2021.05.24
企業ビジョンの作り方!最大限に活用する浸透方法も解説
目次
多くの企業では、企業ビジョンまたはそれに準ずるものを策定しています。しかし、現状において企業ビジョンが存在していなかったり、「いまひとつ浸透していない」「今の時代にあっていない」などの理由から見直しを検討している企業もあることでしょう。また、これから会社を設立するのであれば企業ビジョンをしっかりと策定すべきです。
本記事では、企業ビジョンをどのように作っていくべきなのか、作った企業ビジョンを最大限に活用するにはどのような施策を行っていくべきなのかを解説していきます。
企業ビジョンの必要性
そもそも企業ビジョンとは、企業が「実現したい未来」を意味します。売上や人数など具体的な数値が入ることが多く、時間軸に合わせて変わっていくものです。また、企業ビジョンは企業における「戦略」とも言い換えられます。類似した概念に、ミッションやバリュー、経営理念などがありますが、詳しくは以下の記事を参照ください。
企業ビジョンを作成するメリット
企業ビジョンを作成すると、以下のような4つのメリットを得られます。
1つ目は社員のモチベーションの向上です。企業ビジョン達成に向けて全社一丸となるため、社員のモチベーションが上がります。
2つ目は社内の意見がまとまりやすくなることです。企業ビジョンが作成され浸透している状態の場合、社員が同じ方を向くため、社内の意見がまとまりやすくなります。
3つ目は社員の行動指針となり得ることです。企業ビジョンによって社員の目線を同じ方へ向けることができるため、企業ビジョンを元にした同じ価値観で全社員が行動を取るようになります。
4つ目は、組織の内にある時代に合わなくなった習慣の「破壊」が可能となる点です。企業ビジョンは時間軸で変わっていくものなので、新たな企業ビジョンを作成し浸透させることで、必要なくなった習慣を刷新していくこともできます。
企業ビジョンの作り方
企業ビジョン作成のメリットがわかったところで、実際に企業ビジョンを作成する手順について大きく4つの段階に分けて解説していきます。
企業ビジョンを作成する際に前提となるのは、「過去でも現在でもなく、未来について考える」ということです。しかし企業は、この不確実性高い時代において、未来を描く必要がある一方で未来を描くことが困難である、というジレンマに直面しています。それを念頭におきながらビジョン策定を進めていく必要があります。
1.やりたいことを明確化
まずは、企業としてやりたいこと、実現したい夢や理想、未来予想図を洗い出します。「売上100億を達成したい」「100万人の顧客に満足してもらいたい」といったものです。また、「こんな会社にしたい」という目標でも構いません。社員が会社の未来に希望を持ち、共感できるような未来像を描きましょう。
この時点ではまだ、ビジョンの実現可能性について突き詰めて考える必要はありません。議論すべきは、企業ビジョンが定性的なもの(例:技術で社会の豊かさを築く)定量的なものか(例:○年までに○千万人に製品を届ける)ということや、自社だけでなく自社をとりまく環境、市場、顧客、ひいては社会への影響についても考慮された内容になっているかということです。
組織やその構成員はそれぞれ独立して単独で存在しているわけではなく、社会や産業、ステークホルダーとのバランスを保ちながら成り立っています。つまり企業は、自社を取り巻くすべての未来との関連なくして存在し得ないということです。企業ビジョンを策定する際は、自社と自社を取り巻くそれらの世界観を含めて検討する必要があります。
2.やれることを明確化
次に、自社がやれることを洗い出していきます。そのためには、自社のリソースについて現状把握が必要となるはずです。どこが自社の強みであり、逆にどこが弱みであるかを理解しておくことで、強みを市場で発揮できるようになります。弱みを伸ばして現状の延長線上で勝負するのであれば新しいビジョンは必要ありません。強みを伸ばして新たな価値を発揮する未来を描きましょう。
もし自社が創業前や創業間もない段階であれば、現状のリソースや自社の強みを理解した上で、未来において成し遂げているであろうことを描いていきます。
3.求められていることを明確化
市場や業界、社会から求められていることに目を向けます。たとえば市場や業界のトレンドやニーズ、競合他社に関する情報収集や分析が必要です。ただし、経営戦略ではなくあくまで企業ビジョン策定のための情報収集なので、大まかで構いません。現状において自社が社会から何を求められているかを明確にした上で、今後社会に対してどのような価値を提供したいか、どのように社会から求められたいかを描いていきます。
1〜3をもとに企業ビジョンを言語化する
いよいよ最終段階です。これまでまとめてきた情報をもとにして、企業ビジョンを言語化、明文化していきます。トップ層が全員で集まり意見交換をしながら決めるという、ベンチャー企業などでよく採用される手法もありますが、企業ビジョンは原則として経営者が決めるべきものです。ある程度有用な情報がまとまったら、経営者の意志で決定してください。
なお、策定した企業ビジョンを実現するためにはこの言語化を緻密に行うことが必要です。あいまいな表現ではなく、現実した状態を社員が想像できるよう、明確な言葉で表現しましょう。
企業ビジョンの浸透方法
企業には社員の数だけ個人の未来やビジョンがあります。企業ビジョンを組織に浸透させるには、一人ひとりに企業ビジョンを理解してもらうだけでなく、自分ごととして納得・共感してもらうことが必要です。
