ブレインストーミングとは?やり方やルール、出たアイデアを生かす方法を詳しく解説
目次
新しい事業を立ち上げる際や、職場で問題を解決するためにはアイデアが必要です。しかし、なかなか出ないこともあるでしょう。アイデアを引き出したい場合は「ブレインストーミング」が有効となります。
ブレインストーミングとは、多くの人が集まり自由な発想でアイデアを出し合う手法です。適切な環境を作り出すことで、新たな視点や斬新なアイデアが生まれやすくなります。
では、ブレインストーミングをうまく行うためのポイントには、どのようなものがあるのでしょうか。ブレインストーミングを実践で使いこなすためのポイントや、手順や注意点を詳しく解説します。
ブレインストーミングとは
ブレインストーミング(ブレスト)は会議の手法の1つで、1950年ごろに誕生しました。複数の人が議論に参加することでアイデアを出し合い、創造的な発想を生み出すことを目的としています。
「ブレインストーミング」という言葉は、1950年頃にアメリカの実業家であるアレックス・F・オズボーン氏が考案した、アイデア創出のプロセスを表現するために使われた造語です。”Brain”(脳)と”storm”(嵐)を組み合わせて、「脳の嵐」という意味になります。
ブレインストーミングでは、参加者が自由に意見を出し合い、アイデアを共有することで新たな発想を生み出します。そのためには、参加者が自由な発想を行いやすいよう、アイデアが受け入れられる環境を整えることが大切になります。
ブレインストーミングは、10人以下の複数人が集まって行うことが一般的ですが、1人でアイデア出しを行う場合もブレインストーミングと呼ばれています。個人の場合も集団と同じく、思いついたアイデアを紙などにどんどん書き出していき、最終的に精査する形を取ります。
また、ブレインストーミングはアイデア出しだけでなく、アイデア・発想の整理に役立てることができるのもポイントです。アイデア・発想を可視化し、関連付けカテゴライズすることにより、より具体的なアクションを策定することができます。
とは言え、現代では「ブレインストーミングをします」と改まって行うことはほとんどありません。アイデア出しという行為そのものが、ブレインストーミングという意味にすらなっており、何気ない会話の中から自然と行われることも多いでしょう。
なぜブレインストーミングを行うのか
競争の激化や市場環境の複雑化、多様性への対処など、現代のビジネスには多くの課題・問題が山積し、課題・問題解決において、多様な情報・知識・経験がますます重要になっています。このような状況下で再び注目されているのが、アイデア出し・創造性の発揮・情報整理の効果を持つブレインストーミングです。ブレインストーミングは参加者が多様な立場・視点から多角度的にアイデアを出し合えるため、とくに現代のビジネスで障壁となっている複雑な問題・課題解決に対して、大きな効果を発揮します。
多様性とブレインストーミングの組み合わせは、異なるバックグラウンド・価値観、あるいは専門知識を持つ人々がそれぞれの視点からアイデアを出し合い、それらを集合知とすることで新たな案を生み出せます。
現代のビジネスの現場には、さまざまなバックグラウンドや価値観を持つ人々が集まります。こういった多様性は、価値のあるアイデアの創出には重要ですが、こういった場面でこそ、集団でのアイデア出しを行うブレインストーミングが適切に機能するでしょう。
ブレインストーミングの効果
ブレインストーミングは、すべての参加者が自由に意見を出し合える状況を作れるため、より相手との距離を縮められ、コミュニケーションを活性化させることができます。アイデアに対し、他の参加者が肯定的な態度で受け取りつつも、アドバイスやフィードバックを行うため、参加者同士の信頼関係を深めることができます。
通常のディスカッションや議論などでは、意見の対立や否定が起こり、参加者同士の関係性や雰囲気が悪くなることが多々あります。
