2023.11.08

#組織開発

大企業の新規事業が失敗するのはなぜなのか?その原因と対策を解説!

大企業の新規事業が失敗する原因と対策を解説!

変化の激しい現代では、顧客や市場ニーズも急速に変化しており、既存事業がうまくいっている大企業においても、新規事業開発を積極的に行わなければなりません。中小企業やベンチャー企業よりも多くのリソースを割けても、大企業ならではの問題点もあり、新規事業を成功させることは難しいものです。この記事では、新規事業の定義から、大企業における新規事業がなぜうまくいかないのか、その原因と対策まで解説します。

新規事業とは

冒頭で述べたとおり、競争社会を生き残るためには既存の事業だけに注力していればいいという訳ではありません。ときには、新しい事業を始めなければならない場面も出てくるでしょう。まずは、新規事業の定義や必要な理由を解説します。

新規事業の定義

新規事業を考える上で、特に重要なのは「商品・サービス」と「市場」という2つの視点です。この2つの視点を、それぞれが「既存」か「新規」かという軸で評価し、組み合わせることで、新規事業の定義を明確にすることができます。「商品・サービス」が新規である場合、一例として、クッキーを販売しているお菓子メーカーが、抹茶味のクッキーを開発することは、「新商品の開発」となります。

一方、「市場」を広げる場合を考えてみましょう。商品やサービスをそのままに、今までアプローチできていなかったターゲット層へのリーチを目指す場合、これは「新市場の開拓」といえます。

そして「商品・サービス」と「市場」がともに新規である場合は、「多角化」と呼ばれることがあります。これは、新しい商品やサービスを開発すると同時に、新たな顧客層にもアプローチし、事業を拡大していくことを意味します。
また、今回解説する「新規事業」は、現在既に、既存地事業が存在し、その事業を継続収益を挙げながら、新しい事業を並行して創造するケースが当てはまります。

なぜ新規事業が必要なのか

多くの企業が新規事業に挑戦する理由には、国内市場の成熟化や、短期化する製品ライフサイクルが背景にあります。どのような商品やサービスであっても、ごく一部の定番商品を除き必ず衰退期が訪れます。殊に顧客や市場ニーズの変化、技術革新のスピードが加速化している現代においては、製品ライフサイクルが短縮化しているため、企業がビジネスを発展させるには積極的な姿勢が必要なのです。

これに加えて、バブル崩壊以降の30年間、デフレ化の中で、高度経済成長期の完成されたビジネスモデルの維持・改善をしつつも、新規事業の展開は続けられてきました。しかし、中国や韓国の台頭や、欧米のデジタルという競争に打ち勝つ程の新規事業の展開は出来ておらず、いよいよイノベーションレベルが必要になってきているのです。

また、事業開発計画を立てなければ、チャンスを逃したり、集中力を欠いたりすることになり、事業の失敗につながりかねません。優れた事業開発計画は、現在の市場に関する洞察を提供し、成長の機会を特定し、成功のためのロードマップを提供する必要があります。

しかしながら、新規事業を計画通りに進行できる可能性は限りなく低く、失敗の多いものです。従って、企業の上層部やその周囲は、新規事業がどう転んでも許容できる余裕と腹積もりを持たなければなりません

新規事業の失敗につながる問題点

新規事業の失敗につながる一般的な問題はいくつもあります。大企業の場合、これらの問題はさまざまな形で現れることがあります。ここでは、新規事業の失敗につながる最も一般的な問題をいくつか紹介します。

スキルに固執し、マインドセットが不十分

事業を始める前に適切な市場調査と分析を行う「マーケットリサーチと分析スキル」や、収益と支出の管理、予算計画、キャッシュフローの管理などを行う「財務管理スキル」など、新規事業を成功させるには、多岐にわたるスキルが必要とされています。

