2020.06.04
デジタルトランスフォーメーション(DX)今こそ“黄金の三位一体”で進めるチャンス
目次
POINT
- DX成功の鍵をにぎる、IT部門発信のコミュニケーションとは?
- 社内全体に浸透させるためには「現場社員の視点」がポイント
- デジタル食わず嫌いを解消できるグッドタイミングは…今!
「うちの会社ではなぜDXがなかなか進まないのか?」の答えは
突然だが、これまでなかなか進まない自社のDXにジレンマを感じていたIT部門の人は多いのではないだろうか。
その最たる答えのひとつが、推進するのがIT部門なのか、総務部門なのか、経営企画部門なのか、はたまた特設チームなのかが不明瞭であるということだ。
例えばデジタルワークプレイス化ひとつとっても、単独の部署で完結するような変革ではないのに単独の部署で推進している企業が非常に多い。
だが本来ならば、映画「アベンジャーズ」のように、社内の関連部署の専門家が勢ぞろいしてミーティングを重ね、協力し合いながら進めていくべきプロジェクトなのだ。
そこで、DXを推進するにはまず「IT部門」「人事部門/広報部門」「管理職層」という3つの立場がタッグを組むことを強くおすすめする。
数多くのプロジェクト経験からすると、大きく分けてこの3つの立場の人たちが一体となって進めない限り、デジタルワークプレイス化は達成できないと断言する。
ここで「なぜ管理職?」と思ったあなたは鋭い。理由は後ほど詳述するが、デジタル化を阻む強固な壁となる存在が実は管理職層…なんていうことが往々にして起こるためだ。しかし一転、昨今のコロナ禍によって長らく二の足を踏んでいた経営層やアンチデジタル派だった管理職層も、否が応でもテレワークやデジタル化を受け入れざるを得なくなった。つまりITリテラシーがこれまでにないくらいに高まっている今、IT部門にとって管理職層に働きかける最適なタイミングといえるのだ。
さらに、上図のIT部門をご覧いただくと、IT環境の整備以外にもうひとつ役割があることがおわかりいただけるだろう。私は、これこそがDX実現の一歩を踏み出すために最も大切な業務だと考えている。まずはその点について詳述したい。
IT部門が主管部門として実行するとDXが一気に進む3つのこと
主管部門が不明瞭であったり推進チームが存在しないといったことがDXが進まない最大の要因なのであれば、ここはひとつIT部門に先陣を切ってほしい。豊富な情報を有する立場が積極的に情報を開示すれば、物事はおどろくほどスピーディに前進するからだ。
その上でIT部門の最も大切な役割とは、これまでにないくらい活発なコミュニケーションをはかり、以下の3つを実行することである。
①キーパーソンは誰だ?「チームビルディング」
デジタルワークプレイスを整備するにあたり、社内外に存在するどのような役割や組織機能を動員すると円滑に進むだろうか? 誰の声を聞いておく必要があるだろうか?それらを見極めたうえで、クロスオーバー型のDX推進プロジェクトチームをつくろう。
②これが組織の変革につながる!「ビジョンの共有」
デジタルワークプレイスを推進することの目的や必要性、社員にとってどう役立つのか、会社の未来をどう変革するのかなどを推進チームと共有しよう。ビジョンがあやふやだとスピード感や方向性にも影響するばかりか、モチベーション低下にもつながる。
③どんな発言もウェルカム!「ファシリテーション」
集まったメンバーたちは、システムのことだから難しそう…などと委縮するかもしれない。システムがわかっていなくてもOK、反対意見もウェルカムなど、あらかじめメンバーがそれぞれの立場や専門性を発揮でき、発言できるような環境と雰囲気を整えよう。
人事部門/広報部門の活動がいかに現場社員の協力を得られるかを左右する
いずれもワークプレイス変革における主管部であり、その推進という点では共通するものが多いので、ひとつにくくらせていただくことをご容赦いただきたい。
<人事部>
社員たちの勤務の状況や希望、上司と部下との関係性や研修・育成計画など、DXに不可欠な情報量はIT部門に双肩を並べるだろう。
評価面談やキャリア面談、研修や採用のあり方もデジタル化していくことも勘案すると、人事部門に求められるのは、IT部門とともに要件の洗い出しをすること、および人事部門の持つデータを提供することだ。
<広報部>
伝えることのプロフェッショナルチームである広報部門が担う役割は、IT部門に取材してデジタルワークプレイスに対する取り組みを組織内に共有することだ。
IT部門はITの専門集団であるがゆえに、エンドユーザーたる社員の感覚をなかなか想像できないことが多い。専門的な内容を広報部が社員視点で噛み砕いて伝え、一目でわかるto doを示すことが、コラボレーションツールの浸透に一役買うことは間違いない。
現場社員たちはこれまでの慣れた環境を手放し、新たな働き方を試行錯誤することになるのだから、ぜひともビジョンを共有し動機づけていただきたい。それなのに「このツールを使うことになりましたのでよろしく」という案内がなんと多いこと!
