2024.03.26
業務改善のためのコンサルティングとは?
目次
昨今、日本企業の生産性の低さがよく話題になります。
とくに問題視されるのは事務職などのオフィスで働く方々の生産性です。戦後、「カイゼン」活動で生産性が向上した製造業の生産現場と比べて、オフィスワークの業務改善は必要性を認識されながらも、効果的な取り組みが進んできたとは言えません。そこで、業務改善のノウハウを持たない企業がコンサルティング会社に支援を求めることが多くなっています。
ここでは、事務職などのオフィスで働く方々を対象に、業務改善を実践するためのコンサルティングサービスについて、内容とそのメリットをご紹介します。
業務改善に対するコンサルティングとは?
業務改善コンサルティングは、企業の業務プロセスを可視化し、問題点を洗い出すことで、最適なプロセスを構築するための支援を提供するサービスです。より効率的に業務を遂行し、競争力を高めるための重要な役割を果たします。このサービスでは、第三者の視点から企業の業務プロセスを見つめ直し、問題点を明確に把握することができます。また、現状の業務フローを可視化し、各プロセスの効率性や生産性を評価し、 業務プロセスを改善することで、効率性や生産性の向上につながります。これにより、コスト削減や顧客満足度の向上などの成果を得ることができ、競争力の強化や組織の持続的な成長にもつながります。
業務改善コンサルティングは、企業にとって重要なサービスであり、専門的な知識や経験を持ったコンサルタントの力を借りることで、より効果的な業務改善を実現することにつながります。企業は積極的に業務改善コンサルティングを活用し、競争力を高めるための取り組みを行いましょう。
このようなことで困っていませんか?業務改善コンサルが必要となる背景
事務職などのオフィスで働く方々の業務改善にコンサルタントが必要となる背景にはどのようなものがあるのでしょうか。業務改善を進める上での障害となっている事柄と合わせて説明します。
現在の業務を可視化、改善したい
「現状の業務のどこがどのようにうまくいっていないかがわからない」「それ以前に、業務がどのように遂行されているかが社内で理解されていない」という場合があります。 事務職などオフィスで働く方々の業務では、同じ部署の人が何をしているのか明確に把握できている方は少ないでしょう。ひとつの業務が複数の部署にまたがって行われ、重複している業務が存在してもそれを認識できないこともあります。
これを解決するためには、日々行われている業務を見える化、すなわち、可視化することが必要となります。誰がいつ何をしているかをフローチャートなどのドキュメントに記述して、明らかにするということです。 業務を可視化できれば、最近進みつつある雇用形態の多様化により、短時間勤務で業務限定の社員が入ってきても、スムーズに業務を引き継げます。また、在宅勤務に展開できるメリットもあります。
自分の業務を箇条書きでもなんでもいいので書き出しそれが整理されていない状態であっても、自分の業務を自分で見える状態にすることが、可視化の第一歩です。業務の大きさの違いや重複もあるでしょう。きれいに「分ける」ことや「並べる」ことが難しいかもしれません。そのような場合、ロジカルシンキングや論理的思考を考え方が役に立つでしょう。
自分たちで業務改善をしたいので支援して欲しい
自社の業務を一番よく理解しているのは自社の社員ですから、社員が業務を可視化する必要性を認識できれば、自社で業務の可視化から業務改善につなげる活動を行うのが難しいはずはありません。しかし、実際は自社で進めようとしてもうまく進まないことがよくあります。
その原因の一つは、通常の業務を抱えながら業務改善に労力を割くのは困難だからです。
二つ目は、業務を可視化して改善ポイントを見つけ実施するまでに必要な、手法やツール類の使い方がわからないからです。組織が大きくなり、業務が複雑化して、多くの職種によって業務が担われるようになると、フローチャートのような単純なドキュメントだけではまかないきれません。業務内容を記述しモデル化する技法を学ぶために外部の支援が必要になります。
三つ目の原因は人間関係です。人に付いている業務を可視化し改善することは、心理的なあつれきを生む可能性もはらんでいるため、外部の客観的な視点を必要とする場面も多くあります。
自分の業務を客観的に見ることは、実は難しいことです。自分の業務に対して、思いや信念を持って一生懸命やっている方であればあるほど、客観視できない傾向にあります。
社内の各部署同士で連携が取りにくい
