2020.11.17
研修の内製化をするメリット・準備とは?内製化に適した研修も紹介
目次
おそらくほとんどの企業では、研修の一部ないし多くを外部の研修会社に委託しているのではないでしょうか。コンテンツの内容によっては外注でも不足はないのですが、研修を内製化することで、企業に大きなメリットがもたらされる場合もあります。
本記事では自社で研修を内製化することによるメリットと、内製化に適した研修、そして実際に内製化するときの準備について解説します。
研修を内製化する4つのメリットと理由
研修を自社で内製化することには、大きく4つのメリットがあります。またこれは、研修を内製化すべき理由と捉えることもできるでしょう。
人に教える経験を通して社員のスキルアップにつながる
研修を内製化するということは、講師も自社で賄うということです。自分が身につけたスキルや知識を講師として第三者に伝えるには、これまでなんとなくこなしていたこと、あるいはぼんやりと知っていたことを、人に伝えられるようしっかりと学び直す必要があります。さらに、人前で話してわかりやすく伝えるプレゼンテーションの技術が磨かれるほか、受講者からの思いもよらなかった質問によって技術やノウハウの補完ができるかもしれません。
自社の競争優位性を確保できる
自社が保有するさまざまなリソースの中には、他社に対して競争優位性を持つものがあります。例えば、長い年月を経て極限まで洗練された業務オペレーションが、高い効率と生産性で他社を卓越しているのならば、それは事業上の優位性であるといえます。
このリソースを研修のコンテンツとして社内に確立し、社内で伝承し確保を続けることは、この競争優位性を確保し続けられるというメリットにつながるのです。このメリットは研修を内製化するからこそ生まれるものであり、外部の研修会社に委託した研修では得られません。
コンテンツの修正変更ができる
社会情勢とともに企業の体制は刻々と変わり、現場の業務がアップデートされることもあるため、研修コンテンツはしばしば修正や変更が必要になります。また、企業によっては、一般的なビジネススキルやコンプライアンスの研修であっても、自社用に内容をカスタマイズしたいこともあるでしょう。さらに、eラーニングのようなオンライン研修の場合は研修コンテンツをあらかじめ制作しておく必要があるため、制作を外部に委託するよりも内製化した方が、内容の修正・変更対応の柔軟性やコストの面でメリットが大きくなります。
研修内容を業務に直結させやすい
研修コンテンツを自社にとって最適化できるのが内製化の強みです。そのため、学ぶべき内容を自社の現場環境にマッチさせやすく、受講者は学んだ内容を現場ですぐに実践できます。研修にありがちな「学んだつもり」「わかったつもり」を防ぎ、研修の効果を業務へと確実に直結させるためにはやはり内製化が適しています。
内製化に適した研修
すべての研修を内製化すればよいというわけではなく、コンテンツの内容によって内製化に適した研修とそうでないものとがあります。
企業ビジョンやミッションに関する研修
企業のビジョンやミッション、バリューは各企業が独自に定めているため、受講者の理解を深めるには同じ会社の社員から伝えたほうが熱量も高く、説得力を持ちます。逆に言えば、外部から招聘した講師のような第三者の口から語られても、説得力に欠けると言えるでしょう
オリジナリティを持たせやすいコンテンツではありますが、こうしたメッセージ性の強い発信が一方的に行われると敬遠してしまう社員もいるほか、伝えたい想いが強すぎることでコンテンツの内容に偏りが生じてしまうこともあります
そのため、共感や納得を得やすいよう、ビジョンやミッションが反映された出来事を社員が実際に体験した事例を挙げたり、実際に当事者やキーパーソン、経営層が登壇して語ったりといった工夫が重要です。
自社の求める人物像を具現化する研修
企業が掲げるビジョンやミッションはその企業の独自性を表すものであり、そのビジョンやミッションに基づいて企業が求める人材像も、もちろん他社とは異なるものになるでしょう。こうした「企業が求める人物像」が明確に定義され、それに基づいて設計される研修は内製化に適しています。
社員にとっては、自身の市場価値を高める上で「自社ならではの学び」を得ることができ、それがさらに先輩社員の口から語られることによって、自社のブランドを強く感じます。
また企業にとっては、自社の差別化の主要因であるスキルセットを、社内講師育成を通して社内で伝承していくことが出来ます。
企業の業務に関わる研修
実務に関する研修は自社のノウハウを反映させやすく、また現場ですぐ実践させたいものなので、やはり勝手を知っている自社で内製化するほうが望ましいといえます。OJTが主流になってしまうと指導・教育に関する業務が属人化したり、教える内容にばらつきがあったり、先輩社員が急に退職したときに誰も教えられなくなったりなどのリスクがあります。そこで教えるべき内容を業務に関する研修へとコンテンツ化することで、一定水準の必須スキルをムラなく伝えられるようになります。
