2021.10.14
「ストーリーをデザインする」とは?ソフィア流の3ステップをご紹介
目次
- デザイン思考
- センスメイキング
- ストーリーテリング
など、さまざまな思考法や伝え方を耳にすることも多くなってきました。しかし、それぞれにどのような違いがあり、どのような活用が効果的なのかについて詳しく解説される機会は少ないのではないでしょうか。
この記事ではビジネスの世界で注目され、コロナ禍でさらに重要性が高まっている「ストーリーをデザインする」という視点から先に述べたデザイン思考やセンスメイキング、ストーリーテリングの3つについてご紹介します。
また、それらの手法を応用しソフィアが独自にサービス化した「ストーリーデザイン」(クライアントとの対話を通して、社員の心が動く黄金ストーリーを見つけ、仕立て、語るまでを共創するコンサル型でデザイン思考型のサービス)の手引きもします。
経営層や教育担当といった組織を管理する立場の方はぜひ、貴社のインターナルコミュニケーション活性化にご活用ください。
ストーリーをデザインする前に。デザイン思考やセンスメイキング、ストーリーテリングを理解しよう
昨今よく耳にするようになった、
- デザイン思考
- センスメイキング
- ストーリーテリング
といった手法。ソフィアでは上記を、相手が自然と腹落ちするようなコミュニケーションをとり、伝えていく手法としてプロセス化し、「ストーリーデザイン」と名づけています。「ストーリーデザイン」の目的は「世界を、生活を、今より少し良いものに変える(To change the world better, the life better)」ことです。
この章ではまず、「ストーリーデザイン」の話に入る前に一般的に知られている各手法について解説します。
デザイン思考とは?
「デザイン思考」とは、IDEO(アイディオ)のCEOであるティム・ブラウンが提唱したもので、イノベーションを生み出すための思考プロセス、マネジメント手法として注目されています。『観察から洞察を得て、仮説を作り、プロトタイプを作って、それを検証し、試行錯誤を繰り返して改善を重ねながらモノ(製品/サービス)を創り出す創造的なプロセス』であり、ユーザーを観察し、共感を通じて潜在的な問題を探る点に特徴があります。
「デザイン」と聞くと、一見デザイナーなど外面的な部分に関わるクリエイターを想像しがちですが、デザイン思考は「デザインに必要な思考やステップを踏み、問題の解決に向き合う手法のことです。「ハイ・コンセプト」という書籍の中で、著者のダニエル・ピンクが「新しいことを考え出す人の時代における6つの感性」として挙げているのが、1.共感 2.デザイン 3.物語 4.遊び心 5.全体の調和 6.意義であり、これらはデザイナーに顕著な資質であり、デザイン思考に必要な感性と言えるでしょう。
時代に合わせたデザインを生み出し続けるデザイナーが活用しているように、変化の多い現在の社会において柔軟に変容し続けられる組織を作る際にもデザイン思考は効果を発揮します。
日々働く中で「もっとこうだったらいいのにな」という思いを馳せるだけで、現実は何も変わることがない…という経験はありませんか?
多くの企業や組織のなかには、
- 課題
- 不満
- あるいはそれらの解消法
など、社員が抱いているマイナスの感情について気づいていない、もしくは気づいていても表現することができてない、ということが多々あります。
デザイン思考を用いることによって、組織全体のプロセスを見つめ、課題解決に取り組むことができるようになります。組織のメンバーがそれぞれの課題に個別に取り組むことを部分最適とするならば、デザイン思考は俯瞰的に組織の課題を見つけ、社内体制を強化する全体最適のアプローチと言えます。
「経営者・教育担当目線のデザイン思考」なら、社員をよく観察し、日々語らうことによって彼ら潜在的な不満や課題を表出化させる必要があります。社員の不満や課題は、頭では理解していても表現できていない(言語化できていない)、いわば暗黙知です。デザイン思考を用いて暗黙知の形式知化を図り、一丸となって試行錯誤を繰り返しながら課題解決の方法を導き出すことこそが、デザイン思考を活用した組織開発のアプローチです。
センスメイキングとは?
