2013.05.28
社内メディアにキュレーションは必要か
目次
キュレーションサービスは、もはや生活必需品になりつつある。
毎日、テレビや新聞、webのニュースに目を通し、さらに話題のwebメディア、雑誌をチェックし、なんていう時間はなかなか取れない。だからこそ、キュレ―ションサービスはとても効率的に情報収集できるツールだと思って使う。自分のアンテナにひっかかるものだけでなく、社会問題から美容、ファッション、芸能など、多種多様。もちろん、偏ったり間違ったりしないよう、自分にとって必要だと思う情報は、全文もチェックする。しかも、女性誌を読むことをずいぶん前に放棄してしまった私には、女子系コンテンツは便利なことこの上ない。(役に立っているかどうかは別問題だが)
もしかすると、社内においてもキュレーションは有用なのではないか。
最初の記事は、この問いから始めたいと思う。
社内でも情報氾濫
情報収集のスタイルがPCの前から、スマートフォンに進化したことで、私たちが得る情報量は驚異的に増加している。社員の視点から考えると、会社にいるときは、メールやイントラネット、また書類や会議等で、仕事に必要な情報が大量発信されている。そして、会社を一歩出ればSNSやWebサイト、お気に入りのブログ、新聞、テレビ、屋外広告やもちろんキュレ―ションサービスなど、ありとあらゆるところが情報にまみれている。そうなると、自分にとって必要な情報か否かを判断し、捨てる力、スルーする力が養われてくる。
一方、社内における発信者視点で考えれば、便利なツールがあるのだから、あれもこれもと発信したいと思う。様々な部署が、自分視点で発信したい情報をどんどん出す。その結果、イントラネットの更新情報エリアはNEWマークのオンパレードで、しまいにはNEWなのに表示されなくなる。そうした結果、本当に社員に知っておいてもらいたい情報が届かない、なんていうことが生まれてくる。
例えば経営理念やビジョン。急激なスピードで進む社会において、その会社で働く社員としての価値観や進むべき方向が共有できていなければ、取り組みの方向感がずれていた、ということだって起こりうる。価値観や行動指針が共有されていなければ、その会社らしさとは反対の行動をとってしまい、ブランドを毀損してしまうこともあるかもしれない。情報が氾濫している時代だからこそ、企業活動の足元を支える価値観をしっかりと共有することが必要だと思う。
社内キュレーションは以前から存在していた
インターネットが普及する前に遡ってみると、元々はメールやイントラネットといった一度に情報配信できる便利なツールはなかった。トップダウンの情報は口頭での情報伝達が主で、社内報や社内回覧といったメディアは補助的に使われていた。横断的な情報共有は、社内の人脈や好事例論文などだろうか。社内の人脈があるのとないのでは、情報取得量に大きく差が出るので、社員同士のつながりは今以上に強かったと思う。(私は経験していないので、聞いた話ですが)
つまり、元々は口頭でのコミュニケーションが中心で、マネジメントから部長へ、部長から課長へ、課長から一般社員へといったように、必要な情報は全て、組織階層を通じて伝達されていた。もちろん、それは今も重要なルートであることには変わらない。管理職は、経営の情報、業務に必要な情報、個人の育成に必要な情報などたくさんある情報を、情報の受け手にわかりやすく、編集して伝えていた。(もちろん、様々な尾ひれがついていたこととは思うが。)だとすると、それは、キュレーションの一種なのではないだろうか。
社内報もキュレーションに近い。社内にあるたくさんの情報を取りまとめて、わかりやすく伝えるためにまとめが提供されている。しかし、これは報道に似ているのではないか。マネジメントが発表したこと、社内の出来事や取り組みを取材して記事にする。一方通行の情報発信で、いわばWEB1.0の世界。
今や、ソーシャルの時代。社員一人ひとりが持っているノウハウやナレッジを集めて、新しいモノ・コトを生み出していくことが求められている。WEB1.0からWEB2.0へ、ソーシャルへ。それが社内のコミュニケーションに求められているのではないだろうか。
社内キュレーションを具体的に考えてみる
社内のキュレーションとはどんな使われ方をするのだろうか。
例えば、お菓子メーカーを例において考えてみる。マイナーチェンジも含めて、新商品は4半期ごとに大量に発売されるし、キャンペーンもひっきりなしに繰り広げられている。イントラネット上でバラバラに発信されるそれらの情報をまとめて、「5月の新商品まとめ」をつくれば、社員は見落とすことなく、一度に情報を得ることができるのではないか。
他にも、重要度が高いもので言えば、「社長メッセージ、まとめ」。社長のメッセージやプレゼンテーションの各種資料をまとめにしておけば、それぞれの関連性を考えながら情報を取得することができる。「月末までにやることまとめ」を作れば、タスクの抜けもれはなくなるかもしれない。情報の重要度が高いものは、何度でもピックアップすることで、認知や理解も深まるはずだし、緊急度の高いものはデイリーでまとめを更新することが必要になるかもしれない。
こういったまとめを、自社のイントラネット上からだけ集めることを、仮に「社内キュレーション1.0」と命名しよう。社内だけでなく、インターネットの世界にある信頼できる情報ソースから選出し、編集・掲載できれば、それは「社内キュレーション2.0」と呼べるかもしれない。そして、決まった編集者だけでなく、社員が個人的にまとめているものを公開し、一緒にブラッシュアップできるようになれば、それは「社内キュレ―ション3.0」なのかもしれない。(かなり妄想ですが)
社内キュレーションの可能性とリスク
一点注意しておきたいことは、社員は忙しすぎて、全てのページを詳細まで見ることができないことだ。限られた時間で効率的に広く情報収集し、必要なものは深く見る。そういった構図をつくるのであって、いたずらに情報を増やすだけではいけない。
だからこそ、社内には編集者が必要だ。経営視点と社員視点を自在に使い、有用な情報を選ぶ目をもって収集・選定を行う。そして、社員の興味を喚起しながら、見出しだけでも理解できるような編集を行う。好きなテーマだけを、好きなようにまとめていればいいということではない。それこそが、社内キュレーションにおける最重要ポイントではないだろうか。
今はソーシャルの時代。前出の「社内キュレーション3.0」は、社員が自分のために作ったまとめを公開し、協働でブラッシュアップする。そんな取り組みができると(もちろん、基準やガイドラインは必須だが)、本当の意味でのノウハウ・ナレッジ共有が進み、企業のブランド価値向上につながるのではないか。