2024.09.26
エンパワーメントとは?会社に取り入れる方法やメリットデメリットを確認しよう
目次
エンパワーメントとは、従業員が自律的に判断し行動できるようにすることで、企業の成長を促進するアプローチです。近年、多くの企業がこの手法を取り入れ、組織の効率性や生産性を向上させています。
エンパワーメントにはメリットだけでなくデメリットも存在します。上司やリーダーがエンパワーメントしても適切なサポートがない場合、従業員が混乱やストレスを感じることがあります。また、エンパワーメントや人財育成と標榜しているにも関わらず、実際は「丸投げ」である場合もあります。このさじ加減は非常に難しいところです。
本記事では、エンパワーメントの基本概念を理解し、職場や企業で実践する際のメリットとデメリットを具体的に探っていきます。エンパワーメントの実践がどのように企業文化を変え、ビジネスの成功につながるのか、その全貌を明らかにします。
エンパワーメントの言葉の意味とは?
エンパワーメントとは、個人や組織が自身の力を最大限に引き出し、自立的に行動できるようにするプロセスを指します。これにより、個々の能力が最大限に発揮され、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。それでは、具体的にエンパワーメントの言葉の意味や由来について見ていきましょう。
エンパワーメントはどのように使われる?
エンパワーメントとは、従業員に力を与え、自信をつけさせることを意味します。一般には「権限移譲」として広く認識されていますが、実際にはそれ以上の意味があります。リーダーや管理職が権限をメンバーや部下と共有することで、彼らに力を与えることを目指しています。単なる「デリゲーション」(権限移譲)とは異なり、権限というパワーを共有また付与することで、自主性や創造性を引き出すアプローチです。そのためエンパワーメントの適切な訳として、「権限付与」の方が合っているかもしれません。
現在のビジネス環境において、職務上のパワーの源泉が「職位や権限」から「専門性や技術」へと変化しつつあります。にも関わらず、現在の職場内で承認権を持っている人間は、高度な専門的業務を正確に承認するための知識や情報を持っていないことの方がまだ多く、むしろ権限そのものが業務の妨げになる場合が増えています。エンパワーメントは、このような状況に対応するための重要な手段であり、従業員が自らの知識と技術を活かして、現場の最新の情報から最適な意思決定を遂行できるようにすることが求められています。
組織の分業と階層から効率化とガバナンスを両立する中で、複雑な権限と責任が存在してしまうため、ビジネスの現場で最適な意思決定がなされず損失につながります。不確実でスピード感が必要な今のビジネス環境では、この意思決定の鈍重さと曖昧さが問題となっています。効率化とガバナンスのメリットよりデメリットが大きくなり、なし崩し的なエンパワーメントが発生していることが実情です。
エンパワーメントの由来
エンパワーメントの概念は、20世紀のブラジルの教育思想家パウロ・フレイレによって提唱されました。フレイレは、女性や黒人、貧困層などといった、とくに社会的不平等や抑圧に直面している人々に焦点を当て、彼らがその能力や思想を抑圧される時代を脱し自らの力を取り戻し、自立することの重要性が強調されました。
エンパワーメントの「力の付与」という概念は、「抑圧からの解放」と深く結びついています。フレイレの教育理論は、市民運動や女性運動、人種差別反対運動などの中で大きな影響を与え、これらの運動の核心的な概念となり、社会的に不利な立場に置かれた人々が、自らの権利や声を取り戻すための手段として用いられました。
また、エンパワーメントは優位劣位の関係性問題の解決にも応用されます。たとえば、上司と部下の関係において、上司が権限を委譲することで、部下が自らのタスクを主体的に管理することが求められます。これにより、状況ごと柔軟に対応できる力が養われ、組織全体のパフォーマンスが向上するでしょう。エンパワーメントは、個人や組織が持つ潜在能力を引き出し、持続的な成長を促進するための重要な概念となっているのです。
エンパワーメントによって、従業員は自分の担当業務だけでなく、職場全体やプロジェクト全体、組織全体に対する当事者意識が芽生え、全体の視点から自分の業務を理解し、その重要性を認識できるようになります。しかし、細分化された業務を担当しながら常に全体を意識するのは簡単ではありません。