しかし、ブレインストーミングではテーマに対して、量的な発想や奇抜な発想に焦点を当てているため、相手の意見を否定しません。相手の意見を否定しないということは、実は結構難しく、「腰を折る」ような発言が無意識に出てしまい雰囲気を一変することは大なり小なりよくあります。参加者同士の関係性や雰囲気を維持することはブレインストーミングにおいて最も重要であるため、注意が必要です。
また、さまざまなアイデアが持ち寄られるブレインストーミングでは、問題解決能力を大きく向上させられる効果もあります。たとえば、会議等での発言に慣れていない参加者も、気軽にアイデアを発信したり、他の参加者のアイデアを仕入れたりできるのがブレインストーミングの特徴です。アイデア共有のしやすさは、複数の視点のアイデアを効率的に集めることを可能にするため、より問題解決の施策を打ち出せる状態に近づけます。
ブレインストーミングによって参加者の創造性・問題解決能力を引き出すことで、日々の業務や将来の大きなプロジェクト・事業の成果に繋げることができるでしょう。
ブレインストーミングは、広く多くのビジネスシーンで活用価値は明白になりながらも、あまり構造化されていないメソッドであり、手法でもあります。つまり再現性が弱いとも言えます。
ブレインストーミングには「笑い」が必要!アイデアとお笑いの相似
ブレインストーミングの主な目的は、アイデアを出すことです。アイデアとは、新しい工夫や着想のことであり、創造性に富んだ思いつきを指します。これは哲学的な「イデア」ではなく、実用的で創造的な発想のことです。
アイデアはお笑いの構造にも似ていることがあり、笑いとアイデアには共通する点があると言えます。ここでは、笑いとアイデアの共通性から、ブレインストーミングについて構造的に解説します。
ブレインストーミングと笑いの「通常性と異常性」について
アイデアの本質を理解するために、お笑いやエンターテインメントの仕組みを考えてみましょう。漫才や落語などでは、「ボケ」と「突っ込み」が笑いを生み出す要素です。「ボケ」は通常の常識や通例から外れた行動で緊張を生み、「突っ込み」はそれに常識を付け加えることで緩和を生み出し笑いが起きます。観客はこれらの対比から笑いを引き出します。
お笑いタレント松本人志の持論である緊張と緩和の概念です。
ブレインストーミングにおいても、アイデアは常識や既存のやり方とは異なる異常性を持つことが重要です。ビジネスにおいては、前提や通常性があり、それに対して異常性を取り入れることが、創造的なアイデアです。お笑いを例にすれば、「ずっこける人」を見て笑うのは、人は「ずっこけない」という通常性があるからです。
ブレインストーミングは、新たなアイデアを投入する場です。つまり、アイデアは、異常であり、笑ってしまうくらい、馬鹿馬鹿しいものである必要があります。笑えるものだけではなく、「ギョッ!」と恐怖するようなアイデア、「なるほど!」という驚嘆するようなアイデアなど、アイデアは異常そのものであり、周囲が直感的に反応するようなものです。ブレインストーミングは、異常を生産する場であるからこそ、従来の通常にとらわれない発想や創造性を引き出し、新しいアイデアを生み出すことができます。しかし、アイデアは笑いを取ることが目的ではないので、手段と目的を間違えないようにしましょう。
アイデアも笑いも共通言語と文脈が必要
日本の漫才や落語は、海外の文化や風習、常識が異なる人から見ると理解しにくい場合があります。同様に、日本人が海外のコメディを理解できないこともあります。これは、異なる文化や共通認識、言語の違いによる笑いの感覚の違いがあるためです。
ブレインストーミングにおいても、参加者が一定の共通認識や共通言語を持たない場合は、アイデアが出にくくなりますし、出たとしても他の参加者には理解されない可能性があります。
また、問題解決や新規事業のアイデアにおいては、異なる視点や異常性を取り入れることが重要ですが、集団や組織はある一定の共通言語や文脈が必要です。通常性としての共通言語や文脈は前提にありつつ、異常性としてのアイデアを出すという、非常に際どい線引きが存在します。新鮮な視点を持つ若手やニューカマーはアイデアの際どい線引きの境界地にいるために、斬新なアイデアが創造できるのです。
