COVID-19の嵐の中を舵取りする

COVID-19コロナウイルスのパンデミックによる企業への影響は、すでに至る所で現れています。世界中の企業や組織がこの不確実性に適応していかざるを得ない中で、「コミュニケーションの専門家は、現在の中断された時間を生産的に使用する必要がある」と、危機管理の専門家であるキャロライン・サプリエル氏(CS&Aインターナショナル社創設者)がIABCのWeb会員誌『Catalyst』に寄稿しています。今回はサプリエル氏の見識を紹介します。

ステークホルダーとのエンゲージメント作りを継続する

この危機は人に関わる問題であり、ビジネスへの悪影響を軽減しようとする際にもこの点を見失わないようにしてください。コミュニケーションは人を中心に考え、ステークホルダーの懸念に敏感であるようにします。

主要なステークホルダーとしては、スタッフ、顧客、納入業者、請負業者に加え、規制当局(必要に応じて)、より広範な意味でコミュニティ、メディア、およびあなたの業界に特有なその他のステークホルダーが含まれます。

対面会議の数を大幅に減らしたとしても、ビジネスは続けなければなりません。そのため、利用可能なすべての非対面チャネルを使用して、ステークホルダーとコミュニケーションします。あなたの会社がこの状況にどのように対処しているかをステークホルダーに知らせます。課題と影響を積極的に伝えます。誰もがこの危機を感じていることを忘れてはいけません。時には電話があなたの最も強力なツールになる場合もあります。

在宅勤務に関する検討事項

  • 実際に自宅で働くことができるスタッフは何人ですか?
  • 在宅勤務のスタッフをサポートする上で、会社のITネットワークの能力はどれくらいですか?
  • 誰が仕事用のノートパソコンを持っていますか? 従業員が自宅に仕事用ノートパソコンを持っていない場合はどうなりますか? スタッフは自分のデバイス機器を使用できますか?
  • 会社の機器(電話、ノートパソコンなど)を持っていないスタッフに連絡する方法はありますか?
  • 追加のノートパソコン等を購入する必要がありますか?
  • 従業員の家庭の状況はどうですか?

コミュニケーションし続ける

コミュニケーションの目的と優先事項として重視すべきことは、正確で明確で一貫性がある情報、タイムリーで有用な情報を提供すること、雇用継続に関して安心感を与ること、会社が事態を掌握していることを示すことです。

FAQ のリストを作成し、毎日更新します。電子掲示板、Web サイト、イントラネット、スタッフ相談電話、ソーシャルメディアなど、利用可能なすべてのチャネルで FAQ を発信し公開します。幸いなことに、テクノロジー活用は有利に働くので、WhatsAppグループ(またはLINEグループ)、Yammer、Skype / Teams / Zoom、仮想タウンホール会議などのさまざまな仮想コミュニケーションツールを最大限に活用してください。
頻繁に発信し、メッセージを繰り返してください。今は情報をケチる時ではありません。

コアとなるメッセージは、すべてのステークホルダーグループにわたって整合させる必要がありますが、グループそれぞれに応じてトーンを調整します。例えば、従業員に対して父権主義的であったり、従業員が感じている恐怖感を拒絶したりしないでください。人々は恐れています。それを受け入れてください。このような状況においては、効果的なコミュニケーションを脅かすのは、作り話、噂、恐怖を煽る物語、憶測、隠蔽、あからさまな嘘によって、さらに不確実性が増すことです。誤った情報を正すために警戒し、直ちに行動を起こしてください。

誰がどのようにコミュニケーションを取るかについて合意しておく必要があります。メディア向けには、訓練を受けたスポークスパーソンを2名用意してください。この役割は非常に集中を必要とする根気のいる仕事であり、最後までやり抜くためにはリリーフ投手役が必要です。従業員とコミュニケーションを取る人も任命します。理想的には、その人は従業員によく知られ、信頼されているべきです。信頼は非常に重要です。

最後に重要なことですが、迅速に行動できるよう準備しておきます。すべての社内向けおよび社外向けの声明を用意しておいて、必要なときにその声明が迅速に承認されるよう取り決めを整えていることを確認してください。

対応を各部署で連携する

COVID-19の状況下では、企業の多くのコーポレート機能が深く関わって対応と緩和策に取り組む必要があります。HR、広報、法務、設備、管理/セキュリティ、IT部門は、緊密に連携し、シームレスな対応を保証することが大切です。