「センスメイキング」とは、ある経験や出来事について能動的に意味を与えることで組織メンバーからステークホルダーに至るまでの納得(腹落ち)を獲得し、それらを集約させるための思考プロセスです。
特に、組織・風土の改革を起こしたい場合や、日々変化する不確実性の高い状況など、リーダーシップの質が問われる場面において肝となる要素だと言えるでしょう。
現代は「VUCA時代」と言われています。
[世の中は常に変動し(Volatility)、不確実で(Uncertainty)、複雑で(Complexity)、曖昧な(Ambiguity)な環境下にある]という意味です。急速な環境変動が当たり前の時代となったことにより、多くの企業において自社の事業基盤・競争優位性に揺らぎが生じています。根本的な組織課題への対処として取るべき方向性が定まらず、社員が環境の変化に対応できないといった状況に陥ることで、会社のアイデンティティそのものがリスクにさらされているのです。
このような状況下にある企業において経営者や組織のリーダーが率先して行うべきことは、会社組織としてメンバーみんなの足並みを揃えることです。まずは企業ビジョンや方針、事業戦略といった会社の顔となる部分の見直しから始めましょう。詰め込む情報の選別とそこにどのような意味づけを行うかがポイントになります。センスメイキングのコンセプトは、会社への理解を全メンバーに相違なく深めてもらうために意味づけを明確に実施し、納得・腹落ちしてもらうことと言えるでしょう。
しかし、いかに正確に状況分析をしたとしても、相手が納得して意欲的な行動(仕事)に移さない限り、センスメイキングは成立しません。「何を、どのように語るか」ここにどれだけ注力できるかで結果は大きく変わります。すなわち、センスメイキングの成否は次にご紹介する「ストーリーテリング」にかかってくるのです。
ストーリーテリングとは?
「ストーリーテリング」とは、その言葉の通り「ものがたり」を伝えることです。
つまり、メッセージ中に自らに関連した体験談やエピソードを入れたストーリーにして、相手に効果的に伝える手法を指します。この世にある物事の全てにストーリーは存在するものです。事実のみを伝える場合と比べて、ストーリーを意識して伝えることができるようになれば、次の3つの効果が期待できるでしょう。
1. 共感を得て一体感を創る
ストーリーの登場人物に対して、「私も同じ思いです」と共感を引き起こすことができれば、聞き手はメッセージの意味を深く理解できます。つまり、登場人物に自分と重なる「何か」が見つけられるか否かで影響力は大きく異なるのです。
ストーリーテリングによって企業の想いの節を「自分ごと」として捉えられるように促すことで、その想いのまま業務に励むことができます。その輪が広まれば、個々の共感と納得が会社としての一体感を形成して組織力強化につながるため、ストーリーテリングによって組織の方向性が定まるといっても過言ではないでしょう。
2. 理解を深め記憶に残す
難解な事実や数字を淡々と伝えるだけでは、聞き手に共感や理解を促すことはなかなか叶いません。ストーリーを意識して伝えることで情景や想いが明確にイメージできるようになるからこそ、より身近な事柄として理解しやすくなり、さらには記憶にも残りやすくなるのです。
たとえば、小学生の時に国語の教科書に出ていた物語を大人になっても鮮烈に記憶しているという話はよく聞きますよね。このように、記憶に残すストーリーにするためには聞き手や読み手の
- 見る
- 聴く
- 触る
- 味わう
- 嗅ぐ
といった五感に働きかけ、メッセージの1つひとつがそれらを刺激するものにする必要があります。
3. 感情を揺さぶり行動を促進する
感動するストーリーは感情移入を引き起こし、行動へのモチベーションを高めます。
- 失敗や苦労、挫折をどのように乗り越えたのか
- どのような信念があったのか
- 愛情や思いやりという、単なるお金稼ぎではないという熱い気持ち
などを伝えるストーリーテリングは相手の心を揺さぶり、深い共感と納得を促すことができるでしょう。何より、対象の物事を「自分ごと」と捉える力が強く作用し、自分も役に立ちたいという高いモチベーションを持って行動に移していくことができるため、成果向上の可能性を大きく高めます。
このように、ストーリーテリングとは、メンバーの共感を生み、理解を深め、行動を促すための強力な「ものがたり」を作り、伝えるための手法です。
デザイン思考によって、組織としての課題の発見とその解決法を導き出し、センスメイキングではメンバーの納得を獲得、集約します。そして、ストーリーテリングでは共感と行動を促すための物語を伝えます。この3つの手法はそれぞれのアプローチは違っても、大きな目的に違いがないことはお判りいただけたのではないでしょうか。
ストーリーをデザインしていくための3ステップとは?
