2025.01.14
エンゲージメントサーベイとは?目的やメリット、アンケートで本音を得るための施策を解説!
目次
エンゲージメントサーベイは、企業が社員の意識や満足度を把握するための重要な手段です。この調査を通じて、組織内のコミュニケーションや業務環境、文化に関する社員の本音を引き出すことができます。
エンゲージメントサーベイの主な目的は、社員のエンゲージメントレベルを測定し、その結果を基に改善策を講じることです。高いエンゲージメントは、生産性の向上や離職率の低下につながるため、企業にとって不可欠な要素です。
本記事では、エンゲージメントサーベイの具体的な目的やメリット、さらには本音を得るための効果的なアンケート施策について詳しく解説します。
エンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイとは、企業が従業員の仕事に対する意欲や満足度、組織への帰属意識を把握するための調査です。この調査は、匿名で行われることが多く、社員が自由に意見を表明できる場です。また、エンゲージメントサーベイは、社員が会社や職場に対して「どのように感じているか?」という認識を可視化する認知サーベイになります。
調査の結果は、エンゲージメントの現状を把握するだけでなく、課題を明らかにし、改善点を見つけるための重要なデータとなります。しかし、社員がそもそも会社に興味がない、意見を言いたくないなどの場合は、エンゲージメントサーベイの結果は本音でないためデータとして使えない場合もあります。エンゲージメントサーベイの目的について詳しく見ていきましょう。
エンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイは、従業員のエンゲージメント(仕事への関与度ややる気)を定量的に測定するための調査手法です。エンゲージメントは、仕事の生産性、効率性、従業員の離職率、健康状態などに直接的な影響を及ぼすため、企業にとって非常に重要な指標となります。調査は通常、オンラインで実施され、従業員が自社や自分の仕事に対してどれだけ関与しているのかを評価するための各種質問が用意されます。
質問内容には、業務への熱意、職場環境、上司との関係、キャリアについてなどが含まれます。エンゲージメントサーベイは社員が意見や認識を表明するツールであり、会社にとっては社員の意見や考えに応答して組織と社員がコミュニケーションを図る手段として機能します。
エンゲージメントサーベイの目的とは?
エンゲージメントサーベイの主要な目的は、企業内の現状を把握し、従業員が抱える課題や期待、不満を洗い出すことです。この調査を通じて従業員の声を可視化し、何がエンゲージメントを妨げているのかを明らかにします。
調査結果を元に優先順位の高い課題を特定することが可能となり、経営陣や人事部門が、どの分野に注力すべきかを理解する手助けになります。また、エンゲージメントが低いとされる領域に対して具体的な改善策を講じることで、従業員の満足度や生産性を向上させることが期待されます。
このプロセスは長期的な組織の成長や社員の定着率向上に寄与するため、企業の競争力を高めるためにも不可欠です。
さらに、エンゲージメントサーベイは会社という組織と社員という個人をつなぐコミュニケーションのプロセスとしても機能します。解像度の高い社内世論調査という側面もあり、経営側は多数の社員を統合して全体を見るために、数値結果から多数の社員の本音や総意を把握する必要があります。
エンゲージメントサーベイは、数値の上下だけではなく、人事部など事務局や経営陣の肌感と併せて、数値から本音や総意を見抜く必要があるわけです。ここをミスリードすると意思決定を間違える事も多くあります。
従業員満足度とワークエンゲージメントの違いとは?
