SDGコンパスとは?SDGs経営に欠かせない5ステップ

近年、持続可能性という概念が重視されるようになり、世界各国で環境保全や責任あるビジネスといったグローバルな課題への取り組みが強化されています。そのような状況の中、SDGsに貢献しながら企業活動を進めていきたいと考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。

SDGs経営をスムーズに始めるコツは、SDGコンパスの5つのステップに沿って取り組むことです。この記事ではSDGコンパスの概要、SDGs推進を成功に導くポイントなどを解説していきます。

SDGコンパスとは

SDGsという言葉は最近ではメディアなどでもよく取り上げられているので、耳にしたことがある人は多いでしょう。しかし、SDGコンパスという言葉にはあまりなじみがないかもしれません。

SDGコンパスとは、企業の経営戦略にSDGsを統合させるための指針です。SDGsに沿った経営を行うことが重要視されてきている現在、多くの企業がSDGsへの取り組みに関心を抱いていますが、経営に取り込む方法がわからないと悩んでいる企業も少なくないのではないでしょうか。

そんな企業にとって頼れる指針となるのが、SDGコンパスなのです。SDGコンパスに示された5つのステップをたどることで、SDGsに貢献した経営を始めるきっかけとなります。SDGs戦略の進捗を管理し貢献を可視化するために、SDGコンパスを活用してみましょう。

なぜ企業経営にSDGsが重要なのか

SDGコンパスの詳細を説明する前に、まずは企業経営にとってSDGsが重要とされる理由を解説します。

SDGsの概要

SDGs(持続可能な開発目標、Sutainable Development Goals)は、2030年までに達成すべき目標として2015年に国連サミットで採択された国際的な指標です。貧困や男女格差、環境汚染といった地球規模の様々な問題について、17のゴールと169のターゲットが設定されました。

誰一人取り残さないよりよい地球を目指して持続可能な社会を築くことをビジョンに多様な課題の解決を目指すSDGsは、世界中から注目されています。地球の限界を超えることなく持続的な成長を進めるための、国際社会共通の目標なのです。

企業がSDGsに取り組むべき理由

SDGsは国際機関や政府が主体となって取り組むものだと考えている人もいるかもしれませんが、そうではありません。地球規模の課題を解決するためには、行政やNPOなどの各種団体、企業、そして個人など、地球上のすべてのステークホルダーがそれぞれ役割を果たすことが求められるからです。

そのため、企業もSDGsに貢献することが期待されています。
SDGsの推進に貢献することで持続可能な社会の実現に寄与できるのはもちろんですが、企業がSDGsに取り組むことにはほかにもさまざまなメリットがあります。

例えば、企業価値の向上です。世界中の多くの人がSDGsに関心を持つ今、SDGsを重視する企業はそうでない企業よりも高い評価を得ることができます。反対に、持続可能性を無視したビジネスを続ける企業は、企業の評判を悪化させるリスクがあるといえます。

また、SDGsに沿ってビジネスモデルの転換を図ることは、実は企業利益が増大するチャンスでもあります。自然環境や地域社会、働く人々などに大きな負荷をかけて利益を得るような従来型のビジネスモデルは、すでに社会から許容されなくなってきています。一方で、環境や社会と親和性の高い新たなビジネスに転換できる企業は、これからの世の中を先導していくことになるでしょう。長期的にみると、SDGsへの貢献が企業の成長戦略にもなるのです。
現代社会の企業経営においては、SDGsを意識しながら新たなビジネスチャンスを創出することが求められています。

SDGs推進を阻む障壁

企業経営におけるSDGsの重要性についてはおわかりいただけたのではないでしょうか。しかし、企業が本格的にSDGsの推進をするうえではさまざまな課題があるのも事実です。どのような障壁があるのでしょうか。

まず第一に、SDGsを推進する上での社内コミュニケーションのあり方には注意が必要です。SDGsの推進には社内全体の理解が必要ですが、経営層と現場の従業員との間で円滑なコミュニケーションができていないことも多いようです。経営層がSDGsの対応方針を定めても、それが従業員に伝わっていなければ、企業全体で取り組んでいるとは言えません。SDGs活動を上辺だけのものにしないためには、社内できちんと対話を行い全社員の共感を生み出すことが大切です。

また、SDGsがCSR(企業の社会的責任)活動と混同されてしまい、取り組みが進まないこともあります。CSRは社会貢献活動に近い性質のものですが、SDGsは事業の一環としてビジネスモデルに組み込まれるべきものであり、SDGsに即した経営を進めるためにその理解は欠かせません。しかし、コミュニケーションや社内教育の不足から、SDGsに対する従業員の理解が追い付いていないために、関係部署の社員以外にはかかわりのないことだと勘違いされてしまうことがあるのです。

さらに、そもそも経営層がSDGsの本質を理解できていない、ということもあります。注目を集めているトピックだからという理由でSDGsに手を出してみたものの、具体的な問題意識があるわけではないために担当部署に丸投げしてしまう、というようなケースです。まずは、経営層が正しくSDGsの理念を理解できていなければいけません。SDGsに効果的に取り組むためには、全社的なコミットメントが必要なのです。

