SDGsで社会における女性活躍を推進 女性活躍を実現する企業例もご紹介
目次
男女平等や女性の社会進出が国際的にますます重要視される中、女性の活躍を推進することは現代社会における必須の課題となってきています。このような背景に後押しされ、企業の経営者やマネジメント層の皆さまも女性が今以上に活躍しやすい社内の環境構築を検討しているかもしれません。
実は、女性の活躍を推進することは、国連サミットで採択された世界共通の目標SDGsの考え方にも沿っています。SDGsは、男女の区別なく誰一人として取り残されない持続可能な社会を目指しているからです。
日本企業において女性の活躍を推進するにはどうしたらいいか考えていきましょう。
SDGsと女性の関係性とは
SDGsは、持続可能な社会を構築するために女性の活躍が不可欠であることを認識しています。国連の発表している「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にも記載されているとおり、女性が活躍するためには「ジェンダー平等」と「女性のエンパワーメント」が重要となります。SDGsと女性の関係を詳しく見てみましょう。
ジェンダー平等を実現しよう
SDGsには17項目の目標がありますが、女性の社会進出に関係するのは5つめの項目で、「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」ことが定められています。
差別や暴力の対象となりやすかった女性は、歴史的に社会から疎外されてきました。今でも経済的に弱い立場になりやすい傾向があり、貧困に苦しむ人も男性より女性の割合が高くなりがちです。多くの国で少しずつ状況は改善しているものの、社会的な男女の不平等は完全に消えているとは言えません。
そのため、女性に焦点を当てサポートすることで、SDGsの理想とする持続可能な社会の実現への一歩を志しているのです。SDGsの目標5では、「未成年者の結婚や強制結婚などの有害な慣行を撤廃する」「家庭内における男女の責任分担を進める」「政治・経済などにおける女性のリーダーシップの機会を確保する」など、様々な方向から女性の社会進出を目指しています。
日本の女性活躍の現状
女性活躍の重要性が認識されるようになる中、多くの国が男女平等に向けて歩みを進めています。社会の広い範囲で女性が進出しているのは、決して欧米の先進国に限った話ではなく、新興国や発展途上国でもビジネスや政治などさまざまな分野で女性が活躍している国がたくさんあります。では、日本はどのような状況なのでしょうか。
G7の中で最低ランク
毎年、世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数」を発表しています。経済・教育・健康・政治の4分野で測定されたデータをもとに、各国の男女格差を示している指標です。
2019年12月に発表された最新のジェンダー・ギャップ指数で、日本の順位はなんと、153か国中121位でした。これは前年の110位からさらに順位を下げ、過去最低です。
主要7か国(G7)の中では、ドイツが最高の10位だったほか、アメリカは53位、日本の次に低いイタリアでも76位と、大きく差を開けられているのが現状です。また、隣国の中国は106位、韓国は108位と欧米各国よりは低いものの、日本よりは高順位です。日本は、男女格差の指標において他国からかなり遅れを取っていることがわかります。
もちろん、日本社会において女性が虐げられているというわけではありません。また何十年も変化していないというわけでもなく、男女平等は徐々に進んでおり、昔と比べると女性の権利は格段に向上しています。しかし、男女平等に向けた社会変化はほかの国でよりスピーディーに進んでいるため、世界からは取り残されつつあるのが現実です。
「『女性は頑張らなくていい』『若者は受け身』『おじさんは古い』仕事を滞らせるアンコンシャス・バイアス」~WEBマガジンWEZZYに弊社・岡田の取材記事が掲載~
日本政府の取り組み
では、日本政府は女性の活躍推進に向けてどのような取り組みを行っているのでしょうか。政府はSDGsを推進するために8分野からなる「SDGs実施指針」を定めており、そのうち1つ目の「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」という分野で、女性の活躍推進に注目しています。
さらに、2020年に実施すべき具体的な取り組みとしては「SDGsアクションプラン2020」を作成しています。アクションプランの中核となるのは「ビジネスとイノベーション」「地方創生と環境に優しい街づくり」「次世代・女性のエンパワーメント」という3本の柱で、女性の活躍推進が重要な項目の1つと捉えられていることがわかるでしょう。