ブレインストーミングは無責任な立場が必要
19世紀後半のアンリ=ルイ・ベルクソンは、「笑い」について、「笑いは『無感動』『無関心』から生まれる」と述べています。つまり、自分の子どもや彼氏・彼女が「ずっこけて」笑うことはありません。笑いは、通常、笑う対象に対して感情や思いがまったくない人に起きるものなのです。
ビジネスの現場においても、ブレインストーミングを行う際には、異常性を伴うアイデアなど多くのアイデアを創出するために、無関心で無感動な第三者が必要です。
ブレインストーミングは、アイデアという異常なものを創出するために行われますが、そのためには無責任に笑ったり賞賛したりすることが内蔵されている必要があります。ブレインストーミングにおいて、アイデアに対して否定的な発言を禁じているのは、このような構造によるものです。ブレインストーミングにおいて、より有用なアイデアを出すためには、無責任な立場の人が参加する必要があると言えるでしょう。
つまり、その課題やテーマに対する距離が必要だということです。非常に高いオーナーシップが全員にあり、かつ自分ゴト化されているメンバーから、奇抜で斬新なアイデアは出にくい可能性があります。
ブレインストーミングの無責任と責任のジレンマ
ビジネスのブレインストーミングには、参加者は当事者意識を持って参加しています。しかし、とくに複雑で専門的な問題において、参加者はクリティカルなアイデアのために深い共通言語や文脈を必要とする一方で、無責任な第三者のような視点も必要です。このジレンマは現代の高度で複雑な問題を解決する際によく見られます。そのため、経営意思決定の場でブレインストーミングが行われる企業は少ないかもしれません。
ブレインストーミングの問題は、参加者の能力やスキルの問題ではなく、ジレンマによるものであることを理解することが重要です。ブレインストーミングをゲームやエンターテインメントと捉え、異常性を産み出す場として捉えることで、創造的なアイデアの発想が促進されます。
重要で複雑な問題に対しては、ディベートのようなゲームを通じて、参加者に役割と距離を持たせることが有効です。これによって、まったく新しい発想や解決策が生まれる可能性が高まります。
これは、意図的に、ブレストのテーマから、距離をおけるツールです。ディベートも、シックスハットも、無責任を演じているとも言い換えられます。
つまり、アイデアや発想は、問題やテーマに対して、多少の距離がないと難しく、ブレインストーミングは、意図的に距離を取る非日常の場をつくることにあります。
喜怒哀楽のある職場や組織の方がブレインストーミングは機能する
アンリ=ルイ・ベルクソンの言葉によれば、「笑いは人間味であり、これ以外におかしみがあることはない」と言っています。つまり、人は物や物事には笑わず、人間自体から笑いが生まれるということです。職場においては、組織の中で見られるこわばりやぎこちなさなどの問題を、真正面から対峙せずにブレインストーミングを使って笑いやアイデアに変えることが重要です。
ブレインストーミングは、柔軟で創造的な発想を促進し、問題を笑いやアイデアに変えるための有効な手段となします。職場における笑いやアイデアは、組織の活性化や問題解決に貢献します。それによって、職場の雰囲気がより良くなり、チームのコミュニケーションが活発化することで、成果を上げることができるでしょう。人間味のあるコミュニケーションを大切にし、ブレインストーミングを通して、笑いとアイデアを取り入れることで、より豊かな職場環境を実現することができるのです。
職場や組織には、業績向上という命題が存在します。しかし、職場や組織に、業績向上という合理性とは相容れない人間味が存在していることも、事実としてあります。時には、職場や組織と一定の距離を置き、職場仲間と一緒に、組織や職場の問題について面白おかしく笑うことや、喜怒哀楽を促進することは、業績向上やイノベーションにつながるのではないでしょうか?
ブレインストーミングが機能しないのはなぜか?
