批判的思考とは?ビジネスにおいて重要な理由やメリット、活用方法を解説
目次
現代の経済は、単に経済という枠組みに留まるものではなく、社会や政治、最近では国際関係にまで相互に影響を及ぼす広範な範囲に拡大しています。情報の発信主体も、マスメディアだけでなく、シンクタンク、政府、企業、個人などに細分化されています。
情報の発信者の立場によって、同じ出来事でも異なる解釈や認識が生まれることがあります。つまり、「言葉」は一緒でも、意味や解釈が違う場合があります。そのため、会議や営業で行われるディスカッションや合意形成・意思決定は、前提条件や相互認識の段階で、情報精査や相互認識を揃える必要性がより重要性を増しています。
現在私たちは、情報やコミュニケーションにおいて言葉や情報を鵜呑みするようなことはできず、曖昧性を排除する批判的な視点が、否が応でも必要な状況にいます。
そこで本記事では、日本ではあまり重視されてこなかった批判的思考について概要を説明しつつ、その重要性について整理します。さらに、批判的思考を身につけるとどんなメリットがあるのか、どうすれば批判的思考を育てられるのかなどを具体的に説明していきます。
批判的思考とは?
「批判」という言葉は、一般的には否定的な意味で使われ、ネガティブな印象を与えることがあります。
しかし、英語では「クリティカルシンキング」がより適切で、単なる否定や反対ではなく、むしろ「反証」に近い概念です。サイエンスや医療、デジタル分野では、このような反証的思考が必要です。
たとえば、今日できたことが明日できるとは限りません。今日売れたものが明日売れる保証もありません。その原因は、その日の調子であったり、タイミングや気候、客層など、ありとあらゆる可能性が考えられます。
このような反証可能性のないものは科学的とは言えません。逆に言えば、科学的な経営や経営におけるサイエンスとは、「批判」なしには成り立たないものなのです。
反証とは?
ハンガリー出身でイギリスの哲学者であるカール・ポパーは「反証可能性」(英: Falsifiability)が科学であるかどうかを区別するための基準と言いました。「科学的と標榜する理論や理屈は、観察や実験によって反証できなければ科学ではない」「科学的もしくは合理的と形容される主張や情報は、反対意見に対しても反証できる」と言っています。
具体的には、問題設定や解決策の効果性に対して、「なぜ、そう言えるのか」「どのようなデータや根拠があるのか」を明確にし、その情報や意見を検証して質問することが、反証するということです。
これは批判的思考の一部です。単なる否定ではなく、情報を検証し、客観的な証拠をもとに意見や主張を評価するプロセスです。つまり、質問するという行為には、批判的思考が内在されており、評価のための質問とも言えます。
反証は、特定の主張や仮説が誤っていることを示す証拠を提供することを意味します。それは単なる反対や否定ではなく、データや情報に基づいて主張や仮説を検証し、誤りを証明するプロセスです。反証は本証に対するものであり、本証とは、事実に確信を抱かせるために提出する証拠を指します。裁判所の検事と弁護士のやり取りをイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。
つまり、批判的思考は、情報や意見を疑問視し、反証を検討し、根拠に基づいて評価するプロセスです。これは技術や科学の発展に不可欠であり、単なる否定や反対ではなく、情報を検証する重要なアプローチなのです。
ビジネスにおける反証可能性は?
既に、お分かりだと思いますが、ビジネスにおいて、「科学的」「合理的」「効果的」を前提において伝えられる情報やコミュニケーションの中に、反証可能なことが、どれ程あるでしょうか?
