2023.11.14
組織とは何か?組織の定義や意味、目的や良い組織を作る方法を解説
目次
普段、ビジネスにおいて何気なく「組織」という言葉を使っていることもあるでしょう。組織の明確な意味や定義をご存知でしょうか。組織の定義や歴史を深く知ると、ビジネスを考える上で役に立つかもしれません。この記事では、「組織」について詳しく説明した上で、より良い組織を作るための方法を解説します。
組織の定義
広辞苑によると「組織」という言葉の定義は「ある目的を達成するために、分化した役割を持つ個人や下位集団から構成される集団」と記されています。
また、20世紀前半に活躍したアメリカの電話会社の代表で、かつ経営学者でもあったチェスター・バーナード氏は、組織という言葉について「意識的で、計画的で、目的を持つような人々相互間の協働」と表現しています。
組織や所属する枠組みは、以前は組織内部を主要な焦点とし、競争や強化が主な目的でした。
しかし、社会や外部環境の要因、そして多様性や流動性が高まる現代では、組織論のアプローチが変わってきました。これにより、組織は外部との関係や調和を重視し、コントロールが難しい側面も考慮しなければなりません。この記事は今の時代にあった「組織」についてより詳しく解説していきます。
フレデリック・テイラーの科学的管理法
フレデリック・テイラーは、20世紀初頭に科学管理法(Scientific Management)として知られる管理理論を提唱したアメリカの工業技術者、経営学者です。科学管理法は、効率的な生産プロセスの確立と労働者の生産性向上を目指す経営手法です。
テイラーは、適切な労働者を選抜し、労働者にとって最適なトレーニングを提供することが重要であると考えました。適格な労働者が適切に訓練を受けることで、効率的な仕事の実行が可能となります。
また、科学管理法では、仕事のタスクを細分化し、各タスクの標準化を図ります。これにより、労働者は特定のタスクに専念し、それを効率的にこなすことができるようになります。
さらに、テイラーは、最適な作業手順を科学的に確立することを提唱しました。これにより、無駄な動きや時間の浪費を最小限に抑え、生産性を向上させます。労働者には、生産性向上の成果に応じた報酬を提供することとしました。これは、働くモチベーションを高め、生産性を向上させるための要素の一つとなります。
科学管理法は一部で成功を収めましたが、労働者のモチベーション低下や人間性を無視する傾向があり、批判も受けました。そのため、後に人間関係学や行動科学の発展とともに、より人間中心の経営理論が広まり、テイラーのアプローチを補完する形で経営が進化しました。
バーナードが提唱する組織の構成要素
組織について考える上で、アメリカの経営学者であるチェスター・バーナードが提唱した説も重要となります。バーナードは、組織が成立するためには3つの構成要素を満たしている必要があると語りました。以下では、それぞれの要素について説明していきます。
共通目的
共通目的とは、組織内で達成すべき共有された目的です。何のためにその組織を構成したのか、組織メンバーが目指している「ゴールとは何か」を考えることで、共通目的は見えてきます。共通目的があると、個々のメンバーが同一の方向を見て主体性を持って活動できるようになり、個人間に協調性が生まれ、組織として機能し始めます。
意思疎通
同じ目的を持った個人が情報を集約し、互いに共有すると意思疎通が生まれます。意思疎通は、目的の再確認や生産性アップにつながり、組織としての機能を強めます。コミュニケーションが不足してしまうと、組織において芽生える個々の感情やトラブル、その他業務遂行におけるあらゆる情報が十分に把握できない状態になり、それぞれの実力を発揮するようになるまで時間を要するため、組織の衰退が懸念されます。
協働意思
協働意思とは、メンバー同士が互いに互いの役に立ちたいと思う意思のことです。「貢献意欲」と表現されることも多く貢献したいという思いは、モチベーションになり生産性を高め、組織の売上や協調性を高めます。この前向きな意欲こそが組織を突き動かし、このような意思がなければ業務は進まず、組織としての力も弱まってしまうでしょう。
ピーター・ドラッカーが提唱する「組織論」
ピーター・ドラッカーは、組織の中心を目標やビジョンにおくアプローチを提唱し、その考え方は日本でも広まりました。彼のアイデアは、目標の設定やビジョンの明確化を通じて、組織を活力あるものにし、従業員の動機づけにも役立つとされています。
ドラッカーの言葉やアイデアは、基本的で哲学的な要素も含まれており、彼の有名な言葉である「凡人が非凡な働きをする組織が目指すべき組織」などは、その代表的な例です。彼の考え方は、目標管理やビジョンの重要性を強調し、組織をより効果的に運営するための指針を提供しています。