たとえ上記のような課題をクリアし、SDGsに寄与した経営を行っていても、適切な情報発信ができていなければ外部の人々には伝わりません。発信力が低いせいでSDGsへの貢献を評価されないのは大変残念なことです。SDGsを意識した経営に舵を切る際には、対外的なコミュニケーションの方針もあわせて検討する必要があります。

SDGコンパスのステップ

上記のような障壁を見ていくと、経営にSDGsを組み込むのは難しそうだと尻込みしてしまう人も出てくるかもしれません。けれど、あまり心配しすぎる必要はありません。SDGコンパスの5つのステップを順にたどっていくことで、企業活動にSDGsを取り込むことができるからです。SDGコンパスを詳しくみていきましょう。

SDGsを理解する

まず1つめのステップは、SDGsを理解することです。先ほどお伝えしたとおり、SDGsの理念を正しく知ることが非常に重要です。具体的な行動を起こす前に、まずはSDGsについて学び、企業がSDGsに取り組むことにはどのような意味があるのかを把握しましょう。

SDGsには17のゴールがあり、それぞれ世界の喫緊の課題に対応しています。地球上の解決すべき課題はどういったことなのか、ビジネスには何が求められているのか、といった観点から、まずはSDGsの概要を学ぶとよいでしょう。そして、自社の経営理念と照らし合わせ、SDGsは企業活動をするうえでどのような意味を持つのかということを自社なりに解釈してみるのが大切です。

ここで、他社の取組事例を参考にすることもあるかもしれません。先行事例を知ることももちろん大切ですが、SDGsを表面的にしか理解せず他社の模倣となってしまうのは失敗のもとです。2030年の目標達成に向かっていくためには、今からSDGsを活用した長期経営計画やビジョンを掲げ、それに向けた取り組みを開始する必要があります。SDGsの価値観を整理し、自社ならでの取り組み方針を検討していきましょう。

優先課題を決定する

SDGsについての理解が進んだら、次は自社の優先課題を決定します。
SDGsでは17のゴールに対してそれぞれ複数のターゲットがあり、合計169のターゲットが設定されていますが、必ずしも1企業がそのすべてに対処できるわけではありません。まずは特に自社に関連のある項目をいくつかピックアップするとよいでしょう。

事業内容をあらためて振り返ったり、サプライチェーンをブレイクダウンしたりすることで、適切なターゲットが見つかるはずです。例えば、製造過程で多くの二酸化炭素を排出してしまう場合は、技術の導入などで二酸化炭素を削減することで環境配慮を進めることができるかもしれません。あるいは、誰もが働きやすい環境を整えるために、海外のパートナー工場における労働環境を見直す取り組みを進めることも考えられるでしょう。

このように、現在の事業活動の中でSDGsの価値観と照らし合わせてより良くしていくべき点を洗い出してみます。その中で特に事業と関連の深い点や社会的な関心の高い点を検討し、優先して取り組むべき分野を決定しましょう。

目標を設定する

優先すべき課題を決定したら、次は具体的な目標を設定していきます。
SDGsでは、17のゴールをブレイクダウンした169のターゲットについて具体的な数値目標が定められています。目標が具体的であればあるほど、達成状況も可視化しやすいからです。この特徴にならい、SDGsに取り組む企業も選定した優先課題に対して具体的な目標値を設定していきましょう。

KPI(主要業績評価指標)を定めたり、期限を明確化したりすることが、短期的・中期的な道しるべにつながります。同時に、より良い未来に意欲的にコミットするという観点からは、長期的な指針の設定も大切です。

目標を設定するにあたっては、「経営業績にどのような影響を与えるのか」という視点も重要なポイントとなりますが、環境配慮に関する項目は、短期的には収益にネガティブな影響を与えることも考えられます。しかしSDGsへの貢献度が高まるものなのであれば、その項目は大切にすべきです。目標に設定することで、新たな商品の開発やイノベーションにつながる可能性も大いにあります。目先の事業収益だけを判断基準にするのは避け、広い視野で考えましょう。

経営へ統合する

優先課題について具体的な目標を設定することができたら、いよいよ、実際に経営に統合していくステップです。
ここでは、経営層のリーダーシップと社内に対するコミュニケーションが重要です。事業を進めるうえで、設定した目標がなぜ重要なのか、どのような価値を生み出すのかといった点を明確にし、組織としての共通の理解を形成しましょう。
この段階で部署や業務ごとにより具体的な目標値に落とし込み、それぞれが達成すべきことを明確化するのがポイントです。目標達成に貢献できるような業務はどの部署にもあるはずですが、取り組むべき事項が可視化されることによって従業員にも理解しやすくなり、組織全体としての推進につながるからです。

ただし、この段階で管理部門と現場での軋轢が生じやすいということも認識しておいてください。SDGsと整合性のある業務の進め方をすると、コストや手間が増加することもあるためです。「自分たちが稼いでいるんだ」というプライドがある現場の従業員にとって、コストや手間が増える施策は本部から降ってきたの厄介事と認識され、反発が生じやすくなります。

