2017.11.02
「世代によってキャリア観ってだいぶちがうよね」組織のお悩みぶっちゃけ劇場 vol.4
目次
【この記事のポイント】
・キャリア観の世代間ギャップには、世の中の景気や採用市場の状況、それにともなうライフプラン(転職などのキャリア形成、定年後の経済的な展望など)の大きな変化が影響している
・考え方の違いがあれど、相手を知ろうとコミュニケーションを試みる姿勢は大切
・これまでのキャリアで得た知識・スキル・人脈が、第二の人生の選択肢を増やしてくれる
人が集まって仕事をする場があれば、コミュニケーションにまつわる悩みはつきものです。組織の中での立場が異なれば直面する課題もさまざま。さて、ここでは仕事において色々な課題に直面する組織人の本音トークを覗いてみましょう。あなたのお悩みを解決するヒントが何か見つかるかもしれません。
今回のテーマは、「キャリア観のジェネレーションギャップ」。普段仕事をする中で、世代が異なる上司や部下に話が通じなくて困ることはありませんか?
それでは、組織のお悩みぶっちゃけ劇場の、はじまりはじまり~~。
※この記事はフィクションです。登場する人物、組織などはすべて架空のものです
<目次>
【今回の登場人物】
- ショウタ:
25歳。中堅の建設会社で設計の仕事をしている。中学生の頃に会社員の父親が他界してからは、母一人子一人の家庭で育ち、今も母と二人で暮らす。学生時代から、学習塾に行けない子どもに無料で勉強を教えるボランティアをしている。
- シゲル:
58歳。ショウタの叔父。地方銀行の支店長。娘2人は独立して、専業主婦の妻と二人で暮らしている。典型的な仕事人間で、土日も顧客とゴルフにいったり地域イベントに顔を出すことが多い。最近始めた唯一の趣味が家庭菜園。孫のハルトを溺愛している。
- マイ:
32歳。ショウタの従姉でシゲルの長女。会社員の夫、保育園に通う1人息子のハルト(2歳)とともに3人暮らし。食品会社の開発職だったが妊娠中に退職。今は、派遣社員として事務の仕事をしている。
- アケミ:
53歳。ショウタの母でシゲルの妹。総合職として生命保険会社に入社し、社内結婚をして寿退社。夫と死別してからは化粧品の訪問販売の仕事で一人息子のショウタを育てた。高齢女性をメイクで元気にすることに生きがいを感じ、働き続けている。
上の世代のアドバイスは役に立たない?
- シゲルおじさん、ビールでよかった?
- おお、ショウタ、ありがとう。お父さんが亡くなって、もう13回忌か。なんだかショウタにビールを注いでもらうなんて感慨深いなあ。この間まで赤ちゃんだった気がするのに。
- それは大げさじゃない? 僕もう社会人3年目だよ。
- そうか。3年目といえばだいぶ仕事が面白くなってくる頃じゃないか。後輩の指導なんかもしてるのか?
- してるけど、最新技術についての知識は下手すると新人の方が沢山持ってたりするから、案外教えることがなかったりするんだよね。ネットとか社外の勉強会とか、情報を得ようと思えばいくらでもチャンスはあるからね。
- そんなことはないだろう。学校や本やネットで学べることなんて表面的な知識だけだ。やっぱり仕事は先輩の背中を見て、話を聞いて、仕事の中で学ぶもんだ。
- そうかなあ。技術に関する常識とかトレンドってすごいスピードで変わっていくから、先輩の昔話よりも後輩の最新情報の方が役に立つこともあるよ。もちろん、社内の人間関係とか取引先の事情とか政治的なことは上司や先輩の方が詳しいけど。
- 仕事をする上ではそういう話も大事だろ?俺なんか若手の頃に仕事で大事なことはみんな酒場で教わった気がするよ。顧客の接待のあと、必ず上司ともう1軒はしごして反省会だ。平日から午前様でタクシー帰宅なんてしょっちゅうだったなあ。
- バブルだね~。
- 平成生まれは付き合い悪いよな。若手を飲みに誘えってうちの部の課長たちに口酸っぱくして言ってるんだけど、「誘っても断られる」とかなんとか、なかなか行かないんだよなあ。
- わかる気がするけど。
- なんで若いやつらは飲み会に乗ってこないんだ?
