2020.03.30
「プロジェクトコミュニケーション」で人と組織を元気にしたい
目次
「部署」よりも「プロジェクト」単位で働く時代に
昨今、多くの会社において、部門や課などの組織単位だけではなく、専門スキルを持った社員を複数の部門などから集めてチームを編成し、プロジェクト単位で仕事を進める機会が増えてきています。皆さんの会社にも「○○推進室」「○○プロジェクト」「○○タスクフォース」といったように、部門・部署横断で一時的に組成されるチームが存在するのではないでしょうか。
もちろん、弊社のようにコンサルティングやデザイン、トレーニングなどを主業務とする会社やSIerなど、顧客のニーズに合わせて必要な専門知識・技術を持ったメンバーを集めてプロジェクト型でサービスを提供している企業は以前から存在しますが、一般的な製造業やサービス業などの会社組織は、仕事の流れがある程度固定化されています。
これまで、そういった場面では、仕事の流れに基づいてヒエラルキー型の組織構造をつくり、部門や課などの単位で業務を完結してきました。しかし、事業環境の変化が激しく、もはや「計画通りにモノやサービスを生み出せば売れる」という時代ではありません。管理・企画・製造・営業・マーケティング・サービスなど異なる部門のメンバーが連携して横断的なプロジェクトを形成し、新たな製品・サービスの開発や既存事業の改善、市場開拓などさまざまな課題に取り組んでいかなければ、スピーディに顧客価値を生みだせなくなってきています。
さらに、近年は就業者全体の中で副業や兼業を希望する人の割合が増加傾向にあり、被雇用者でありながらそれ以外の収入源を持つ人を含む広義のフリーランス人口は2015年の913万人から2019年には1,087万人(労働力人口比率で約16%)*と大幅に増加しています。今後はより働き方の多様化が進み、従来は部門や課の単位で完結していた仕事を、社内の他部門・他部署のみならず社外の専門家も含めたプロジェクト単位で行うことが、より一般的になっていくと考えられます。
*【ランサーズ】フリーランス実態調査2019年版 より
組織もプロジェクトも、ヒエラルキー型から脱却しつつある
現在、会社の中で形成されているプロジェクトのほとんどは、あらかじめ決められたゴールからそこに到達するまでのプロセスやタスクを明確にして、計画された順序に従ってスケジュールやリソースを管理する、管理統制型の“バーチャルな組織”です。それを、「ウォーターフォール型のプロジェクト・マネジメント」と呼ぶことにします。
しかし、ここでちょっと考えてみてください。
前述したような事業環境の変化や働き方の変化によって、会社組織自体が管理統制のヒエラルキー型ではうまくいかなくなっている状態です。先進的な企業では「ティール組織」「ホラクラシー組織」といった、管理統制型ではなく社員が自律的に働くフラットな組織形態が導入されつつあるのに、プロジェクトは相変わらず管理統制型のままでいいのでしょうか。
働き方が多様化する中、働く人は「組織の中で出世する」ことよりも「この仕事がどれだけ自分のキャリアにプラスになるか」「自分にとってやりがいのある仕事か」ということを重要視するようになってきています。企業が従業員に対して提供する価値のことを「EVP(Employee Value Proposition)」と呼び、とくに欧米の企業では採用の過程において給与やボーナスといった金銭的な報酬だけでなく、福利厚生の充実やワーク・ライフ・バランスの取り組み、資格取得補助制度などのEVPを明示することが一般的です。
そんな時代に、プロジェクトを管理統制型でマネジメントするという発想のままでいて、優秀な人材が「このプロジェクトにぜひ携わりたい」と思ってくれるでしょうか。絶えず変化する事業環境の中、ウォーターフォール型でプロジェクトのゴールとスケジュール、中間成果物をスタート時点で描き切るのは難しく、長期にわたるプロジェクトでは何度も方向修正が必要になる場合があります。こういった背景から、プロジェクトも組織同様に、管理統制型のままでは早晩限界にぶつかると考えられます。
前段で述べたような事業環境の変化は、今後もますます激しくなっていくでしょう。管理統制型のプロジェクトにとらわれているうちに、いつのまにか、市場の変化に追いつけなくなり、時代に即した顧客価値を生み出すことすら難しくなるかもしれません。
「アジャイル」という発想
そこで注目したいのが、「アジャイル型」といわれる開発手法です。「俊敏な」「すばやい」という意味の英単語が示す通り、要求事項や仕様の変更に対し、機敏かつ柔軟に対応するための手法で、おもにソフトウエア開発に使われています。モノやサービスのプロトタイプを作成し、ユーザーにレビューしてもらいながら完成形に近づけていくというもの。今から約20年以上前に、IT業界で生まれた手法です。
アジャイルの中でも、さまざまな業界で使われ始めているのが、「スクラム」というフレームワークです。スクラムでプロジェクトを進めるうえでポイントとなるのは、大雑把に言うと以下の3点です。(スクラムの専門家ではないので、認識違いがあった場合にはお許しください)