しかし、企業にとっての変革の好機はむしろこの段階です。自社にとってSDGsがどのような価値を持つのか、ということがステップ1でしっかり整理されているならば、次は社内での共感を生み出せるよう、適切なコミュニケーションを行って考え方を周知しましょう。共通の理解を形成していくことが、SDGsに沿ったイノベーション創出の可能性につながります。

また、より大きな成果を上げるためにはパートナーシップも重要です。取引先やステークホルダーとの間でも、同様の問題意識や理念を共有しましょう。自社単体でなく、サプライチェーンの全体で横断的・複合的にSDGsへの取り組みを行うことにより大きな意味があります。

報告とコミュニケーションを行う

経営にSDGsを統合し、具体的な取り組みを進め始めたら、定期的な報告やコミュニケーションがカギとなっていきます。政府やNPO、消費者といった多くのステークホルダーが、企業のSDGsへの取り組みに関心を払っている中、情報開示の要求も増えており、SDGsに関する取り組みを内外に報告する重要性はますます高まっているからです。

優先課題として目標を設定した項目に対して、進捗状況や達成度などを具体的に報告することで、自社がSDGsの文脈の中でどのように社会への責任を果たしているのかを発信しましょう。多くの企業がすでにSDGsの活動報告書などを公表しているので、参考にできるはずです。効果的な報告により企業の評価や信頼度が高まり、新たな投資や協働につながる可能性もあります。

SDGsコンパスに沿ったSDGs推進を成功に導くポイント

ここまで、SDGコンパスの5つのステップを詳しく見ていきました。このステップは決して直線的なものではなく、施策を進めながら前のステップに立ち返り、再検討しながら進めていっても問題ありません。トライアルアンドエラーを重ねて改善していきましょう。ここで、取り組みを成功に導くために特に大切なポイントを改めて整理してみます。

自社の経営理念や事業内容に合った活動を選ぶ

もっとも大切なポイントは、自社の経営理念や事業内容に沿った目標を選択するということです。
事業とは別枠で社会貢献活動をすることがSDGsの取り組みだと勘違いする人は少なくありませんが、そうではありません。新しい技術を取り入れたり商流を変えたりすることで持続可能なビジネスにつなげることが、本来のSDGsの理念に沿った取り組みです。本業の中でどのような取り組みができるのか、という視点を忘れないようにしましょう。

SDGsは地球上の多様な課題に焦点をあてているので、自社の理念や事業に合った目標が必ず見つかるはずです。そもそも日本企業には「三方良し」といった考え方が根付いていることも多く、SDGsとの親和性は高いのです。経営方針に沿ってさらなる取り組みを進めましょう。

社内コミュニケーションの重要性を認識する

前述のとおり、SDGsを推進するにあたってはコミュニケーションが重要なカギとなります。なかでも、もっとも重視すべきは社内コミュニケーションです。組織全体でコミットするためには、経営層だけでなくすべての従業員が正しくSDGsの価値観を理解し、それぞれの業務に落とし込んで取り組んでいかなければいけないからです。

自社がSDGsを推進する目的は何なのか、どのような取り組みを行うのか、達成すべき目標は何か、といった情報を社内で共有し、全社的な共通認識を築きましょう。日々の仕事が社会の発展や地球への貢献につながっているのだという理解が広まれば、従業員のモチベーションも高まるはずです。自社が社会課題の解決のための一端を担っているのだという認識を共有するためにも、社内コミュニケーションが重要となります。

SDGsウォッシュを防ぐ

SDGsウォッシュとは、対外的にはSDGsに賛同しているように見せかけながら実態が伴っていないような状態を指します。例えば、自社商品をエコやサステナブルといったイメージで売り出しているにもかかわらず、実際の製造工程では高い環境負荷をかけていたら、SDGsウォッシュと批判されてしまうでしょう。

企業のイメージアップのために意図的にSDGsウォッシュを行うのは論外ですが、気を付けなければいけないのは、意図せずSDGsウォッシュとなってしまう事例です。一例として、自社工場では本当に環境保全のための取り組みを進めているのに、下請けの海外工場では有害物質を排出してしまっている、というようなケースがあります。サプライチェーンを適切に管理できていないために、このような状況が生じるのです。

自社の商流を把握してサプライチェーンを詳細に管理しなければ、SDGsウォッシュを防ぐことはできません。SDGsを推進する責任ある企業の姿勢としては、下請けや取引先の持続可能性にまで配慮し、サプライチェーンを適切にマネジメントすることが重要です。

まとめ

今後企業活動を進めるうえで、SDGsを避けて通ることはできません。経営にSDGs推進を導入する過程では様々な障壁がありますが、SDGコンパスに沿って進めることでスムーズにSDGs経営に参入することができるはずです。グローバルな課題解決に貢献するため、さっそくSDGs経営を始めていきましょう。

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