さらに自社だけでの業務改善活動を難しくしているのは、社内の部署間の連携が取りにくいことです。自部門だけの業務改善であれば比較的簡単に行えますが、部分最適になってしまい、企業全体の生産性をあげることにつながらない場合があります。
通常業務では部署間の連携がうまく取れていたとしても、業務手順の変更を伴う業務改善を行うとなると、抵抗する人が出てきます。人は誰でも変化を嫌う習性があり、部署を越えて業務手順の変更を求めるには、組織の規模が大きくなるほど調整力が必要になりますし、部門間でのコンフリクトは避けて通れません。
ツール・システム導入がうまくいかない
業務改善を急ぐ企業では、市販されているITツールを手っ取り早く導入して、業務改善を進めようとすることがあります。しかし、こうしたツール類はベストプラクティスと呼ばれる特定の業務手順を前提としており、自社の業務手順をそれに合わせる必要がありますが、これがなかなかうまくいきません。業務手順を変えることへの抵抗がここでも問題となります。
業務改善コンサルティングを依頼するメリット
こうした問題の解決のために、社外のコンサルティング会社に支援を求めることになりますが、単に「社員の労力がかかる部分を外注するだけ」ではありません。コンサルタントに依頼するメリットには、以下のようなものがあります。
業務改善のノウハウを導入できる
まず、業務改善を行うノウハウを導入できます。具体的には業務改善プロジェクトを進める方法論と、他社で業務改善プロジェクトを行った成功事例・失敗事例です。こうした実務的なノウハウは、コンサルティング会社に蓄積されている場合もあれば、コンサルタント個人が持っていることもあります。業務改善プロジェクトにおいて、どこで何をすべきかを判断する経験値を買うということになります。
問題の原因を追究する技法を導入できる
次に、業務の可視化や問題の原因追究を行うためのドキュメント技法を導入できます。ドキュメント技法を解説した書籍は数多くありますが、これらを読むだけでは実践するのは難しく、各技法を実際に適用した事例をコンサルタントに紹介してもらいながら習得する方が効果的です。
第三者視点によって改善策を客観視できる
もうひとつ重要なことは、外部の第三者が業務改善プロジェクトに関与することで、改善策に客観性を持たせられるということがあります。業務改善を実施するには、業務改善のゴールやあるべき状態が、各部門や個人に腹落ちしていることが重要です。そのゴールやあるべき状態が、社内の有力者に忖度する必要もなく組織のしがらみもない外部のコンサルティング会社が作って経営者の承認を得ているものであれば、信頼度が高まるということです。
業務改善コンサルティングのサービス事例
外部のコンサルティング会社は業務改善プロジェクトをどのように行うのでしょうか。コンサルティング会社が具体的に何をしてくれるのかをフェーズごとに見ていきましょう。
業務の可視化
コンサルティング会社は最初に行う業務の可視化にあたり、ノウハウを提供し、取り組みの推進をしてくれます。 たとえば、BPMN(ビジネス・プロセス・モデリング表記法)です。BPMNは、仕事の始め方、役割分担、各担当の業務内容、顧客や取引先など外部とのやり取りといったフローを記述する手法で、国際標準(ISO19510)にもなっています。見る人すべてが共通理解を得られるように、記号やその表記方法が細かく定められています。 コンサルティング会社のプロジェクトメンバーが社員にヒアリングを行い、この手法に基づいたドキュメントを作ってくれる場合と、社員がコンサルティング会社の研修に出て、アドバイスとレビューを受けながら自らドキュメントを作成する場合とがあります。
(ロジカルシンキング 鍛え方)業務問題の特定
次に、可視化した業務全体を見渡しながら、どこが生産性を悪化させているのかを特定します。ここでは、コンサルティング会社が過去に同様の業務改善プロジェクトを行った実績が活かされます。 特定した業務が改善によってどのような結果を得られたか、観察した経験が多いほど、問題を特定する精度が上がります。
また、業務のどこに問題があるかは、当該業務に関与している社員がうすうす感じている場合もあります。コンサルティング会社はそれを企業全体で問題点を共有できるように、客観性を持ったロジックで組み立てられた説明資料を作ります。
原因追及
コンサルティング会社は原因追及のための手法も提供します。
たとえばロジックツリーは、一つの問題からいくつも枝分かれした原因を追及し、より深く原因を追求することで複数の原因を特定します。
