データドリブンの概要と成功のポイントと事例

主にマーケティング分野で使われていた「データドリブン」という言葉が、最近は経営の文脈でも使われるようになりました。2018年ごろより盛んになった企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が近年いっそう進んだことや、クラウドやデータ分析技術の進化によって、以前は扱いが困難だった膨大で複雑なビッグデータも分析・活用できるようになってきました。そして、経営の領域においても、これまで蓄積してきたデータを企業活動に生かそうという動きが広がっています。

本記事ではこのデータドリブンについて概説するとともに、実施する際の成功のポイント、実際にデータドリブンに成功した企業事例を解説します。

データドリブンとは?

データドリブン(Data Driven)は、もともとは計算機科学分野から生まれた言葉です。収集したデータを分析してアクションを起こす際、ひとつのデータ分析で終了することなく得られた結果をもとにさらにデータ分析を重ね、そのデータから次のアクションを起こすことを指します。

データドリブンの定義

データドリブンとは、「収集したデータを分析して意思決定や企画立案に役立てるための方法論」と定義されています。ビジネスにおいては、データを頻繁に扱うマーケティング分野で「データドリブンマーケティング」という概念で扱われてきましたが、やがて経営分野においてもデータドリブンが注目されるようになりました。

経営でもデータの分析と活用はとても重要です。データを利用することで意思決定に根拠が生まれるため、重要な場面で選択を誤るリスクが低減します。また、データの活用によって他者の説得を有利に進めることができ、施策実施後には効果測定を行うことも可能です。

最近ではこのデータドリブンが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の分野でも注目されるようになってきました。

データドリブンが注目される背景

日本でも企業のDX(デジタルフォーメーション)推進が徐々に進み始め、DX推進によるビジネスのゴールを達成するために欠かせない手段として「データドリブン経営」が注目を集めています。

デジタル技術の普及により、企業はユーザーや顧客の情報をより細部まで獲得できるようになりました。これは、年齢や性別などのデモグラフィックなデータだけでなく、嗜好や価値観などのサイコグラフィックなものまで含みます。さらに分析手法も高度になり、仮説の検証やエビデンスの提示だけでなく、新たな発見をする目的でもデータ分析が行われるようになり、データドリブンが注目されるようになったわけです。

データドリブンのメリット・デメリット

データドリブンのメリットとして挙げられるのは、客観的な判断が可能となる点です。データを分析することで、感情や主観に左右されず、客観的な視点から問題を把握し、効果的な戦略を立てることができます。さらに、データに基づいた意思決定は、リスクを最小限に抑えられるため、組織の成長や競争力強化につながります。

一方、データドリブンのデメリットとしては、データの質や信頼性に関する課題が挙げられます。時には古いデータや正確でないデータを元に意思決定を行い、誤った方向に進んでしまうリスクがあります。また、データの頼りすぎによって、クリエイティビティや直感を排除してしまう可能性もあります。データはあくまで過去の情報を示すものであり、将来を予測するためには他の要素も考慮する必要があります。

データドリブンのメリットとデメリットを理解し、適切に活用することが重要です。データを裏付けとした意思決定は効果的であり、組織の成長に貢献する一方、データを信じ込み盲目的にならないよう、状況に応じて柔軟に対応することも大切です。

データドリブンは組織に何をもたらすのか

データドリブンを行うことによって、組織に対して具体的にどのような効果をもたらすのか、詳しく見ていきます。

可視化できるものと可視化できないものを明確にできる

データドリブンがいくら有用だとはいえ、従業員のモチベーションやエンゲージメントなど、データにならないものの方が遥かに多いのが現実です。エンゲージメント調査をしたときのデータは取れますが、そのアンケート結果はそのときの社員の認識であるため、明日には変わる可能性もあります。また、個々人の会議やブレストでの思い付きや、その場でひらめいたアイディアに対して再現性が感じられないとなる理由も、その過程のデータがないからではないでしょうか。

実際のところ、全てをデータ化することは不可能です。ではデータの可視化は無意味なのか、というとそうではありません。企業経営において、「可視化(コントロール)できるもの」と、「可視化(コントロール)できないもの」があり、それらをより多く洗い出し、そこを足場に「可視化(コントロール)できないもの」があることを自覚することが重要です。そのうえで「可視化(コントロール)できるもの」を明確にし、増やしてく必要があります。