また、ドラッカーは、組織を企業・個人・社会という3つの視点において説明しています。
まず、組織は「企業の特有の目的と使命を果たすもの」として働くといいます。企業のミッションは主に利益を生み出すことと、その周辺にあるさまざまな目的を果たすことです。
続いて、個人に対して組織は「仕事を生産的なものにし、人に成果をあげさせる」ものとして働くといっています。組織とは、企業の資産でもある個人が、単に作業をするだけでなく、生産的で成果を感じられる活動をする場所だというのです。
最後に社会に対して組織は「自らが社会に与えるインパクトを処理するとともに、社会的な貢献を行う」ものであるといっています。企業の運営によって発するインパクトを自分の組織で処理しつつ、社会の一部として世の中になんらかの還元をするものが組織だという主張です。
フレデリック・ラルーによる「ティール組織」
『ティール組織』の著者フレデリック・ラルーによると、組織には以下のように5つに色分けされた発達段階があります。
1.衝動型(レッド)組織
力によって無理やり人々を支配していく原始的な組織
2.順応型(アンバー)組織
厳格な上下関係やルールがある組織
3.達成型(オレンジ)組織
目標の達成を何よりも重視しマネジメントやアクションを行う組織
4.多元型(グリーン)組織
上下関係にとらわれないコミュニケーションで、価値観や組織理念を共有していく組織
5.進化型(ティール)組織
信頼関係によって結ばれている個人同士が流動的に役割をこなす組織
現代の多くの企業は、達成型組織に属します。しかし達成型組織には意思決定や行動までのスピードが遅くなるケースが多く見られるため、最近ではよりフラットにコミュニケーションを取れる多元型組織、進化型組織へと変化してきました。
その理由として、現代ビジネスにおける「アジリティ(Agility)」と「柔軟性(Flexibility)」は、どちらも組織や企業が変化に適応し、競争力を保つために重要な要素となるからです。
現代では、ビジネスは急速な変化や複雑な問題に対処する必要があり、従来の階層的な構造だけでは適切な対応が難しいでしょう。
多元型組織と進化型組織は、柔軟性、アジリティ、イノベーションを促進するための手段として、組織内の協力と自己責任を強化します。これにより、組織は変化に適応し、競争力を維持・向上させることが可能となります。
組織の発達段階については、以下の記事でより詳しく解説しています。
ジル・ドゥルーズのリゾームによる組織の概念
組織という概念をさらに理解するために、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの言葉を紹介します。
ポスト構造主義時代を代表する哲学者である彼は、「リゾーム」という組織モデルの概念を提唱していました。
リゾームとは地下茎を表す単語です。表面的な部分だけ見ると集合離散をくり返して同じ形で留まることのない物体も、必ず一定の範囲で振り幅を持っており、もとを辿れば、それぞれが根元の部分でつながっています。
このように一見すると無秩序に動いているように見えても、互いに抑制を効かせているというのが、リゾームモデルの特徴です。共通の根元の役割を果たすのは、多くの場合哲学や理念などです。日本の古い企業のように、以心伝心が可能で、阿吽の呼吸で会話できる組織を作るのはこの時代には難しいかもしれませんが、経営の哲学を問い直すことで、自社企業の組織としてのまとまりを見直すことができます。
今まで組織の中心にあった構成要素が、社会や外部環境、人の多様性や流動性といった要因によってコントロールしにくくなっています。とくに人の行動や意思決定は管理が難しい部分です。この流動性や多様性を受け入れ、コントロールしようとすることは難しいため、むしろ管理するというより変化を受け入れる方針が現代における組織運営で重要であると言えます。
企業は設備や機械を管理できますが、人を完全に管理することは困難でも、この変化を受け入れることで、組織は柔軟性を持ち、新しいアイデアやアプローチに対応できるようになります。この考え方は「リゾームモデル」とも関連しており、表面ではバラバラに見えても、根元の部分ではしっかりとつながっているという状態です。
リゾームは、組織や企業が従来のように階層的な構造ではなく、むしろ「場」として存在するような考え方を示しています。将来的には、私たちは複数の組織やコミュニティに同時に所属し、集まったり離れたりしながら学び成長していくことが一般的になるでしょう。
構造としての組織デザインとは