また、バリューチェーン分析は、顧客に商品やサービスが届くまでのプロセスを一つの鎖にたとえます。鎖のどこで大きな価値が生み出されているか、どこが同業他社よりも優れているのか、または劣っているのかを分析し、それをもとに業務改善案を考える手法です。
改善案の立案(ツールの導入支援など)
社員とコンサルティング会社が協力して改善案を作り、経営者の承認を受けます。そして、コンサルティング会社は最適なツールを選定し、その導入支援を行います。
社内の抵抗への対応
業務の改善や変更を行うと、ほとんどの場合社内に何かしらの抵抗が生じます。業務改善において社内の抵抗への対応は避けては通れない課題です。日本の企業ではとくに、経営陣の承認のもと導入された施策に対して表面上は好意的な社員も、実際は導入に対して納得しておらず施策が浸透しない例が多く見られます。
コンサルティング会社は、業務改善やツール導入といった見える問題だけではなく、見えない問題、つまり社内の抵抗に関しても、「社員にとってどのように役立つことなのか」を伝え、共感を生み出す支援も行っています。俗にチェンジマネジメントといわれており、この分野に特化した支援会社も存在します。
効果測定
改善案を実施するだけで業務改善が終わるわけではありません。一定期間における効果を測定し、業務改善の成否を評価する必要があります。効果は定量的に測定するのが望ましく、顧客満足度、製造リードタイム、クレームの削減率などが指標として設定されます。 コンサルティング会社は、適切な指標の選定から実績数値を集めて集計する手法を提供します。評価の結果、望んだ成果が得られていれば業務改善は成功であり、現場に定着していきますが、結果がかんばしくない場合は、その原因を突き止め、改善をめざすPDCAサイクルをまわしていくことになります。
業務改善コンサルティングの進め方や手法と注意点
業務改善コンサルティングでは、お客様の事業全体を俯瞰し把握することからスタートします。事業全体の現状を把握し、それを分析していきます。その分析結果をもとに、改善策を立案し、実行に移していきます。詳しく見ていきましょう。
1.事業全体の把握と今までの進め方の確認
業務改善コンサルティングでは、お客様の事業全体を俯瞰し把握することからスタートします。 まずは、全社的な最適解を求めるために、事業や業務を段階的に詳細化していきます。この段階では、お客様の業務フローを整理し、問題や課題を明確に把握することが重要です。
2.現状の分析
次に、具体的な改善策を立案するために、現状の分析を行います。これには、業務の効率性、品質管理、コスト削減などの観点から、問題点を特定し、原因を突き止めます。その後、課題の優先度を設定し、改善のための目標を明確にします。
3.改善策の立案
改善策の立案では、経験豊富なコンサルタントがお手伝いします。お客様の要望や目標に合わせて、効果的な施策を考えます。具体的な手法としては、業務プロセスの見直しや効率化、ITシステムの導入や改良、組織・役割の再設計などがあります。また、スキルや知識の向上のための研修プログラムの提案も行います。
4.改善策の実行
改善策の実行支援では、計画の立案から実施、評価までをサポートします。プロジェクト管理やトレーニング、コーチングなどを通じて、お客様のチームや組織の能力向上を促進します。また、改善の成果を定量的・定性的に評価し、継続的な改善サイクルを確立することも重要です。 業務改善コンサルティングの進め方や手法は、お客様のニーズや課題に合わせて柔軟に対応します。経験豊富なコンサルタントのサポートを受けながら、効果的な業務改善を実現できるでしょう。
トップダウンの失敗事例
ただし、注意点として、コンサルタントによるトップダウンな進め方になってしまうと次のような問題が発生する場合があります。
ある企業で、財務部門の自動化およびRPA導入の事例をご紹介します。当該部門向けに、業務改善コンサルタントから、RPAの効果性について説明がありました。「RPAは24時間365日稼働し、かつ正確で、不正のない業務を実行できます。」との説明に対し、現場からは「24時間働けということ?」「わたしたちの仕事は、正確ではない、不正をしているとでも?」といった声が上がりました。
このように、改善が必要な問題点や課題が浮き彫りにしたとして、その該当業務を自分が行っていた場合、その業務および自分のしてきたことを否定されることになります。それを介入してきた他者よって行われるため、モチベーションは大幅に下降してしまうでしょう。