従業員満足度とワークエンゲージメントは、どちらも職場における重要な指標ですが、その内容と意味は異なります。
従業員満足度は、仕事内容や職場環境、上司との関係、会社の方針などに対して「どれだけ満足しているか」を測る指標です。この指標は、主に従業員が日々の業務を通じて感じる心地よさや安心感を評価するものであり、基本的には会社に対する満足度を示しています。しかし、満足度が高いからといって、従業員が自発的に会社に貢献したいと考えているかどうかは分かりません。
一方、ワークエンゲージメントは、元々はワーカホリックなど社会問題から生まれた概念であり、従業員が自分の仕事に対してどれだけ情熱を持ち、積極的に取り組んでいるかを示す指標です。
エンゲージメントが高い従業員は自らの業務に対してやりがいを感じ、成果を上げるために貢献したいという気持ちが強くなります。エンゲージメントを高めることは企業の生産性や業績向上に直結します。極端に言えば、ワークエンゲージメントは「業務や仕事」と「個人」の関係性を測る指標です。
また、従業員満足度は報酬や福利厚生などの物理的な要素を改善することで高められることも多いですが、ワークエンゲージメントを高めるには、まずエンゲージメントサーベイを通じて従業員の内面的な動機や職場における自己実現欲求を探り、より高いエンゲージメントを促進することが企業にとっての大きな課題となります。
実務レベルでは、従業員満足度とエンゲージメントサーベイを明確に切り分ける必要は特段ありません。従業員満足度は物的な報酬や環境が社員との関係を良好にし、社員の動機付けに刺激を与えるという前提の考え方です。
エンゲージメントが重要視される背景
エンゲージメントが重要視される背景には、採用競争の激化と価値観の多様化が大きく影響しています。特に、2030年には高齢者が人口の1/3を占めると予測され、企業は優秀な人材を確保するために、より魅力的な職場環境を提供する必要があります。さらにZ世代を中心とする若手社員は、内発的動機を重視し「貢献」「成長」「やりがい」を求めています。
採用競争の激化
2030年には高齢者が人口の1/3を占めると予想されており、これが企業の採用活動に大きな影響を及ぼすと懸念されています。このような人口動態の変化により「売り手市場」と呼ばれる状況がさらに悪化し、優秀な人材の獲得がますます難しくなっていきます。
企業は魅力的な職場環境を提供しなければ、求職者から選ばれないリスクが高まります。これにより人手不足が慢性化する恐れがあり、ひいては経済や業界全体に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、医療・介護・IT・建設などの業界では、すでに人材不足が深刻な問題となっています。このような背景から、企業は積極的に従業員エンゲージメントを高める施策を講じる必要があります。
労働生産人口の低下は日本における社会課題であり、不可逆的な状況にあります。経営と社員との関係も相対的に社員が強い立場に変化しつつあると言っていいでしょう。
価値観の多様化
バブル世代では、1つの会社での出世や長期的なキャリア形成が重視されていました。しかし、1990年代後半から2000年代に生まれたZ世代の若手社員は従来の価値観とは異なり、「貢献」「成長」「やりがい」といった内発的動機付けを大切にしています。この世代は、自己の成長や社会への貢献に強い関心を持っており、これらの要素が仕事の満足度やエンゲージメントに直結しています。
欧米や中国においても、賃金に加えてその会社でしかできない仕事や体験を「経験価値」として社員は欲しており「どんな経験を得られるのか?」に着目しています。
しかし、何をもって貢献や成長、やりがいを感じ経験とするのかは、個々の価値観やキャリアの展望によって異なるため、企業は多様な価値観に対応しながら、自社でしか体験できない「経験価値」を明確にする必要があります。
たとえば、ある人はスキルアップを重視する一方で、別の人はチームでの協力や成果を求めるかもしれません。このような価値観の多様化に適応し、各従業員のニーズに応えることで、エンゲージメントを高めることが求められています。そうしなければ、優秀な従業員が長く活躍することが難しくなるのです。
さらに、労働人口の減少により、総合職男性終身雇用という単一的な労働条件は不可能になっています。そのため、働く場所や時間、目標の在り方、評価の運用などは限りなく柔軟にならざるを得なくなり、人的資本のマネジメントは複雑になっています。
人的資本経営は、複雑になっているからこそ競争優位の源泉にもなりえます。複雑な事象を安易に簡略化せず、その複雑性を維持したまま分析することで、他社との差別化や独自性を見出すことができます。その過程で、自社の競争優位を支える人的資本が何であるかを明確にしていく必要があります。