そこで、上位職の業務や責任を付与するエンパワーメントが役立ちます。権限の幅を広げることで、従業員により大きな業務範囲の責任を与え、当事者意識を持たせることができます。これにより、従業員は自分の仕事が全体にどのように影響するかを理解し、業務の品質も向上します。エンパワーメントは、従業員の視野を広げ、組織全体の成功に貢献するための重要な手段です。
全体最適と部分最適のジレンマは、組織構造の矛盾と扱われてきました。しかし、組織内の情報やタレントを有機的につなげることでイノベーションを生み出すことに、企業は苦慮しています。抑圧はされていないながらも、権限や責任を付与する事の重要性は高いです。
ビジネスにおけるエンパワーメント
ビジネスにおけるエンパワーメントとは、経営管理職や上司が部下や労働者に対して権限を委譲し、自主的な意思決定を促すプロセスを指します。企業は通常ピラミッド構造を持ち、経営陣から新卒までの階層が存在しますが、エンパワーメントを実践することで、全ての階層において個々のメンバーが自らの役割と責任を理解し、自発的に行動できる環境が整えられます。また、新卒社員に対しても、プロジェクトの一部を任せることで成長の機会を得られます。エンパワーメントは、組織全体の柔軟性と創造性を高めるためにも有効といえるでしょう。
『エンパワーメントはどのように使われる?』でお伝えした通り、今や職位や権限よりも専門性や技術の方が権威性が高まっているため、職場内での承認権には高度な専門業務に対する十分な知識が必要不可欠です。リバースOJTのように10年前の定型業務はAIやデジタル技術によって自動化されているものも多く、現在の経営陣が新卒時代に任された業務はもう存在していないかもしれません。そのため、今の管理職やリーダーが部下と同じ業務遂行力や専門知識を持っているとは限りません。
日本企業では、高度な技術を持つ人材を高額給与で採用することが一般的になっています。この給与水準は、既存の人事制度の枠外に位置しています。その結果、従来の在籍年数や職位による影響力は相対的に低下し、専門性や競争力がより重要視されています。技術力や専門性の高い人材が企業内で十分に活躍できるようにするためには、権限と責任を与えることが不可欠です。逆に言えば、権限を与えられない高額給与の人材は、給与は高額で与えていても、能力を発揮できずにいる可能性があります。したがって、技術や才能を持つ人材にエンパワーメントの機会を提供することは、企業にとって必然的な選択であり、その逆を行うことは、企業にとって不利益をもたらすことになるでしょう。
このように、階層的な組織がすでに崩れつつある企業では、エンパワーメントが自発的に実施されていると言えます。エンパワーメントは、従業員一人ひとりが専門性と技術を活かし、組織全体の成功に貢献するための重要な手段です。
エンパワーメントによるメリット
エンパワーメントは、個々の従業員のモチベーションと自信を高め、組織全体の生産性と効率性を向上させます。これにより、従業員の自主性が促進され、イノベーションが生まれやすくなります。ここではエンパワーメントによるメリットを具体的に解説します。
生産性と高速化
生産性と高速化において、エンパワーメントの役割は非常に重要です。上司が全ての業務を行う場合、確かに短期的には生産性が上がるかもしれませんが、長期的には部下の成長や自立が阻害されてしまいます。一方で、部下が全ての業務を行う場合、生産性が低下する可能性があります。これを避けるためには、上司と部下が効率的に業務を分担し、整合させるためのチームワークと調整が必要です。
現代のビジネス環境では、リスキリング(再教育)により、階層の上位者と下位者の間で必要なスキルや能力に大きな差がないことが多くなっています。このため、意思決定においても、上司だけではなく、部下も積極的に参加することで、より良い結果を生むことができます。集団での意思決定は、合意形成というコミュニケーションプロセスを含みますが、これによって多様な視点が取り入れられ、最適な解決策が見つかることが期待されます。
わかりやすく言うと、スキルや技術がどんどん新しくなるのは確かに大変ですが、今では昔よりも簡単に技術や知識を学習し習得できます。以前は新しい知識を得るために本を数冊読む必要がありましたが、今ではYouTubeやインターネットを活用すれば、いつでもどこでも学習することができます。このような状況下で、従業員が自己研鑽を積みやすくなり、エンパワーメントの効果をより一層引き出すことができます。
社員の主体性向上と人材育成