そのためには、物事を切り分けて考える技術が必要となります。ロジカルシンキングにおいて重要な考え方の一つであるMECEのように、「わけて」「並べて」みることから、それをもとに比較し、取捨選択し、組合せて意味を見出していく考え方は、データドリブンにとって有効な手法となるでしょう。

情報の非対称性をなくし徹底した透明性を確保できる

デジタルや技術が発展すればするほど情報は増大します。増大した情報に対して、人それぞれ独自の解釈が人の分存在するため、コミュニケーションおよびビジネスは複雑化しています。

情報の非対称性とは、特定の関係者が他の関係者よりも多くの情報を持っている状態を指します。この状態が組織内で存在すると、さまざまな問題が生じる可能性があります。たとえば、重要な情報が経営側から従業員に伝わらないと、従業員は会社の意図や方向性がわからないまま不安や不信感を抱かせることになります。また、情報を持っている側が持っていない側に対して優位に立つことで、不公平な状況につながります。

そのうえ、解釈以前の情報やデータ自体が間違っているともあれば、コミュニケーションやビジネスが複雑になるどころか、不正や疑義による不信感が蔓延することになってしまいます。さらにテレワークなどを導入していれば、ミスコミュニケーションにつながる可能性も増し、信頼関係を破壊する恐れもでてきます。不信感は、組織全体のモラルや業績に悪影響を及ぼします。従業員が経営側に対する信頼を失ってしまうと、組織内のコミュニケーションが悪化し、協力体制が乱れる可能性があります。

近年、消費者やステークホルダーからの信頼を獲得するために、企業が情報を正確かつオープンな提供が求められていることから、トランスペアレンシー(情報の透明性)が重要視されています。透明性の高い企業は、外部からの信頼を得やすくなり、顧客や投資家との関係を強化でき、内部でも社員が会社の目標や進捗状況を把握しやすくなるため、組織チーム全体の一体感やモチベーションの向上につながります。

そこで、データドリブンを行い、データにおける透明性を徹底して確保することで、コミュニケーションや業務は円滑化し、組織全体の効率や信頼性が向上するでしょう。

データドリブンによって心理安全性が向上する

データドリブンによる意思決定や評価は、客観的なデータに基づくため個人的な偏見や主観が排除され、透明性が確保されます。この透明性により、従業員は評価や意思決定の基準が正当だという納得感や安心感を醸成します。そのため、メンバーが自由に意見を述べたり、リスクを取って新しい挑戦をする際に重要な「心理的安全性」が高まります。

心理的安全性は、個人がリスクを恐れずに意見を述べたりアイデアを共有したりできる環境を指します。職場やチームが抱える課題の規模や、取り組む課題がリスキーな場合、チームや職場のメンバー同士が異なる考え方や衝突を経験することとなるでしょう。異なる意見や葛藤はリスクを伴い、それゆえにより高度な心理的安全性を保つことが不可欠です。

そのため、データに基づいた運営だと、意見の相違やフィードバックが個人攻撃ではなく、業務改善に向けた建設的な議論として受け止められやすくなります。あらゆる情報が全社員に共有されている企業は、心理的安全性の高い企業といえるでしょう。

データによって成功をもたらした事例

最近、コンストラクタルという考え方がGAFAMのリーダーたちによって提唱されるようになりました。コンストラクタルとは、「川が海にそそぐとき、最も円滑に流れるコースを取るように、企業の中の情報も最も円滑に流れていくことが望ましい」という考え方です。この考え方では、情報の円滑さを阻害するものは、企業にとっても大きな害となり、うまくいかない職場は、情報が滞っているということに行きつきます。

また、社員のプライドや好き嫌い、嫉妬などは、コンストラクタルにおいて障害になります。それらの余計な感情は、情報の流れを妨げ企業業績の悪化を招いてしまうかもしれません。

コンストラクタルを取り入れる有効な方法の一つとしてあげられるのが、「Excel経営」です。それを行っている企業が「ワークマン」です。全社員がExcelを使い、企業が置かれている状態、そして、自分の所属している店舗の状態を数字で把握しています。数値化されたデータを出されると、個人の好き嫌いや忖度が入る余地はなくなります。また、問題点や改善点が一目瞭然となり、取るべき対策がはっきり見えてくるでしょう。

