとされる風潮がありますが、場合によっては複数人でリーダーを担う方がチームとして良い方向に進むこともあるでしょう。ここでは、一般的なリーダーシップ論が当てはまらないケースについてみていきます。
状況や環境によりリーダーは一人よりも複数いたほうが良い
本来、リーダーは一人に委ねられるケースが多いですが、場合によっては複数のリーダーがいた方が良いこともあります。もし、リーダーが一人だけである場合、一人に決定権が委ねられ、判断を誤った際の軌道修正が難しくなるでしょう。また、リーダーとしての業務が集中してしまい、疲弊する可能性もあります。
リーダーを複数人立てた場合は、相互に協力しながらより広い視点で情報収集と判断を行うことが可能です。また、それぞれのリーダーが持つ知識や経験、スキルといった強みを生かすことができるでしょう。さらにリーダーの一人が離脱せざるを得なくなったとしても、チーム全体の動きが止まらないというメリットもあります。
自分の強みを発揮できるケースが変えれば全員がリーダーになれる
自分自身の強みが発揮できるリーダーシップスタイルを見つけるためには、自分が持つ強みを磨き、それが発揮できる課題とケースを探すことが重要です。
そのためにはまず、自分が置かれた状況や組織全体で目指すべき方向性に対して、自分自身の個性や強みが適切な形で発揮できるか照らし合わせてみましょう。後述の通り、リーダーシップのタイプやこれらを発揮するのに必要なスキルは多岐に渡ります。このことから、全ての人にリーダーになる素質はあるといえるでしょう。まずは自分が自信を持てる専門性やリーダーシップのスタイルを探すことから始めることが重要です。
リーダーシップを発揮するためのスキルの具体例
リーダーシップの発揮は、コミュニケーションによって大きく影響されることがほとんどです。もちろん、行動や意思決定なども必要ですが、コミュニケーションが非常に重要な要素となります。リーダーとしての素質を持っていても、周囲に伝える手段がなければ意味がありません。また、以下に示すコミュニケーションスキルは個性や素質とは異なり、トレーニングによって誰でも身に付けることができます。
ディスカッション
ディスカッションとは、一つのテーマに対して意見を出し合うことにより、全員が納得できる形での結論を見いだす取り組みのことです。ディスカッションは、後述するディベートとは違い、意見の正しさを競うわけではないことが特徴です。
ディスカッションは特定のテーマにおいて深い議論ができるため、意思決定の手段として役立ちます。リーダーには意思決定を行う機会が数多く訪れるでしょう。組織の総意をまとめるためには、リーダー自身がディスカッションのスキルを持つ必要があります。
対話
対話とは意見の違いがあることを前提にした上で、あるテーマに基づいて話し合うことを指します。組織には様々な価値観や事情を持ったメンバーがいるため、組織の方向性を決めるためにはメンバーとの対話が欠かせません。
一方、それ相応の職権が与えられていれば、対話を省いてリーダーの一存で組織の方向性を決めることはできます。しかし、意見を無視されたメンバー達は主体的に行動せず、組織としてのパフォーマンスが下がってしまう可能性があるので優れたリーダーには、対話のスキルも求められるのです。
ディベート
ディベートとは、賛否両論がある特定のテーマについて肯定側と否定側に分かれ、それぞれ与えられた役割に沿って議論する手法です。肯定と否定に関わらず、自分たちの意見を相手に認めさせることがディベートの目的となります。
ディベートにおいては、意見の正しさを証明するデータを集め、論理的に説明しなければなりません。ディベートを通して、ビジネスで必要な論理的思考力や限られた時間で相手を説得するスキルが磨かれます。
リーダーは組織内のメンバーや組織外の関係者を論理的に説得する場面に直面します。そのような時に、ディベートで培った論理的思考力が役に立つでしょう。
プロジェクトファシリテーション
プロジェクトファシリテーションとは、プロジェクトの状況に応じて柔軟に方向修正しながら、メンバーの能力を最大限に引き出すための取り組みを指します。プロジェクトファシリテーションを行う前提として、プロジェクトの目的と遂行の道筋が明確になっている必要があります。また、メンバーとの十分かつ円滑なコミュニケーションを行うことも重要です。
近年はIT技術の発達などにより社会が変化するスピードが上がっています。そのため、変化を前提とした
プロジェクトの進め方が求められているのです。このような状況下でリーダーシップを発揮するためには、プロジェクトファシリテーションは必要なスキルといえるでしょう。
ストーリーテリング