社員の主体性向上と人材育成は、企業の持続的な成長に欠かせない要素です。部下の主体性を向上させるためには、権限を持たせることが重要です。これにより、部下は自分の仕事に対する責任感が高まり、積極的に取り組むようになります。ただし、未熟な部下に難しい仕事を任せることは短期的にはリスクが伴います。知識は耳学問として得ることができても、実際の業務での実践経験とは大きな隔たりがあるためです。
何事も経験的な学びを通じ、短期的なリスクを乗り越えることで、長期的な成果を得られます。たとえば社員を新しいプロジェクトに参加させ、チャレンジングなタスクを任せることで、実践から学び、成長する機会を得ます。この過程で、上司は適切なサポートとフィードバックを提供し、部下が困難を乗り越える手助けをすることが重要となります。
以前は、20代の社員に投資した教育の効果を30代で回収するモデルが一般的でしたが、現代では通用しません。20代の社員が30代まで同じ会社にいる保証がなく、学んだことが生かせるとも限らないからです。今の時代は人材の流動性と仕事の変化が激しいため、40代や50代の社員にも教育が必要です。しかし、多くの中高年社員は「もう教育は必要ない」と思い込んでいる中高年社員は多く、それが成果を出せない原因となっています。全社員が常に教育を受け、仕事を通じて学ぶOJT(On The Job Training)が重要です。
社員がエンパワーメントを有効に取り入れるためには、どの段階でも新しい知識を吸収しながら仕事に取り組むことが求められます。
エンゲージメントの向上
エンゲージメントの向上は、仕事へのモチベーションを高め、従業員が仕事に対してより積極的に取り組むようになるための重要な要素です。エンパワーメントの導入により、従業員は自分の意思で業務の遂行方法を変えることができるため、やりがいを感じやすくなります。上司が部下に権限を委譲し、自主的な意思決定を促すことで、従業員は自分の役割に対する責任感と充実感を持つようになるでしょう。
さらに、エンパワーメントを通じて従業員が自分の役割を理解し、自主的に行動できるようにすることで、個々のパフォーマンスが最大化されます。これにより組織全体の生産性が向上し、企業の競争力も高まります。エンゲージメントの向上は、従業員のモチベーションと満足感を高めるだけでなく、組織全体の成功にも寄与する重要な要素となるといえます。
エンゲージメントが誕生する前は、給与や福利厚生を提供すれば社員のパフォーマンスが向上すると考えられていました。しかし、これだけでは生産性向上につながらないことが多く、今では給与を上げて社員を引き留める方法は時代遅れとなりつつあります。
社員エンゲージメントサーベイでは、社員のやる気やモチベーションに焦点を当てていますが、それだけが重要ではありません。社員が会社や職場に対して強く結びつくためには、仕事のリソースが整っていることや、上司からの認知だけでなく、チームと一緒に大きな目標や挑戦に取り組み、成功や失敗を経験することが重要です。
エンパワーメントが注目される理由とは?
エンパワーメントが注目される理由は、変化の多い現代において迅速かつ柔軟に対応するためです。組織は、従業員の能力開発とともに権限を移譲することで、個々の成長を促し、全体のパフォーマンスを向上させています。また、個人が能力開発よりも権限移譲によって成長する時代でもあります。ここではエンパワーメントが注目される理由について詳しく見ていきましょう。
変化の多い時代に対応するため
変化の多い時代に対応するためには、従来のピラミッド型の組織構造だけではなく、エンパワーメントを通じて部下に権限を与えることが重要です。現代のビジネス環境では、技術革新や市場の変化が非常に速いため、従来のように上司だけが全てを決定し、指示を出すというスタイルでは迅速な対応が難しくなっています。部下にも自主性を持たせ、自らの判断で行動できる環境を整えることで、組織はより敏捷性を持ち、迅速に変化に対応することができます。
たとえば、Googleの20%プロジェクトは、社員が勤務時間の20%を自分の選んだプロジェクトに使えるようにしています。これにより、社員は自身の興味や専門性を活かし、新しいアイデアやプロジェクトを開発することができます。これが、GmailやGoogleニュースなどの革新的なサービスの誕生につながっています。
能力開発より権限移譲で成長する個人
