在宅勤務にはどんな仕事が向いている?職種とあるべき「働き方」

企業における在宅勤務という働き方がだんだんと普及しつつあり、みなさんも「この仕事は在宅勤務にできる」「この仕事は在宅勤務にするには難しいかも」という向き不向きの大枠を掴みつつあるかもしれません。

すぐに浮かぶのは業種や職種での切り分けかと思われますが、実は「働き方」によって、在宅勤務の向き不向きを切り分けることができます。本記事では、在宅勤務が向いている職種を紹介しつつ、世の中の働き方が在宅勤務へと移り変わる中で企業の社員がどのような働き方をすべきかについて解説していきます。

在宅勤務が向いているといわれる職種

一般的に、以下のような職種が在宅勤務に向いているといわれています。

・事務職

事務職は他の社員とあまりコミュニケーションや連携を取らず、一人で作業をすることが多いことから、在宅勤務に向いていると言われています。また現在はMicrosoft 365といったクラウドサービスの導入によって事務職には必須なWordやExcelといったツールをオンラインで共有しやすくなり、より在宅向きとなりました。

・営業

顧客とのやりとりがメインになることや、ビデオチャットなどオンラインでの商談も増えてきたことから、在宅勤務が可能になりました。一方で、顧客の属性によってはオンラインでの商談に慣れていない場合もあるので、在宅での商談が成立するのか見極めが必要になります。

・Webデザイナー

クライアントや自社内での指示書をもとにデザインソフトを使って作業を行うので、単独での作業が多く、在宅向きです。なお、Webサイトを制作するコーダーなども同様です。

・Webライター

デザイナーとほぼ同様ですが、ライティングはデザインやコーディングと比べて使用する機材やアプリケーションの制約がより少ないため、在宅勤務とはもっとも相性がよいかもしれません。

・プログラマー

設計書に基づいて作業を行うプログラマーは極めて専門性が高く、既にプログラマーとして活躍されている方々は在宅勤務をしやすいでしょう。

・システムエンジニア

システム設計もクライアントや社内からヒアリングした内容をもとに作業を行うため、プログラマーとほぼ同じ条件となります。打ち合わせも多い職種ですが、業界的にもオンラインでのやりとりをすることが一般的です。

・カスタマーサポート

本記事でのカスタマーサポートは、電話やメール、チャットサービスでサポートを行う職種を指します。これらはICTツールが導入していれば自宅でも作業が可能です。

2020年4月にリクルート住まいカンパニーが行った調査では、企業におけるテレワークの実施率は47%にものぼっています。同年初頭からのCOVID-19(コロナウイルス感染症)の影響もあり、在宅勤務の流れは今後も続いていくことが予測されます。

在宅勤務に必要な条件

在宅勤務をするための大前提として、ICT(Information and Communication Technology;情報通信技術)のインフラが整備されている必要があります。業務に関する指示を受けたり、進捗の報連相を行ったりと、コミュニケーションツールの存在は不可欠だからです。

また、先述のように在宅勤務は「自分ひとりで完遂できる職務」が適しています。チーム内で分担して作業を行う場合には、同じ場所に集合して進めたほうが効率は良い場合が多いです。

そして、「定量的な評価をしやすい」というのも条件のひとつです。これは簡単に言うと、「今日はこのくらいできました」という、進捗状況や成果物が目に見えてわかりやすく、費やした時間に対する作業量を評価できる業務を指します。

ただし、これからの在宅勤務については「定量的な評価をしにくい」業務についても在宅勤務の視野に入れて考える必要があります。こちらについては次の章で解説します。

正社員は在宅勤務に向いていない?

