変革を後回しにしない〜常時接続が推進を後押しする〜
目次
いま、多くの企業が組織や事業の大きな変革を迫られています。その一方で、在宅勤務の拡大など働き方が変化し、組織内の情報格差や危機に対する温度差が生まれることで、変革がなかなか進まない、という経営者や担当者の悲鳴も聞こえてきます。しかし、たとえ対面の機会が減っても、常時オンラインでつながってコミュニケーションできることを強みに変えれば、コロナ禍が企業変革のチャンスに変わるかもしれません。コンサルタントの森口静香によるコラムをお届けします。
コロナ禍は、企業内にあるさまざまな問題を表面化させた。そして、これまでなんとなく優先順位を下げ、後回しにされてきた企業の変革は、待ったなしの状況だ。もちろん、新型コロナウイルス感染拡大の影響で新たに生まれた問題はある。しかしそれらの多くは、これまで企業が改善できなかった体質に起因している。コロナによって企業の体質が明らかになり、そして問題が複雑化したのだ。
問題の本質は変わっていない。企業として、緊急時、リスクが最大化している時期に胆力を持って立ち回れるかどうかは、経営だけでなく現場も含めた体質が左右する。
こんな状況だからこそ企業は変わらなければならない。それなのに「コロナだから、後回しに」「コロナだから、今は言うのをやめておこう」そんな言葉が組織内に飛び交い、立ち込める暗雲で変革を前に進めることができない。
コロナ禍で露呈した企業変革の必要性
新型コロナウイルス流行が長期化し、だんだん色濃くなってきた市場への影響が、各社から発表される決算に暗い影を落としている。そんな中、私たちソフィアの元に寄せられる企業からの相談にも、大きく変化しつつある働き方の影響が見られる。「じっくり腰を据えて社員のパフォーマンスをあげるようなコミュニケーションの改善をしてほしい」というものもあれば、「会社が変わろうとするスピード感をあげてほしい」「何も決まっていないし、何をするかもわからないけれども、このままでは乗り越えられないから、支援に入ってほしい」というものもある。
先日、インタビューした経営者がこんなことを話していた。
「最大のリスクは会社の死。それを避けることが、顧客を守り、社員を守ることであり、それこそが私の使命だ」
事業環境が大きく変わる中で、企業がこれまでどおりのスピード感で動いていれば、確実に市場から置いていかれる。そして、市場から求められなくなれば、即ち企業の「死」が迫っている。
経営に近い人たちは、すぐさま会社をトランスフォームしたい。一方で、一部の現場社員やミドル層の社員は、「そうはいっても」という現場の事情に阻まれて思うように前進できず、苦しんでいる。
テレワークで広がる経営と現場の温度差
しかも、コロナ禍でテレワークシフトが進んでいるので、努力を怠れば組織内のコミュニケーションは悪くなる一方だ。前出のような経営者の思いや覚悟は、ますます社員に伝わりにくくなっている。
操舵室では嵐に突入する準備をものすごいスピードで行っているが、同じ船の中で働く船員からは見ることができない。情報も分断されているために、甲板にいる船員は嵐に不安を抱えながらも、のんびりこれまで通りの決まった活動を行っている。先週は東に進むといっていたけど、今日は西と言っているらしい、こんなに変えられたらたまらないよね、と愚痴を言い合いながら。
今回、世界中に押し寄せているコロナ禍による影響は、これまでの不況とは大きく異なる。ある人は、幕末クラスの変化だというし、ある人は産業革命クラスだという。どちらも、あっという間に世の中の景色が変わってしまうと言っているのだ。
ニューノーマルに合わせて、大至急ビジネスを変革しなければいけない。しかし、組織内の誰もそのような規模の変革を経験したことがない。経験がないことは経営者も同じで、暗中模索している状況なのだ。
なのに、経営の情報が届かない現場では、「上が指示をコロコロ変える」「方向性が定まらない、ブレる」など、場合によっては管理職も一緒になって言っている。
現場では今、何をすべきなのか
今、企業は存在意義を問われているのだ。何のために存在するのか、社会にどんな価値を提供するのか、そのために今何をすべきなのか。
それを一人ひとりが問い直しながら、目の前の通常業務にも対応しなければならない。生き残りをかけた戦いの場にいるのだから、朝令暮改は致し方なし。状況の変化に合わせて、上からの指示も変わる。現場の社員も自ら情報を上げて、上司やチームメンバーに対策を相談し、ギアを2つ3つあげて戦闘モードになるべきなのだ。
Zoomやteamsのオンライン会議をこなすだけで仕事をした気になっていたら、3ヶ月前までの、「会社に行って仕事をした気になっていた」状況と変わらない。問うべきはその中身だ。
密でスピーディーなコミュニケーションが「常時接続」で可能に