能力開発よりも権限の移譲が個人の成長に与える影響は非常に大きいです。現代のビジネス環境では、座学や研修だけではなく、実際の業務を通じて経験を積むことが重要視されています。実際にやってみることで、個人は自らの能力を試し、成長することができるでしょう。しかし、このプロセスで重要なのは、その業務に対する権限を持っているかどうかです。
権限がなければ、経験する機会が制限され、成長も鈍化します。逆に、適切な権限が与えられれば、個人は自主的に行動し、自己成長の機会を得ることができます。このような権限の移譲は、従業員がより高いレベルで責任を持ち、自らの能力を最大限に発揮することを可能にします。さらに、失敗を通じて学ぶ機会も増え、経験に基づく学習が促進されます。
もちろん、基礎的な学習は重要ですが、ビジネスでは実践的なスキルが求められます。現在は、経験を通じて学ぶ個人が主体であり、能動的な学習が望ましいですが、教育も重要です。社内教育やOJT、eラーニングなどの仕組みを利用して学ぶことは一般的で、学習と教育は切り離せません。
教育は学習の基盤を提供しますが、実際の業務では経験を積むことが必要です。車の運転では基本的なルールを教育で学びますが、実際の運転では個別の状況に対応するために経験が重要です。
間違ったエンパワーメントのパターン
現代の急速なビジネス環境において、部下に権限を委譲しなければ業務が回らない場合があります。組織が迅速に変化に対応するためには、権限を移譲しながら柔軟性と効率性を持って業務を行わなければなりません。また、部下に業務を任せることでより自主的に行動するようになり、新しいアイデアを生み出す機会を得ることができます。
しかし、エンパワーメントは使い方さえ理解できれば悪用することも容易であり、権限移譲を標榜していても実際にはエンパワーメントされた側が損失するといった場合もあります。上司が業務を任せる際に、実際には責任を一方的に押し付けるだけで、必要なリソースやサポートを提供しないというケースです。結果として、部下は業務の成功や失敗の責任だけを負わされ、プレッシャーを感じます。また、エンパワーメントすることで、過剰な業務負担を部下に課すことのないようにしましょう。
なし崩し的なエンパワーメント
なし崩し的なエンパワーメントとは、管理職やリーダークラスが現場や専門性の高いメンバーの業務を理解できず、業務を任せきりにしてしまう状況のことです。平常時には自由度が高まり効率化が図れるかもしれませんが、大きな問題や非常時には、チームや職場が崩壊するリスクが生じます。
具体的には、リーダーや管理職が問題発生時に状況を正確に把握できず、問題解決に必要な初動としての情報収集ができない場合があるのです。平常時に職場の雰囲気や関係性が良好であることは当然であり、むしろ非常時や問題発生時にこそ、チームや職場の真の実力が試されます。しかし、なし崩し的なエンパワーメントが行われた場合、リーダーや管理職は、状況を理解できないことに対する不安が、問題解決よりも自分の責任や処遇への不安に向かい始め、結果的に責任のなすり合いが発生することになります。
このようなリスクを回避するためには、権限を付与された人材に対して、しっかりとしたオーナーシップを持たせることが重要です。また、管理職やリーダーは、専門性の高い業務をある程度理解し、問題発生時やリスク発生時におけるリスク回避プランを同時に持つことが必要です。
丸投げ責任移譲エンパワーメント
これは、管理職やリーダーが人材育成や権限移譲を掲げながらも、実際には自分自身ができないことや解決できない問題を、エンパワーメントの名のもとに部下やメンバーに丸投げする行為です。権限や業務をエンパワーメントされたメンバーは、当初こそやる気を感じるものの、相談や報告を重ねるうちに、権限移譲と称して実際には責任だけが押し付けられていることに気づくでしょう。なぜなら、管理職やリーダーが課題や問題を解決できないため、相談してもまともなアドバイスが得られないことや、外部リソースなどの権限がほとんどない場合、このエンパワーメントが無理筋であることが明らかになるからです。
もしエンパワーメントを活用して人材育成を行うのであれば、大胆な予算やリソースも含めて大胆にエンパワーメントを実施する必要があります。また、管理職やリーダーはリスクや失敗を引き受ける覚悟を持ち、自身が解決不可能なことを率直に共有することが望ましいでしょう。
成果/評価横取りエンパワーメント
すでにご理解いただいていると思いますが、エンパワーメントや人材育成の一環として移譲された権限に伴う業務や課題を解決できれば良いのですが、解決できずに失敗することもあるという点を忘れてはなりません。「成果や評価の横取りパターン」とは、成功すれば上司やリーダーの評価となり、失敗すればメンバーの責任になるという、ネガティブな権限の与え方に見られるリスクヘッジの一例です。これはモラルに関わる問題ですが、このような管理職やリーダーの行動は、経営陣や上位の管理職がしっかりと見抜く必要があります。