しかし、これはあくまで一般論であり、そもそも誰も開拓していない新規事業においては、成功を約束するスキルというものは存在しません。新規事業とは博打のようなものであり、ギャンブルに必勝スキルが存在しないのと同じであるため、スキルに固執するのは失敗の要因になり得ます。「馬券は買わなければ当たらない」のと同様に、新規事業についてもチャレンジをしない限り成功はありません。成功のために本当に必要なのは何度もチャレンジするマインド、いわば情熱のようなマインドなのです。どのような創業ベンチャーや個人事業主においても、必ず最初にやらなければならないことは、最初の顧客を発見・開拓することです。

販路が既にあり、そこに商品を流すというビジネスモデルもあるかもしれませんが、その場合でも、既存顧客に新商品を説明する必要があります。

売上が無い中で投資家や経営陣に対して今までにない市場や商品の価値を説明し、説得するという行為は営業と言えるかもしれません。しかし、営業スキルといった業務的なものではなく、粘り強く何度も何度も口説く気概が必要とされるのです

意思決定の遅さ

第二の問題は、大企業の規模や複雑さによる意思決定の遅さにあります。大企業の規模が大きく複雑なため、意思決定に時間がかかると、新規事業が競争優位に立つことが難しくなってしまいます。

大企業には往々にして、現在の主力事業を生み出し、拡大してきた経営者やベテラン社員が強い成功体験を持っています。企業の基盤を築いてきた自負を既存事業の関係者から新規事業を見ると、不確定要素や至らない点が目についてしまい「リソースを割くだけ無駄」という批判的な意見が噴出しがちです。そして、社内で影響力を持つ人々が新規事業に対する抵抗勢力となってしまうこともあるのです。

このように新規事業が成功しない、または生まれにくい背景には、チェレンジを否定的にとらえ、失敗を認めず現状を是とする既存事業のモノ見方・モノの聴き方・モノ意思決定などの平たく言えば、思い込みやバイアスといった組織上の問題が大きな要因として挙げられる場合があります

方向性が不明瞭

そもそも新規事業を何のために行うかについて、目的が定まっていない、把握できていない点も問題点として挙げられます。たとえば、新規事業担当者が自社で新しいビジネスを行う必要性について説明できなかったり、社内アイデアコンテストで本来の目的を忘れ、コンテストに通るアイデアに偏ってしまったりすることがあります。ビジョンやミッションを明確にし、既存事業にポジティブな影響を与えたり新しいインパクトを生み出したりする方向性を打ち出さなければ、部門全体で迷走する可能性もあるでしょう。CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)という選択肢も存在するため、新規企業を自社で進める意味や目的が不明瞭では、経営陣への答申も厳しいものになってしまいます。

新規事業が生み出されないのは、組織風土の問題か?新規事業が生み出されると組織風土が変わるのか?

「新たなアイデアが生まれないのは風土のせいだ」とする主張を度々耳にしますが、これは大きな間違いであると言えます。社長や役員といった経営陣が積極的に新たな事業に挑戦していく姿勢を見て、それに部下が追随していき、行動や結果に対する反応や評価が風土に影響を与え、その結果風土が変わっていくのです。つまり、組織変化や革新を恐れない風土をもたらすには、経営陣の姿勢が重要になるという事です。

新規事業がうまくいくための解決策

新規事業で失敗しないようにするためには、どのような解決策を取れば良いのでしょうか。以下に解説します。

プロフェッショナルの登用

業界を理解し、最適な戦略を見出すことができる業界のプロフェッショナルが参加することで新規事業におけるスキルや経験不足による失敗を回避することができます。新規事業に関するトレーニングやコーチングを行い、ベンチャーに関連するリスクとリターンを関係者に理解させることも有効でしょう。さらに、新規事業のスキルや知識を補うために、メンターシップ・プログラムを利用することも必要です。

上下左右の意思疎通をはかる

新規事業を推進するためには、既存事業部門、経営層、上司、部下など、様々な人や部門との良好な連携が必要です。企業が大きくなればなるほどコミュニケーションの問題は大きく頻繁に勃発するものです。これは、チームレベルのものから部門レベル、また経営層と現場との間でも発生しうるもので、従業員の統率や自主性を失ってしまうこともあるでしょう。