- だって、ただ楽しいならいいけどプライベートの時間使って、お金使って、気を遣って、結局仕事の話するんでしょ?僕、週に2日は仕事の後でボランティアやってて早く帰りたいから、仕事の話なら業務時間内にしてほしいって思っちゃうんだよね。それに、うちの部署は若手が少なくて…飲み会では歳の離れた上司や先輩が色々と話しかけてくれるんだけど、正直、話が合わないっていうか…。
- どうしてそう思うんだ?
- ねえ、シゲルおじさんは10年後どんな生活をしてると思う?
- なんだ急に。
- いいから答えてよ。
- そうだな…、今58歳だからあと2年で定年退職。それから65歳までは再雇用で働き続けるだろ。68歳なら完全に引退して年金生活だな。夫婦であちこち旅行したり、昔弾いてたギターも再開したいな。あと家庭菜園をもっと大きくして…
- いいねえ、夢があって。
- なんだそれは。夢といえば若者の専売特許だろ。お前は夢がないのか。
- 夢がないわけじゃないけど、僕たちの世代では「定年退職して悠々自適の生活」っていう未来像は、ないよ。
特権階級世代 vs.貧乏クジ世代なのか
- そうなのか?でも今の会社で出世したいとは思うだろ?
- いや、別に。身に付けたい技術や知識はあるし、給料が増えたらそりゃあ嬉しいけど、今の会社にいつまでいるかもわからないし。
- お前もなのか。今どきの若い奴らはすぐ辞めるって言うけど、そんな姿勢で働いているんじゃどこでも通用しないぞ。
- そうかなあ?だって自分が勤め続けたいと思っても会社がいつまでもあるとは限らないし、会社の方針や事業内容が変わって自分のやりたいことができなくなることもあるじゃない。僕が会社に提供できるものと会社に期待すること、逆に会社が必要としているものと僕に期待すること、これが合わなくなったときは辞めた方が自分にとっても会社にとっても幸せじゃない?
- なんだか寂しいこと言うなあ。考え方がドライだよなあ。会社と社員ってもっとこう、運命共同体っていうか、家族みたいな関係じゃなかったのか?
- 私平成生まれじゃないけど、ショウちゃんの言うこと、すごくわかるわ。
- あ、マイちゃん。ハルトくん起きたんだね。
- うん、あっちでばあちゃんに遊んでもらってるよ。で、さっきの話なんだけどさ、この10年くらいの間、誰もが盤石だと認めてたような大企業が傾いたり倒産したりする場面が何度もあったし、会社が家族だとか一生守ってくれるとか思ってる人はそんなにいないと思うよ。いまの日本に、将来的に景気が大幅に良くなるような要因も見当たらないし、会社にも国にもさほど期待してないよね。
- もちろん安定した仕事につけたら言うことないけど、いざというときに転職や独立っていう選択肢も考えられるように、つぶしの効くスキルを身に付けることが大事だよね。いくら社内政治に強くても役職定年で給料も下がって窓際で時間潰してる元上司を見てると、ああはなりたくないって思うもの。
- そもそも今後は少子高齢化で働き手が足りなくなるから、子育て世代の女性はもちろんのこと、高齢者でも体が動き続ける限りは仕事しないと自分の生活が保てないし、社会も回っていかないよ。だから定年退職で優雅な第二の人生とか、無理だと思う。
- おじさんの世代は逃げ切れるでしょ? まだなんとか昭和型の人生のレールに乗っかってても下手しなければ生活が破綻することなく人生を終えられるじゃない。だから、その世代の人の仕事観を聞かされたり、色々キャリアについてのアドバイスをもらっても、正直「はあ、そうなんですか」って感じなんだよね。
- 逃げ切れる…。俺たちの世代はそんな風に見られてたのか。
- いや、お父さんも他人事じゃないよ。もしかしたら100歳まで生きて老後資金が底を尽くかもしれないんだから、退職後の悠々自適の生活を夢見てる暇があるなら、80歳過ぎまで健康で働き続けて収入を得るにはどうしたらいいか考えてもいいんじゃない?