エンパワーメントのデメリットも押さえよう
エンパワーメントを導入する際には、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。部下に与えた権限が適切でない場合、判断ミスや誤った方向への進行が発生するリスクがあります。また、放任されすぎると、社員の責任感やモチベーションが低下する可能性もあります。
判断ミスをまねく場合も
判断ミスをまねく場合、エンパワーメントによって個人が自主的に行動し、判断することが強調されるため、社員間で判断や意思決定にばらつきが生じる可能性があります。個々の経験や視点によって、全体にとって最良の判断が行われないことがあるため、組織全体の一貫性や効率性が損なわれるリスクも存在します。
この問題を解決するためには、ルールやガイドラインの整備が重要です。エンパワーメントを導入する際には、社員が自由に判断する範囲と、守るべき事項や組織の価値観、目標について明確に定義し、共有することが必要です。これによって、個々の判断が組織全体の方向性に沿うよう調整され、一貫性が保たれます。
また、どの程度失敗を許容すればいいのかという問題点もあります。業務の失敗が、エンパワーメントを行う側の想定範囲内であれば問題ありません。現代の仕事の多くは課題解決型であり、定型業務はデジタル化されています。エンパワーメントは単なる権限移譲ではなく、課題の分析や解決を共有することです。判断ミスは、エンパワーメントを受けた側の能力に起因することが多いため、エンパワーメントを行う側も含めて協力して解決策を探る姿勢が必要です。
放任が社員のモチベーションを下げる場合も
放任が社員のモチベーションを下げる場合、権限委譲が全ての社員にとって適切でないと感じる場合があります。一部の社員は、自己管理や自主性を求められることに対して不安を感じ、逆に放置されていると感じることもあります。これにより、モチベーションが低下し、業務への取り組みや結果にも影響を及ぼす可能性があります。
また、放任が適切に行われない場合、コミュニケーション不足や適切なフォローアップが行われないことが原因で、社員が孤立感を感じることもあります。とくに、ミーティングや面談を通じて定期的にフィードバックやアドバイスを提供し、業務の進捗や課題を共有することが重要です。これにより、社員は自身の役割や責任を理解し、より意欲的に業務に取り組むことができます。
課題解決は未知の領域に対して、チームや上司部下が共に協力して問題解決に取り組むことです。単に業務を丸投げするだけでは、未知の課題に対する失敗の責任を押し付けてしまう可能性があります。
なぜエンパワーメントできないのか
エンパワーメントを避ける理由には、自分の影響力が減少することへの不安、チームメンバーへの信頼不足、そして潜在するリスクへの不安が挙げられます。これらの要因が組織内で根強く存在する場合、エンパワーメントが実現しにくくなることがあります。
自分の影響力の無くなる事への不安
自分の影響力が無くなることへの不安は、エンパワーメント導入の障害となる重要な要素です。上司やリーダーが従来の管理スタイルを変えてエンパワーメントを推進しようとすると、自分が全ての決定権を握ることで得ていた安心感が失われることへの心理的抵抗が生じることがあります。とくに長年にわたって指導的役割を担ってきた人物には顕著にあらわれます。
エンパワーメントは、従業員に自己決定権を与えることで、彼らの能力と責任感を引き出すことを目的としていますが、それによって上司やリーダーの役割が変わることを嫌う反応も見られます。自分の影響力が減少することで、組織の方向性や業務の進行に対するコントロール感を失うことを恐れるためです。
しかし、不安を感じること自体は問題ありません。不確実性や困難な課題に直面すると、自分の能力や成果に対する不安は自然なことです。しかし、自分の能力や周囲の目線に対する不安が原因で、チームや社内での不和が生じると、大きな問題になります。課題解決に向けては、こうした不安を克服し、協力して取り組むことが重要です。
メンバーへの不信