- 各自が全体のゴールと自分の仕事のつながりを理解し、明確な役割認識を持っていること
- さまざまな要求事項や仕様変更などに柔軟に対応できる体制とタスク管理
- チームの生産性は、プロジェクト進行中に学習によって高まっていくという考え方
スクラムでプロジェクトを成功に導くための拠り所は、「何をゴールにしているのか?」というビジョンを共有すること。そして個々の力とチームの可能性を信じ、日々の業務レベルまで徹底してゴールに向けたコミュニケーションとチームワークを推進していくということなのかもしれません。
考えてみると、会社や組織も同じです。
「会社が果たしたいミッションは?」
「社会にとって、どんな会社でありたいのか?」
「顧客に対して、どんな価値を提供していきたいのか?」
こうした企業目的に共感した社員が集い、単なる労働力以上の力を発揮するからこそ、強くしなやかな組織となり、高い価値を提供していけるのだと思います。
コミュニケーションが変わればパフォーマンスが変わる
先日、プロジェクトにおけるコミュニケーションに関するワークショップを開催した際に、プロジェクトで仕事を進める際の困りごとを参加者に訊いてみました。そこでわかったのは、プロジェクトに参加しながらも仕事の全体像が把握できず、何をゴールにしているのかも見えず、そんな中で「次はこれ、その次はこれ……」とタスクを出され、モヤモヤやフラストレーションを感じながら働いている人が結構いる、ということでした。
組織でもプロジェクトでも、それにかかわる一人ひとりが
「なぜその仕事にかかわっているのか?」
「その仕事と自分が実現したいことが合致しているか?」
「組織・プロジェクトが目指していることは何か?」
を明確にしていないと、自律的に行動することはできません。
とくに、目標や役割、タスク・スケジュールが大きく変化しないウォーターフォール型のプロジェクトと比べて、スクラム型のプロジェクトでは、刻々と変わる状況に合わせてプロジェクトのオーナーが要件やタスクの優先順位を判断し、朝令暮改を厭わずプロジェクトの内容を調整していくことが必要です。常に先行きが不透明な状況で今やるべきことをメンバーに「自分ゴト化」してもらうために必要なことは、ビジョンやゴールを背景に緻密に根気強くコミュニケーションを積み重ねることに他なりません。
プロジェクトや仕事の目的に関するコミュニケーションがうまく取れていれば、プロジェクトと個人のパフォーマンスはもっと上がるはずです。これは、ソフィアが考える「組織の中のコミュニケーションが変われば、人も組織も元気になる」ということに共通します。では、プロジェクトの中の『コミュニケーション』がどのように行われれば、プロジェクトや個々のパフォーマンスが高まるのでしょうか。管理統制型のプロジェクトから脱却するためにはたくさんの課題があります。しかしながら、その解はプロジェクトによって異なるため、ガイドラインをつくれば解決するという簡単な話ではないのです。
そこでソフィアは、それぞれの組織やプロジェクトが置かれている状況に応じた手法でアプローチし、プロジェクトの中で動く人たちをも元気にしてパフォーマンスを高めていくために、「プロジェクトコミュニケーション」という分野を切り出し、さまざまな企業の事例をもとに研究を重ね、プロジェクトにおける課題の解決にお客様と一緒に取り組んでいきたいと考えています。
プロジェクト運営に課題を感じている企業の方や、このテーマに関心のある方はぜひご連絡ください。これからの時代にフィットした「プロジェクト」の姿を一緒に描いていきましょう。
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株式会社ソフィア
代表取締役社長、チーフコミュニケーションオフィサー
廣田 拓也
異なる世界にある共通項を見つけて分断をつなぐことが得意です。最近ではソフィアがこれまで培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、地域の教育分野に力を注いでいます。思考回路と判断基準は、それが面白いかどうか。そして指示命令は、するのも、されるのも嫌いです。だけど、応援を要請されたら馬車馬のように動きます。
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代表取締役社長、チーフコミュニケーションオフィサー
廣田 拓也
異なる世界にある共通項を見つけて分断をつなぐことが得意です。最近ではソフィアがこれまで培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、地域の教育分野に力を注いでいます。思考回路と判断基準は、それが面白いかどうか。そして指示命令は、するのも、されるのも嫌いです。だけど、応援を要請されたら馬車馬のように動きます。