それぞれのコミュニケーション手法や思考法について理解を深めていただいたところで、続いてはソフィアが実施している「ストーリーデザイン」の3ステップについてご紹介します。
先に述べた3つの思考法や手法はそれぞれ独立しているため、合わせて活用していく際にはひとつひとつの方法への理解を深め、実践に移せるまでの知識とスキルに落とし込む必要があります。私たちソフィアが行っている「ストーリーデザイン」の3つのステップを順に追っていくことで、「相手が自然と腹落ちするように」伝えていくことができるでしょう。
それでは、以下で具体的なステップをお伝えします。
1. 目指す方向に社員の心を動かすために——ストーリーの原石を探す
企業においてビジョンや戦略といった目指すべき「ゴールの設定」と、なぜそれをゴールとするのかを示す具体的な根拠となる「内部・外部環境情報」といったデータを揃えることが必要です。
しかし、それらをそのままの状態で社内に共有しても、社員が共感して行動に移すかどうかは受け取る側の理解に委ねなくてはなりません。さらに、企業のビジョンや経営目標は他社と比較しても大差がないと見られがちで、市場環境を示す情報やデータは目を通しただけでは本質的に理解できないこともあります。
そのため、ゴールとそこへ向かうプロセス準備にはそれなりの労力を割き、社員の心を動かすような魅力的な言葉に変換して適切に伝えていく必要があるのです。
ソフィアでは、「ゴールドマイニング*」というプロセスを用いて、
- 企業の強みや可能性(コアコンビタンスやケイパビリティ)
- 創業者の夢
- 経営者の信念
などから、まず魅力的な情報を探り出すところから始めます。そこから発掘された原石を関係者へ戦略的に伝えるためのストーリーを見出し、構築していく作業が次のステップです。
*このプロセスを「黄金ストーリーを見つけること」に見立てて「ゴールドマイニング」と呼んでいます。
ソフィアが唱える「ゴールドマイニング」とは?
ソフィアの考える「金(ゴールド)とは「Idea to change the world better, the life better」。すなわち世界や生活をより良く変えるアイデアのこと。それらをマイニング(発掘)する手法のことを、私たちソフィアでは「ゴールドマイニング」と名付け、お客様の強みや可能性を見つけるお手伝いをしています。
コアコンピタンスとケイパビリティに着目して、組織を動かす「ストーリー」の重要性を理解しよう
変化が激しく先行きが不透明な状況が続く現代において、企業として成果を上げていくために、語られるべきストーリー…
2. 動いた心に納得感(腹落ち)を生み出すために——ストーリーを作る
第1ステップで見つけ出した原石を磨き上げる作業が第2ステップです。先のセンスメイキングの話でもあげた「納得感(腹落ち)」という感覚。ストーリーデザインの第2ステップは、センスメイキングを活用していきます。
ストーリーの原石は
- 創業者のエピソード
- 経営者の想い
- 従業員の経験
- 顧客の声
など色々なところ転がっています。ただ、これらはまだ原石の状態であるため、情報や数字を事実として伝えたとしても人の心には響きません。数字や事実を元にして方向性を示したとしても、社員が取り組む仕事は「やるべきこと、やらなくてはならないこと」の領域を出ることができないからです。
社員が企業の目的・目標に納得・腹落ちして、各自の仕事に対して「やりたい」と思える状態に変換する必要があります。納得・腹落ちし、モチベーションを高めることで社員の仕事の質が格段に向上させることができるでしょう。また、ストーリーから企業の目標を明確化させことができれば、社員各自の方向性が定まり組織の一体感を生み出し、組織全体としての生産性を高めることにつながります。
しかし、社員の納得感を醸成して行動につなげるためには、語り手の想いだけで達成することは非常に困難です。ストーリーの選定や解釈には必要な技術というものが存在します。
