2020.07.29
最新トレンドに見るeラーニングのあり方とは?
目次
ICT技術の進歩や市場需要の高まりにより、eラーニングのトレンドが大きく変化しています。
現在のトレンドは「マイクロラーニング」と呼ばれ、ボリュームが細分化され、かつ動画やアニメーションを中心においた学習コンテンツです。
企業の従業員はこれまでのように数時間〜半日を研修に割くことなく、業務中の待機時間などを使って適宜学習に取り組めます。
また、学習コンテンツを制作する担当者にとっても、時間や費用のコストを抑えつつ、社会や企業の動向に合わせた教材をその都度作りやすいというメリットがあります。
従来のeラーニングはスライド形式のコンテンツがほとんどでしたが、ネットワークスピードの向上により、現在は動画コンテンツが主流となっており、受講時間に対して得られる情報量が格段に多くなりました。俗説ではありますが、1分間の映像の情報量は、文字情報に換算して180万文字もあると言われています。その一方で、人間の情報処理能力には個人差があるため、コンテンツを分割して学ぶことで学習効率が良くなると考えられた背景もあります。
このように、eラーニングのあり方は時代とともに刻々と変化しています。本記事ではeラーニングにおける最新のトレンドと今後の展望について、俯瞰的に解説していきます。
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eラーニングの市場は拡大傾向
株式会社矢野経済研究所の調査によれば、日本国内のeラーニング市場はここ数年で右肩上がりに拡大しています。
BtoBだけでなく、企業が個人に提供する各種ビジネススキルや投資・FXのセミナーなどのBtoC市場も大きくなっているところは、まさに流行の表れといったところでしょう。
2019年4月1日より働き方改革関連法が施行され、2020年初頭にはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響から全国的にテレワークの導入が促進されるに至りました。
人材育成においては従来のような集合研修の需要が低下する一方、インターネットを通じてオンデマンドで学習できるeラーニングのニーズは今後も拡大の一途を辿ると推測されます。
eラーニング学習の取り組み方が変化
日本で取り入れられた当初、eラーニングのメリットは、紙教材がデジタル化(CD-ROMやDVD-ROM)したという程度でした。
しかし、近年はLMS(Learning Management System; 学習管理システム)というeラーニングの管理プラットフォームが普及しつつあり、e-ラーニング学習への取り組み方が変化してきています。
主体的に学ぶアクティブラーニングへ
従来のeラーニングは、一方的に与えられたコンテンツを閲覧し、テストを受けて終了という極めて受動的なものでした。
こういった学習方法は一定水準の知識を一斉に修得させることには向いていますが(個人情報の取り扱いなど)、受講者が学習内容を「自分ごと」と捉えにくいため、現場で実践できるスキルにつながりづらいという課題があります。
知識ではなく技術である「対話力」や「交渉術」「マネジメントスキル」などは、実務に反映できなければ意味がありません。
このような背景から、eラーニングにおいても、受講者が能動的に学習に取り組むアクティブラーニングが求められるようになってきています。
そして、この課題を解決し、eラーニングをアクティブラーニング化する方法として、「ICTツールとの連携」が注目されるようになりました。
例えば先述のLMS365上で受講したeラーニングの内容について、オンラインでディスカッションができるチーム(グループ)をMicorsoft 365の一機能である「Microsoft Teams」上に設ければ、学びをより深めることができるでしょう。
また、より能動的に関わってもらうためにディスカッションをディベート形式にし、参加を必須にするのも有効かもしれません。
これらの手法に関しては、次節で解説します。
知識学習から体験学習へ
eラーニングの教材も、一方的に受講者に説明をして知識を修得させるコンテンツから、受講者が主体的に「参加」し、学ぶべき内容を自ら体験するコンテンツへと変化しています。ロールプレイング型やゲーム型などはすでにお馴染みかもしれません。
これらは、特定の知識を学ばせるだけでなく、チームビルディングスキルやコミュニケーションスキルといった非認知能力を伸ばすことにもつながります。
最新のeラーニングには、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、さらにこの2つを組み合わせたxR技術まで活用したものも存在します。
一面でしか表現できない画像よりも、自在に視点を変えられる方がわかりやすいコンテンツ(例えば、工学分野や医学分野など)はAR向きの内容と言えるでしょう。
また、VRは通常の動画とは比較にならないほど臨場感があり、まるでその現場に居合わせているかのような錯覚すら覚えるため、接客・クレーム対応などのコンテンツが適しています。
