コミュニケーションで社員を動かすには

気が付けば、エンタープライズソーシャルフェスから1ヵ月が過ぎていました。

今年の夏は暑かった。まだまだ暑い日は続きそうだけど。

さて、エンタープライズソーシャルフェスで、講演を聞いてくださった方から、意外なお言葉をいただきました。「SNSやイントラ、ネットも冊子も直接的な接点も、すべての情報接点を活用するという考え方が非常にITですね」と。なるほど。今回は、そこからヒントを得て、情報接点ということについて、考えてみたいと思う。

 

伝わって初めて、情報と呼べる

誰かに、何らかの行動を起こしてもらいたい。そう思うから、人は様々な情報を実にたくさん発信する。企業内における情報発信でいえば、ルーチン業務の期日のお知らせであったり、営業協力のお願いであったり、社長メッセージや、たまに入ってくる謎のメールCCも、情報発信者が何かを期待するがゆえに出している情報なのだ。そして、発信者はそれらが届いたか否かを、確認することなく、届いていることを前提として次のコミュニケーションを行う。その結果、両者の間に何らかの摩擦が生じる。

コミュニケーションは伝わって初めて成り立つというが、他人に行動を期待するのであれば、届けることが必須要件となる。

 

例えば、工場のラインを担当している社員に対し、「緊急」とメールを何回送っても、本人が開封するまでには時間がかかる。なぜなら、メールを見ることができるのは、朝・昼休憩・夕方の3回だけだからだ。この場合には、電話で呼び出してもらったり、上長に連絡を取るのが確実だろう。

また、外出や会議でほとんどデスクにいない社員に緊急連絡を伝えるために、オフィスの電話を何度鳴らしても、なかなかつながらない。この場合は、直接メールを送るか、移動時間などの隙間を狙って直接話をするなどが適当だろう。

このような失敗は、相手がどんな仕事をどんな風にしているかを知っていれば、まず起きることはないだろう。

 

 

情報接点は人によって異なる

社員は、職種や職位、契約形態などによって働き方が異なり、それによって情報との接点が異なる。一日中パソコンの前にいる社員に対しては、イントラやメールなどを使って簡単に情報伝達できる。しかし、そんな社員ばかりではないのだから、伝えたい情報と伝えたい相手をみながら、接点をコーディネートしていくことが必要不可欠になる。

イントラネット、社内報、社内ソーシャル、社員への一斉メール、廊下や掲示板へのポスター貼付、朝礼、研修、ワークショップ、階層ルート等、上げればきりがないが、社員を取り巻く情報接点を全て駆使していくことが、情報発信者に求められていることだ。

 

 

情報の優先順位

情報発信者が考えなければいけないことは、もう一つある。

日々忙しく働く社員に対して、直接業務との関連がわかりにくい情報を発信しても、残念なことにスルーされてしまう。いくら発信者が重要と判断して発信しても、「急ぎではない」と判断されれば、優先順位を下げられてしまう。(そして、忘れられることもしばしば。)以前、「社内メディアにキュレ―ションは必要か」でも書いたが、もうすでに社員の周りは情報が氾濫している状態なのだから、

「あー、見たことある。でも、知らない」

なんてことは、日常茶飯事なのである。

 

発信され、受け取られた情報は、いわゆる「時間管理のマトリックス」で分類される。

 

よく知られているマトリックスなので、優先順位を決める際に無意識に使っている人がほとんどだと思う。しかし、注意してもらいたいのだが、発信した人にとって重要である情報が、受け手にとって必ずしも重要な情報だとは限らないことだ。

経費精算締切日のお知らせや、年末調整のお知らせなど、明らかに自分の「お金」に関することであれば、ほとんどの場合、「重要」な情報にセグメントされると思われる。しかしながら、前出したような「社長メッセージ」はどうだろうか。発信者は、重要度「最高」レベルのフラグを付けていると思うが、受け手に届いた際は、「重要だが、緊急ではない」または、「重要でも、緊急でもない」に仕分けられている可能性がある。

なぜ、そのようなギャップが生じるのか。

簡単である。

―――自分に対するメリットが感じられないから

私は、上記のように考えている。メリットと感じることは、お金だったり、賞賛だったり、地位だったり、感謝の言葉だったり、やりがいだったり、人によって異なる。しかし、自分が得られるだろう価値が見えない限り、人はそう簡単に動かない。特に、経営に関する情報などは、業務とのつながりや取り組んだのちに得られる成果が見えにくいため、スルーされやすい。

グロービス社が行った調査によると、自社の経営理念を知らない人は13%、知っているが共感・共鳴しない人は48%、知っていて共感・共鳴する人は37%だったそうだ。

上記で、「共感・共鳴しない」と答えている人のほとんどは、「よく知らない」のではないだろうか。策定された背景や想い、目指す姿、社会に提供したい価値などをよく知らなければ、共感できるはずもない。

脱!「自分が伝えたいことしか見えない病」

興味関心を持っていない人に対して、たくさん情報を出したとしても、思ったように読んでもらうことは難しい。発信したい相手がどんな情報であれば興味を持ち、知りたいと思うか。それを理解し、伝えたい情報をそれに沿わせて編集していくことで、やっと伝わる。

あの手この手で情報の接点だけを強化しても、届くかもしれないが、伝わらない。

さらに、相手が一人であれば簡単にできることでも、多数になった途端、「相手」という概念がするりと抜け落ち、「自分が伝えたいことしか見えない病」に陥りがちとなる。

発信者は、伝えたい相手が、

どんな人で、

どんな想いで、

どんな風に働いているのか、

を想像し、時には直接会いに行って話を聞いてくることが必要だ。

その中で、「どんな内容を」、「どんな場所で」発信すれば、

届いて伝わるのかが明らかになっていくのだと思う。

定例化したお知らせであっても、簡単な依頼であっても、大事な経営メッセージであっても、どれも相手を動かすための情報であれば、相手を慮って発信することで、受け取り方は大きく変わる。

企業を取り巻く環境が急激に変化する中で、社員はスピーディにかつ有機的に活動することが求められている。社員が動くコミュニケーションを行うためには、情報を伝えたい相手=社員を慮って、本当に発信すべき情報を精査し、相手の心に深くささる情報発信をすることが必要だ。

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