企業・組織内でアイデアが出ない、または社員からのボトムアップが得られない場合、ブレインストーミングで解決しようと発想するケースも多いでしょう。しかし、ただ漫然と形式的にアイデアを出し合っている場合、ブレインストーミングでも解決しない可能性があります。
ブレインストーミングは、専門家や社員が熟考しても結論が出ない場合など、あと一歩踏み出せない状態の問題・課題などにこそ、機能する手法です。チーム・部署としての行動に対して、これまでのやり方・前提を疑う熱量が必要となります。
ここでは、ブレインストーミングが機能しない状況について解説します。
職場に雑談がない
普段から職場に雑談や会話がない場合は、ブレインストーミングをいきなり実施しても効果が薄いことがあります。そのため、まず前提として、ブレインストーミングの目的を下げることが重要です。
具体的には、ブレインストーミングを「雑談を増やす機会」として位置付けてみるなど、アイデアの量や質には一切こだわらず、ブレインストーミングのルールに従って、とにかくアイデアを出してみるのです。継続的に行っていくうちに、参加者間の雑談が増えていきます。そして徐々に、本来のブレインストーミングの目的であるアイデアの量や質を向上させることができるようになるでしょう。
また、「雑談がない」=「人間味のない職場」である場合は、ブレンストーミングの手法論では解決できません。笑いとの比較の中で言いましたが、アイデアや発想は、人間味が必要であり、業務や課題との距離が必要です。つまり、職場にこのような余白がない場合は、職場の問題として別のアプローチで解決する必要があります。
問題やテーマが複雑かつサイロ化している
参加者が共通認識を持っておらず、テーマが複雑な問題の場合、ブレストを実施することが難しい状況があります。とくにデータ分析のチームや問題解決を主とするプロジェクトチームが、グループシンクの罠にはまって進展がない状況に陥ることがあります。
そのような場合は、ゲームやツールを導入して、ブレインストーミングを行うことが有効です。外部の第三者(テーマにおいては非専門の人)を加えることも効果的でしょう。これにより、問題やテーマに対して強制的に距離を取ることができるため、新しい視点や異なる観点からのアイデアが生まれやすくなります。
ディベートやシックスハットなど、前提を壊すようなアイデアを行うことが有効です。これらの手法は、参加者に役割を与え、異なる立場からの意見を出すことで、新しい発想を生み出すことができます。とくに雑な問題に対しては、このようなアプローチが問題の解決やアイデアの拡大につながるでしょう。
アイデアを出しても実行されない風土がある
新規事業や現場改善を標榜しながらも、アイデアを出しても意思決定されない組織は存在します。アイデアを出すことが儀式的な行為となり、実践されない、実行されないという状況もあるでしょう。アイデアの実行が行われなければ、ブレインストーミングはただの雑談やおしゃべりになってしまい、参加者もその意欲を失ってしまいます。
また、アイデアを出すことと同じくらい重要なのは、アイデアの実行後に振り返りを行うことです。実行されたアイデアの結果を見直し、どうだったのかを評価し、次のステップを決定することが必要です。アイデアの実行と振り返りをセットで行わなければ、ブレインストーミングは本来の目的を果たさず、参加者が関心を失ってしまいます。
ブレインストーミングのルール
ブレインストーミングを行う際に、手順以上に重要になるのがルールの遵守です。ブレインストーミングには発案者であるアレックス・F・オズボーンによるルールがあります。ここではそのルールを紹介しますが、どのルールもブレインストーミングの根幹に関わるため、必ず守らなければならない大切なものです。
批判をしない
ブレインストーミングの大前提として、参加者が出したアイデアを他の参加者が批判・否定するような言動を取らないことが挙げられます。批判・否定が出てくる場であると、参加者がアイデア出しをためらってしまい、場の空気や他の参加者の顔色に気持ちが引っ張られ、創造性を阻害してしまうからです。
そのため、ブレインストーミングの効果を十分に発揮するには、あらゆる意見を受容する場の雰囲気を作ることが重要になります。参加者はそれぞれ異なるバックグラウンドや価値観、視点を持っており、その個性から出てくるアイデアは貴重なものです。仮に他の参加者のアイデアが間違っていると思っても、客観的な視点からそのアイデアの背景や要素について分析し、有益なエッセンスが含まれていないかを判別することが望ましいと言えます。
ただし、アイデアではなく、ブレインストーミングのテーマそのものへの批判・否定は問題ありません。
多様性を尊重する