管理職層はデジタルワークプレイスの定着を支援する勇気をひたすら持とう
TeamsやYammerといったコラボレーションツール活用の支援をしているなかで「上司が使う気がまったくなく、職場に浸透しません」という声をよく耳にする。
もし管理職層がコラボレーションツールを活用した働き方を敬遠しているのだとしたら、その理由を考えてみてほしい。社員間のコミュニケーションが希薄になる、使い方が難しそう、テレワークでは部下を管理しにくくなる…といったことを使う前から危惧しているからではないだろうか。
そう、これこそが「DXの浸透を阻む管理職層」である。
しかしこれからの時代、オフィスに出社しないと仕事ができないという認識は捨てたほうがいい。場所と時間に関係なく効率的に働けるよう、業務の仕組みそのものを変革することがDXだからだ。
デジタルワークプレイスにおけるリーダーの仕事は、部下がきちんと仕事をしているかどうかを監督することではなく、社員の心身の状態を把握し、テレワークでも成果を出せるようなガイダンスを作成することである。
昨今、就業環境が未整備であったり、働き方や成果の出し方のガイダンスが不十分であったりする職場が、優秀な若い人材に転職を検討させてしまう要因にすらなっていることを忘れないでほしい。
IT部門ができるコミュニケーションとして、まずは小さなヒアリングから
とはいえ、日々目の前の仕事に追われているIT部門の人にとって、いきなり推進チームをつくったり大きなアクションを起こしたりすることは、ちょっとハードルが高いだろう。そこでまずは、管理職層に以下のようなライトな質問を投げかけて、現状確認をするところから始めてはいかがだろうか。
質問例
- 「Teamsやslackは組織内で使えていますか?」
- 「zoomなどによるオンライン会議は活発に行われていますか?」
- 「テレワークで何がストレスになっていますか?」
- 「どのような属性の社員がストレスを抱えていますか?」
組織の大変革につながるDXを推進するには、先述のようないわゆる「ITっぽくない仕事」がIT部門に大きくのしかかる。推進チームのリーダーのような役割を求められる場面も多いものだ。日々の仕事に従事しながらそられをこなすのは、負担が大きすぎるということもDX推進を阻む大きな壁となっていることは間違いない。
長期戦となることを考えると、いっそのことIT部門内にコミュニケーションの専門チームを創設して進めることが、最も近道となるのではないだろうか。
編集後記
私たちは知っています。情報システム部の皆さまが日々遅くまで社内インフラを支えるために知恵を出し合い、さまざまな制約条件に苦悩しながらも着実に今のワークスタイルを構築してきたことを。医療従事者やドラッグストアの方々と同様に、最前線で日々奮闘するITスペシャリストの皆さまにも敬意と感謝を伝えたいと思います。数ヶ月でここまで環境を整えたことは本当にすごいと思います。
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株式会社ソフィア
取締役、シニア コミュニケーションコンサルタント
築地 健
インターナルコミュニケーションの現状把握から戦略策定、ツール導入支援まで幅広く担当しています。昨今では、DX推進のためのチェンジマネジメント支援も行っています。国際団体IABC日本支部の代表を務めています。
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築地 健
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