エンゲージメントサーベイによって得られるメリット
エンゲージメントサーベイは、組織にとってさまざまなメリットをもたらします。特に、従業員の離職防止に寄与する点が挙げられます。サーベイを通じて得られるフィードバックは、従業員の不安や不満を早期に把握し、適切な対策を講じるための貴重な情報源となります。これにより、離職率を低下させることが可能となります。
また、得られたデータは人事施策に活用でき、企業文化や職場環境の改善に役立ちます。さらに、従業員のエンゲージメントが向上すれば、生産性も自然と高まります。これらのメリットは、組織全体の活性化を促し、持続的な成長につながるのです。
従業員の離職防止
エンゲージメントサーベイは、従業員の離職率を低下させるために極めて有効な手段です。研究によれば、従業員が会社に対して愛着や誇りを持つことで、離職率は顕著に低下することが確認されています。
エンゲージメントの高い組織では従業員と会社の結びつきが強くなり、彼らが自己の成長や貢献を感じられる環境が整います。一方で、エンゲージメントが低い組織では、従業員が会社に対して無関心になりやすく、その結果として離職率が高くなります 。
エンゲージメントサーベイを活用することで、従業員の不満や組織課題を抽出し、これに基づいた適切な対策を講じることが可能です。たとえば、サーベイで得られたデータを分析し、特定の問題点を明確にすることで、必要な改善策を策定し実施できます。このようにして従業員のエンゲージメントを高めることが結果的に定着率を向上させるカギとなります 。
すでに、人材の流動化による採用コストは大幅に増えており、経営に影響を与える状況です。人不足による倒産は単純に賃金高騰だけではなく、事業や組織に魅力を感じられないという要因もあります。大企業においては、エンゲージメントサーベイの結果を管理職の評価指標に組み入れることも増えてきています。
人事施策への利用
エンゲージメントサーベイは、企業の人事施策に対しても大きな影響を与えます。サーベイによって明らかにされた隠れた課題を可視化することで、具体的な人事施策を講じる基盤が整います。たとえば、社内のコミュニケーションの質を向上させたり、ワークライフバランスの調整を図ったりすることが可能になります。
このように、従業員の声を反映させることによってボトムアップの組織体制が構築でき、社員のモチベーションや満足度を向上させることができます。
とは言え、社員のモチベーションやワークライフバランスは個人的な内容が多く、全ての社員の状況について会社が対応することは不可能です。しかし個人的な内容の多くが、部門やチームの異動・変更によって解決する事も案外多いのです。
このことから、エンゲージメントサーベイというインジケーターから職場や部門の状況を把握し、管理職やチームリーダーを通じて社員と個別に対話を行い、人材を社内で流動させることはとても重要であることが分かります。
大企業ではこうしたコミュニケーションプロセスがうまく機能しておらず、人員の異動や配置転換が、1on1やキャリア面談と統合されていないため、退職やメンタルヘルスの悪化といった、会社も社員も望まない結果を生むことが増えています。
生産性の向上
エンゲージメントの向上は、組織の目的と個人の目標が一致することを促進します。これにより、従業員は仕事に対してより主体的に取り組むようになり、「指示されたから仕事をする」という受動的な姿勢から「自己の成長のためにやりたいから仕事をする」という能動的な姿勢へと変化します。
こうした意識の改革は、生産性の向上に直結します。また、エンゲージメントが高まることで従業員間の意識の共有が進み、認識のずれが解消されるため、業務の効率化や行動スピードの向上も期待できます 。
エンゲージメントサーベイの質問項目
エンゲージメントサーベイの質問項目は、従業員の職場での感情や意識を理解するための重要なツールです。ギャラップ社が提示する質問は、特に高いエンゲージメントを持つ職場環境を形成するための基盤となります。これらの質問は、個々の従業員の経験や感情を評価し、組織全体の健康を測定することを目的としています。
代表的な質問には、「私の意見は職場で重視されていると感じるか?」や「私の上司は私の成長を支援してくれるか?」などが含まれます。これらの質問は、従業員が自分の役割や価値をどのように感じているかを掘り下げ、コミュニケーションやフィードバックの質を評価するのに役立つでしょう。さらに、「同僚と良好な関係を築けているか?」という問いは、職場の人間関係やチームワークの状態を把握するのに役立ちます 。
以下はギャラップ社が提示するエンゲージメントサーベイの質問項目です。