参加者の多様なバックグラウンドや専門知識、価値観などを尊重することは、創造的なアイデアを出すうえで不可欠です。それぞれの個人が持つ独自の視点・経験は、新たな洞察や解釈を提示する可能性を秘めており、ブレインストーミングによるアイデア出しをより効果的なものにしてくれます。
また、他の参加者を尊重する際は、参加者の喜怒哀楽をよく観察することも大切です。表情や感情の変化から参加者の反応や言動の意図を読み取り、コミュニケーションを深めることができます。それにより、より深く洗練されたアイデア出しにつなげることができるでしょう。
自由にアイデアを出す
ブレインストーミングで肝となるのが、自由なアイデア出しです。どのような考え・発想でもアイデアとして出し合うことが重要で、道徳に反するものやテーマに関係がなければ、どのようなアイデアでも積極的に出していくことが求められます。
そのためには、参加者全員が気兼ねなく発言できる空気を作ることが必須で、砕けた雰囲気、冗談や軽口を叩きながら和気あいあいと進むくらいが丁度良いと言えます。
遠慮や抑制は禁物であり、思いつきでも適当でも良いので、アイデアを発してみることが何より大切です。自由奔放にアイデア出しが行われる環境を構築することにより、参加者一人ひとりの積極性が高まり、創造性のある意義深い議論を展開することができます。
量を重視する
ブレインストーミングのアイデア出しでは、参加者が可能な限り多くのアイデアを出すことを重視します。数で質の向上に繋げるという発想をするため、まずはささいなアイデアでも出してみることが必須になります。
また、量ではなく質を重視してしまうと、「批判されない質の高いアイデアを出そう」「他の参加者より良いアイデアを出さなければならない」といった抑圧がかかってしまい、柔軟な発想を阻害してしまう可能性があります。
楽しむ姿勢
ブレインストーミングは、問題解決やアイデアの手法ではありつつも、エンターテインメントとして捉えて参加するべきです。ブレンストーミングは、異常や馬鹿馬鹿しいイベントとして認識され、参加すること自体にワクワク感があるくらいが一番良いのです。
フィードバックは後回しにする
まずはアイデア出しを徹底し、フィードバックは後で行うことが、ブレインストーミングの基本的な流れです。アイデア出しの段階で、たとえフィードバックの意図があろうとも、批判・否定のニュアンスを含んだ言動を他の参加者のアイデアに対して取ってはいけません。
このフェーズでは、徹底して参加者がアイデアを出しやすい状況にすることを優先します。アイデアを出し尽くすことにより、後から調整・工夫を施したり、質の高いアイデアにブラッシュアップしたりするための量を稼いでおきましょう。
アイデアが出つくした段階で整理し、フィードバックのフェーズに移行します。出たアイデアに対し、改善点や客観的な評価を述べ合い、組み合わせて新たなアイデアを生み出すといった作業を行います。
アイデア出しとフィードバックのフェーズを分けることで、参加者のアイデア出しにスピード感と創造性を付与することは、ブレインストーミングの基本ルールの1つになります。
ブレインストーミングの基本的な手順
ブレインストーミングはシンプルでわかりやすい手法ですが、守らなければならない手順は存在します。ここでは、一般的なブレインストーミングの手順について解説します。
問題やテーマの明確化と一定の前提の共有
ブレインストーミングを実行するには、まずは解決すべき問題・課題をテーマに落とし込み、明確にすることが重要です。あわせて、参加者全員が状況・用語などの定義に一定の理解が持てる状態を作ることも必要になります。
これらはブレインストーミングの土台であり、アイデア出しを行った際の結果を左右するものです。とくにテーマが漠然としていると、問題・課題からは遠い方向に進んでしまう可能性があるため、じっくり準備する必要があります。
土台ができたら、ブレインストーミングの目的・ゴール設定を行います。目的・ゴールを明確にすることで、テーマに必要なアイデア・意見かどうかを見極め、よりピンポイントに問題・課題解決に訴求できるアイデア出しが行えるからです。
注意点として、参加者がアイデアを出しにくいテーマを設定してしまうことが挙げられます。たとえば「営業部の業績を上げるにはどうすればいいか?」といった抽象度が高すぎるものや、「〇〇という部署の人間関係が悪いから改善したい」といった感情を刺激してしまうものです。このようなテーマについてアイデア出しを行う場合は、問いの角度(言い方)を変えたり、参加者がアイデアを出しやすい切り口を探ったりなどの工夫が必須です。