統率が取れていない場合は、リーダーがしっかりと権限を持ち、現場で部下を指揮しながら意思の疎通を図る必要があります。また、自主性を失った状態では社員に裁量を持たせ、チャレンジを是とする風土づくりが必要となります。

新規事業の意思決定を明確にし、多少の損失を恐れない

新規事業は圧倒的に失敗する確率の方が高い事業であると言っても過言ではありません。失敗を繰り返す中で、その失敗を次に活かすことができるか、熱意を失わずに次に挑戦することができるかどうかは、新規事業を行うことで何を実現したいのかが明確になっていなければ不可能でしょう。全てが手探りで簡単に答えが手に入らない中、原動力となる圧倒的な熱量を維持するための目的を見失わないことが重要です。

言わずと知れたアパレルブランドの株式会社ユニクロは、2002年に子会社として食品事業を専業とするエフアール・フーズを設立し、新たな食品事業のブランドを「スキップ(SKIP)」と定め、スキップを通じた食品販売を開始しました。ユニクロの衣料と同様に、規模の拡大と無駄の削減した自社製造で「良いものを安く」を実現しようとしましたが、農家の拡大は難航し、さらには本来的に不安定な野菜の収穫に悩まされ、欠品が相次ぎました。結果として株価下落や26億円の特別損失という赤字を計上し、「顧客起点の考え方に欠けていた」として撤退しました。損失はあったものの、撤退の決断が早かったため親会社のユニクロからすれば致命傷にならない損失で済ませることができました。さらに、スキップで失敗を経験した責任者は現在ユニクロ子会社「GU」の社長を務め、「顧客起点」を重視した運営をし、成功を収めています。

このように赤字を招く結果になったとしても、他事業等で反省が活かされ、成功を収めることもあります。重要なのは、多少の損失を恐れずに新たな事業を推し進めるマインドと、それを是とする組織の風土、姿勢なのです

コミュニケーションの活性化

これまで述べてきたように、新規事業開発を進める上での重要な課題の一つに、社内でスムーズな合意形成を図ることが挙げられます。しかしながら、部門間の摩擦、上司のマネジメントの不一貫性、経営層からの反発、モチベーションの低い部下など、大企業ならではのさまざまな課題に直面することがあります。これらは、新規事業に対する背景や前提となる情報、自社が取り組むべき課題に対する考え方や対策などが、十分に伝わっていないために起こる問題かもしれません。

新規事業を円滑に推進するためには、組織全体を見渡し、役職や部門にとらわれないアプローチが不可欠です。新規事業推進に関わるキーマンや関係者との事前のコミュニケーションが、事業成功の鍵を握る要素なのです。事前に情報共有や意見交換をすることで、限られた時間の中で行われる、新規事業に関する意見交換も有意義なものにできるでしょう。

また、アイデア創出の段階でも、部門や役職を越えたさまざまな知見を持つメンバー同士でのコミュニケーションは非常に重要です。こうしたコミュニケーションを通じて、より質の高いアイデアを生み出すことが可能になるでしょう。

これまでも述べてきたように成功の方程式や、確立されたモデルが存在しないいわば博打のようなものが新規事業です。つまるところ新規事業を推し進めるメンバーの能力や動機、思いといった形のないものしか成功の確率を向上させる要素は無いと言えます。そして、重要なのは既存の事業はいつか立ち行かなくなる時が来るという危機感や、未来に対する動機、組織のエネルギーの充足は、新規事業を促進するエンジンになります。それは、この危機感や未来像への間断ない社内コミュニケーションなのです

まとめ

大企業における新規事業がうまくいかない原因と対策について解説しました。大企業は長年培ってきた成功体験に固執することが多く、新規事業においてはスキルや経験が必要となる業界で苦戦することがあります。また、意思決定の遅さや方向性の不明瞭さも成功を妨げる要因となります。

対策としては、プロフェッショナルを登用し、新規事業の方向性を明確にすることが挙げられます。また、社内コミュニケーションの活性化により、新規事業に関わる社員が意見を出し合い、チームワークを高めることもきわめて重要です。

ソフィアでは、社内コミュニケーション活性化のバックアップを行っております。ぜひご相談ください。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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