Q1. 私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている。
Q2. 私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている。
Q3. 私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある。
Q4. この1週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした。
Q5. 上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる。
Q6. 仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる。
Q7. 仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる。
Q8. 会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる。
Q9. 私の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる。
Q10. 仕事上で最高の友人と呼べる人がいる。
Q11. この半年の間に、職場の誰かが私の仕事の成長度合について話してくれたことがある。
Q12. 私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った。
参考:ギャラップは従業員エンゲージメントとパフォーマンス向上の最適なパートナーです
エンゲージメントサーベイは、人の心理的側面を聞くもの
従業員エンゲージメント研究のパイオニアとして知られるウィリアム・カーンがこのエンゲージメントという概念を導入する前は、社員を採用し、適切な職務を与え、適切なインセンティブを与えることで良い業績が得られると考える傾向がありました。ウィリアム・カーンは研究を通じて職場でのエンゲージメントというテーマを取り上げ、従業員のエンゲージメントに関する一連の議論と理論を始動させました。
その後のエンゲージメントサーベイにおける研究は、主に社員の心理や感情を可視化し、構造化する傾向となります。ウィリアム・カーンは、これを「身体的関与」「認知的関与」「感情的関与」の3つに分類しました。現在でも社員の心理や感情の共通点を見出し、構造化する研究や広範な調査が続けられており、結論には至っていません。社員の心理や感情を理解するためのフレームワークや構造は、現在も研究が進行中であるということです。
重要なのは、いかに社員の心理や感情に耳を傾けるかであり、エンゲージメントサーベイはそのサインの一つであるということです。
エンゲージメントサーベイは意味がない?
エンゲージメントサーベイが無意味だと感じる人もいますが、実際にはその活用方法や結果に対するアプローチによって効果は大きく変わります。従業員がエンゲージメントサーベイを意味がないと感じる理由は以下の通りとなります。
従業員の理解不足
エンゲージメントサーベイの効果を最大限に引き出すためには、従業員がその目的や意義を十分に理解していることが不可欠です。多くの場合、サーベイの目的が企業の意図や期待に対する透明性を欠いており、その結果、従業員は納得感を持てずにサーベイに臨んでしまいます。
この理解不足は、従業員がサーベイに参加する動機を減少させ、回答率や質に悪影響を及ぼすことがあります。企業はサーベイの目的やその結果がどのように組織改善に役立つかを明確に伝え、従業員が安心して参加できる環境を整える必要があります 。
そもそも、エンゲージメントサーベイという行為自体が現場で十分にコミュニケーションされていない段階で、サーベイを実施し産業平均や優劣を判断しようとしても、現場の理解を得られない可能性があります。
不利益への不安
従業員がエンゲージメントサーベイに対して抱く不安の一つに、「個人の意見が不利益につながる可能性」があります。この不安が強いと、従業員は本音を隠して回答することが多く、結果的に信頼性の低いデータを得ることになります。
企業は、サーベイが匿名で行われ、回答内容が個別に特定されないことを強調し、従業員が安心して率直に意見を表明できるように配慮する必要があります。また、従業員が安心できる文化を醸成することも重要です 。
エンゲージメントサーベイがどのように活用されるのか、その用途が不明確な場合、人材の流動化が進む現在では、真剣に回答する社員は少ないでしょう。会社や職場に特に愛着や感情移入がない場合は、設問に対してポジティブに応えていた方が無難です。このスコアを何に活用されるのか不明な場合は、ネガティブな答えや問題意識を持つ必要性はないからです。