こういった背景のもと、法整備や体制構築も加速しています。たとえば、最近話題の「働き方改革」では時短勤務やリモートワークなどを推奨し、様々な立場の女性にとっても働きやすい環境が目指されています。出産や子育てなど、ライフステージの変化に応じて働き方を柔軟に変えることが、女性が働き続けることのできる社会につながるのです。企業単位で積極的にこのような体制づくりを進める上場企業は、経済産業省が「なでしこ銘柄」として認定することで、各企業の取り組みが可視化しやすくなっています。
また、行政では、待機児童の解消を目指して保育所の整備などの取り組みが進められています。女性だけでなく男性による育休の取得についても啓蒙し、夫婦が家庭での役割分担を行いやすくなるような社会環境を構築することで、女性も外に出て働き続けることができるよう後押ししているのです。
また、行政の取り組みは単に女性が働き続けられるような仕組みの構築だけには留まりません。一度仕事を辞めた人に対して再就職の支援を行ったり、向上心のある人に対して起業などのチャレンジをサポートしたりする活動も進めており、様々な角度から女性の社会進出を支えているのです。
女性活躍のカギは体制整備と風土変革・意識改革
諸外国に比べると見劣りする部分もあるものの、女性の活躍に向けた体制の整備は日本でも徐々に進んでいます。人々の意識にも大きな変化が見られ、男女問わず多くの人が「女性が社会に進出するのは良いことだ」と考えるようになってきました。2019年に内閣府が行った調査によると、「子どもができても女性は仕事を続けるべき」と考える人が60%を超える一方、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という戦後の高度経済成長期に主流だった考え方に賛成する人は過去最低の35%まで減少しています。ただし、企業ごとに見るとまだその変化に追いついていないケースも多いのが現実です。女性活躍のカギは何なのでしょうか。
参考:男女共同参画局
日本企業が抱える課題
まずは、女性の活躍を推進するにあたって日本企業が抱えている問題を見てみましょう。
厚生労働省の委託により行われた調査によると、およそ半数の企業が「女性社員の管理職昇進意欲の向上」を女性活躍の推進に向けた課題の1つと捉えているようです。女性社員の割合は多くの会社で上昇傾向にあるものの、管理職に限って見るとその割合はまだ低いのが現状です。社内における役割や評価体系に男女で偏りがあったり、長時間労働など女性が活躍しにくい企業風土が残っていたりすることが理由に挙げられるでしょう。また、ロールモデルが少なくキャリアアップをイメージしづらい場合には何かしらのサポートをすることが重要となります。
一例として、下記の表のように、個々の能力や意欲・状況に合わせてどんなサポートを行えば良いか、可視化しておくと良いでしょう。
昇進意欲が低い | 昇進意欲が高い | |||
---|---|---|---|---|
人事評価が高い | キャリア開発 | 昇進昇格 | ||
人事評価が低い | ライフキャリア開発 | スキル開発 |
「両立支援制度利用者の代替要員確保やサポート体制作り」も、多くの企業が課題に挙げる点です。法律が整備され、大企業だけでなく中小企業においても育休や産休といった制度は整ってきています。その反面、育休・産休により戦力が減少した職場では、残された人々に多くの負担がかかってしまうというケースも多くあります。そのため、速やかに代わりの人材を投入できるような仕組みが必要とされているのです。
また、一度職場を離れると元に戻るのは簡単ではありません。育休後にスムーズに復帰するためには、休業中のサポート体制や復帰前のセミナーなどの導入も必要です。
そして、「両立」を女性のみが担うものととらえずに、会社全体としての長時間労働の抑制や男性社員の育休取得の推進などで、男性が家庭内の役割を担いやすくすることも不可欠です。
そもそも「女性活躍推進の体制整備や担当者の時間確保」に課題があると考えている企業も30%を超えています。体制を変更したり改善したりしながら運用していくためには、専門の担当者や担当部署が必要です。人手不足や業務繁忙が原因で、迅速な体制整備ができない企業もあるのです。
日本企業は、女性の活躍推進を進めようとしてもこのように様々な課題に直面しています。では、女性活躍を実現している企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
会社都合の多様性推進や女性活躍推進では、従業員の共感は得られない
