DX(デジタルトランスフォーメーション)成功の鍵を握る人材とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単に業務プロセスのデジタル化を意味するものではありません。DXとは、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、業務や組織、そして企業文化、風土までも変えて、企業の競争上の優位性を確立することを意味します。しかし、DXの定義は曖昧な部分もあり、何から着手すればDXを推進できるのかがわからず困惑している企業も多いようです。
そこで本記事では、DX成功の鍵を握る要素から「人材」に焦点を当てて解説していきます。

DXを推進する鍵となる人材

「IT部門の社員であればDXを推進できるだろう」と思われがちですが、必要なスキルやマインドセットはそれだけでは足りません。DX推進のためには、「DX人材」と呼ばれる、これまで採用や育成をしてこなかった新しい人材の存在が不可欠です。

これまでの企業のDXの取り組み

企業におけるこれまでのDXの多くは、業務効率化や生産性向上を中心に推し進められてきました。それらは業務プロセスに組み込むことで成果が見えやすく、日本企業にとってはこれまでも得意としてきたことです。
一方本来のDXでは、技術革新の激しい時代を競争優位を確立するためには、組織やビジネスモデル自体を変革しデジタル化し常に変わり続けられる体制を作る、常時変化することが求められているのではないでしょうか

2025年に向けてDX人材はますます不足していく

2020年初頭の新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大を機に、多くの企業が働き方を「テレワーク」、すなわち「業務のデジタル化」へと移行しました。このことから、DXの必要性が眼前に迫っていることを多くの経営層が痛感されたことでしょう。しかしDXはこうした有事への一時的な対策でなく、激動する社会に適応するため、継続して行っていくべきものなのです。

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」において提言された「2025年の崖」からも、DX推進の重要性を知ることができます。これは、複雑化・ブラックボックス化した企業のレガシーシステムがこのまま刷新されない場合、2025年以降、年間で現在の3倍である最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるというものです。
そのため、これからのDXはコロナ禍の対応だけでなく、2025年の崖への対策として、国を挙げて加速度的に動き出すことになるでしょう。

情報処理推進機構が公開している「IT人材白書2020」によると、従業員が301名以上のIT企業では、IT人材の「量」と「質」ともに不足している状況にあることがわかっています。これは、企業のビジネス領域の拡大によってIT人材を必要とする機会が増えていることが要因です。そしてこれは、日本企業のDX推進を阻む要因であるともいえます。DX推進はIT人材が中心となって牽引する必要があるのです。

日本企業はDX推進に着手したくても、DX推進の全体工程を管理する人材や、ビジネス案を実際に形にする人材、すなわち「DX人材」を確保できていません。デジタル技術は日進月歩で進化しているにもかかわらず、それを活用し、ビジネスモデルを描き、具体化し、現場に実装できる人材がいないわけです。これではDXが遅々として進まないのも当然です。したがって、DXを推進するためには何よりDX人材の確保が急務であるといえるでしょう。これには採用や育成など、いくつかの手段が考えられます。

DX人材の種類

DX人材はIT技術に長けた人材であることは先ほど述べましたが、実際はそれだけでなく、DX推進において担当する役割によって必要なスキルセットが異なります。なお、DX推進は単独で行うものではなく、以下の役割を担うメンバーがチームとなって行う点も覚えておいてください。

プロデューサー

プロデューサーはDX推進を主導、指揮し、ビジネスの企画・設計、他部署との調整、外部との折衝を行います。

プロダクトマネージャー

プロダクトマネージャーは各プロダクトの生産・開発・マーケティングの管理を行い、プロダクトの責任を負います。

データエンジニア/データサイエンティスト

DXによって蓄積されるビッグデータを解析する、言わば「データの専門家」です。プログラミング言語(Ruby、Pythonなど)のスキルが必要となります。

UXデザイナー

UX(User Experience)デザイナーは、デジタル化によって得た新たな着想を実際に利活用するため、あるいはデータを得るためのさまざまなタッチポイントを利用者が違和感なく使えるようにするため、プロダクトをユーザー中心に設計する役割を担います。わかりやすく言い換えると、DXというコンセプトによって生まれたアイディアや、DXを実現するためのプランが、利用者目線で使いやすいように設計することがUXデザイナーのミッションです。

エンジニア/プログラマー

DXの仕組みを開発する職種です。エンジニアおよびプログラマーといった既存のIT人材が中心となって構成されます。貴重な人材であり、非常に専門性の高い職種ですが、それゆえに他の職種に関する知識や理解が浅く、上手く連携が立ち行かない場合もあります。「DXとはどんなもので、なぜ自分がチームに参画し、何が果たすべきミッションなのか」をしっかりと伝える必要があります。

これらの人材がチームとなってDXを推進します。すべてのDX人材を確保することは非常に難しいですが、チームには誰一人として欠かすことができません。

DX人材に求められること

DX推進においては、IT技術に関するノウハウ以外にも求められる能力があります。これはマインドセットと呼んでも差し支えないでしょう。

課題発見能力

現状に満足することなく、未来のよりよい状態に向けて次に何をなすべきかという「打ち手」を見つけ出すための能力です。DX推進は既存の型からの脱却と進化であることを考えると、問題を探して原因を考え具体的に課題化できるスキルは必須です。

アイディア実行力

どんなに優れたアイディアでも、形にしなければ意味はありません。アイディアを出すことは多くの人にできますが、それを実行に移す力を持っている人は極めて少ないのです。DX推進にはこの実行力が常に求められます。自律型で、かつ社内において周りを巻き込むことの出来る影響力を持つ人材であること、もしくはその活動を阻害しない社内の風土が重要です。

