2020.06.04
「その業務、本当に必要?」緊急在宅勤務宣言がもたらしたもの
目次
突然の在宅勤務開始で何が起こったか
「明日から、原則在宅勤務とする」
緊急事態宣言発令によって、それまでは遅々として進まなかった日本企業の在宅勤務が急に「やらなければならないこと」に変わった。
これまで、毎朝ほぼ決まった電車に乗って、会社に向かい、同僚と机を並べ、仕事をしていた日々が、急にストップしたのだ。人によっては、何十年も繰り返していたルーティーンが、突如として途絶えたとも言える。
テレワークを推進するようになって、困った人も多いのではないだろうか。ネットワーク回線のスピードが遅い、そもそも自宅にWifiがない、作業しやすいテーブルとイスがない、家にいると頼まれごとが相次ぐ、家族から話しかけられて仕事が進まない、オンラインミーティングを行うにあたって背景に部屋が映るが、見せるのにふさわしい場所がない…など、たくさんの不都合が生じているはずだ。
VPNが大混雑!という事態も起き、情報システム部の方々は、急な対応に追われていたと聞く。
しかし、この状況下で「業務が減った」という声を聞く。通常のオフィス環境では、見直しすらせずに漫然と続けていたタスクが、環境変化によって、優先順位が下がった(あるいは、取り組めなくなった)結果、「やらなくても実は問題がなかった」ということに気付く事象が起きているようなのだ。
一方で、普段何気なく取り組んでいたけれど、絶対に取り組まなければいけないことなので、そのためにだけ会社に行く、ということもあるそうだ。
大事なのはわかっているけど…忙しいからできない
普段、風土改革やインターナルブランディングのプロジェクト支援をしていると、「忙しいから取り組めない」「時間がないので、参加できない」といったように、業務量がボトルネックとなっているという話を聞くことが多い。(言い訳かもしれないけれど)
「それらの業務は、本当に必要なんですか?」と聞くと、必要だ、という。
「うちの会社は、新しいことを足すのは得意なんですけど、やめるのは苦手なんですよね」とも聞く。
“うちの会社”だけではなく、経験則的には、結構な会社がそうであるように思う。要するに仕事が雪だるま式に積みあがっているという状態なのだ。
細かく紐解くと、
- 前任者から引き継いだ仕事で、重要だと言われた
- 過去に〇〇部長が始めたことで、やめていいかどうかわからない
- ひとつずつ見直す暇もない
- 後工程にとって重要なことだから
といったような理由があがる。
実際に、その「前任者」や「〇〇部長」に聞くと、そんなに重要視していないケース、場合によっては「まだやってたの?」というようなケースもあったりする。
優先順位の判断軸
結局のところ、何を本当に必要な仕事なのか、何を優先して取り組むべきなのか、その判断基準がないだけなのだ。私たちは、どうしても緊急度が高い仕事から手を付ける。重要なのはわかるけど(今じゃなくてもいいよね)、という取り組みは、たいてい年度末の自己評価のタイミングでその存在に気付く。(そしてそのまま翌年に引き延ばす、あるいは慌ててとりあえずやっつける)
仕事の重要度を、後工程や過去の意思決定者に確認したくても、立場や関係性から聞けない。あるいは仕事に追われ、立ち止まって確認するような余裕がない。仕事の優先順位を判断する時間を作るために、その時間を作ることを妨げている仕事の取捨選択をしなければならない(そして結局できない)という、負のループに入っているのだ。
ある日突然強制的に始まった在宅勤務は、強制的に「今までやっていた業務」の重要度や緊急度を浮き彫りにした。環境が変わることで、優先順位が明確になったのだ。
もしCOVID-19の影響で目の前の業務が減っているならば、この機会にいちど仕事の棚卸しを進めてはどうだろうか。これまでやってきた仕事の振り返りを行い、緊急度と重要度はどうなのか、そこにどのような判断基準があったのか、周囲と共有し、話し合いを進めてみてほしい。そうすればこれからは、「緊急ではないが重要な取り組み」に時間を使えるようになるのではないだろうか。
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株式会社ソフィア
事業責任者、シニア・コンサルタント
森口 静香
先が見えない、課題が曖昧でどうすればよいかわからないプロジェクトの伴走をすることが多いです。議論をその場で図解したり、時にはグラレコや動画を使って、みなさんの共通認識をつくることを得意としています。
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先が見えない、課題が曖昧でどうすればよいかわからないプロジェクトの伴走をすることが多いです。議論をその場で図解したり、時にはグラレコや動画を使って、みなさんの共通認識をつくることを得意としています。