ここからは意図的に組織をどう作るか、もしくは組織の枠組みをどう変えるかについて解説します。その際、「組織デザイン」の考え方を知っておくと便利です。
「組織デザイン」とは、会社が掲げる目標に適した組織を構築すること、もしくは目標達成のために今ある組織の枠組みを変えることです。枠組みを変えるというのは、具体的にはホールディングス化する、ある事業を切り出して一つの会社のように扱う「カンパニー制」を採用する、または他社と協業するなどのイメージです。このような大きな組織変更は外部に公表されるため、ステークホルダーへの経営メッセージを発信することにもつながります。
組織デザインには、主に3つの分類があります。
- 機能別サービス組織
- 事業部制組織
- プロセス別組織
最も一般的な企業組織の形態。製造や販売など、経営機能ごとに組織が分かれている
製品やサービス、またはマーケットごとに組織が分かれ、それぞれに決裁権限を持つ。代表的なものに「商品別組織」「顧客別組織」「地域別組織」などがあり、より個々の組織の独立性を高めると「カンパニー制」となる
職能や事業、エリアなどの業務遂行要素の組み合わせに応じて組織が分かれているもの。プロジェクト型組織やマトリクス型組織などもこの1種で、表向きの組織図は機能別サービス組織に見える場合もある
組織デザインは、企業価値向上や、コスト削減、経営課題の解決にむけた変革などさまざまな目的のもとで行われます。
目的が複数ある場合も少なくありません。全体に関わる大きな機構改革もあれば、部分構造の統廃合などの小さな動きとなるケースもありますが、いずれも経営者は少なくないエネルギーを消費しながら組織デザインを行います。
ここで注意したいのは、組織の枠組みを変えることで人や組織が思い通りに動くようになるかというと、必ずしもそうとは言えないということです。事業環境の変化のスピードに応じて組織が進化していくためには、別の工夫も合わせて行うことが必要です。より良い企業風土をいかにして作り、エンゲージメントを高めていくかという課題も、同時に意識することが大切です。
流動性と構造は対照的に思えるかもしれませんが、実際には構造も変化することもあり、新しい構造が出現することもあります。
重要なのは、その瞬間においてコミュニケーションと合意形成を通じて、必要な構造を選択しますが、その際、最新の構造である必要はなく、その状況に最適な構造を選びとることが重要です。
以下の記事では、組織デザインについて解説するとともに、成功事例についてもご紹介しています。
生産としての組織から生命的な組織観に変化している
組織という言葉が持つ意味は、時代の変遷に応じて変化しています。どのような流れで変化が起きたのかを見ていきましょう。
外部環境の変化
従来の工業化の時代は、機械や物質こそが価値であり、それを作るために人が動いていました。価値創造の主はモノだったのです。しかし、サービス業の発展が起き、重要視されるのがモノではなく人になるという変化が起こります。
モノが中心にあった時代には、厳しいルールと管理によって世の中が成り立っていました。しかし人がメインになれば、厳格な規定よりもいかに個別最適化したルールを即興で作るかのほうが重要になってきます。かつて価値を産み出す装置という機械的な組織は、生命体のようなイメージに変化してきています。
現代のビジネス環境では、物理的な資産よりも人の力が非常に重要です。市場はグローバリゼーションの時代が終わり、多様な要素が影響を与えており、企業にとって多くの機会が存在します。また、この状況下では、成功するためには柔軟で変化に適応できる会社が商機をつかみやすくなります。つまり、迅速な行動力と変化に強い柔軟性を持つことが重要であることがわかります。
人的資本開示の必要性
人が最も重要な資産である組織が標準化し、今では企業はこぞって人材投資に力を入れるようになりました。企業としてどのくらい人材に投資できているかがその企業の成長性を示す指標となり、ステークホルダーの判断材料にもなっています。人的資本の開示を求められるケースも増えているので、企業は積極的に数値を開示することが求められます。人材や人財という言葉が、企業の株主たちにも注目されており、そのため人に対する投資や取り組みに本腰を入れる企業が増えてきました。
しかし、単に開示することで人的資源を管理できているということにはなりません。リソースを確保した上で、企業は人材から組織力を高めるための活動に努める必要があります。
「人的資本開示」について詳しくは下記の記事をご覧ください。
人的資本の不可能性
人的資本開示の必要性は上場企業においては、株主と対話を通して磨き上げるものです。しかし、人的資本開示にむけた施策が人材に対する投資効率を完全に実現できるかといえば、留意する必要があります。