メンバーへの不信は、エンパワーメント導入の障害として大きなものです。リーダーや上司がチームメンバーに権限や責任を委ねることに対して、過去の経験や信頼関係の欠如から来る不信感が存在します。過去にチームメンバーが期待通りの成果を出せなかったり、責任を果たせなかった経験がある場合、リーダーは彼らに対して完全な権限を与えることに躊躇することがあります。
この不信感は、チーム全体のパフォーマンスにも悪影響を与えかねません。リーダーがエンパワーメントを効果的に推進するためには、信頼関係を構築し、メンバーが自己決定や責任を果たす能力を持っていることを確信する必要があります。適切なコミュニケーションと透明性を通じて、メンバーとの信頼関係を深めることが重要となってきます。
メンバーの不信の原因は、能力やスキルではなく、リーダーや権限移譲者のスタンスや態度にあります。つまり、課題に対してどのように向き合っているか、そしてその対応に対するメンバーへの姿勢が重要です。上司や専門家としての立場に関係なく、課題に対する姿勢がメンバーの信頼を築く鍵となります。
リスクへの不安
メンバーに権限や責任を与えることで、彼らが失敗する可能性や、与えられた権限を誤用する可能性に対するリーダーや管理者の不安が生じることがあります。とくに、階層的な指揮命令がない状況でリスク管理をどう行うか、企業の重要な決定においてどう対応するかについての不安が生まれやすいのも事実です。
これに対処するためには、分散型リスク軽減の考え方が重要です。たとえば製造業では、問題を発見した社員が組立ラインを止めることができるシステムを導入したり、リスクがあるプロジェクトに対して全社員が共有の責任を持つといった文化を醸成することが効果的です。
リスクへの不安はあるのが当たり前です。リスクを分散し、複数の視点からアイディアを出すためエンパワーメントを行うのです。リーダーや権限移譲者の姿勢や態度が信頼の鍵であり、エンパワーメントを通じて、より多角的なアプローチで課題に対応することができます。
エンパワーメントはチームで権限を共有することが重要
エンパワーメントは、単なる権限移譲ではなく、チーム全体で権限を共有することを重視します。このアプローチは、組織全体が責任を共有し、個々のメンバーが自らの力を最大限に発揮できる環境を促進します。チームで権限を共有することで、意思決定のスピードが向上し、問題解決能力や創造性が活性化されるメリットがあります。また、組織内での責任の逃れを防ぎ、全体の成果を共有する文化を醸成することも可能です。
個人へのエンパワーメント
個人へのエンパワーメントは、チームメンバーそれぞれに権限を与えることで、個々の能力や創造性を最大限に引き出し、自己成長を促進させます。個人が自らの判断で業務に取り組むことで、意思決定のスピードが向上し、状況に応じた柔軟な対応が可能になり、組織全体のパフォーマンスが向上し、イノベーションが生まれやすくなります。
また、個人に権限を与えることで、責任感や自己管理能力が向上し、自己成長の機会が増えます。このアプローチは、従来の指示命令型の組織構造から、自律性と責任を重んじる新しいリーダーシップスタイルへの移行を支援します。権限を持つことで、メンバーは自信を持って自らの判断で行動するようになり、自己成長を促進する環境が整います。結果として、メンバーはより満足度の高い仕事を行い、組織全体の成果に大きく貢献することが期待されます。
今、現場で意思決定するとなれば、個人で引き受けるには困難な内容が多いです。チームや集団の力をもっと活用し、チームで引き受けていこうということです。
チーム全体で活動することが重要
エンパワーメントは、チーム全体でこれらの活動しなければなりません。これにより、リーダーの個人的な負担が軽減され、責任を共有することで一体感を変換できます。チームメンバーが積極的に参加し、各々自ら責任を持つことで、組織全体の成果向上が期待され、チーム全体が責任を共有することで、個々のメンバーがより自主的に行動でき自己成長を促進する環境も生まれていきます。
個人で困難な課題は、チームや集団の課題になれば、負担や不安が目標に変化するという事です。相互に目標を共有すれば、連帯と牽制を同時に獲得できます。逆に言えば、容易な問題や簡単な業務遂行においてのエンパワーメントであれば、チームや集団で共有する必要もないとも言えます。
チームで権限を共有する