xR(クロスリアリティ)は想像しにくいかもしれませんが、拡張された仮想現実の中で実体験ができると言えば比較的わかりやすいでしょうか。
xRは、建設現場の安全教育などで用いられはじめています。
これまでのように文字や音声で学ぶよりも遥かに身に付きやすくなっているという大きなメリットがある一方、ゴーグルなどのデバイスを準備する費用や、デバイスの重量など、技術・コスト面での課題も残っています。
さらに最近のeラーニングでは、AI(人工知能)を搭載することもできます。
受講中にAIがコメントやアドバイスをするというもので、教育担当者が研修に同席していなくても、受講者とAIとの間で双方向の学習が実現します。
(これらの様子を録画しておき、人間の目線でさらにフィードバックを加えることも可能です)
eラーニングの学習教材やプラットフォームの進化
eラーニングの学習教材や、それらを管理するLMSが進化したことにより、従業員に対して一律の教育を施すこれまでの手法から、よりフレキシブルでパーソナライズドされたコンテンツを各受講者に割り当てられるようになりました。
学習履歴を分析し最適なコンテンツを提案
LMSを利用すれば、従業員の受講履歴や学習の進捗状況、試験の成績を一覧で確認できます。
また、従業員一人ひとりの人事情報、業績やアンケート結果などを可視化しつつ一元管理できるタレントマネジメントシステムをLMSと併用し、収集した統計的データを解析することで、人事や経営の戦略化に生かす「ピープルアナリティクス」も可能となります。
ピープルアナリティクスを用いることで、あらゆる社内施策において客観的な視点からの改善につなげられます。一例としてeラーニングによる人材育成に役立てるのであれば、受講者のレベルに合わせた新たな学習コンテンツや、不足しているスキルを補うためのコンテンツのサジェストなどが可能になるでしょう。
得意な部分をさらに強化したり、苦手な部分を補強したりといったことが会社の提供するeラーニングによって経験できるため、社員のモチベーションアップや、ロイヤルティ向上につながるとも言えます。
学習する文化
環境変化が目まぐるしい中で、学習内容も多様化しています。有識者に聞くよりも、ググった(Googleで検索した)方が早い時代になっています。
教師と生徒、企業と社員のように、学習内容を提供する側と受講する側が明確に分かれていた時代から、ICTの技術革新により、誰もが先生や講師になり、誰もが生徒や受講者になるというように、それぞれを隔てる境界線がなくなってきました。企業内において社員は「教師であり、受講者でもある」と言えます。
これは、ナレッジマネジメントのサイクルとも言い換えられます。
このような「ナレッジマネジメント」または「学習する文化」を企業内に醸成するためには、どうすればいいのでしょうか?
ナレッジマネジメントについては、一橋大学の野中郁次郎氏と竹内弘高氏らが提唱したSECIモデルが参考になります。
【共同化】ある暗黙知(個人が自身の中に蓄積してきた知識)を持った個人が組織内の他者と同じ経験をすることで(共体験)、その暗黙知が他者に共有されます。
↓
【表出化】共有された暗黙知を誰でも使えるように一般化します(形式知)。
↓
【連結化】複数の形式知が集まることで体系化し、新たな形式知が生まれます。
↓
【内面化】これらの形式知を個人が行動によって会得(体化)することで、個人の中に新たな暗黙知が生まれます。
↓
【共同化】へと続き、このサイクルが繰り返される
従来の組織は、学習を提供する側が一方的に知識を伝えるのみでした。
「学習する組織」とは、学習によって得た知識を生かして個人が修得した技能が汎化され、それが新たな学習コンテンツとなって組織内の別の個人が実践し、それらが次第に体系化することで組織の資産として還元される、一連の活動を行う組織です。
この循環が、デジタル技術、すなわちeラーニングで実現できるまでに進化したということです。
オンライン化
AI技術については先述しましたが、顔認識の技術が発展したことにより、AIが生身の人間に代わって講師を勤め、AIが受講者にフィードバックを行うこともできます。
マイクロラーニングツールUMU「AIコーチング」
そのため、従来の集合研修に戻すことなく、オンラインで講義形式の研修が実現できるようになりました。
まとめ
人の生活や働き方が世界的に激動している昨今ですが、この変化の渦中で変わらずに取り残されてしまうと、企業は今後生き残ることが難しいでしょう。
従業員の働き方が変わるということは、企業のあり方が変わるということと同義です。
その中にはもちろん、人材開発や育成のあり方も含まれます。
これまではそれほど注目されてこなかったeラーニングですが、現在は教育方法の主流として台頭しつつあります。
本記事でご紹介したeラーニングのトレンドを、貴社の人材育成に役立ていただければ幸いです。
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人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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