マックス・ウェーバーは、行き過ぎた官僚制の問題点を指摘しています。これは、主観性よりも客観性、属人的な判断よりも標準化、計算可能性を重視しすぎることで、組織が過度に合理的になり、人間性や創造性を排除する可能性があるということを指摘しています。これを「ザッハリッヒ」と表現しています。
日本の大企業における「大企業病」や官僚主義にも、この問題が関連しています。
たとえば、人的資本開示を過度に意識するあまり、可視化や指標化を強調し、管理業務を増やしすぎれば、多様性やイノベーションが生まれにくくなるといった逆効果も考えられます。
ビジネスにおいては、合理性や客観性は重要であり、予算や計算可能性は不可欠です。しかし、未来のビジョンや不確実性に対処するためにも、人間的な要素や柔軟性を尊重し、単なる指標や数値だけにこだわらず、創造力やイノベーションを育てる必要があります。
組織は、静的なアプローチから動的なアプローチへの転換が求められており、これは今後の探求課題となるでしょう。どのようにして合理性と人間性のバランスをとり、不確実性の中で成長し続けるかが、経営とビジネスの重要な課題ではないでしょうか。
ポストモダン時代の組織に必要な要素
組織に求められるものの形が変化した今、企業はどのような点に注意して組織づくりを行えばいいのでしょうか。最後に、これからの時代における理想的な組織の要素を紹介します。
理念や価値観の中心におく(インターナルブランディング)
ポストモダン時代では、先述の「リゾーム」のように、組織をまとめる強固なファクターを持っていることが大切です。理念や価値観などを組織内に浸透させ、共感を得ながら行動変容を促していきましょう。
組織内のすべてのメンバーが共有する理念や価値観は、組織のアイデンティティや目標を明確にし、組織全体の方向性を示す役割を果たします。これにより、メンバーは共通の目標に向かって協力し、組織全体が一体感を持つことができます。また、共有された理念や価値観は、組織文化を形成し、組織内の行動指針や行動様式を示す役割を果たします。これにより、メンバーは一貫性のある行動をとり、一人ひとりがかなめとなり組織文化を支える要素となるでしょう。
このように自社のブランドや理念を従業員に腹落ちさせる一連の活動は、インナーブランディングと呼ばれます。社員の意識を変え、組織の文化を根付かせていくことで、より理想的な企業のあり方を実現していくことができます。
インナーブランディングについてのより詳しい概要や実際の手法は、以下の記事をご参照ください。
ルールや制度よりもコミュケーション(インターナルコミュニケーション)が重要
組織のまとまりを作るためには、厳格なルールや細かい制度を作るよりも、コミュニケーションを活発にさせることが何よりも重要です。社内やグループ会社など、同一の組織内におけるこのような広報活動をインターナルコミュニケーションといいます。「社内広報」や「インナーコミュニケーション」とも呼ばれ、具体的には社内報や社内セミナー、対話集会などの活動が考えられます。社内コミュニケーションを活性化させることで、波及効果が生まれメンバー間の共通認識を浸透させ、高い熱量で然るべき方向に動く組織を作れます。
インターナルコミュニケーションについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご参照ください。
まとめ
組織とは、ある目的を達成するために個人から構成される集団のことです。企業組織の場合は、利益の追求や社会的意義の達成などが共通の目的となります。バーナードが提唱した組織の3つの要素を踏まえると、共有された目的をもとにコミュニケーションを取り合い、互いに貢献意欲を持ちながら関わることが、組織を成立する上で欠かせないということがわかります。
モノの生産が中心にあった時代には、厳しいルールと管理によって世の中が成り立っていました。しかし、現代ではサービス業の発展で人が軸になり、組織はより生命体めいた形に変化し、人的投資の重要性に注目が集まるようになっています。内部から自発的にまとまる組織を作っていくには、企業は、インナーブランディングやインターナルコミュニケーションを活発に行う必要があります。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
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ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。