フィードバック不足
サーベイの結果に基づいたフィードバックや具体的なアクションがない場合、従業員はサーベイを無意味なものと捉えることがあります。結果が公表されず、実施されたアクションが不透明であると、従業員はサーベイを「世論調査」や「天気予報」のように感じ、参加する意味を見失ってしまいます。
企業は、サーベイの結果を基にした具体的な施策や改善点を提示し、従業員との対話を促進することで、サーベイの意義を高める必要があります。これにより、従業員は自分たちの意見が反映されていると感じ、次回のサーベイに対する期待感を持つようになります 。
せっかく本音や感情を表明してもフィードバックがないのであれば、サーベイに真剣に答える社員が減少するのは自明の理です。また、エンゲージメントサーベイのスコアが下がることは好意的に解釈されることが多いですが見方を変えれば、設問に対して問題意識を持つ社員が多いということとしても解釈できます。
エンゲージメントサーベイは、組織に所属する社員の意見や本音をまとめたものであり、そのスコアを経営や人事が組織の状況を踏まえて解釈し、全社にフィードバックとしてメッセージを発信することは重要な業務です。
先述した通り、エンゲージメントサーベイはコミュニケーションツールです。コミュニケーションには「受信」と「発信」の両面があります。「受信」とはサーベイの実施そのものであり、「発信」としては、サーベイの結果や分析内容に対して会社として解釈や改善策を提示することが求められます。これがなければ、真のコミュニケーションは成立しません。
エンゲージメントサーベイでわかることは少ない
エンゲージメントサーベイは、従業員の物的関係と心的関係を評価するための有用なツールですが、その限界も理解する必要があります。
調査では、物的エンゲージメントに関する具体的なデータ(たとえば、職場環境や報酬に対する満足度)を測定することは可能ですが、心的エンゲージメントに関する深い感情や文脈を数値化することは難しいです。このため、調査の結果だけでは、従業員の本音や複雑な感情を十分に把握することはできません。
心的エンゲージメントの理解には、ヒアリングや対話が重要です。従業員との直接的なコミュニケーションを通じて、彼らの価値観やモチベーション、職場に対する期待や不満を把握することができます。エンゲージメントサーベイをうまく利用するには以下のことが重要となります。
エンゲージメントサーベイの分析
エンゲージメントサーベイの結果をただの数値として捉えるのではなく、従業員の行動や心情に関する深い洞察を得ることが重要です。数値はエンゲージメントの状況を示す指標にはなりますが、その背後にある感情やモチベーションを理解しなければ、具体的な改善策を導き出すことは難しいです。
エンゲージメントサーベイの構造化
サーベイ結果を構造化して分析しやすくすることも大切です。具体的には、物的エンゲージメント(物理的な環境や報酬に関する関与)と、心的エンゲージメント(感情的なつながりや意欲)に分けて各項目のスコアを比較します。この構造化によって、どのエリアで強みや弱みがあるのかを明確に把握できます。
エンゲージメントサーベイの文脈及び文字化
心的エンゲージメントに関する情報は数値だけでは捉えにくいため、自由回答やヒアリングから得た情報をテキストデータとして収集し分析します。従業員がどのように感じ、何を求めているのかを理解することで、エンゲージメント向上のための具体的な施策を考えることが可能になります。
エンゲージメントサーベイのクロス分析
さらに、サーベイ結果を他のデータとクロス分析することで、より深い洞察を得ることができます。たとえば、従業員の属性(年齢、役職、勤続年数)や業績データとエンゲージメントスコアを比較することで、特定のグループにおけるエンゲージメントの特徴を探ります。このような分析によって、どの要素がエンゲージメントに影響を与えているかを把握し、ターゲットを絞った改善策を導き出すことができるでしょう。
エンゲージメントサーベイはコミュニケーションツール
エンゲージメントサーベイは、社員の意見や状態を把握するための重要なコミュニケーションツールです。特に大規模な企業では、施策を計画する人と実施する人が異なるため、両者の意見の乖離が生じることがあります。計画者は施策のメリットを強調しがちですが、実施者は潜在的なデメリットに目を向ける傾向があります。このギャップを埋めるために、エンゲージメントサーベイが役立ちます。
また、働き方改革やSDGs、セキュリティなど、外部環境の急激な変化に対応するため、企業はより多くの施策を計画しなければなりません。そのため、アンケートの実施頻度も増加し、ある企業では月に2回もアンケートを実施している場合もあります。しかし、このような状況で本音や実情を可視化できなければ調査自体の意味が薄れてしまいます。