デジタル化による可視化された多くのデータは、いくつかの反証可能性を証明できました。
しかし、それと同じくらい多くの反証できない現状を表出させました。ビジネスが不確実であればあるほど、より慎重に、かつ早く解像度を上げて状況を察知する必要があります。
逆に言えば、ビジネスの現場において、批判的思考を持たないということは、リスクやチャンスを見抜くことが難しくなり、取得した情報や知識を鵜呑みにすることは、リスクとなりチャンスがすり抜けてしまいます。これはまさに丸腰で戦場に行くようなものです。
批判的思考の定義
批判的思考について、定義を詳しく整理しましょう。批判的思考とは、対象について疑いの視点を向けながら「それがあるべき状態になっているか」「なっていないのならばどのような点が不足しているのか」などを考える思考プロセスです。前提から疑いをかけることで、物事の本質を見極めていきます。
「穿(うが)った見方すれば・・」という言葉はいい意味で表現する人は多くはないでしょう。しかし、この視点は批判的思考の一部と言えます。
あらゆる物事や意見などは、目に見えてわかりやすく現れている要素以外に、さまざまな要素を含んでいます。目的や仮定、前提条件などを多角的にチェックし、反論の余地がないか、どのような批判ができるかを考えます。批判的思考は、科学的、数学的、経済的、道徳的などの多様な側面から精査する姿勢であり視点です。
批判的思考とクリティカルシンキングとの違い
「クリティカル」と「批判」は、言葉が示すものは同じですが、ニュアンスや響きが異なることがあります。
重要なのは、批判という言葉をネガティブに捉えないことです。むしろ、現在のビジネス状況に対して、批判的思考は非常に重要です。ビジネスは多様化し、情報や意見はバイアスに満ちています。そのため、批判や反証を行うことは質問や問いを生み出す重要な視点です。
批判的思考は、質問や問いを創造します。批判的思考は、提案やアイディアを生み出します。
日本的組織の特徴である同質性や凝集性は、一体感や活力を生み出す一方、異なる意見や批判を排除する傾向がありました。
しかし、近年では海外進出や多角化、デジタル化などの変化が起き、既存の経験則だけで立ち向かっていくことはほぼ不可能です。成長が鈍化し、成熟期に入るにつれ、反対意見や異なる視点を考慮しない組織のコミュニケーションはデメリットとなる危険性を大いにはらんでいます。
同質性や凝集性による一体感と批判やアイディア、変化を生み出すバランスが重要であり、対外的な不確実性における対処にも、対内的な同調圧力におけるアンチテーゼにも、この批判的思考が重要な視点であると言えます。
批判的思考が重要な理由
批判的思考はなぜ重要なのでしょうか。
昨今は、テクノロジーが著しく発展し、ビジネスが複雑化したことで、人々のキャリアやライフスタイルが多様化している時代です。そんな将来の予測が困難な時代だからこそ、物事に対して「なぜ、今そのアクションが必要なのか」「この判断は正しいのか」を、都度正確に判断していかなくては、舵取りができません。情報の取捨選択をして、正しいアクションを取るために、批判的思考が必要不可欠な時代なのです。
組織文化における批判的思考
しかし、私たちの日本においても、企業や組織においても、批判的思考を奨励する文化が根付いていないことがあります。
雇用の流動性は進展していますが、依然として同じ組織内での強固な関係構築が重要視されています。このため、従業員は周囲との調和を図ろうとし、同調することが組織に生き方と言えます。
しかし、その結果、組織内の社員は同質化し、批判的思考を奨励しない組織文化が根付いてしまうことがあります。
このように「批判しない」ことが定着すると、組織はデメリットを被ります。物事を深く考えない情報やコミュニケーションを鵜呑みにする従業員が増えてしまい、積極的に疑問を持ち、根拠を探すといった姿勢が育ちません。
唯々諾々と指示に従うことは、自律できていない、当事者意識がないという個人の問題だけはありません。