前段でも述べたように、制度面・風土面も含めて、企業における女性活躍推進は喫緊の課題であり、急速に取り組みが進んでいます。しかし、従業員の実感としてはどうでしょうか? チャンスが来た、好ましい変化だと歓迎する社員もいるでしょう。しかし一方で、「いきなり、なんだ?」と訝しむ反応もあるかもしれません。
1985年に男女雇用機会均等法が制定されてから、日本社会・日本企業は表向きには女性活躍を推進してきました。しかし実際には、政治・文化・経済などあらゆる場面において、意思決定をするメンバーは男性の数が圧倒的に多く、男性中心的な考え方が根強く残っています。活躍しようにも女性社員が置かれている立場を上層部が十分に理解していないような環境下にあって、「SDGsのゴールに向けて」とか「イノベーションを生み出すための女性活躍」という会社主語のストーリーを打ち出しても、従業員からは「会社の体面だけを考えた取り組みであって自分たちのためのものではない」と見透かされるでしょう。
また、制度だけ整えていても実際には活用されていなかったり、制度を使うとキャリアアップに不利益がある場合にも、実際には女性が責任のある立場につくことが期待されていない、都合の良い労働力としか見られていないと社員は受け取ります。
では、女性社員が活躍に向けて行動し、周囲がそれを積極的に後押しするような組織風土をつくるにはどうしたらいいでしょうか? 自社の歴史や現状をしっかりと認識した上で、自社なりの多様性や女性活躍の考え方や今後のストーリーを構築し、制度や風土を再構築していく必要があります。また、男女関係なくジェンダーバイアス(無意識の偏見)はあるということを認識しながら、性別や属性にかかわらず一人の同じ会社の仲間として、キャリアやライフに関する対話を、多くの時間をかけて実施する必要があります。
多くの男性管理職は、自分自身が少数派の立場に身を置いた経験や、キャリアやライフにおいて障壁にぶつかった経験が乏しく、女性社員に対して共感的理解をすることが難しい状況があります。しかし、まずは日本社会や日本企業、そして自社の女性活躍における理想と現実のギャップを直視し、社員個人の資質だけでなく社員が置かれた環境や関係性にキャリアアップを阻む要因がないか考えてみてください。当事者の都合を無視したルールや条件の中で明らかに不利な戦いを強いられる状況ならば、どんなに会社が焚き付けたところで社員のチャレンジは望めません。目標だけを独り歩きさせるのではなく、当事者と関係者との対話を重ねて今後の可能性を探っていきましょう。
実際に女性が活躍している企業
女性活躍の推進を阻む課題を見てきましたが、中には女性活躍を高いレベルで実現している企業もあります。女性活躍推進法に基づいて取り組みを進める優良企業に対して、厚生労働省は「えるぼし」マークを認定しており、この認定を受けた企業の取り組みはほかの企業にとっても参考になるはずです。
※「えるぼし」とは
「えるぼし」は、企業における女性の活躍状況を3段階で認定する厚生労働省の制度です。「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの基準で選定され、5つの基準すべてを満たした企業のみが「えるぼし(3段階目)」を獲得できます。女性社員の比率や管理職の比率、子育て中の女性にとって働きやすい環境など、女性活躍にはさまざまな側面がありますが、多方向から取り組みを進めている企業に「えるぼし」が認定されます。
では、実際に「えるぼし」の認定を受けている企業の例を見てみましょう。
コニカミノルタ
電気機器メーカーのコニカミノルタは、「女性従業員のキャリア形成支援」に力を入れることで女性の活躍推進を図る中、2016年度に「えるぼし(3段階目)」の認定を受けました。ダイバーシティを高めることが企業の成長につながると考え、その一環として女性も活躍しやすい労働環境の整備を進めた結果、認定につながったのです。
たとえば、2019年の取り組みでは「女性活躍などに対する社内意識や企業風土の醸成」「ライフイベントへの支援と、柔軟で多様な働き方の推進」「2019年度の女性管理職比率目標7%」「2019年度の女性新卒採用比率30%以上」の4項目を軸としていました。「えるぼし」の5つの基準が包括的に意識されていることがわかります。
コニカミノルタが女性にとって活躍しやすい環境づくりの活動を始めたのは、2010年度です。女性がキャリア開発を進めやすいように研修やワークショップを開催する一方で、上司に対しても説明会やワークショップを行うなど、社内全体としての理解を高めようと、双方向からの意識改革を目指しました。
