2016.06.22
企業の業績は、インターナルコミュニケーションで向上するか? 【世界のInternal Communicationから~Vol2. 目的編~】
【この記事のポイント】
・日本企業が、海外現地法人とのインターナルコミュニケーション(IC)を推進する際の課題は「現地ニーズの把握」
・ICの最大のゴールは「従業員のエンゲージメント向上」
・ICによる「従業員のエンゲージメント向上」は、企業の業績向上に寄与する
先日、企業研究会の公開セミナー「社内広報のグローバル化に向けた実務を学ぶ」で登壇する機会があった。日本企業がグローバル本社として、現地法人ならびにその社員とどのようにコミュニケーションし、どのようにインターナルコミュニケーション(IC)を推進していくのかを考えるということがテーマだった。
比較的少人数制で行うことができたので、講義の後に、QAセッションとして、それぞれの参加企業の困り事や課題についてディスカッションする機会を設けることができた。その中で出てきた代表的な課題は、3つ。「グローバルのIC体制をどのように構築するか」「現地のニーズはなにか? 何をすればよいのか把握しきれていない」「どのようなメディアにすべきか」ということ。体制については、グループ・グローバルの企業群をどのようにしてガバナンスをしていくのか、という事業運営と連動していることが多いので、また別の機会にコラムに書いてみたいと思う。今回は、「現地のニーズを把握しきれていないので、何をしたらよいのかわからない」という課題について取り上げる。
まず、海外でインターナルコミュニケーションのゴール・目的について調査した結果があるので見てみよう。アイルランド、ロンドン、ボストンに拠点を置くインターナルコミュニケーション専門のソフトウェア会社であるNewsweaver社の調査(対象:96か国の、400社以上の主要企業)では、ICのゴールは以下のような分布になっている。
<調査結果>
・従業員のEngagementを高める…76%
・風通しの良い企業文化の構築…55%
・変化を起こせる環境の醸成…49%
・ブランド浸透…46%
・業績へのインパクト…46%
・ICの効果を測定する…36%
・CSR…24%
・若手管理者層のコミュニケーションスキルの向上…15%
・ROI(利益対投資の向上)…15%
(Newsweaver WhitePaper “Delivering Effective Internal Communications” 2016)
見てもらって分かるように、「従業員のエンゲージメント向上」が76%と非常に高いスコアとなっている。この調査結果は、海外96か国の企業に向けて調査されたものだ。しかし、日本企業の海外現地法人も同じような環境でビジネスをしていることを考えると、同様の課題を抱えているとみてよいのではないだろうか。また、直近のIABC世界大会のICにおけるテーマが従業員のエンゲージメントになっていることからも、ここ最近の大きな潮流とみてよいと思われる。
一般的には、エンゲージメントを高めることの効果として、離職率の低減、コンプライアンス、ブランド向上といったことが想定される。しかしその根底には、ICによるエンゲージメントの向上が業績に寄与するという理解が進んでいることがあるのではないかと考えられる。少し前の調査結果になるが、タワーズワトソンの「Clear Direction in a Complex World」—2011-2012 Change and Communication ROI report —では、以下のように述べられている。
・効果的なコミュニケーションと業績は強い相関関係がある:コミュニケーションの有効性が高い企業は、そうでない企業に比べ1.7倍の業績を上げる傾向がある。
・本研究で明らかになったのは、効果的なコミュニケーションは組織変革マネージメントの重要な要素であり、両方を上手くやれば業績とのより強い相関関係があることだ。コミュニケーションと組織変革マネージメントの両方とも有効性が高い企業は、そのどちらかの領域でそれほど有効性が高くない企業と比べて、2.5倍の業績を上げる傾向がある。
先に述べたセミナーでのディスカッションでは、現地の課題やニーズを把握し、その課題解決に資するICを本社が支援していくことが大切ではないか、という意見が多数あった。こうして現地の協力を得ることが、グローバルIC体制構築の一助にもなるのではないだろうか。しかし実際には、現地が何を課題としているのか、ICで解決できることはないか、しっかりと耳を傾けていないことが多い。帰国した駐在員に話を聞いてみるのもいいだろう。まずはしっかりと話し合いの場を持つことから始めてみてはどうだろうか。
株式会社ソフィア
代表取締役社長、チーフコミュニケーションオフィサー
廣田 拓也
異なる世界にある共通項を見つけて分断をつなぐことが得意です。最近ではソフィアがこれまで培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、地域の教育分野に力を注いでいます。思考回路と判断基準は、それが面白いかどうか。そして指示命令は、するのも、されるのも嫌いです。だけど、応援を要請されたら馬車馬のように動きます。
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異なる世界にある共通項を見つけて分断をつなぐことが得意です。最近ではソフィアがこれまで培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、地域の教育分野に力を注いでいます。思考回路と判断基準は、それが面白いかどうか。そして指示命令は、するのも、されるのも嫌いです。だけど、応援を要請されたら馬車馬のように動きます。
株式会社ソフィア
事業開発部
大櫛 直人
営業・事業開発として、マーケティング活動による市場調査およびリードの獲得、新規・既存問わず顧客との面談・調査と情報提供・ヒアリング・課題整理・提案など、プロジェクト開始までの窓口業務を担当しています。
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