なお、コンプライアンス研修や情報セキュリティ研修、プライバシーマーク研修など、どの会社でも学ぶべき内容が共通していることがあきらかなコンテンツはこれまでどおり研修会社に委託したほうがよいでしょう。こちらは法令に関するものも多分に含まれることから、情報をアップデートする必要を考えると専門家の手に委ねたほうが確実です。
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研修内製化に必要な準備
「研修の内製化」は多くの企業で議論に上がるものの、その多くが検討や推進の途中で頓挫してしまっているのが現実です。やるべきことを明確にし、強力に推進していくために、ここでは内製化に必要な準備の要点を解説します。
コンピテンシーの明文化
「コンピテンシー(competency)」は、「高業績者の行動特性」を意味する単語です。企業の文脈では「特定の役職や職務、役割において優秀な成果を発揮できる社員の行動特性」と定義されます。言い換えれば、「その人を『仕事のできる社員』にしている要素はなにか」というものでもあります。
自社の管理者研修を内製化しようとする際、「自社において優れた管理者とはどのような存在か」を明確にできないと、研修コンテンツを作ることができません。
また現場の業務に即した研修についても、「業務を効率化し適切にミッションをこなす」ために必要な言動がどのようなものなのか、その正体が掴めていなければコンテンツの設計は困難です。
まずはロールモデルたる人物を社内から探し出し、その人たちの行動からコンピテンシーの発見を試みてみましょう。
指導トレーナーの育成
内製化した研修で講師を務める「指導トレーナー」の育成も行う必要があります。まずは、講師にはどんな能力が必要なのかを、内製化をけん引する担当者が把握するようにしてください。
指導トレーナーは、自分自身が教えるコンテンツについて熟知しているだけでなく、会社の状況や現場の課題を理解し、育成する後輩のあるべき姿を描けていることが理想です。単に業務知識を伝えるだけではOJTと大差なくなってしまいますので、研修講師としてどう振る舞うべきかを伝える必要があります。
ただしこの点は自社にノウハウがないことも多いはずですので、内製化の支援を得意とする企業に相談してもよいでしょう。
指導トレーナーの評価
最初の指導トレーナーを育成すると同時に、指導トレーナーをどのように評価するかを検討し、具体化していきましょう。あわせて、研修に必要なツールの導入と管理、標準化を行うのもこの段階です。これらの地盤固めが以後の指導トレーナーのスムーズな育成につながります。最初の指導トレーナーが人事異動などで離脱してしまうと内製化が立ち行かなくなってしまうということにもなりかねませんので、内製化のプロセスを具体化し、汎用的に活用できるよう挑戦してみてください。
研修内製化を成功させるコツ
最後に、研修内製化を成功させる3つのコツをお伝えします。
従業員のあるべき姿を定義
経営ビジョンという「会社のあるべき姿」が策定されていれば、会社に属する従業員のあるべき姿も見えてくるでしょう。もちろん現場視点も忘れてはいけません。「こうなってほしい」という理想像をイメージしてコンテンツを作り、講師は指導をしていくことこそ、内製化のメリットを大きく引き出す要素となります。
状況の可視化
内製化にあたっては、現在まで自社で実施してきた研修をすべて洗い出してみましょう。洗い出したものを種類別に分けてテーマまでわかるようにしておくと、これまで選んでいたコンテンツの傾向や、不足している内容、厚くしたい内容などが浮き彫りになるはずです。
内製化するコンテンツを見極める
内製化するコンテンツは、以下のような観点(一例)を参考に、見極めていきましょう。
- 作業負荷(内製化の実現に労力がかかりすぎると感じられたら外部へ)
- コスト(低コストで実施できるもの、ただし対パフォーマンスも重視)
- 講師の育成度(社員が教えられるレベルかどうか)
- 独自性の有無(ビジョンやミッションなど自社独自のコンテンツになる場合は内製化)
- 専門性の有無(ノウハウや知見、技術が自社だけのものであれば内製化)
まとめ
内製化によって得られるメリットは大きく、実施の仕方によっては企業を大きく成長させるきっかけになります。しかしこれまで内製化を経験したことのない企業にとってはハードルが高く感じられることも事実です。もし内製化に興味はあるものの何から手をつけていいかわからない、内製化についてもっと詳細を知りたいという場合は、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社ソフィア
最高人事責任者、エグゼクティブラーニングファシリテーター
平井 豊康
企業内研修をコアにした学習デザインと実践を通じて、最適な学習経験の実現を目指しています。社内報コンサルティングの経験から、メディアコミュニケーションを通じた動機付けや行動変容の手法も活用しています。
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