数字は忖度をする余地がないため、上司や他の社員の気持ちを考える必要がなくなり、心理的安全性の向上にもつながります。「隠す必要がない」「全社員が同じデータを共有している」「土台が数字である」といったメリットから、ワークマンは透明性が高く、顧客ニーズに対する素早い対応を可能とする企業となったのです。

データドリブンを行う基本のプロセス

データドリブンは、以下に挙げる5つの要素によって構成されます。

データ活用の目的設定・計画

まずは着実に、「売上増加」「ブランド力向上」「リピーター率の向上」など目的を設定したうえでデータ活用を始めましょう。膨大なデータを集めることで、本当に価値のある偶然性の高い発見が浮かび上がる状態が理想ですが、そこに至るためには計画的にデータを取得し、基準となる傾向値や、会社の目指す指標に関連する要素(売上であれば、顧客数*顧客単価、それに影響を与える時期や時系列など)を網羅的に把握しなければなりません。

データを収集する

意思決定や企画に必要な自社内のデータを、データサーバーを利用して一箇所に蓄積します。データは業務管理システムやIoTツール、Webサーバーなどから取得し、膨大な容量になることからビッグデータとしてクラウド上に保存されます。もしデータが分散していて収集が困難な場合は、データ管理ツールを導入することで収集・蓄積がスムーズに進むでしょう。

集めるべきデータがない場合は、データ取得をするためのツール導入から始めます。売上であればPOS、顧客であればCRM、Webあればアクセス解析など、データの種類によってツールは多種多様に存在します。自社で取得したいデータに合わせてツールを検討してみてください。

データを見える化する

ここでの見える化とは、収集・蓄積したデータが何を示すものなのかを客観的に把握できるようにするという意味です。データの可視化を行っておくことで、加工や分析の効率が向上するとともに、組織内での問題と解決策の共通認識を生むことにつながります。

BIツールやDMPなどを導入すると見える化が円滑に進みます。共通の意思決定基盤として、組織内の誰もがアクセスできるデータプラットフォームを設けましょう。また、ロジックツリーというフレームワークを活用することも効果的です。問題の構造を可視化する手法として最も多用される図解のひとつです。事象や問題を、分類し小分けにわけて、かつ階層で並べることで全体のつながりを把握することができます。

データを分析する

収集したビッグデータは量的かつ構造的な理由から以前は分析が困難でしたが、デジタル技術の進化によって高度なアルゴリズムを用いた分析ができるようになりました。分析されたビッグデータは、数字で示される定量的な結果や、図やグラフといった視覚化しやすい結果として加工されます。

また、市場で予期せぬことの頻発や、変化のスピードが早いビジネスにおいては、ロジカルシンキングの手法である帰納的推論が役立ちます。帰納法は、1つ1つの事象やデータを集め、そこから法則や仮説を導き出します。たとえば、アンケートやインタビュー、売り場の観察から、プロトタイプを作りテストマーケティングを重ねることでデータを抽出し分析していきます。あるいは競合他社を徹底的に分析して自社との差異を確認し分析します。このような地道なデータ分析によって、市場の流れに乗り遅れることなくデータ活用につなげることができるのです。

データを活用する

分析したデータをもとに意思決定を行い、プランを策定し実行、さらにそこから得られた結果を活用して改善を繰り返します。これらのステップはいわゆる「PDCA」サイクルと同様です。

また、意思決定やプラン策定には、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングを組合せて使うことで、質が高まります。まず、ロジカルシンキングで意思決定の枠組みを作ります。筋が通っており説明責任を果たせるといった合理的な判断ができる方法を決めていきます。その判断に必要なデータを徹底的にクリティカルシンキングで吟味し、さらに意思決定の枠組みが妥当かどうかを検証することによって精度があがります。データ活用にロジカルシンキング・クリティカルシンキングを取り入れることで、経営や実務におけるデータドリブンの効果を発揮させることが期待できます。