そのため、危機対策チームまたはタスクフォースを任命して毎日会議して、認識ギャップや情報の矛盾を回避してください。このアプローチは、危機のピークを超えて、通常に戻った後も継続する必要があります。特に、以下に説明する法的問題などの潜在的な悪影響を軽減するために必要となります。

スタッフが在宅勤務に慣れるように支援する

組織が多数のスタッフを在宅勤務にする場合、このアプローチに慣れていないスタッフはすぐにやる気をなくす可能性があるため、コミュニケーションがとても重要になります。

たとえテクノロジーがリモート作業を可能にしたとしても、その作業は誰にとっても簡単なことではないかもしれません。限られたスペース、騒音、プライバシーの欠如、仕事の仕組みなどは、従業員が直面する可能性のある問題の一部です。このような状況で生産性を向上させ、チームリーダーやスーパーバイザーとのより緊密なやり取りを促進するためのガイドラインを提供しましょう。多くの従業員がKPI を調整する必要があることを受け入れます。

在宅勤務では、IT のヘルプデスクへの問い合わせが増加するので、対応できる能力があるか確認してください。

最悪なシナリオプラン

危機は通常、回復する前に悪化するもので、突然予期せぬ事が起きて事態をさらに悪化させる可能性があります。中国の検疫用ホテルが崩壊し、さらに人命を失う悲劇を誰が想像できたでしょうか。

危機の最中、状況がどれほど悪化するか予期することは容易なことではありませんが、リーダーが危機において最も強力なリーダーシップを発揮すれば、チームは嵐の中を舵取りして、より強いチームになって抜け出すことができるでしょう。手始めにステークホルダーマップをうまく作りましょう。味方と敵を際立たせ、潜在的なステークホルダーの行動と、その結果悪影響が及ぶことに注意を喚起します。

まずは、最悪の事態に備えます。例えば、一人の従業員がウイルス感染の結果として死亡した場合、誰に対して、どのように説明しますか。今は、多くの悪化するシナリオに沿ってメッセージとコミュニケーションの草案を作成する時です。必要となったときには、すぐに発表できるようにしておきます。

また、このような状況下で生じる可能性がある法的な側面を考慮しておく必要があります。訴訟や、不可抗力の適用能力、職場での身体的危害から従業員を保護するための法的要件(国によって異なる)、コロナウイルス感染に関連するストレスや不安の影響、データに関するプライバシーの問題などがあります。

脅威を軽減する

人間的視点を過小評価してはいけませんが、おそらく最大のビジネスリスクは、財務問題です。商品の損失、顧客離れ、市場の消失、収入減少です。旅行や観光はすでに前例のない逆境に直面しています。回転率の高いサプライチェーン(食品産業など)は大きな打撃を受ける可能性が高いでしょう。配達は中断され、場合によっては供給元に連絡することができない可能性があります。計画を持たない可能性が強い中小企業は、生き残る可能性が低いかもしれません。

これらの業務、事業、財務面は、コミュニケーション担当者の活動の範囲外ですが、コミュニケーターは、対応計画策定に参画して、ステークホルダーのエンゲージメントに引き続き関与し、タイムリーにかつ信頼されるように意思決定と行動がなされるようにする必要があります。これは、危機後における信頼の維持と回復プロセスにとって重要な要になります。

2020年、不確実性は新たな確実性である

中小企業にとっても多国籍企業にとっても、この状況は企業戦略を再考する時です。2019年に決定したことを踏襲するのではなく、今は異なる上昇志向のシナリオに基づいて会社の戦略を見直す良い時期になるでしょう。

時間を生産的に使う

このように不確実な状況でありがちなことは、状況がどのように進展するか待ってから見極めるか、決定を延期するか、現在進行中のプロジェクトを停止するかでしょう。しかしその代わりに、危機の影響を受けず、しばしば忘れられがちな他の重要なタスクに時間を費やしてください。例えば社内の整理整頓、新製品開発、オンラインでのチームビルディングの取り組みなどです。それは士気のために良いだけではなく、危機後においてさらにあなた達が強力になってより好位置に立てることになるでしょう。

危機により、組織は自分たちの働き方を再考し、プレッシャーの下でどのように操業するか試す機会が与えられます。これは時間を無駄にすることにはなりません。

株式会社ソフィア

ビデオ・プロデューサー、コミュニケーション・コンサルタント

池田 勝彦

主にビデオ制作で撮影から編集までを担当しています。記事原稿も書いていますが、英語による取材・編集もやりますし、翻訳もできます。

株式会社ソフィア

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池田 勝彦

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