反対意見や批判がしづらい風土であれば、当事者意識や社員に求めても無駄かもしれません。経営ビジョンやパーパスなどの新しい考えやメッセージが発表されても、なぜそれが大事なのかを深く考えずに、丸呑みしてしまう人が多くなるでしょう。
細かい部分まで理解を深めなければ、経営陣のメッセージを自分の言葉で語り直すことはおろか、共感することもできません。
表層的な理解や納得、ミスリードは、業務の質やアウトプットのレベルに影響することは明らかです。組織は、批判的思考を受け入れ、反対意見や議論ができる組織風土を創っていくことが必要になるでしょう。
合意形成における批判的思考
批判的思考が根付けば、社内に評論家と冷笑的な人を増やし、不和が起きると危惧する人も多いかもしれません。しかしこれは大きな勘違いです。
実際社内では、「自分の評価を言葉巧みに、おおげさに誇張して物語っている人が昇進している」ということも多いのではないでしょうか?日本企業だけではなく、欧米企業でもよくある話です。
このようなコミュニケーションに対し、批判視点から反証の一形態として、背景やデータなどの根拠を提供し、反論することが重要です。
感情だけの無根拠な意思決定や扇動的なコミュニケーションによる合意形成は、中身が空っぽであるの可能性が往々に存在します。
批判を行う場合、適切な作法を守り、批判的な意見・アイディアを出すことで、最終的に腹落ちや共感を生み、行動につながる合意形成ができるのではないでしょうか。
私たちは、そもそも同調したく、共感したく、付和雷同であり、深く考えることに対して怠慢になりがちです。
従って、批判的思考は、重要な会議や議論、合意形成や意思決定などの場で活用することが非常に重要です。社内のコミュニケーションスキルにおいては、批判的思考は持つべきスキルと言えます。
批判的思考は新しい発見やアイディアを生み出す
批判的思考を行うことで、新しい発見やアイディアに出会えるかもしれません。
批判的思考を持つということは、目の前の対象に対して距離をとり、その本質を見極められるということです。
視点を切り替えることで、見落としていた重要な違和感に気づくこともあるでしょう。人間は、慣れた事象を「当然」と思い込み、すべてを受け入れてしまいがちです。
ビジネス現場においても、ルーティンとなっている作業や、聞き慣れた目標に対して、改めてその是非を問うということはしないのではないでしょうか。
この驚くべきショートカット能力は便利なことも多い一方で、目の前にある重要な間違いを見えなくさせる落とし穴でもあります。批判的思考を持つことは、普段の自分の「当然」を顧みるための重要な行為なのです。アイディアを産み出す創造的な手法はたくさんありますが、現代人の「パターン認識」に対して、カウンターとしての批判を置くことは、単純で簡単なアイディアの創出となるのです。
「アサンプションスマッシュシング」というアイディア創出の技法は、「当然」という事象や常識をポストイットで並べて、その「当然」を真反対の「当然」を出す技法です。これは、批判的思考そのままです。つまり、批判的思考は、創造生活の技法を言っても間違いではありません。
批判的思考は深い仮説と濃い学習を生み出す
批判的思考は、仮説と学習を深いレベルで行う手助けになります。ただし、もし課題の設定が「仮説」になっていない場合は、すでにある説をなぞっているに過ぎず、変化が生まれません。
たとえば、営業成績の下降トレンドという事象の要因は、新規顧客、既存顧客、顧客単価、マーケティングのリード数、セッション数、営業部員の人数、能力、モチベーション、製品サービスの質…などなど、定量定性の要因はを挙げればきりがありません。
しかし、特定の影響力のある人の属人的な問題定義、各部門のポジショントークとチェリーピッキング、定性的かつ曖昧なデータと根拠…などで、PDCAは回っています。
失敗を受容し学習をすることが肝要と標榜されていますが、仮説の設計がおかしければ、学習など到底できませんし、現在地も不明であり恐れすらあります。
最近では、アジャイルやOODAなどのアプローチが注目されており、従来の計画中心偏重の方法論よりも、変化に適応しながら実践を繰り返すことが重要視されています。