ソフィアでは多くの企業様のストーリーの選定と解釈についてお手伝いをさせていただいた実績から知見を積んで参りました。具体的に知りたい方はこちらへ。
3. 伝えたことを印象付けるために——感動的かつ効果的な手法でストーリーを語る
ストーリーデザイン最後の第3ステップでは、「語る」という行動に移っていきます。
ここで大切になってくる要素が、先にご紹介した「ストーリーテリング」の手法を用いるということです。ストーリーテリングによって、人を惹きつけ、共感を生み出し、そして動かしていきます。
原石であった数字や事実といった情報を、語り手の熱を帯びたストーリーに変身させていきましょう。繰り返しになりますが、語り手自身の体験談やエピソードを織り込み、相手が「自分ごと」にできるストーリーであることが重要です。さらには、五感への刺激を促し、記憶に残るものにしなくてはなりません。
そのためのツールとして、ソフィアでは
- メディア
- コンテンツ
- シンボル
- プレゼンテーション
- イベント
といった効果的な手法を用います。読み手や聞き手の感情を刺激し、感動を引き起こすことを可能とするツールを制作するのです。
これらのストーリーテリングを強化するための資材制作には、さまざまなテクニックが存在しており、ソフィアのメンバーにはこのようなテクニックに精通したメンバーが多く所属しています。
詳しくはストーリーテリングの記事でご紹介しています。ぜひそちらも合わせてご参照ください。
まとめ
「ソフィアのストーリーデザイン」は
- デザイン思考
- センスメイキング
- ストーリーテリング
の3つの要素を含み、「あなたが、世界を、生活を、今より少し良いものに変える(To help you change the world better, the life better)」ためのサービスです。
会社と社員のエンゲージメントが上がらない、ビジョンの浸透が進まない、変革の取り組みが進まない、といった課題を抱えているならば、「センスメイキング」が適切に実施できていないことを疑ってみるべきです。ソフィアでは、自社の中にある原石を見つけ出し、腹落ちのするストーリーに磨き上げ、メンバーの共感を生み出すストーリーテリングにまで仕上げることをお手伝いさせていただきます。
具体的な進め方についてはソフィアにご相談ください
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よくある質問
- ストーリーをデザインするとは何ですか?
デザイン思考は、デザインに必要な思考やステップを踏み、問題の解決に向き合う手法のことです。ビジネスに置換えるとデザイン思考を用いることによって、組織全体のプロセスを見つめ、課題解決にむけたストーリーができ、それに沿って取り組むことができるようになります。ストーリーをデザインすることは社員の不満や課題(暗黙知)をデザイン思考を用いて暗黙知の形式知化を図り、課題解決の道筋をたてることです。
- ストーリーをデザインしていくための3ステップとは何をすればいいですか?
1. 目指す方向に社員の心を動かすために——ストーリーの原石を探す
2. 動いた心に納得感(腹落ち)を生み出すために——ストーリーを作る
3. 伝えたことを印象付けるために——感動的かつ効果的な手法でストーリーを語る
株式会社ソフィア
コミュニケーションコンサルタント
廣井 和幸
社内報やビジョンブックなどインターナルコミュニケーションのためのコンテンツをつくることが多いですが、外向けも歓迎です。公開社内報「そふぃあと!」の責任編集長でもありますので、そちらもごひいきに!
株式会社ソフィア
コミュニケーションコンサルタント
廣井 和幸
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