ストーリーテリングとは、相手により深く印象を与えるために、伝えたい内容をストーリーに仕立てる手法です。ストーリーテリングの手法を使うことで、伝えたい内容が聞き手の記憶に残り、共感を得やすくなるというメリットがあります。
リーダーはチームの目標を達成するために、メンバーを動かす必要があります。しかし、ただ指示するだけでは不十分であり、メンバーが十分に納得感と共感を持った状態で行動に移してもらうことが重要です。チームメンバーに主体的に動いてもらうための一つの手段としてストーリーテリングが有効です。
レトリック
レトリックとは、日本語では「修辞法」と呼ばれ、コミュニケーションにおいて相手を説得あるいは納得させるための手法やテクニックを指します。具体的には、比喩、反語などがレトリックの手法として挙げられます。レトリックは一般的に聴衆に納得感を与え鼓舞するための手法として用いられ、米国大統領の演説などで使われることが多いです。
特に、ありのままの言葉で伝えると相手に自分の意図が十分に伝わらないと判断した際に、レトリックを使うとより説得しやすくなるでしょう。一方で、語り手の都合が良い形に話す内容を変えてしまう側面もあるため、場合によっては詭弁になりうるという点には注意が必要です。
これからの時代に必要なリーダーシップの具体例
理想とされるリーダーシップ像は時代の要請によって常に変わります。ここでは、最近話題となっているリーダーシップについていくつか具体例を紹介します。
デジタルリーダーシップ
IT技術の発展に伴い、DXを始めとしたデジタルを活用した試みがより一層重要になっています。デジタルが必要されているからこそ、技術やテクノロジーをもった人間がビジョンを創るのです。そのため、これからのリーダーには、デジタル技術そのものや動向について深く理解し、組織のデジタル化を促進することが求められます。
デジタルリーダーシップを発揮するには、将来的なビジョンに基づきDXによって実現する組織の将来像をメンバーに示すことが重要です。また、DXにはこれまでの業務や価値観の変革も伴うため、反対するメンバーとの粘り強い対話を始めとしたコミュニケーションに関するスキルも必要になるでしょう。
インクルーシブリーダーシップ
インクルーシブリーダーシップとは、メンバーの多様な価値観を受け入れた上で、一人一人が持つリーダーとしての能力を活かし、組織全体のパフォーマンス向上につなげる考え方です。
イノベーションのカギとして組織の多様性が重要視されつつある中で、リーダーには異なるバックグラウンド、文化、価値観を持つメンバーに対する寛容さが求められます。また、多様なメンバーの個性を理解し、彼らが力を発揮できるような環境作りも重要です。
インクルーシブリーダーシップにおけるリーダーは、多様なメンバーに対する傾聴力、自らが規範となり行動する力などを備えていることが求められています。
デザイン思考リーダーシップ
デザイン思考は、ある製品やサービスの使い手の立場に立って、潜在的なニーズを把握する手法です。デザイン思考では物事の原因と結果といった論理的な側面に留まらず、使い手の感情といった主観的な部分にも踏み込むことが大きな特徴です。
変化の激しい現代においては、消費者が求める商品やサービスも刻々と変化していきます。リーダーには、デザイン思考のフレームワークに基づいた顧客起点の発想が求められるでしょう。
グローバルリーダーシップ
現代のビジネスでは、国境という概念がなくなりつつあり、グローバル化が急速に進んでいます。そのため、多くの企業では国際的に活躍できるグローバル人材を求めています。当然ながら組織のリーダーにも、国際競争に対峙する上でグローバルな視点が必要になるでしょう。
グローバルリーダーシップにおいては、語学力に留まらず多彩なスキルが必要です。多様なバックグランドを持つメンバーを指揮することから、インクルーシブリーダーシップの側面も必要になるでしょう。また、今後の国際情勢を見通し明確なビジョンを示すことも重要です。
まとめ
リーダーシップはビジネスで頻繁に出現する用語ではあるものの、抽象的な概念であるため人によって解釈が異なります。実際、リーダーシップには数多くの種類があり、求められるスキルも多岐に渡ります。しかし、多様なリーダーシップがあるがゆえに、自分の個性と強みが発揮できれば誰にでもリーダーになる資質があるといえるでしょう。
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株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
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