- まあまあ、若者が寄ってたかって年寄りをいじめないでよ。
- なんだアケミ、失礼だな。俺はまだ年寄りじゃないぞ。
- そういう話じゃなくてさ。なんだか3人のやりとりを聞いてたら、ショウタの反抗期の頃を思い出したわ。進路のこととか、私が心配して小言を言うと「そんなことわかってる!」ってそっぽを向くか、「何もわかってないくせに!」って反論してくるの。
- その話はいま関係ないじゃん。
- 関係なくないのよ。話が合わないかもしれないけど、ショウタの上司や先輩もショウタの成長を願っているからこそ、相手のことを知ろうとして、色々とコミュニケーションしようとしてくるんじゃないのかな?それなのに、一方的に切り捨てられたら寂しいじゃない。
- ……。
- それにね、ここではあれこれ責められてるけど、兄ちゃんはマネジメント職だから、組織の中でかなりしんどい思いもしてきてるはずよ。
- そうだよ。俺は同世代の社員から役職を引きはがしたり、早期退職を促したりして、社員からもその家族からもさんざん恨まれる立場だ。
- あれ?でも、会社は運命共同体で、社員は家族みたいなものなんでしょ?
- 家族みたいなものだからこそだ! 会社という大きな運命共同体を守るために、誰かに痛みを引き受けてもらわなければならないときもある。今まで家族みたいな存在だった相手に辛い宣告をするのがどれだけ苦しいかわかるか?
- そういう人たちは、その後どうしてるの?
- うーん、それなりに自分の役職や権限に誇りを持って一生懸命働いてきた人たちの中には、役職定年後にやる気を失ってそのうち会社に来なくなってしまった人もいた。逆に、もともと「仕事より趣味」みたいな生き方をしてた人は、さほどその状況を苦にせず楽しそうにネットサーフィンしてたりもするけど、若い世代の目は厳しいな。
- あーっ、ぶら下がり社員ってやつ。こっちが死ぬほど忙しいときに暇そうにしてて、でもすごい年上だから気軽に仕事は頼めないんだよね。
- そう言うなよ。会社の事情もそれぞれの事情もあるんだからさ…。でも色々考えるよな。早期退職して別の仕事を始めたり、仕事以外の生きがいを見つけて、生き生きと過ごしている元同僚の近況をFacebookで見たりすると、羨ましくなることもあるよ。自分はこの先どうするのか、そろそろ考えないといけないよな。
- あら兄ちゃん珍しく殊勝だね。
第二の人生、その選択肢をどう考えるか?
- 何か新しい仕事をするために勉強するにも、この歳になると厳しいよなあ。物覚えも悪くっていやになるよ。
- そんなことないよ。この間友達が英語の勉強するために1カ月セブ島の語学学校に留学してたんだけど、シニア層の日本人がいっぱい来てたって。
- 社会人向けのビジネススクールに通ってる友達も、同じこと言ってた。新しい仕事を始めるためにシニア層がMBA取りに通ってるって。
- そうか。俺も何か始めようかなあ…。
- それ以前に、シゲルおじさんが銀行員として身に付けた人脈やスキルって今の仕事以外でも役に立つんじゃないのかな。学生時代の友達で、NPOを立ち上げたり、小さいビジネスを始めようとしているやつが何人かいるけど、みんな資金調達で苦労してる。それに、地域の課題を解決したくても、古い体質の地域社会とのネットワークがうまくできなくて、つながりたい人となかなかつながれなかったりしてるんだよ。
- ああ、それだったら、地元の産業界とか行政関係の人脈は相当あるな。地域ごとの政治事情とか、元地主や影の有力者も知り尽くしてるよ。若い会社がどうして思うように融資を受けられないのかも、たぶん話を聞いて決算書類見たらすぐわかるな。
- そうでしょ。そういう知識や人脈を、喉から手が出るほど欲しがっている人もいるよ。
- 言われてみればそうなんだろうな。何か小さいビジネスが始められそうな気がしてきた。
- お、お父さんなんだかカッコいい。
- 目が覚めたみたいね。私は元々引退なんて考えてないよ。生涯現役で化粧品を売って、高齢者をメイクで元気にしていくんだからね。
- それがいいよ。お母さんから仕事を取り上げたら一気に老け込みそう。
- わかってるわよ。若い人たちに言いたいんだけどね。仕事って人生のほんの一部だから、仕事のために生活を犠牲にしたり、仕事に自分のすべてを捧げる必要は全然ないの。でも、本当に好きな仕事をしていられたら毎日にハリがあるし、心身ともに健康でいられると思うよ。
- アケミおばちゃんが言うと説得力あるなあ。だって、若々しいもん!
- うちの会社の化粧品のおかげよ。マイちゃんも使ってみない?
vol.5「世代間のコミュニケーションギャップを乗り越えるには?」に続く
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