データドリブンの実現に活用できるツール

ビッグデータやデータマイニング技術の進化により、データドリブンの考え方がますますビジネスに普及しています。収集したデータを分析し、ビジネス上の意思決定や課題解決に活用することが重要視されています。以下では、データドリブンの実現に不可欠なツールに焦点を当て、その重要性について探究します。データの力を最大限に引き出すためには、適切なツールの導入が不可欠です。さまざまなツールの機能や活用方法について詳細に解説し、データドリブン戦略の成功に向けた手助けを行います。

DMP(データマネジメントプラットフォーム)

DMPは、複数のデータソースから収集した大量のデータを一元管理し、分析・活用するためのプラットフォームです。主な機能としては、データの収集、統合、分析、セグメンテーション、ターゲティングなどが挙げられます。 DMPを活用することで、企業は顧客データやマーケティングデータなど、さまざまな情報を統合し、データ駆動の意思決定を行うことが可能となります。

DMPを活用することで、顧客の購買行動や嗜好を分析し、パーソナライズされた情報提供やターゲティング広告の展開を行うことができます。 さらに、データセキュリティやプライバシーの保護にも配慮したデータ管理を行うことができるため、法規制や倫理的な観点からも重要視されています。

データを効果的に活用でき、ビジネスの成長や競争力強化につながるため、データドリブンの戦略の一環として使える重要なツールです。今後もその重要性がますます高まることが予想されます。

MA(マーケティングオートメーション)

MA(マーケティングオートメーション)は、マーケティング活動を自動化し、データを基にターゲット顧客に対して効果的なコミュニケーションを展開するための技術です。具体的には、CRM(顧客関係管理)システムと連携してセグメンテーションやパーソナライゼーションを行い、効果的な情報提供やマーケティング施策を展開することが可能です。

また、Eメールマーケティング、ソーシャルメディア広告、ウェブサイト分析など、複数のマーケティングチャネルを統合して活用することができます。これにより、顧客の行動履歴や反応を追跡し、リアルタイムでデータに基づいた施策を展開することが可能となります。さらに、A/BテストやROIの最適化など、マーケティング効果を可視化し、改善するための機能も備えています。

Web解析ツール

これらのツールはウェブサイトやアプリケーションのトラフィックやユーザー行動を分析し、貴重なデータを提供します。代表的なWeb解析ツールにはGoogle AnalyticsやAdobe Analyticsなどがあります。これらのツールを使用することで、以下のような情報を収集・分析することが可能です。

まず、ウェブサイトへの訪問者数やページビュー数などの基本的なトラフィック情報を把握できます。さらに、訪問者の地域やデバイス、流入経路(検索エンジン、ソーシャルメディアなど)に関する情報も取得できます。 また、Web解析ツールを活用することで、ユーザーの行動パターンやコンバージョン率などの詳細なデータを把握することが可能です。

これにより、ユーザーエクスペリエンスの改善やマーケティング施策の最適化に活用することができます。さらに、A/Bテストや多変量テストを通じて効果的な施策の検証も行えます。Web解析ツールはデータドリブンの取り組みにおいて欠かせない存在であり、正確な分析と意思決定のために重要な役割を果たしています。

SFA(セールスフォースオートメーション)

SFA(セールスフォースオートメーション)は、営業活動の効率化や顧客管理の向上を目的としたソリューションです。主な機能としては、顧客情報の一元管理、営業プロセスの自動化、売上予測の支援、レポーティング機能の提供などが挙げられます。SFAを活用することで、営業チームはより効果的に営業活動を行い、顧客との関係を強化することが可能となります。

その特徴としてあげられるのは、データの中心化です。顧客情報や営業データが一元管理されることで、情報の把握や共有がスムーズに行えます。自動化された営業プロセスにより、タスクの簡素化や効率化が図られ、営業担当者は販売活動に集中し、生産性を向上させることができます。

SFAは営業活動における重要なツールとして多くの企業が導入しています。営業現場での情報共有や確認、タスク管理の効率化、売上予測の精度向上など、さまざまなメリットが期待され、顧客との関係構築や管理にも貢献できるでしょう。

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)

CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)は、顧客と企業との関係を強化し、顧客満足度を向上させるためのツールです。顧客情報を一元管理し、営業活動やマーケティング戦略を最適化するために利用されます。顧客の購買履歴や行動履歴、コンタクト履歴などの情報を収集・分析し、個別の顧客に合わせたサービス提供やマーケティング施策を展開しています。そのため、顧客との関係を強化し、リピーターの増加や顧客満足度向上につながります。

また、企業内の情報共有を促進し、部門間の連携を強化する効果もあります。営業部門、マーケティング部門、カスタマーサポート部門などが持つ顧客情報が一元化されることで、企業全体で顧客に対するホスピタリティを向上させることが可能です。 さらに、顧客の嗜好やニーズを把握し、個別の顧客に対してターゲテッドなアプローチを行うためのデータ分析を支援します。顧客の行動予測やクロスセル・アップセルの機会を特定し、収益の最大化を図ることができます。

CDP(カスタマーデータプラットフォーム)

CDP(カスタマーデータプラットフォーム)は、顧客の行動データや属性データ、購買履歴などの複数のデータソースを統合し、一元管理するプラットフォームとして機能します。
企業は顧客に関する包括的な情報を把握し、個別にターゲティングしたり、パーソナライズされたマーケティング施策を展開したりすることが可能となります。CDPは、マーケティングや顧客サービス、セールス活動など、顧客との関わりを強化するために幅広く活用されています。また、リアルタイムでのデータ収集・分析・活用も可能であり、迅速な意思決定を支援するのに役立ちます。

BI(ビジネスインテリジェンス)ツール

BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、企業や組織が蓄積したデータを可視化し、分析することで、ビジネス上の意思決定や戦略策定に役立てることができます。大量のデータを視覚的に理解しやすくするためのダッシュボードやレポート、分析ツールを提供します。

主なBIツールには、TableauやPower BI、QlikView、Google Data Studioなどがあります。これらのツールを使用することで、ユーザーはデータを簡単に統合し、洞察を得ることができます。さらに、データの可視化やダッシュボードの作成、レポートの自動化などの機能を持ち、データドリブンの文化を組織内に促進するのに役立ちます。BIツールの活用により、データ分析のプロセスが迅速化し、より効果的な意思決定が可能となります。

データドリブンを成功させるポイント

データドリブンは単なるデータの一時的な活用ではありません。連続性を持って取り組み、データを活用した経営を組織に根付かせることが鍵となります。ここからは、データドリブンを成功させるポイントを3つに分けて解説します。

データドリブンによるメリットを浸透させること

まずは、データドリブン経営の重要性やメリットは最初にしっかりと全社に共有し、浸透させ、納得感を得ることが不可欠です。これまで部署単位で管理していたデータを経営で活用するとなると、データを見られることに不都合を感じる社員もいるため、合意なしに実行すれば現場の反発を招きかねません。データの扱いについては、その目的や管理体制について企業に説明責任があることを理解しておいてください。

データを根拠として発言をしたり課題を発見したり意思決定ができたりするようになることは、企業が事業の競争力を高められるようになるだけでなく、ひとりひとりの社員にとってもビジネスパーソンとしての大きな成長につながります。データドリブンを行うことで、企業や社員がデータをもとにアクションを起こす体質に生まれ変わっていくのです。これは組織文化や組織風土の変革につながるものであり、企業と社員の双方に大きなメリットをもたらします。

データに強い人材を確保すること

データドリブンにとって必要不可欠な人材は、「データアナリスト」や「データサイエンティスト」といったいわば「データの専門家」です。データアナリストとは、仮説検証といった「現状分析」を重視し、課題解決の手段を発見する「データ分析の専門家」を指します。一方でデータサイエンティストは、ビッグデータを分析してその結果をもとに「ビジネス視点での改善策を立案する専門家」であり、データアナリストに経営視点を加えて提言のできる人材を指します。

自社にとってどちらの人材が適しているかを見極めた上で確保しましょう(両方という手もあります)。なお、これらの職種でなくとも「データ分析に強い人材」を社内で育成するという選択肢もあります。

適切なツールを導入すること

データを見える化するためには、DMP、BIツールの導入を検討してみてください。前述でご説明した通り、DMP(Data Management Platform)とは、ビッグデータを一元管理、分析し、アクションプランを実現するためのプラットフォームサービスであり、BI(Business Intelligence)はビッグデータを集めて抽出・加工できるツールです。他にもたくさんのツールが登場しているので、比較検討してみましょう。

