オンライン会議が上手くいかないのはなぜ? これからの時代に求められるチームコミュニケーション
目次
【この記事のポイント】
・今回の緊急事態により、在宅勤務やオンライン会議に対する「使い方がわからないから、やりたくない」という心理的な障壁が強制的に取り除かれた
・オンライン会議で重要なのは「方向性」と「関係性」
・今回得られた働き方やDXの成果をまとめ、感染症のほか自然災害(台風・地震など)による緊急時にも備えておこう
コロナウイルス感染拡大や外出自粛要請を受け、在宅勤務やオンラインでのやりとりが増えている昨今。チームリーダーやマネジメント担当者は、どのように部下たちと円滑にコミュニケーションしていけばよいのでしょうか?
オンラインとオフライン、それぞれのコミュニケーションの専門家が、いま、そしてこれからの時代のコミュニケーションの変わり方を(もちろんオンラインで!)語り合いました。
「やってみたら、意外とできた」が本音
古川:ソフィアが在宅勤務に切り替わって1カ月以上経ち、取引先でも在宅勤務やオンライン会議を取り入れるところが増えてきましたよね。
築地:そうですね。以前からオンラインコミュニケーションに力を入れていたところでは、抵抗なく在宅勤務に切り替えられているようです。一方で、今まで対面でのコミュニケーションが主流でオンライン会議をするのが初めてという企業の方でも、一緒にやってみると5分くらいですぐ使えるようになるんです。
古川:皆さん、思ったよりすんなり受け入れられるんですね。
築地:DX(デジタルトランスフォーメーション)が進まない要因として一般的に操作面の障壁と、心理面の障壁があると言われているんですが、今回の状況で「使い方がわからないから、やりたくないな」という心理的な障壁が取り除かれたんだと思います。
古川:ぼくはもともと、対面でのコミュニケーションが好きなんです。でも今回こういう状況になってみて、「意外とできるんだな」というのが正直なところです。今まで職場での何気ない会話から仕事の話が進むこともあったので、それがなくなると困るのではないかと不安だったんですが……特に困っていません(笑)
築地:最初は取引先と打ち合わせをするときに、直接訪問しないのは失礼なのではないかという思いがあったんですが、お互いオンラインだと気にならなくなりましたね。
オンライン会議が上手くいく2つのポイント
古川:最近、オンラインの会議が増えて、気がついたことがあるんですよ。それは、オンラインで上手くいく会議と、上手くいかない会議があるなということ。ぼくはその要因が、方向性と関係性の2つにあると思っています。まず方向性とは会議の目的やアウトプット内容のことで、これらが明確なほどオンラインで進めやすい。逆に、ブレストや「自分でもうまく言葉にならないけど一緒に考えてほしい」という内容のものは、少しレベルが高くなります。
築地:定期連絡や進捗確認は、1時間かけて会いに行かなくても、画面共有しながらオンラインで会議をするだけで十分ですよね。
古川:そうそう。それから関係性というのは、一緒に打ち合わせをする人たちがどれくらい理解し合っているのかという意味です。画面越しの会話では、自分の発信が相手にきちんと受け取られているのか、真意を確認しづらい側面がありますよね。相手の反応を予測できる関係性を築けているほうが、より会話がスムーズに進むんじゃないでしょうか。関係性と方向性の質をできるだけ高めていくことが、オンライン会議が上手くいくコツだなと思います。
築地:私のチームでは、毎日Teams上で検温報告をする際に、体調やその日の用事を自由に書いてくださいと伝えています。やり始めてみてわかったのですが、お互いの姿が見えない中でも、仕事以外の事情や何気ない気持ちを共有することができるのがいいですね。
古川:ソフィアではオンライン会議システムを使って、常時参加可能なバーチャルオフィスが設定されているので、ぼくはできるだけ長い時間参加して他のメンバーとの交流を増やすようにしています。
築地:そもそもオンラインコミュニケーション自体に慣れるのに時間がかかる人もいますから、マネジメント側にはそういう人への配慮もあるといいですよね。お客様からデジタル化・DXの推進について「どうしたらいいですか」と尋ねられたときは、よく「そばで、一緒に取り組んでください」とお伝えしています。たとえば不慣れな同僚がツールを使うときに、慣れている方が電話をつないだ状態で、オンライン会議ツールを同時に立ち上げて、会話のテストをして、会話に慣れたら電話を切って、チャットや画面共有をして……とひととおり一緒に試してみると効果的です。
アフターコロナの世界では「会う」ことの価値が問われる
築地:私はオンラインコミュニケーションが急速に進む中で、逆にいままで暗黙のルールだった「会う」ということの価値が問われ始めているなと感じます。気持ちや熱量など、オンラインでは受け取れないもの、時間と空間を割く重要性があるものがあって初めて「会う」という選択肢になってくるんです。そのうち同じ会議の参加者の中でも「あなたはオンラインで参加してください」「あなたは来てください」と言われるようになるんじゃないでしょうか。
古川:直接会うときには、直接会うなりの理由が必要になるということですよね。たとえば、会議中にほとんど発言せず、最後に「そうだな」と言って会議を終えるような上司ってたまにいますよね。でもオンラインで会議をしていたら、こういう発言のない、存在感だけが取り柄の「存在感上司」はまず画面にも出てきません。結果として、みんな気がつくんです。「あの人、何もやっていなかったんだ」と。今までそうした働き方をしてきた人には、今後厳しい時代がやってくるかも……。
築地:オンラインコミュニケーションの急速な普及によって、淘汰されてしまう働き方や姿勢、態度もあるでしょうね。オンラインでは相手の状況が見えない分、より丁寧に話しかける・受け取ることが大切になってきます。そういう面でのプロ意識が必要になるかもしれません。
古川:コロナウイルス感染拡大が終息した後は、今まで以上にオンラインとオフラインを両立させる世界になっていくんでしょうね。その分、人を集めるような研修や会議、イベントを企画する際には「なぜ集まらなければならないのか」を具体的に説明できなければいけなくなってきます。目的を考えてオンライン・オフラインを選ぶ必要があるし、両方の利点を理解して、どちらでもコミュニケーションを取れるようになっておく必要があると思います。
築地:今後もコロナウイルスだけでなく、台風などの災害は必ずやってきます。今回、結果的に得られた働き方やDXの流れを継続させるためにも、得られた成果をまとめておくのも大事ですね。
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株式会社ソフィア
取締役、シニア コミュニケーションコンサルタント
築地 健
インターナルコミュニケーションの現状把握から戦略策定、ツール導入支援まで幅広く担当しています。昨今では、DX推進のためのチェンジマネジメント支援も行っています。国際団体IABC日本支部の代表を務めています。
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株式会社ソフィア
ラーニングデザイナー
古川 貴啓
組織の風土、行動を変えていく取り組みを企画設計から、実行継続まで支援しています。ワークショップなどの対話を通して新たな気づきを組織に生みだし、新たな取り組みを始めるための支援を得意としています。
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