ただし、このアプローチは無計画な行動を奨励しているわけではありません。むしろ、仮説を立て、その途中で修正を加えながら実践を進めることを強調しています。
重要なのは、できるだけ詳細な仮説を持ち、それに従った実践を行うことで学びや成果を最大化するということです。
批判的思考は、深い仮説を構築する思考法であり、結果的に濃い学習が生まれます。逆に浅い仮説は、薄い表層的な学習になると言えます。
批判的思考のメリット
批判的思考の重要性について紹介しました。以下では、批判的思考ができるようになった場合、具体的にどのようなメリットが生じるのかを説明します。
批判はモノゴトから距離を置き、本質の理解を促すことができる
批判的思考は、対象の物事から距離を置くことで成り立つものです。「どうしてそうなるのか」「本当にこれでいいのか」を、客観的にかつ長いスパンで繰り返し問うことが欠かせません。
だからこそ物事を本質的に理解でき、業務における課題解決にもつなげることができるのです。一度でも自分ごと化してしまった物事は、なかなか本来の意味に立ち返って精査することが難しくなります。企業や職場、ビジネス、自分の仕事など、さまざまなフェーズの「当たり前」を捉え直すいい機会になるでしょう。
しかし、自分ごととして捉えている事柄や問題について、批判的な視点を持つことは難しいことです。その理由は、多くの人が自分の信念や行動を正当化しようとし、「正常性バイアス」という傾向が働くからです。このバイアスは、自分自身の行動や信じていることを正当化しようとするため、外部からの情報や視点に対して耳を傾けにくくします。
批判的思考を促進する具体的な方法として、「文字にする」「記述する」「整理する」といったアプローチが役立ちます。自分の頭の中にあるアイデアや考えを外に出して、それを客観的に見ることが大切です。つまり、批判的思考を促進するためには、整理し、距離を置くプロセスが必要です。これをロジカルシンキングとも呼びます。
矛盾や漏れを見つけ、なくす
批判的思考を行うことは、積極的に疑問を持つ姿勢を育てます。矛盾点をあるだけ洗い出し、論理的な思考で科学的観点から精査するので、多種多様な批判が生まれ、それが多様な視点、多角的な反省へとつながります。このような正しい検討を複数の観点で繰り返せば、結論の精度も高まるでしょう。
昨今はAIが進歩し、業務の中で使う場面が増えた人も多いと思います。情報処理や検索などはAIに任せつつ、AIが出した結論を批判的思考で見ることで、より深い、独自の視点を持てるはずです。
批判的思考は、問題や解決策、または計画における弱点や矛盾を浮き彫りにします。ビジネスの現実において、完璧に整理された状況やリソースが100%揃っている上で、問題解決に進めるという状況はありえません。
ほとんどの問題解決や合意形成には、妥協や矛盾、情報の漏れが存在します。それらを認識し、進行中に認識察知しておくことは非常に重要です。問題や弱点、リスクが発生した際にも対処できるよう、事前にそれらを把握しておくことに、批判的思考が役に立つのです。
成功事例より失敗事例の研究が示唆に富んだ学習を生み出すのは、失敗が正確に批判できる対象だからです。更には言えば、成功は多数の失敗が礎となった事象です。
適切な議論と意思決定ができる
批判的思考によって懐疑的に物事を吟味すると、矛盾や誤り、不足に気づくことができます。さらに、それを基に課題を検討していくこともできます。より本質的な議論ができるので、出てくる結論はより具体的で意味の深いものとなるでしょう。意思決定が浅はかで、誤っていたとすると、目指すビジョンを達成するまで、無意味に時間と労力を費やすことになります。批判的思考は、組織や個人、プロジェクトを効率よく成長させる環境をつくります。
解像度の学習や振り返りができる
批判的思考によって導き出された結論を実行に移し、その結果もまた批判的思考で見直していきます。もう一度距離を置いて、是非についても議論を重ねましょう。