データドリブンを成功させた企業事例

最後に、データドリブンを成功させた企業事例を2つ取り上げて、その内容について紹介します。

USJ

「USJ」ことユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営元である合同会社ユー・エス・ジェイがデータドリブンを活用したマーケティングを行っています。
USJは当初、非常に伝統的なマーケティング手法により良い結果を出していました。具体的には、Webのような全量データではなく来場者を匿名でサンプリングして状況を把握し、リテンションよりマス・マーケティング、改善ではなく一発逆転と、ITを活用したデータドリブンとは真逆なマーケティングを行っていたそうです。しかし、当時台頭し始めていた“EC(インターネット販売)”分野出身の担当者は、そんな同社において長期的な視点でさらに効果的なマーケティングを実現すべく、「データドリブン」の考え方を浸透させ、先導してビジネス全体をひとつひとつ変革していきました。

「パークを訪れる顧客の全数データを手に入れる」ことが第一の目的となります。テーマパークにおけるマーケティングの難しいところは、WEBであれば顧客の属性を100%取得できるところ、当日、窓口でチケットを購入する来場者をはじめ、オフラインでのみ完結する利用者が多かったことです。それでもWEB予約の改善に取り組んだ結果、ECサイトでのチケット販売が占める割合は3年間で3倍に。また「スマートゲート」の導入をきっかけに、入場の導線でデータを確保しマーケティングに活用することができました。

このとき、「データドリブン」であることと、「データファースト(顧客セカンド)」とをはき違えないということがポイントでした。まずは顧客体験が向上し、その過程でデータが得られる、という姿勢を重視しながら、その後もパーク内での行動の可視化のため、センサーやビーコン、GPSを活用したサービスなどを展開していきました。

データドリブンマーケティングが経営層に受け入れられず、担当者が丸二日をかけて徹底的にヒアリングを行った結果、それ自体が啓蒙の役割を果たした、という副次的効果もありました。データドリブンを実現するために、さまざまな事業部門の協力は必要不可欠であったため、オペレーション部・飲食事業部・物販事業部などの決裁権者に対して部署ごとにデータ活用のメリットがあることを丁寧に説明して回り、納得してもらっています。

JTB

旅行会社として有名なJTBは、DMPを活用してデータから顧客の渡航目的や購買動機を発見し、そこで得た知見をもとに各種施策を実行するデータドリブンマーケティングを行っています。なお、同社ではデータドリブンを行うために専門部署である戦略組織「Data Science Central」を立ち上げています。

データドリブンの連続性を確保するために「3ヶ月毎に成果を出していく」というスタイルをとり、「統合データ基盤」「顧客分析」「マーケティングアクション」とチームを3つに分けて役割を分担しました。統合データ基盤チームがIDの統合を行い、顧客分析チームが得られたデータを分析し、そこでの知見をマーケティングアクションチームに渡して施策を打ち、その結果が統合データ基盤チームに戻ってくるという流れです。

また、顧客分析チームは統計解析を扱う「量的分析チーム」と、お客様の文脈を読み解く「質的分析チーム」に分かれています。統計解析だけでなく、データから経営目線・顧客目線でニーズや課題を考えられるチーム編成となっており、これがデータドリブンを成功させたポイントといえるでしょう。

まとめ

データドリブン経営の推進の鍵は連続性を持って組織内でデータを活用すること。そのためには、「データに基づいて経営する」「データに基づいて社員が発言し、課題を発見し、行動する」という企業風土の実現が必要です。しかし、現状ではそれができている企業は多くはありません。ソフィアでは企業風土改革を支援しています。データドリブンを実現したい企業様もお気軽にお問い合わせください。

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よくある質問
  • DXとは何ですか?
  • デジタルトランスフォーメーションとは、最先端のデジタルテクノロジーを使ってビジネスモデルや業務の在り方などを大きく変えることです。
    新技術を利用して既存の製品やサービスに付加価値をつける単純な「デジタル化」ではなく、社会の構造を根本から変えることを目指しているので、「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれています。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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