このような取り組みを毎年着実に行い、2016年度には、女性活躍推進を明確に経営戦略の1つと位置付けました。キャリア形成支援に本格的に力を入れ始めたのはその頃です。結果として、初の女性執行役員も誕生しました。まずは女性の「働きやすさ」に焦点をあてた施策を進めて土台固めを行った後、管理職への登用などにより女性の「働きがい」を高めるという、二段階のステップを踏んだという点が参考なるのではないでしょうか。
株式会社リコー
事務機器などのメーカーであるリコーは、「ワークライフ・バランスの推進」を進めることで女性が活躍しやすい職場環境の構築を目指しています。社員がワークライフ・バランスを高めることのできる制度が充実し、育児や介護などの様々な事情を考慮しつつ社員一人一人が「ワークライフ・マネジメント」を行えるよう支援しています。
たとえば子どものいる社員は、産休や育休だけでなく、「育児短時間」や「看護休暇」の制度を利用することができます。育児にできるだけ時間を使ったり、子どもの急な病気にも対応できたりする仕組みです。また、休業後に社員が職場に復帰しやすいよう、育休からの復帰を支援するセミナーも開催しています。女性だけでなく子育てを行う男性に向けたセミナーを行うことが特徴的で、社会の意識を変えていこうという意図も読み取ることができます。
制度は子どもを持つ社員だけが対象ではありません。月10日までリモートワークができたり、結婚や出産、配偶者の転勤などで退職せざるを得なかった元社員に再雇用のチャンスを与える制度があったりと、それぞれの社員の事情に対応できるような環境が用意されています。
このような制度を背景としながら、リコーは女性を含めた多様な人材にとって働きやすい職場づくりを進めています。2019年時点での女性管理職比率は4%ですが、2021年度までに10%まで引き上げるという意欲的な目標も掲げていて、少しずつでも確実に社内の風土を変えていこうとしているのです。
次世代のリーダーとなる女性社員を育成するための研修やセミナーも定期的に開催するなど、ハード・ソフト両面での様々な施策が功を奏し、2019年に「えるぼし(3段階目)」の認定を受けました。
まとめ
日経新聞が行ったSDGs経営調査によると、今回ご紹介したコニカミノルタとリコーの2社はSDGsに貢献する経営を行っている企業として非常に高い評価を得ています。女性の活躍を目指した取り組みを見ても、両社が積極的に働きやすい職場環境の構築をしようとしているのがわかるでしょう。
このように、女性の活躍を推進するためには様々な仕組みが必要となります。それぞれの持つ無意識のバイアスを認識したうえで、社内に男性に有利で女性に不利な制度や文化がないかチェックし、男女にかかわらず仕事と家庭の両立がしやすい制度構築のほか、キャリアアップについて考えることのできる機会の提供、長所をより活かすことのできる業務やポジションのリクエストができる柔軟な体制を築くなど、多方面からの働きかけを段階的に進めることによって、男女にかかわらず活躍することのできる企業へと変わっていくのです。
すぐに大きな変化は生じなくても、地道な取り組みにより少しずつ確実に環境は変わっていくはずです。企業としてSDGsに貢献するためにも、女性活躍の推進を進めていきましょう。
関連サービス
関連事例
よくある質問
- SDGsとは何ですか?
SDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)は2015年の国連サミットで採択された目標で、「持続可能性」が重要なテーマとなっています。それまで、世界では経済成長に重きが置かれていて、20世紀には各国が大幅な経済発展を遂げることに成功しました。しかしその裏では、自然環境の破壊や格差の拡大など、多くのひずみもあったのです。
そうした世の中の負の状態を正すため、将来の世代から搾取することなく現在の世代のニーズを満たす「持続可能な開発」という考え方のもと、国際社会が一丸となって取り組みを進めることになりました。このような背景からSDGsが採択され、世界各国でさまざまなステークホルダーがSDGsを推進するようになったというわけです。
株式会社ソフィアサーキュラーデザイン
ソフィアサーキュラーデザイン代表取締役社長、サステナブル・ブランド・コンサルタント
平林 泰直
大手メーカー系コミュニケーション部門での責任者としての実績からデジタルマーケティング、インターナル広報、メディア編集など、企業のコミュニケーションに関わる戦略策定、実行支援をお手伝いします。
株式会社ソフィアサーキュラーデザイン
ソフィアサーキュラーデザイン代表取締役社長、サステナブル・ブランド・コンサルタント
平林 泰直
大手メーカー系コミュニケーション部門での責任者としての実績からデジタルマーケティング、インターナル広報、メディア編集など、企業のコミュニケーションに関わる戦略策定、実行支援をお手伝いします。