これを繰り返すことで、より豊かな学習結果を得ることができます。批判や反証を繰り返すプロセスは、学習そのものであり、批判の回数が多いほど、実践から学ぶ機会が増えるのではないでしょうか。
批判的思考の主要プロセス
批判的思考を実際に取り入れるにしても、まずはどのように進めたらいいのでしょうか。以下では、批判的思考を行う際のプロセスを一部紹介します。
トゥールミンモデル
イギリスの哲学者スティーヴン・トゥールミンは、議論における有用なメソッドを提唱しています。それがトゥールミンモデルです。
このモデルでは、自分または他者が論じようとしていることの「主張」「事実」「根拠」を適切に把握しようとします。
また、主張する内容について条件を正しく限定するために、主張には「限定詞」をつけます。また、主張するだけでなく「反証」について考えるのも特徴です。
さらに根拠についての納得感を深めるために、実例や事実などを用いて「裏付け」も行います。これらを構造立てて整理することで、自分の主張を見直すことができます。
ビジネスでは、ときに複雑な状況に対して主張を出します。その際、構造を把握できていなければ、主張が曖昧になり、判断を誤ってしまいます。重要な要素を体系立てて明らかにしていくこのモデルは、批判的思考のプロセスと言えます。
反証可能性
前述した通り、反証可能性はカール・ポパーによって提唱された概念で、科学と疑似科学を区別するための重要な原則です。
この考え方によれば、科学的な主張は経験による検証が可能であり、誤っていることを示す可能性が存在する必要があります。
反証可能な主張の例として、天気の予測やカラスの色が挙げられます。これらは経験によって証明可能な主張であり、たとえば天気が予測通りでない場合や白いカラスが存在する場合に、誤りを証明できます。
一方、反証不可能な主張は、証明が不可能なもので、ポパーはフロイトやアドラーの精神分析をその例として挙げました。
精神分析の理論は、さまざまな行動を同じくらい容易に説明できますが、証明できないため、科学的性質に欠けると考えられます。
反証可能性の原則は科学的な主張の妥当性を確認するための基本的な要素であり、科学と疑似科学を区別するための基準となっています。
「科学的」と言われる領域は、非常に狭く、未開なものがビジネスにも社会にも存在し、世の中にある「科学的」の中に「疑似科学」が混同しているというわけです。科学は今現在の仮説としてみると、より視点が広がります。
データ分析
多くのビジネスシーンで行なわれているデータ分析も、批判的思考のプロセスだと考えていいでしょう。データを用いて何かを評価する際は、常に「正しいと言えるのか」「言えないのなら何が間違っているのか」を考えるはずです。データという事実に基づいた正確な判断を下していくという意味で、批判的思考を用いた作業です。
データは記号化されて物を分析するという意味もありますが、現象や事象など、記号化されていないものを分析することも重要です。重要事項は、ほとんどのデータや事象に対して、私たちは直接触れることはできず、大方のデータや事象は、分析システムやメディアからの2次情報、3次情報です。データ分析は、なるべく1次情報を取得することが大切です。直接「聞く」「見る」「収集する」という形で、データに接近することが必要なのです。
ビジネスにおける経営や上司へ提案するデータや根拠は、2次情報よりも1次情報であり、自分をセンサーとして、事象やデータを直感的に取得すれば、必ず説得することができます。
批判的思考において、曖昧な言葉や根拠・データのない主張は排除することがポイント
批判的思考を行う際、曖昧な要素を、徹底して排除することが必要です。浅いコミュニケーションを交わし、根拠の薄いことを主張することは、おしゃべりの延長になってしまいます。数字や背景情報を細かく見ながら、的確な言語表現を選び、深い理解と深い解釈のもとで思考を進めましょう。
自分自身や他の情報発信者を見る際、よくあるのは「チェリーピッキング」と呼ばれる印象操作の方法です。事象や問題は通常、さまざまなデータや事実から成り立っています。チェリーピッキングは、自分の主張を裏付けるために都合のいいデータと根拠だけを選んでピックアップし、それを情報として発信する方法です。批判的思考によって、単なる指摘だけでなく、情報発信者の意図や選んだデータの背景についても考えることができます。