エンゲージメントサーベイを効果的に活用するためには「内容」と「関係」が重要なポイントです。アンケートの設問内容は、従業員の真の意見を引き出すものでなければなりません。また、計画者と実施者との間で意思疎通が円滑に行われることで、より良い施策の実現が可能となります。
しかし、社員の本音を聴くことが重要だと強調するならば、極端な話、サーベイだけにこだわる必要はありません。直接の対話や1on1ミーティング、現場とのコミュニケーションを通じて、よりリアルな声を収集することも効果的です。調査はあくまで一つの手段であり、本音を引き出すためには、多様なアプローチを組み合わせることが大切です。
本音を引き出すには「内容」と「関係」が重要
本音を引き出すためのアンケート実施には、「内容」と「関係」がカギとなります。ここでの「内容」は、実際に何を聞きたいのかを指し、質問内容の明確さが重要です。
質問がわかりにくい場合、従業員は意見を正確に表現できなくなり、結果としてデータが歪む可能性があります。また、アンケートの背景や目的が十分に伝えられないと、従業員はその重要性を理解せず、参加意欲が低下することもあります。
一方、「関係」は調査を計画する側と実施する側の間の信頼関係を指します。コミュニケーションが不十分な場合、従業員は自分の意見が尊重されないと感じるかもしれません。その結果、真の意見を述べることが難しくなります。特に、アンケート実施後の報告やアクションが行われない場合、従業員は自分の意見が無視されたと感じ、次回のアンケートに対する信頼を失ってしまいます。
したがって質の高いデータを得るためには、質問内容の明確化と、計画者と実施者間の強固な信頼関係の構築が不可欠です。これにより、従業員が安心して本音を語れる環境を整えることができ、実際の意見を反映した貴重なデータを得ることが可能となります。
アンケート前のコミュケーション
アンケートを実施する際には、事前と事後のコミュニケーションが非常に重要です。まず事前の段階では、管掌役員や上位者の権威を活用して、アンケートの重要性を従業員に伝えることが回答率を向上させるためのカギとなります。
「なぜこのアンケートを実施するのか?」や「なぜ今なのか?」といった背景をしっかりと説明することが必要です。この点は基本的なことですが、多くの企業では形式的な文面での案内に留まってしまっていることが見受けられます。
次に、アンケートが実施される環境や内容を整えることが求められます。回答しやすい状況を作ることも大切ですが、それ以上に重要なのは、結果をどのように実施者に伝えるかということです。計画者がデータを得たことに満足しがちで、その後のコミュニケーションをおざなりにしてしまうことが多いのです。
さらに、アンケート結果に基づいたアクションに対する反応を把握することも重要です。このプロセスを怠ると、関係が悪化し、本音を引き出すことが難しくなります。従業員が自分の意見が尊重されないと感じると、次回のアンケートへの参加意欲が低下してしまうため、事前事後のコミュニケーションをしっかりと行うことが、信頼関係を築く上で欠かせません。
このようにアンケートの効果を最大化するためには、事前にしっかりとした説明を行い、事後に結果を伝え、アクションへの反応を確認するという一連のコミュニケーションが重要です。これらを通じて従業員が本音を語れる環境を整えることができ、より有意義なデータを得ることができるでしょう。
エンゲージメントサーベイで本音を引き出すアンケートの作り方
従業員の本音を引き出すためのエンゲージメントサーベイではアンケート作成においていくつかの工夫が求められます。以下のポイントに留意して設計しましょう。
・意図と背景の明確化
アンケートの目的や意図をしっかり伝えることが大切です。自信がない場合は専門家に依頼するのも一つの手です。適切な案内文は従業員の理解を深め、意見を引き出す助けとなります。また、誰に対して何を聴き、どのように活用するのかを具体的に示すことが重要です。
・アンケートの流れを説明
アンケートの記入方法や、その結果がどのように扱われるかの流れを伝えましょう。これにより従業員は自分の意見がどのように活用されるのかを理解し、参加への動機づけとなります。
・質問の設計
設問はシンプルでわかりやすく設定しましょう。専門用語は避け、一つの質問に対して一つの要素に絞ることが大切です。
また同じ内容の質問を重複させず、意図が伝わるように工夫します。文脈を把握するために自由回答形式の設問を含めることも有効です。
・ストレスのない回答環境