実は、正社員は在宅勤務に不向きだという考え方もあります。

定量的な定型業務はアウトソーシングできますが、企業価値を高めるミッションを持つコア業務は正社員が担うべきものです。イノベーティブなアイディアの創出であったり、PDCAサイクルのコントロールであったり、人材のマネジメントや育成であったり、こういったミッションを持った業務は契約社員や派遣社員には任命することが難しいでしょう。

実は現在、日立製作所や富士通、KDDIといった大手企業が「ジョブ型」という雇用形態を開始していることをご存知でしょうか。

これまで日本ではおもに「メンバーシップ型」の雇用形態が採用されてきましたが、これは、新卒採用などで一律に確保した「人」に部署の「仕事」を割り当て、育成を行うというものでした。人に仕事が割り当てられるので、人は割り当てられた仕事を遂行するという前提のもとに、賃金が支払われたわけです。

一方、ジョブ型の雇用形態は、ジョブディスクリプション(職務記述書)というドキュメントにあらかじめ定められた「職務内容」に対して「人」を割り当てることになります。つまり、前述した専門職系の仕事のように、定められた職務内容を遂行できるスキルを持つ人材だけが、そのポジションにつくことができます。なすべき職務内容と出すべき成果が明確に決められていることにより、業務の達成度を可視化することが可能となり、これまでよりシビアな評価が課されます。欧米発祥の完全成果主義型ともいえるジョブ型の雇用形態が台頭すると、定められた職務を遂行できない(職務に対する知識やスキルが十分でない)従業員は存在理由を失うともいえるのです。

転職市場において、新卒採用に比べて中途採用の求人がさかんになっているのは「ジョブ型」の人材が求められていることが大きな理由でもあります。ゼロから人材を育成する体力が残されていないというのが今の日本企業の現状なのです。

ここまで、定量的な評価のできる職種が在宅勤務に向いていると解説してきましたが、今後は定量的な評価を行うことが難しい正社員も在宅勤務に移行していくはずです。詳しくは次の章で解説します。

在宅勤務に向いている仕事・向いていない仕事とは

冒頭で述べたとおり、もちろん業種や職種という大きなくくりで在宅勤務に対する向き・不向きはあります。ですが、物理的にリモートワークができない企業を除けば、在宅勤務に向いている仕事かどうかは結局のところ「切り出せる仕事かそうでない仕事か」で判断することができます。そしてこの「切り出し方」は、職種の観点と企業価値の観点とで分けられます。

職種の観点については先に述べたとおりで、ICTを使用することで「自分ひとりで完遂できる職務」であり、「定量的な評価をしやすい」仕事が在宅勤務に向いています。
一方、企業価値の観点でいうと、たとえ定量的な評価ができなくても「ミッションが明確」である仕事は在宅勤務に移行することが可能だと考えます。ここでいうミッションとは、その人が企業に対してどのような貢献をして、組織を進化・発展させるためにどのような価値をもたらすのかという「役割」と言い換えることもできます。つまり、先ほど正社員の役割として述べた、「イノベーティブなアイディアの創出」「PDCAサイクルのコントロール」「人材のマネジメントや育成」など、企業のコア業務も含むことができるのです。

これまで企業で働く正社員に対しては、年功序列制に代表されるように、職務を定量的にこなせば賃金が支払われるシステムが多く取り入れられていました。しかし今後は、組織価値を上げていくために何らかのミッションを持つ正社員が増えていくでしょう。その役割は定量的なものであるとは限らず、与えられたミッションを達成するためにあらゆる手を尽くさなければなりません。

企業に勤めていれば給与が保証されるという時代は終わりました。これからは社員一人ひとりが独立開業した人間のように、自社の価値向上に対して積極的にコミットしていく姿勢が求められるシビアな時代へと変化したといえるでしょう。

そうなったとき、自身の価値を主体的に示し、企業価値を高めるコアとしての役割を果たしていることを対外的に証明できない人材は、グローバル化できなかった企業が社会的に淘汰されていくように、行き場をなくしてしまうことになるかもしれません。

在宅勤務になって問われる「働き方」

日本経済が危機的な状況に置かれる中、企業の構成員である社員も危機感を持って臨まなければ、今の状況を変えることは困難です。何のために雇用形態が「正社員」とそれ以外に分けられているのか。在宅勤務という働き方の変化を通して、再考する時が来たともいえるでしょう。

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