また、ブレインストーミングの主催者は、前提情報を調整する役割を果たす必要があります。情報が多すぎると、アイデアが出にくくなるジレンマに陥ることもあるため、目的とゴールは設定しつつも、周辺の情報を少なくして、必要な情報を段階的に提供すると良いでしょう。経験に基づいた的確な前提情報の提供が求められます。そのためには、ルールの設定や場の設定も非常に重要となります。
参加者のアイデア出し
テーマ設定と参加者全員の一定の知識・前提の共有ができたら、アイデア出しに入ります。参加者全員が創造的にアイデア出しを行うことを奨励し、質よりも量を重視して進めます。
ポイントになるのは、スピード感を持って可能な限り多くのアイデアを出すことです。ブレインストーミングは、ひとつの素晴らしいアイデアを捻り出すのではなく、とりあえず多くのアイデアを出し、後から組み合わせ、改善することで質を上げていく手法です。
どのような奇抜なアイデアでも、突拍子のないアイデアでもかまいません。「これは言っていいのか?」「却下されたらどうしよう」などとは考えず、参加者が一丸となってアイデア出しに没頭することが大切です。
アイデアの整理
アイデア出しが終了したら、出たアイデアを整理し、関連するものや重複するものを分類します。この段階で終了ではなく、整理されたアイデアをもとに参加者がさらに意見を出し合い、アイデアを深堀したり、改善を加えたりすることで洗練させていきます。
また、アイデア同士を組み合わせることで、新たなアイデアが生まれることもあります。アイデア出しの段階と同じように、活発に意見を出し合うことが大切です。
ブレインストーミングはアイデア出しに優れていると思われがちですが、実はアイデアの整理の段階がもっとも重要になります。出されたアイデアを目的・ゴールに対し、どのように調理・加工できるかが、ブレインストーミングを成功させるための核と言っても過言ではありません。
そのためには、ブレインストーミングにおいて、司会者を置くことは非常に重要です。司会者は、アイデアを出しやすい環境を作り上げ、参加者が自由に発想できるように導く役割を担います。ファシリテーションやアイデアの許容と肯定により、司会者は、ブレインストーミングの進行を適切にコントロールし、参加者全員が活発に参加できるように促します。
ブレインストーミングで出たアイデアを活かす方法
ブレインストーミングで創造的・革新的なアイデアを出しても、実務や行動への落とし込み方が間違っていると、十分な効果を得ることができません。アイデアを最大限活用するためには、実務や行動に落とし込む前に以下の手順を行うことが重要です。
- 重要度の設定
- アイデアの詳細化
- フィードバックの反映
それぞれの手順について解説します。
1.重要度の設定
ブレインストーミングで出た各アイデアの、実現可能性や重要度の評価基準を設けます。その評価基準にもとづき、優先度の高いアイデアから順に選択します。
2.アイデアの詳細化
選ばれたアイデアに対して、詳細な内容や具体的な方法をまとめます。実務上における具体的なアクションプランを策定し、実行しやすいように計画を作ります。
3.フィードバックの反映
アイデアに対するフィードバックや評価を参考にして、アイデアを改善します。また、この段階で新たなアイデアを取り入れることも可能です。
これらの手順を踏むことで、ブレインストーミングで生まれたアイデアをブラッシュアップし、実務や実践上で最大限に活用することができます。適切な評価基準を設定し、具体的な計画を立て、フィードバックを取り入れることにより、実務や現実的な行動にアイデアを適合させていくことが重要です。
まとめ
ブレインストーミングを行う際は、参加者の多様な発想を許容し、自由にアイデア出しが行える環境の土台作りが重要です。これまでのやり方や慣習にとらわれず、参加者が気軽に発言できるよう砕けた雰囲気を作りましょう。
そのうえで基本的な手順とルールを守り、アイデア出しを行うことが、問題・課題に対する質の高い解決策を出すことのポイントになります。
ただし、ブレインストーミングを使ったからといって、必ずしも成果につながるわけではありません。前提として、社員が業務に真摯に向き合う姿勢や、問題・課題解決に熱量を持ってコミットする状態がなければ、ブレインストーミングの効果を引き出すことは難しいでしょう。
そのためには、社員の日々の業務への携わり方を、企業・組織としてデザインすることも忘れないでください。
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先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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