批判的思考の活用方法
批判的思考をの活用方法によって、得られる効果は変わります。批判的思考を活用するためには具体的にどのような方法を選ぶといいのか、3つの切り口で整理します。
可視化・言語化・分析・整理
批判的思考は、業務改善の見直しなどに活用することができます。批判的思考においてキーワードとなるのは、可視化・言語化・分析・整理です。考えるべき事象や状況について、情報をまずは可視化、言語化し、アクセスしやすい状態にします。その後、分析を行い、整理をしていく中で、批判すべきポイントや、改善に向けた具体的な方法を洗い出していきます。批判的思考によって物事を細かく分類し、思考を深めていくことで、物事の本質を見ることができるでしょう。
仮説構築・アイディアの発想
これまでの事業と違った新規事業を作って成功したい場合などにも、批判的思考が役に立ちます。批判的思考では、人や組織の中にある前提を見直すことが大事になります。批判的に新しい意味や価値を見出し、発見していくことで、現在の常識とはかけ離れたところを是とすることもできるでしょう。これまで考えなかった発想やアイディア、もっと言えば発見に出会えるかもしれません。
解像度の高い議論や合意形成
批判的思考は、ディベートをより活発にさせてくれます。批判的思考をする際は、意見や主張の裏付けとなるデータや証拠が求められるので、人は客観的なデータを引っ張り出して論じることになります。
これにより、仮説や前提が正しいのかを評価し、間違った仮説を正すという、より客観的で意味のあるディベートを実現できます。正確でためになる合意形成を行いたい場合、批判的思考が貢献するのです。
他者からの批判は「提案」「質問」でありビジネスチャンスになる
他者からの批判は提案であり質問でありビジネスチャンスです。このような意見は、個人や組織が成長し、進歩するためには不可欠です。他者からの批判は、考え方や行動についての新しい視点を提供し、問題や改善の機会を見つける手助けとなります。
批判や提案は自己反省をする機会でもあります。他者からの意見を受け入れ、自分自身を客観的に見つめ直すことで、自己成長やスキルの向上につながることがあります。また、他者からの批判はビジネスにおいても重要な役割を果たします。
たとえば、顧客からの批判や提案は、製品やサービスの改善のため、貴重な情報源となります。顧客の意見を真摯に受け止め、問題点を解決することで、顧客満足度を向上させることにつながります。また、競合他社からの批判も、自社の強みや改善点を見つけるためのヒントとなります。
一方で、他者からの批判は異なる視点や意見です。異なる意見を受け入れ、対話を通じて相互理解を深めることは、ビジネスにおける重要なスキルです。異なる立場や意見を尊重し、共通の目標に向かって協力することで、より良いビジネス環境を築くことができます。
批判という言葉は、ネガティブな意味ではありません。批判な人やうがった見方をする人は、ひねくれものでもありません。批判するということは「アイディアや提案を生み出すこと」と認識すれば、モノの見方や人の見方も変化するのではないでしょうか。
まとめ
批判的思考とは、対象について「あるべき状態になっているか」「なっていないのならばどのような点が不足しているのか」などを疑いながら考える思考プロセスです。当たり前とされていることも客観的に精査していくことで、物事の本質を見極め、矛盾や漏れのない、的確な結論を導き出していきます。批判的思考ができない組織文化だと、提示されたものを鵜呑みにするだけで、深い理解や共感ができないことから、組織の運営にデメリットが生じる可能性が高いです。批判的思考を育て、新しい視点を生み出し、感情的ではなく論理的に伝えることのできる組織を目指しましょう。
関連事例
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。