この状況下なので、企業における意思決定の優先順位はコロコロ変わるだろう。私たちがお客さま先で関わっている組織変革系のプロジェクトは、経営の直轄であることがほとんどで、企業内で動いている他のプロジェクトとの連携も多く、なおさら優先順位の変更の影響を受けやすい。
そのため、今までのように、資料を作って、アポイントをとって、打ち合わせしてというこれまで通りの仕事サイクルをまわしていると、あっという間に前提が変わってやりなおし、ということになる。お客さま先のプロジェクト担当者とリアルタイムに情報共有し、常にコミュニケーションを取っておくことが必要になる。
状況に即し、「今」このドキュメントを意思決定者にぶつけて、すぐさま施策を投下する。大至急、「明日の午前」の会議にこのネタを滑り込ませる。こういう議論をプロジェクトの担当者と四六時中できるのが、まさに常時接続がなせる技だと思う。
Teamsやslack、電話やLINE、Facebookのメッセンジャーなど(集約されたほうが楽だとは思うが)で常にコミュニケーションを取り続ければ、どんな状況にも備えられる。
急速に働き方のデジタル化が進んだことによって、これらの恩恵を享受できるようになった。今までなら、「話しておいたほうが良いこと」だが、「今すぐでなくて良い」要件には、「次に会ったときに話す」フラグを立てていた。それが、デジタル化によって、「次会った時に話す」から、「今のうちに、チャットで知らせる」に変わった。
リアルタイムの情報共有によって、意思決定に至るまでの遷移や付帯情報・周辺情報も共有される。それによって、プロジェクトの担当者が置かれている状況もこれまで以上にくっきり伝わってくる。さらに、意思決定に必要なインプットは日々変わり、日々増え続け、「次会った時」の「次」が1週間後では間に合わない意思決定がされている。そういった意味で、私たちの仕事において、このデジタル化がもたらした常時接続の恩恵は手放せないと強く感じている。
先日、コロナ禍にスタートしたプロジェクトの担当者と、はじめてオフラインで顔を合わせた。そして、「もうずいぶん前から一緒に仕事をしている気になっていたのだけど、実は今日はじめて会いますね!思っていたより背が大きくて驚いた!」なんていう会話をした。週に1回会うというペースの以前のコミュニケーションとは異なり、週5日ずっと一緒に仕事をしているのだから、初対面でもなんの違和感もないし、距離なんて1ミリも感じない。
デジタル化が社内と社外の垣根を取り払う
私たちソフィアは、仕事をする上で「半分はお客さま組織の中の人」「半分外部の人」という立ち位置でプロジェクトに関わることが理想だと思っている。しかし、最近は常時接続によってコミュニケーション量が増え、これまで以上にプロジェクト内に太い絆が結ばれていると感じる。「あれ、森口さんて、よく考えたらソフィアの人じゃないですか」とお客さまから言われることも、以前より増えてきた。
これは、仕事のデジタル化によって「社内」と「社外」の垣根が取り払われつつあることを示しているのだと思う。もはや、「お世話になっております」から始まるよそよそしいメールのやりとりは不要になったし、会議室を手配してもらい、電車や車に乗って移動して、机を挟み差し障りのない会話から始まる打ち合わせもなくなった。お客さまと私たちの間にあった大きな壁が、どんどん低くなっている。
しかし、どんなに距離が縮まったとしても、私たちはあくまで「社外」。社外の人間だから、一歩引いた立場から、「今、無意識に決断を後回しにしましたね」、「今、周りに流されて、ご自身の時給分をムダにしましたね」と言ってしまえる。組織の問題の渦中にいれば、木や枝葉が視界の大部分を占めるのだから、森の全体像が見えないのは仕方がないこと。そのような状態から、元々の問題意識に引き戻すことができるのが、私たちのような社外の人間の役割と言える。
元々、私たちソフィアの強みは、「圧倒的当事者意識」と、課題解決のための「伴走」だったのだが、お客さまのデジタル化・在宅化が進んだことによって、伴走もデジタル化したのだ。
さらに、デジタル化によって、私たちソフィアの中でも、相互のリアルタイムな知恵共有ができている。今、目の前のお客さまが困っていることに対して、アイディアや事例、思考について社内に呼びかければ、打ち合わせの最中に最適解を共有されることもある。
コンサルタントが一人で前面にいるようで、バックグラウンドに異なる知恵知識を持つメンバーが相互にバックアップしている状態なので、私自身も安心して仕事を推進できる。私たちにとっても、今は正解やセオリーがない世界なのだ。
「会社の中で、同じ志で戦う仲間がいない」、「周りのスピード感を見ているとイライラする。同じスピードで走ってくれる仲間がほしい」組織の中でこんなことを感じたら、思い出してほしい。
ソフィアには、決しておとなしく言うことを聴く人はいないが、志を匂いで感じて、すぐさま武器をとるメンバーが勢揃いしている。
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