働く人のいきいきとした笑顔のために PRアワードグランプリ2018受賞レポート
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2018年11月16日、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会が主催する「PRアワードグランプリ2018」において、ソフィアが支援するプロジェクト「株式会社西武ホールディングス『でかける人を、ほほえむ人へ。』グループビジョン実現に向けた2.3万人を巻き込む組織風土改革」がシルバーを受賞しました。
表彰式の様子とともに、インターナル・コミュニケーション部門で唯一の受賞を果たしたプロジェクトの詳細をお知らせします。
インターナル・コミュニケーションの新たな可能性
今回の受賞をうけ、2018年12月11日、時事通信ホールにて表彰式が行われました。
当日は参加者約200名と審査員を前に、西武ホールディングス広報部の佐藤様と当社の森口が長きにわたる取り組みの詳細をプレゼンテーションしました。審査委員である株式会社タカオ・アソシエイツ 代表取締役社長 高雄宏政氏からは「多様な取り組み・創意工夫には実に驚かされた。インターナル・コミュニケーションの新たな可能性を示すものとして、非常に参考になった」との講評をいただきました。
ここからは、当日のプレゼンテーションでお話した内容をご紹介します。
なぜ、西武グループは笑顔にあふれているのか?
当プロジェクトは、2006年に制定されたグループビジョンにもとづいた全社的な組織風土改革です。
西武グループでは2004年に不祥事が発覚、その後、グループ再編が行われました。社会からの信頼を取り戻し、永続的な成長を続けるためには、現場主体で自律的に挑戦・改善する風土への転換が必要不可欠でした。
そこで全社員へのアンケートをもとにグループビジョンを策定するとともに、このビジョンを浸透し、スローガンである「でかける人を、ほほえむ人へ。」の実践を拡げるために、優れた取り組みを表彰する「チームほほえみ賞」「西武グループ チームほほえみ大賞」の選定や、職場内でグループビジョンについて考え、対話を行うグループビジョン推進月間とオフサイトミーティング実施の推進など、さまざまな取り組みを行ってきました。ソフィアでは2012年から、インターナル・コミュニケーションの専門家としてこれらの取り組みを支援しています。
中でも2008年から継続して行われている「ほほえみFactory」は、グループビジョンの推進と挑戦しやすい風土づくり、グループ内の横断的な連携の促進を目的に実施しているもので、毎年グループ各社から社員約30名が集まり、3.5日間を共に過ごして、グループが今後取り組むべき施策やアイデアをディスカッションし、グループ各社社長に提案しています。これまでの参加者はのべ300人を超え、中には実際の施策として実現したものもあります。
こうした取り組みを続ける中で、株式会社西武ホールディングスは2014年4月には東証一部上場も果たしました。
組織を変える3つの視点「信じる」「社員目線」「やるなら楽しく」
当プロジェクトにあたり、ご担当者とソフィアが念頭に置いていたのは以下の3つの視点です。
1. グループ社員を信じる
2. グループ社員視点で「動きやすい」設計をする
3. 楽しんでもらう、喜んでもらう、良い体験をしてもらうこと
グループ社員を信じる
「社員の行動を変える」ではなく、「社員は日々の行動の中で、すでにグループビジョンを実践している」という立場に立つこと。これが取り組みの一番の特徴です。多くの企業が「社員が実践できていない、行動を変える必要がある」と考えるのに対して、当プロジェクトでは社員を信じ、「社員たちがこつこつ取り組んでいる日々の業務にきちんと光を当て、認める」というスタンスで一貫して取り組んできました。
グループ社員視点で「動きやすい」設計をする
次に、社員が自然と動き出せるように、すべての施策がつながる設計を行ったことです。まずグループビジョンの浸透度を認知・理解・共感・実践・協働の5段階に分け、それぞれのフェーズにおいて社員が参加できるよう「全体」「職場」それぞれの取り組みを企画して推進しました。そして各施策を相互に連関させることで、約2.3万人にもおよぶ全社員を巻き込む仕組みを構築しました。特にオフサイトミーティングを起点にして、職場単位・かつ全社員に取り組みを呼びかけることで、一部の社員のみでなく全社の動きとして流れをつくり、推進していけるように設計されています。
楽しんでもらう、喜んでもらう、良い体験をしてもらうこと
そしてもうひとつは、参加者に楽しんでもらう工夫をすることです。良い体験をすれば、だれかに共有したくなるのは社内でも社外でも同じです。取り組みを楽しんでもらい、エバンジェリストとなって社内に広めていってもらえるよう、毎回参加者が共感しやすいさまざまな仕掛けを行っています。
その結果、「ほほえみFactory」の参加者からは毎年、「職場に戻って、部署の人に話したい」「この3日間を一生忘れないと思う」といったコメントが寄せられています。
簡単じゃない、だからこそ粘り強く
インナーブランディング、風土改革を当社事業の中心に置いてから10年以上が経ちます。当初は、「何かおかしい」「なぜかうまくいかない」そんなご相談をいただくことが多く、インナーブランディングとはなにか、というご説明を毎日のようにしていました。
西武ホールディングス様からお問い合わせをいただいたのも、まだまだインナーブランディングが市民権を得ていない時期でした。当時のご担当者さまのグループに対する想いはとても強く、また私のつたない説明に対しても耳を傾け、賛同してくださり、プロジェクトがスタートしました。プロジェクト開始時は、現場を回り、多くの社員の方々にお話を伺いました。どの現場に行っても、みなさんが会社を大好きで、なんとかしたいともどかしさを感じている。中には熱い想いを持って動いている社員もいる。しかし、多くの社員は、その想いを表には出さないまま、日々の仕事に邁進している。それは、西武グループだけではなく、他の会社においても同じではないでしょうか?
こうした想いを、言葉にして共有する場が必要であること、相互に想いや考えを認め合う機会・仕組みをつくること。それが最初の一歩だと確信したときのことを、今でもはっきり覚えています。
組織を“良い方向に”変えることは大変です。組織を構成するのは、それぞれに想いや考え、価値観を持つ人間だからです。そんなに簡単に変わるものではありません。
以前はよく「インナーブランディングに取り組んだら、儲かるの?」「ROIは?」という質問を受けました。事業戦略よりも、事象の要因は非常に複雑に絡み合い、成功も失敗もそれそのものが要因とは特定しにくい。
しかし、事業の進化やダイナミックな変革において、組織の改革は不可欠です。時代にフィットした事業を創出するのも、運営するのも、拡大するのも組織だからです。
それでも粘り強く、前向きに、結果を信じて推進すること。それこそが、西武ホールディングス様が一旦の成果を生み出せた要因ではないでしょうか。(森口静香)