そこで弊社が行った施策は、1か月間のスケジュールを見て、「嫌な仕事」と「夢中になれる仕事」にマークをつけてもらいました。その「嫌な仕事」の中で、RPAが可能な業務にだけ取り入れることとなりました。
後日談ですが、嫌な仕事のうちRPAでできない業務は、社内の調整と無駄会議でした。
外発的な動機付けと内発的な動機付けをしっかり醸成し、ボトムアップとトップダウンの両方を駆使することで、実際に業務を行っている現場の本質な改善に手が届くのではないでしょうか。
MicrosoftPower automateの業務の自動化支援
Microsoft Power Automateを活用した業務の自動化支援もあります。Power Automateを使用することで、定型業務の単純作業や人的ミスのリスクを低減し、効率的な業務運営を実現することができます。
たとえば弊社では、申請から承認に伴う業務フローの自動化を行いました。紙に出力して確認する手間が省け、業務の効率化と共にペーパーレス化にもつながりました。
また、社内報業務における自動化支援も行っています。進捗状況の管理と寄稿締め切り等における関係者へのアラート出しや、アクセスログを集計・共有を自動化することで、コンテンツの充実化や、企画づくりなどのクリエイティブな作業に時間を使うことができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
業務改善コンサルティングの必要費用
業務改善コンサルティングには、さまざまな要素が関与するため、一概に費用を示すことは難しい面もあります。事前のヒアリングや要件定義の段階で具体的な内容と範囲を相談し、見積もりを依頼することが一般的で、プロジェクトの規模や要求事項に応じて個別に決定されます。以下、費用が変動する要素についてご紹介します。
1.プロジェクトのスコープと期間
業務改善プロジェクトの範囲と期間によって費用が変わります。大規模なプロジェクトほど費用も高くなる傾向にあります。
2.コンサルティングの専門性と経験
コンサルティング会社やコンサルタントの専門性と経験によって費用が異なります。高い専門性を持つコンサルタントや有名なコンサルティング会社ほど費用も高くなることがあります。
3.プロジェクトに関与する人数
業務改善プロジェクトに関与するコンサルタントの人数によっても費用が変わります。人数が多ければ費用も高くなることがあります。
4.オプションサービスの利用
コンサルティング会社によっては、追加のオプションサービス(データ分析、システム開発など)を提供している場合があります。これらのサービスを利用する場合は、追加費用がかかる可能性があります。
まとめ
業務改善を行うことが自社だけでは難しい場合があり、外部のコンサルティング会社にはさまざまな業務改善の支援が期待できることをご理解いただけたでしょうか。ここで重要なのは、業務改善の主役はコンサルティング会社ではなく、あくまで自社の社員であるということです。コンサルティング会社が作成するツールやドキュメントをどのように社内に浸透させていくかが大切です。経営層のリーダーシップとともに、業務改善プロジェクトのメンバーに選ばれた社員による社内コミュニケーションにかかっています。業務改善の価値を多くの社員に理解してもらい、共感を得ながら進めていきましょう。
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よくある質問
- 業務改善のためのコンサルティングが必要な状況はどんなですか?
現在の業務を可視化、改善したい
自分たちで業務改善をしたいので支援して欲しい
社内の各部署同士で連携がとりづらい
ツール・システム導入が上手くいかない
- 業務改善コンサルティングを依頼するメリットは何ですか?
業務改善を行うノウハウを導入できます。具体的には業務改善プロジェクトを進める方法論と、他社で業務改善プロジェクトを行った成功事例・失敗事例です。
株式会社ソフィア
コミュニケーションコンサルタント
宇佐美 草太
組織風土や企業理念浸透などの視点からコミュニケーション調査を設計・分析し、改善施策をご提案します。また、ITツール活用支援や業務フロー改善など、業務プロセス最適化のご支援も行っています。
株式会社ソフィア
コミュニケーションコンサルタント
宇佐美 草太
組織風土や企業理念浸透などの視点からコミュニケーション調査を設計・分析し、改善施策をご提案します。また、ITツール活用支援や業務フロー改善など、業務プロセス最適化のご支援も行っています。