チーム内で権限を共有することは、意思決定のスピードと効率性を大幅に向上させる重要な要素です。各メンバーが必要な権限を持ち、自律的に行動できる環境が整うと、個々のメンバーが迅速に意思決定を行い、問題解決や改善をスムーズに進めることができます。権限を持つことで、メンバーは自分の判断で必要なアクションを取ることができ、プロジェクトの進行がスピードアップします。 さらに、メンバー同士の協力が促進され、情報や知識がオープンに共有されるようになります。この情報共有によって、各メンバーの専門知識や経験がチーム全体にフィードバックされ、問題解決のための多角的なアプローチが可能になります。結果として、チーム全体のパフォーマンスが向上し、より高い成果を上げることができるのです。
チームで権限を共有することは、言い変えればメンバー全員が同じ権限と責任を持つことであり、同じ業務を重複してやるという非効率もありえます。チーム権限と責任を共有する場合は、情報共有とコミュニケーションは非常に重要な要素になります。平たく言えば、緊密にコミュニケーションすることが肝要であるということです。
企業におけるエンパワーメントを推進する方法
エンパワーメントを企業で推進するには、そのメリットがデメリットを上回ることを明確に訴求することが重要です。個人間での情報移譲からチーム間での共有へと進展させ、心理的安全性を確保しつつ徹底的な情報共有を促進することが鍵となります。これにより、各メンバーがより自由に意思決定し、行動できる環境が整い、結果として企業全体の成果や革新が促進されていくでしょう。
エンパワーメントはメリットがデメリットを上回るという訴求を行う
エンパワーメントは、そのメリットがデメリットを上回るという訴求を行うとよいでしょう。個々のメンバーが自己成長を促進し、能力を最大限に発揮できる環境を提供することが一番に求められます。権限や責任を与えることで、彼らはより多くの意思決定を行い、自己の発展を実感することができるでしょう。
また、チーム全体での権限共有は、意思決定のスピードを向上させ、問題解決を迅速化することができます。メンバー同士が情報や知識をオープンに共有し、協力して業務に取り組むことで、効率的なチーム作業が実現されます。
個人間の情報移譲からチーム間への共有へ
個人間の情報移譲からチーム間への共有への移行を推進するためには、いくつかの重要な手段があります。まず、チーム全体で情報を共有するための適切なツールやプラットフォームを導入することが重要です。たとえば、プロジェクト管理ツールやコラボレーションツールを活用することで、リアルタイムでの情報共有や作業の進捗管理が可能になります。これにより、チーム全体が同じ情報にアクセスし、連携して業務を進めることができます。
さらに、リーダーがエンパワーメントを推進するためのサポートを行うことも不可欠です。リーダーは情報の共有をリードし、チームメンバーが必要とする情報にアクセスできるように支援する役割があります。
心理的安全性と徹底した情報の共有
心理的安全性と徹底した情報の共有は、チームや組織内での効果的なエンパワーメントを促進するための重要な要素です。まず、情報の透明性を確保することが求められます。全てのメンバーが必要な情報にアクセスできる環境を整えることで、意思決定や問題解決が円滑に行われるようになりまた。情報の共有が適切に行われれば、個々のメンバーが自信を持って意見を述べたり、新しいアイデアを提案したりすることができます。こうした環境がチーム全体の創造性やイノベーションが促進され、組織全体の成果に寄与することを可能にします。
また、心理的安全性を確保することも重要となってきます。メンバーが誤りや失敗を恐れずに意見を述べたり、リスクを取ったりすることができる環境を作ることが、エンパワーメントを成功させるために不可欠です。心理的安全性が高まれば、メンバーは自己表現をしやすくなり、チーム全体の信頼関係が築かれます。これにより、チームの協力やコラボレーションが促進され、結果として組織の目標達成に向けた努力が加速されることでしょう。
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まとめ
エンパワーメントは、組織内で権限と責任を下位のレベルに委譲することで、自己成長を促進し、チームのパフォーマンスを向上させるアプローチです。メリットとしては、意思決定の迅速化、創造性の引き出し、チームモラルの向上があります。
一方で、デメリットとしては、リスク管理の課題や情報の透明性確保の難しさが挙げられます。エンパワーメントを導入する際は、十分なトレーニングとサポートが必要であり、組織全体の文化やリーダーシップの質が成功の鍵を握ると言えるでしょう。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。