2020.11.17
従業員エンゲージメントを高める要素を紹介
目次
従業員エンゲージメントは従業員満足度と混同されがちですが、異なるものです。日本企業は世界各国と比較してこの従業員エンゲージメントが低く、そのために引き起こされる問題も多いため、これからの企業経営において従業員エンゲージメントを高める取り組みは不可欠です。
本記事では、従業員エンゲージメントの概説と、従業員エンゲージメントを高める要素について紹介します。
従業員エンゲージメントとは
「エンゲージメント(engagement)」は「関与」や「関わり」という意味を持つ英単語ですが、従業員エンゲージメントの文脈では会社と社員との関わりを指します。具体的には、企業と従業員が相互理解を深めながら、従業員が企業に対して「愛着を持っている状態」と解釈します。
従業員エンゲージメントを高めるメリット
従業員エンゲージメントを高めることで従業員の中に「企業のために〜しよう(したい)」というプラスの意識が働き、企業にとっては以下に挙げる多くのメリットが生じます。
離職率の低下
所属している組織に愛着を持つようになると、今いるところにこれからも所属していたいという欲求が強まり、組織を離れにくくなります。企業においては、会社を離れること、すなわち「離職率」の低下につながるわけです。
生産性の向上
従業員エンゲージメントが高まることで、会社への愛着から従業員の中に「会社のために〜したい」という自発的な行動が生まれるようになります。企業の成長を従業員が自分ごととして捉えるようになり、その実現に率先して貢献しようと努めるようになることで、結果として生産性が向上するのです。
顧客満足度の向上
会社に愛着を持つようになると、自社の製品やサービスに対しても思い入れが強くなり、自社の製品やサービスの提供を通して顧客に満足してもらいたいと社員一人ひとりが感じるようになります。先に挙げた自発的な行動と相まって、顧客を満足させるためにお客様対応や接客の品質が高まるほか、商品企画やブランドの体現といった部分にもよい影響が生まれるでしょう。結果として顧客満足度の向上に大きく寄与することとなります。
従業員エンゲージメントを低下させる要因
世論調査などを手がける米ギャラップ社が世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント調査によると、日本企業には「熱意あふれる社員(従業員エンゲージメントの高い社員)」が6%しか存在しないことがわかっています。逆に考えれば、社員の94%は従業員エンゲージメントが低く、日本におけるほとんどの企業がエンゲージメント低下の状態に陥っているということにほかなりません。残念なことですが、決して他人事ではないのです。
またこれは日本企業固有の特徴でもあります。熱意あふれる社員の割合は米国の32%と比べると26%も低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスでした。グローバル化が進む企業競争においては致命的だといえるでしょう。
ただし、海外の雇用環境は日本と大きく異なり、アメリカでは「任意に基づく雇用」(Employment at-will)という規則があります。これは雇用者と被雇用者のどちらも、いついかなる理由でも、たとえ理由がなくても自由に雇用契約を解除できるというものです。
また中国では、10年の勤続または3回以上の契約更新が行われた場合に有期雇用契約から期間の定めのない雇用契約となり、日本のように採用時から無期雇用ということはありません。被雇用者にとっては日本より雇用環境がずっとシビアであるため、こうしたエンゲージメント調査の結果に日本企業とは異なるバイアスがかかり、否定的な意見が表出しにくくなっている可能性もあることを補足しておきます。
では、どんな要因が従業員エンゲージメントを低下させるのでしょうか。代表的な4つの要因を解説します。
適切な労働環境を用意できていない
従業員は会社に対して「働きやすさ」、すなわち適切な労働環境を求めます。この労働環境を用意できていないと従業員の中に不満足が生じ、従業員エンゲージメントが低下します。働きやすさを構成する要素はさまざまなので、しっかりと状況を把握しないとリスクを見過ごす可能性があるため要注意です。
従業員を成長させるための教育制度がない
終身雇用制度が事実上終焉を迎え、従業員は「ぶらさがり人材になることは危険である」と認識するようになっています。企業にとってはプラスに働くこともある反面、従業員がよりよい環境を求めることで人材の流動化が進みました。この変化に伴って従業員は自分を成長させないと市場価値がなくなることにも気づきはじめており、スキルを伸ばせない環境を早々に見限るようになってきているのです。企業における教育制度の不整備も、従業員が離職する要因の一部でしょう。
従業員の意見が経営に届かない
企業経営の方針に従業員の意見が反映されない状態が続くと、会社と従業員との間の信頼関係が崩れ、意見や認識の不一致が生じやすくなります。従業員にとって、自分たちの意見が反映された経営の意思決定は受け入れやすいものです。しかし、声を上げても経営からの反応がなく、従業員が「無視された」と認識している状態で経営の意思決定が行われれば、「経営は自分たちのことを見ていない」という不満が生じます。その結果として、従業員エンゲージメントの低下につながるのです。
属人的な評価制度により公平な評価がされない
古い体質の企業でしばしば問題になることですが、人事評価が公平でなく属人的で、正当な評価を受けられていないと従業員が感じると、当然のことながら従業員エンゲージメントは著しく低下します。双方とも納得のいく評価制度を設けることが不可欠といえるでしょう。
従業員エンゲージメントを高めることの重要性
人材の流動化や、雇用形態の多様化により、企業は人を柔軟に入れ替えられるようになりました。近年、経済界のリーダーが終身雇用制度の限界に言及するようになり、あらかじめ定められた職務に人を割り当てる「ジョブ型」の人材採用へと切り替える大手企業も増えつつあります。
しかし、この風潮は企業にとってリスクでもあります。社員が会社を移ることが珍しくなくなった結果、人材はよりよい環境、例えば賃金が高かったり、組織風土が良かったり、付加価値の高い職務経験を得られたり、そのような企業へとすぐに移動してしまうようになります。
このような現状から、これまでの「社員が会社にどんな価値をもたらすか」という視点ではなく、「会社は社員にどんな価値をもたらすか」、すなわち「EVP(Employee Value Proposition)」の視点が必要になっています。この価値が提供できなければ、人材は自社を選ぶこともなく、ましてやエンゲージメントなどが生まれるはずもありません。そのため、EVPの視点で社員との関係を再考し、エンゲージメントを高める取り組みを行うことが、流動化・多様化する市場で人材をつなぎ止める有効な手段となりえます。
従業員エンゲージメントを高める要素は、「従業員エンゲージメントを高めるメリット」と相関関係にあります。例えば、従業員エンゲージメントが高いと離職率の低下につながることは解説したとおりですが、もとより離職率が低い企業であれば、おのずと従業員エンゲージメントが高くなることも考えられるでしょう。従業員エンゲージメントを高める要素は多種多様であり、また相互に影響を及ぼし合います。
まとめ
従業員エンゲージメントは似たような概念である従業員満足度と比較すると可視化しにくいことから、日本企業ではあまり注目されることなく、世界でもワーストという現状があります。激動する社会の中で生き残るために、それぞれの企業で人材採用や育成、配置などの見直し、変革に向けて動いている状況かと思いますが、従業員エンゲージメントも決して見過ごしてはならない要素です。
先述のとおり、日本企業は海外企業と比較して、従業員エンゲージメントが低いと言われています。経営層やマネジメント層、管理部門の方は、自社はこの状態に該当しないと楽観視することなく、現状をしっかりと見極めましょう。どうやって従業員エンゲージメントを測定するかわからない、従業員エンゲージメントが低かったとして打つべき施策がわからない、従業員エンゲージメントに関してもっと詳しい情報がほしいということであれば、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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