企業ビジョンは策定しただけではあまり意味なく、掲げているだけでは何の役にも立ちません。社員一人ひとりが個人のビジョンと企業ビジョンの間に接点を見出し、企業ビジョンを自分事として実現したいと動き出して初めて、企業はビジョン実現に向かって動き出します。そして、ビジョンを実現するためにはもちろん社員だけではなく、社員を通じて社外のさまざまなステークホルダーに対しても企業ビジョンを発信し、巻き込んでいくことが必要です。
組織内への浸透を経てはじめて企業ビジョンは意味を持つということを常に念頭に置きながら、以下のような施策を試してみてください。
クレドを作成する
クレドとは、企業ビジョンに基づく行動指針を実務へと紐付けたものです。企業ビジョンなど企業から社員へのメッセージ、心がけるべきことをカードの形にして持ち歩けるようにしたツール(クレドカード)のことを「クレド」と呼ぶこともあります。世界的に有名なホテルのザ・リッツ・カールトンホテル カンパニー L.L.Cが実践している事例で有名なものとなりました。壁に貼って周知しておくよりも、顧客サービスを実行する際の指針にしやすく、普段から意識できる施策です。クレドを持っているという意識が自然とクレドの内容を遵守した行動につながり、業務と真剣に向き合うようになったり、業務レベルを向上させたりする効果が期待できます。
企業ビジョンに関する社内広報活動を行う
社内報や社内ポータル、社内SNSなどの社内広報活動を行うことも有用です。企業トップからのビデオメッセージなどと組み合わせてビジョンを伝えるのもよいかもしれません。後述する「アワード」と組み合わせて、企業ビジョンを体現している社員を取り上げて、インタビュー記事を作成し、社内報をはじめとする社内コミュニケーション媒体で発信するなどの施策も効果的でしょう。読者が読んで共感し、「自分もやってみよう」と思えるような内容にすることがポイントです。
評価制度に反映する
企業ビジョンを体現して行動している社員が評価されるような人事評価制度を整えることも重要です。企業ビジョン浸透のためには、企業ビジョンに沿った社員の行動が、「行動して良かったという体験」につながるよう、施策をデザインすることが不可欠となります。行動をした結果が、従業員にとって好ましい体験につながれば、さらに自ら進んで行動を実践しようというモチベーションにつながります。
企業ビジョンに沿って業務している社員を表彰制度(アワード)で称える
評価制度と類似していますが、企業ビジョンに沿って業務を遂行している社員を表彰制度(アワード)によって大々的に称えることも社内に大きな影響を及ぼします。こちらも社員の「行動」を、行動して良かったという「体験」につなげる施策です。企業ビジョンを認知し、理解し、共感し、行動することで評価を得られた経験が、進んで企業ビジョンを体現しようとする社員の姿勢につながります。
ステークホルダーの感情を動かす―不確実な時代における企業ビジョンの効用とは―
企業ビジョンにおいて数年先の「企業が実現したいこと」や「社会から求められていること」を正確に描くことは、VUCA(不確実)と呼ばれ、成功の方程式が失われたこの不確実な現代においては、ほぼ不可能といえるでしょう。そういった意味で、企業ビジョンに確実性や合理性を求めるのは無理があり、一歩間違えれば単なる「経営者の妄想」とも受け取られかねません。
それでも現代の企業においてビジョンが必要なのは、不確実な状況においても、自らが信じるより良い未来に向かって企業が新たな一歩を踏み出す力となり得るからです。企業ビジョンは、決して社員を統率するための指針ではありません。前が見えない中でも組織の中でさまざまな意見を出し合って議論し、複数のシナリオを検討し、前に進んでいく動機付けをするためのものです。
これからの企業ビジョンにおいて大切なのは、社員や顧客、そして企業を取り巻く社会が、企業ビジョンに描かれた「未来」を良いものだと感じ、そしてその未来に向かって一歩踏み出したいと思えること。つまり、確実性や合理性を超えて、ステークホルダーの感情を動かすことであるといえるでしょう。
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まとめ
企業ビジョンを作ること自体はそれほど難しいことではないかもしれません。現実を踏まえて「実現したい未来」を描き、自社にできること、自社に求められていることと勘案のうえ、できれば具体的な数字を加えて明文化していくことで完成します。また、企業ビジョンは時代背景や企業の事業ステージによって刷新していきます。
重要なのは、企業ビジョンは策定するだけではまったく意味をなさないということです。一時的に認知はされてもすぐに忘れ去られてしまうでしょう。社員にしっかりと理解してもらい、企業ビジョンへの共感を得て、企業ビジョンに沿って業務を実践した社員を評価・表彰し、習慣的に行動へと反映させるまでのプロセスを持続的に行うことが大切です。
これらの取り組みには、社内コミュニケーションが欠かせません。上司と部下、人事部門と一般社員、広報部門と全社といった関係性が良好な状態であることで初めて前述のプロセスが力を発揮します。
逆にいえば、これらの関係性がしっかりと築けていない状態でサイクルを回そうとしても、決してうまくはいかないでしょう。もし企業ビジョンを策定する以前に社内コミュニケーションのあり方や健康状態に不安があるという場合は、ソフィアまでお気軽にご相談ください。
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株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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