戦略的思考

戦略的思考はビジネスシーンでよく使われる概念ですが、簡単に言えば「ゴールに向かってどのような道のりを描くか」です。ゴールを設定するための先見の明と、ゴールへ至るまでの計画の立案が必要となってくるでしょう。これは言い換えると、「目的(なんのために)」と「手段(どうやって)」を明確にすることともいえます。

改善思考

課題発見能力にも似ていますが、こちらは「現状を少しでもよいものへと改善していこう」という「意識」や「志向性」を指します。決して今の状態に満足せず、「もっといい方法があるのではないか」「もっといいものができるのではないか」とベストを尽くそうとする姿勢がDX推進には不可欠です。

これら以外に、各々の専門スキルに関するリテラシーが必要となります。DX推進は自社だけで行うものではなく、ときには外部のスペシャリストに協力を仰ぐこともあるはずです。その際に「共通言語」や「共通認識」となる最低限の知識をしっかりと持っておかなければ、卓越した技術を持った外部の人材を十分に生かすことができません。なおこれはチームメンバー同士のコミュニケーションにおいても同様であり、それぞれが行う業務内容が理解ができる程度には知見を持っておきましょう。


DX人材を手に入れるには

DX人材は現在引く手あまたのハイパフォーマーであり、さらに昨今の慢性的な人材不足という現状も相まって、企業におけるDX人材を獲得の難易度は増しています。とはいえここで諦めてしまうと自社のDX推進は一向に進まないため、手を尽くしてDX人材を確保する必要があります。

採用するのか、育てるのか?

DX人材のような高度デジタル人材を採用するために、新たな人事・報酬制度を設けた企業も存在します。株式会社NTTデータは「Advanced Professional(ADP)制度」という取り組みを開始し、専門性を有した人材を市場価値に応じた報酬で採用することで、人材確保を強化しています。
ADP制度で採用した人材の報酬は「役割給」と「業績給」からなり、業績が上げられれば上限なく報酬は上がり、逆に業績が低下すると報酬も下がるというものです。また同社によれば、ADP制度で採用された人材は年収2,000万円以上を超える可能性もあるといいます。
ここで着目すべきは制度自体ではありません。相応の報酬を提示して採用を行う際に、自社の求める人物像をいかに明確化し、その条件にマッチした人材を採用できるかという点です。採用担当者が具体的なビジョン描き、それを求職者に伝えることができなければ、求職者も自分が求められている人材なのか、入社後に活躍できるかどうか、報酬額が妥当なのかどうかを見極めることができません。もし、入社後にミスマッチが発覚すればお互いにとって不幸ですし、その後の採用活動にも悪影響が生まれるでしょう。

一方で、厳しい条件下で採用活動を行うのではなく、DX人材を社内で育成しようとする考え方もあります。この場合に必要な要素は「スキル」と「場所」の提供です。場所とはつまり、組織上のポジションや仕事の機会を含みますが、そもそも具体的な事業やビジネスプランが無い限り、採用した人材を持て余してしまいます。またスキルに関しても、そもそもDX人材が社内にいない状況では、DX人材を育成するためのノウハウは確立しようがないため、スキルを社内で提供することは困難でしょう。
一方で、自社に必要なDX人材のスキルが未知でありながらも、ITリテラシーを持った自社の人材に対して適切に場所と機会を提供し、スキルの習得をサポートしている企業も存在します。マインドセットさえしっかりと持っていれば、スキルは外部の講座や教材といったリソースを活用して得ることができる、という考え方もあるのです。

本当に変えるべきは組織文化

育成・採用、どちらの場合においても、欠かすことができないのは、DX推進に不可欠なマインドセットを醸成する組織文化・組織風土です。優秀な人材は、自分がその組織で十分に活躍し、結果を残せるかを重視します。人間関係や制度、組織風土といった、組織を構成するさまざまな要素が、彼らがその会社で働き続けるかどうかを判断する材料となるでしょう。
たとえば、売上の柱を支える祖業・花形事業は容易に予算を確保できる一方で、すぐに売上にはつながらない新部門には風当たりが強い会社。変化に対する抵抗が大きく、管理職の多くは現状維持のために努力を惜しまない会社。そのような組織ならDX人材は定着しませんし、DXの取り組みも進ません。DX推進のためにはまず組織文化や組織風土を変えていく必要があり、多くの企業が実際に、DXを推進する最初の足がかりとして組織づくりに着手しています。

高度IT人材の採用や新卒からの人材育成も重要ですが、それ以上に、DX推進をなんとしても実現しようとする強固な組織づくりが最初に行われるべきです。DX推進を困難にさせている要因は、人材確保の問題だけではありません。最適な人材を採用・育成できる土壌が組織に備わっているかどうか、そしてその人材がここで働きたいと思える、自分が活躍できると思える場であるかどうかも重要なのです。

まとめ

人事制度を変え、卓越したスキルを持った人材を採用しても、組織文化が変わらなければ彼らが能力を発揮することはできません。これは育成の場を設けた場合も同様で、組織文化が変わらなければ人が育つことはありません。
自社でDXを推進したいなら、全社を挙げてDX推進を行おうという、気運の高まった組織づくりができているかどうかをまず考えてみてください。ソフィアはこうした組織づくりの支援を行っています。DX推進の際はぜひお問い合わせください。

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