
2025.04.01
「組織の常識を疑え!」~エンゲージメントサーベイは意味がない?~【廣田編】

目次
2025年2月に開催したソフィア・カンファレンスでは、ソフィアの経営陣である廣田・築地・近田の3名が「常識を考えてみる」座談会にて、エンゲージメントサーベイをテーマに意見を述べ、多くの反響をいただきました。
エンゲージメントサーベイは、従業員のエンゲージメントを定量的に測定する調査であり、重要な指標となります。しかし、その調査結果をきちんと施策に繋げ、意味ある活用ができている組織は多くはないのではないでしょうか。
今や当たり前となったエンゲージメントサーベイの意義とは何なのか、時流を鑑みて今後どのように実施し活用するべきなのか。本コラム記事は3名それぞれの知見をまとめたもので、今回は廣田編をお送りします。
組織内に漫然と横たわっている常識・慣習・通例を、いま一度見つめ直すきっかけにしていただければ幸いです。
(聞き手:吉備奈緒子)
廣田が考える「エンゲージメント」は、双方向コミュニケーションであるべき
―ソフィア・カンファレンスでは「エンゲージメントサーベイ不要論」に対して議論しましたが、あらためてお考えをお聞かせください。
エンゲージメントサーベイ自体に意味がないわけではなく、有用であり活用するべきですが、調査のやり方に問題があると思っています。エンゲージメントを語る際に、組織⇔従業員の双方向の矢印が存在するべきだと思っていて、組織が従業員を評価する一方的なやり方には疑義を唱えたい。従業員側もその組織がエンゲージするに値するものなのかどうか評価しない限り、双方の立ち位置をきちんと把握できないと感じています。
―先日ソフィアではメンバーに対して「不満足度調査」というものを実施しましたね。
これはメンバー側から組織や経営層を評価する調査で、エンゲージメントの把握やメンバー個々人の想いやキャリア展望など、現在地を把握することができたので、実施して良かったと思っています。
従業員がエンゲージする(=つながりを持つ)対象は、その人が関わるコミュニティ全てが含まれ、組織はあくまでもそのひとつです。従業員が自分自身の生き方を大事にして、そのために組織が有用であると思っていれば、エンゲージしている(=エンゲージメントが高い状態である)と考えています。
サーベイ結果をより深く解釈し、問題解決に繋げることが大事
―サーベイの「取り方」以外でも、改めて見直すべき点はありますか?
2つ目の問題点は、サーベイ結果の「解釈」が適切ではないケースがあることです。エンゲージメントサーベイの数値が下がると対象部署が糾弾されることがありますが、スコアの低下は必ずしも悪い兆候ではないのです。
―スコアの低下をそのまま読み取ってはいけない場合もあると。
はい。僕は日頃高校生と接するのですが、例えば、高校生が毎年能力を自己評価するとします。1年次には“4”だった項目が、2年次には課題の難易度が上がったことで、自己評価を下げて“3”とする場合があります。実際の能力は上がっていたとしても、サーベイの結果としては、スコアの低下によって能力が下がったように見えるのです。
―確かにあくまで自己評価なので、数値として下がってしまうことはありますね。
組織にも同様の事象が起きていて、サーベイ結果が下がった際にその結果を紐解いてみると、経営方針の変更や環境変化などに対応している証拠として見えてくる場合もあります。経営方針の変更がきちんと従業員に認識されていた点は注目するべきです。結果をそのまま受け取るのではなく、その数値となった背景を深堀りするなど、様々な観点でサーベイ結果を理解し、解釈することが重要です。
組織における従業員の「自己表現」と、エンゲージメントの変化とは
―座談会の最後では、従業員と組織との関わりについても話されましたね。
現代の若い世代と組織との関わりは、単に「組織に忠誠を尽くす」というものではなく、より個人の価値観や人生全体に基づく選択となっていると常々感じています。
年始の挨拶でもお伝えしていますが、今後は組織に所属し働くということが、個人にとっていくつかある「自己表現」の中のひとつでしかなくなります。
そして、組織における「自己表現」とは、仕事を通じて内発的動機を発揮することだと考えています。組織内で自分が得意なことを活かし、他者に価値を提供することが仕事の本質であり、組織はそのための舞台だと思うのです。
このようにエンゲージメントという概念が従来の形から姿を変えていく中で、 “組織側が「求める人材」を規定し管理する” という考え方が、意味を持たなくなっていきます。
組織側は従業員との関係性が変わりつつあることに気づいて、独自の組織運営を編み出していく必要があるのではないでしょうか。
現代の常識となったエンゲージメントサーベイについて、第1弾はソフィア代表である廣田に意見を聞きました。
エンゲージメントサーベイによって従業員が評価される一方ではなく、従業員側が組織に対してどのように感じているかも把握する必要があると廣田は述べました。個人が自分の価値観に基づいて有用だと感じていることがエンゲージメントの本質であるという見方は、今後の組織運営を考える際のヒントになるのではないでしょうか。
(文:吉備奈緒子)
サービス紹介:従業員エンゲージメント
サービス紹介:調査・分析
資料ダウンロード:データ調査・分析【事例集】
~エンゲージメントサーベイ実施・分析の他、組織変革や社内コミュニケーションの活性化など、より詳しいご相談・情報提供をご希望の方は、下記お問い合わせページよりご相談ください~
関連事例

株式会社ソフィア
代表取締役社長、チーフコミュニケーションオフィサー
廣田 拓也
異なる世界にある共通項を見つけて分断をつなぐことが得意です。最近ではソフィアがこれまで培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、地域の教育分野に力を注いでいます。思考回路と判断基準は、それが面白いかどうか。そして指示命令は、するのも、されるのも嫌いです。だけど、応援を要請されたら馬車馬のように動きます。
株式会社ソフィア
代表取締役社長、チーフコミュニケーションオフィサー

廣田 拓也
異なる世界にある共通項を見つけて分断をつなぐことが得意です。最近ではソフィアがこれまで培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、地域の教育分野に力を注いでいます。思考回路と判断基準は、それが面白いかどうか。そして指示命令は、するのも、されるのも嫌いです。だけど、応援を要請されたら馬車馬のように動きます。