アンケートの内容や対象者の環境を考慮しストレスなく回答できる状況を整えます。簡易で使いやすいWEBシステムを導入するとミスを減らすことができます。
・結果報告の工夫
結果は社内報・イントラネット・対面での説明会など、さまざまな方法で報告します。報告内容は対象者に最大限伝わるように工夫し、関心を引ける形で情報を共有することが重要です。
これらのポイントを抑えることで、エンゲージメントサーベイを効果的に実施し、従業員の本音を引き出すことができるでしょう。
アンケートで本音を得るための4つの方策
貴社のアンケートが前述の内容と大きく乖離している場合、また結果が従業員の本音を反映していないと感じるのであれば、そのデータにはあまり価値がありません。従業員との信頼関係を修復し本音を引き出すためには以下の方法を参考にしてください。
・事前ヒアリングとアンケートの実施
アンケートを行う前に組織のさまざまな属性を持つメンバーに対して事前ヒアリングを実施し、その結果をもとにアンケートを設計します。これにより質問内容がより明確になり、事前のヒアリングを経て設計されたアンケートであるというメッセージが伝わります。このプロセスは民主的な雰囲気を演出するのにも役立ちます。
・アンケート結果の報告会とワークショップ
アンケート結果が必ずしも期待通りでない場合でも、対象者が実際に記入したデータは変わりません。これを対面で提示することで背景や本音を引き出すことが可能です。ワークショップを開催する際には、参加者が自由に意見を出しやすい環境を整えることが重要で、計画側の見解を控えめにすることがポイントです。
・アンケートとログ解析の活用
アンケートは対象者の認識を把握するためのものですが、認識と実際の事実にはギャップがあることがあります。社内WEBページのアクセスログが取得可能であればアンケート結果とアクセスデータを比較することで、より真実に迫ることができます。
たとえば、「コンプライアンスガイドラインを知っている」との回答があったとしてもイントラネットでの実際のアクセスが少ない場合、その認識に疑問を持つべきです。
・パルス型アンケートの活用
最近のトレンドとして、パルスサーベイ(1分程度で回答できる5~10問の調査)を通常のアンケートと併用する方法があります。週次や月次で行われるパルスサーベイは、年に一度程度の本格的なアンケートを組み合わせることによって文脈を理解する手助けとなります。パルスサーベイの質問内容はパッケージ化されたものもありますが、できれば専門家と協議して設計することが望ましいです。
コミュニケーションがなければアンケートを取るほどエンゲージメントは下がる
エンゲージメント向上のためのツールとして従業員満足度調査やエンゲージメント調査、やりがい調査などが普及していますが、これらの調査の効果を最大限に引き出すためには、アンケート実施前後のコミュニケーションが不可欠です。調査結果を受けて具体的なアクションを起こさなければ従業員は自らの意見が無視されたと感じ、逆にエンゲージメントが低下するリスクが高まります。
アンケートを実施する理由やその結果がどのように活用されるのかを明確に伝えることはとても重要です。情報が共有されず、調査結果が不透明なままだと、従業員は「自分の意見が反映されない」と感じることになります。
さらに、調査結果に基づいて従業員と対話し、フィードバックを行うプロセスがなければ「自身の意見が軽視されている」と認識し、組織への愛着が薄れる可能性があります。その結果として、コミュニケーション不足は調査を実施すること自体の意味を失い、エンゲージメントを下げる原因となります。
エンゲージメントを高めるためには調査後に積極的な対話を行い、従業員の声をしっかりと受け止める姿勢が求められます。こうした取り組みを通じて、従業員は自分たちの意見が尊重されていると感じ、エンゲージメントの向上につながります。
まとめ
エンゲージメントサーベイは、組織の従業員がどれだけ職場に対して関与しているかを測る重要なツールです。エンゲージメントサーベイの目的は、従業員の満足度やモチベーションを把握し、職場環境を改善することにあります。
調査により、従業員の離職率を下げ、業務の生産性を向上させることが期待されます。また、アンケートを通じて得られたデータは企業の人事施策の基礎資料として活用でき、組織の健康診断の役割も果たします。
本音を引き出すためには、事前のヒアリングや明確なコミュニケーションが不可欠です。調査結果を共有し、アクションにつなげることで従業員の信頼を築き、エンゲージメントの向上につなげることができます。
このようにエンゲージメントサーベイを適切に活用することで、組織全体の活性化を図ることができるのです。従業員の声を大切にし、彼らの意見に基づいた施策を実施し、より良い職場環境を実現していきましょう。