「三井不動産ビルマネジメント株式会社:若手と管理職の意識ギャップを埋めるチームビルディング合宿」
- 三井不動産ビルマネジメント株式会社
- 総務部長 山田 幹大さん(右から2人目)
- 総務部 総務グループ グループ長 磯﨑 学さん(左から2人目)
インタビュー実施日:2023年9月5日
三井不動産ビルマネジメント株式会社は、2016年よりブランドビジョン「ビジネスシーンの明日を変えていく」を掲げ、総務部が中心となって社内外に向けた浸透活動を開始。ソフィアでは2021年より同取り組みの支援を行ってきました。今後のさらなるブランドビジョン推進に向けた取り組みとして2023年6月に行ったチームビルディング合宿について、総務部長の山田さん、グループ長の磯﨑さんの二人に、お話を伺いました。
ブランドビジョン推進を次のステージへ進めるために、まずはチームの基盤を固める
ビル管理会社から、顧客のビジネスを進化させるパートナーへ
- 山田さん
- 私たちは社名のとおりビルマネジメントを主な事業とする会社です。不動産業界の幅広い事業の中でいうと、街を開発してビルを建てた後の、運営の段階。最も川下の部分です。
社員はそれぞれにビルマネジメントの現場に誇りを持っていますが、自社の事業や、会社に対する意識は弱い面もありました。しかし、1つのビルが50年から100年も使われる中で、建設するのは最初の5年程度で、残りの何十年間、お客様との接点を担うのは私たちです。ビル管理を通じてお客様に寄り添う中で、お客様が必要としているソリューションをともに創造する、お客様の新しい働き方を支えるなど、提供できる価値はまだまだあるはずです。
そこで2016年に「ビジネスシーンの明日を変えていく」というブランドビジョンを発表し、総務部が主導して社内外に向けた浸透活動を開始しました。ソフィアさんには2021年より、ブランドビジョン推進パートナーとしてお手伝いいただいています。
- 三上
- これまでに、ブランドビジョンや社内コミュニケーションに関する社員インタビュー調査や、各種コーポレートメディアの位置づけ整理、Web社内報の構築・運用、社内の好事例を紹介する動画の制作など、いろいろなことをお手伝いしてきました。
2023年の春には総務部のメンバーが大きく入れ替わったこともあり、このタイミングでこれまでの活動を振り返り、今後に向けたベクトル合わせをする機会が必要なのではないかと考え、弊社から合宿をご提案したのでしたね。
リーダーズインテグレーションの手法を取り入れたワークショップで、チームの相互理解を図る
- 幾田
- ところが、総務部さんのチーム内の課題は、ソフィアが考えていた合宿テーマに取り組む以前のところにあり、企画を再考してほしいとのお返事をいただきました。
- 山田さん
- 総務部のブランディング担当は現在7名ほどのメンバーがいますが、私と磯﨑を含む3名がチームのマネジメントを行っており、それ以外のメンバーは入社1年目から4年目の若手です。メンバーの年齢層と業務の経験値が大きく二極化していることで、マネジャー層にとっては当たり前のことが若手には通じなかったり、逆に、若手の感覚をマネジャー層が理解できていなかったりと、お互いの認識に齟齬があることで仕事が前に進まない場面がたびたび生じていました。
一方、私がブランド推進のリーダーになってから1年が経ち、社長をはじめ会社の体制も大きく変わって、ブランド推進の活動自体は新しいフェーズに入るべき段階にありました。このタイミングで総務部内の意識ギャップを解決しておかなければ、取り組みをスムーズに進めることはできないと感じていたのです。
- 幾田
- 山田さんがソフィアに来社されて、思いの丈を語ってくださったこともありましたね。そこで私たちも、今本当にやるべきことが何なのかを理解し、リーダーズインテグレーションという手法を取り入れたワークショップを合宿で実施することをご提案しました。
これは、リーダーが自分の率直な思いや今後のビジョンを語り、それについてメンバーが意見を出し合うことで、リーダーとメンバーの意思疎通を図り、チームの結束力を高めるワークです。メンバー同士がそれぞれの意見や考えを知り、相互理解をすることも目的としています。
リーダーが思いを伝え、メンバーが本音をぶつけた1泊2日
職場を離れた非日常+メンバーをお客様にしない「参加型」プログラム
- 山田さん
- ファシリテーターがうまく場をまとめてくれるだろうと思っていたのですが、合宿の初日に幾田さんが「皆さんの関係性次第なので、結果はどうなるかわかりません」とおっしゃったので、最初は不安でしたよ(笑)。
- 幾田
- そうだったんですね(笑)。私自身は、事前に山田さんの思いをお聞きしたり、日ごろからマネジャー層の方々が部下の皆さんと接する様子を拝見したりする中で、「たとえ時間はかかっても必ずもっと良いチームになれる」という確信を持っていました。
合宿の参加者を誰も「お客さん」にはせず、主体的に参画してもらえるよう、アイスブレイクのワークや、ワークショップのグランドルールを企画段階において参加する若手メンバーに考えてもらうなどの工夫をしました。当日は日常業務を離れてのびのびと意見を出していただけるよう、長野県北佐久郡立科町の白樺高原という、自然に囲まれたロケーションを選び、1泊2日の合宿を実施しました。
合宿の初日は、総務部の今後について山田さんがご自身の思いを語ったあと一度退室し、部長不在の状態でグループ長の磯﨑さんが中心になって、メンバーの意見を引き出していきました。そうすると、想像していた以上に、マネジャー層と若手の認識に大きな乖離があったことが明らかになってきました。
- 磯﨑さん
- 登山で例えるなら、これまでマネジャー層は「若手もこの辺までは登れるだろう」と期待しながら先頭を歩いていて、振り返ると若手はまったく進んでいないので「おーい、どうしたー?」と山の上から大声で呼びかけているような状態だったのです。それが、合宿でよく話を聞いてみると「靴の履き方がわからない」というような、スタート以前の段階で困りごとを抱え、解決できずにいたことがわかりました。
- 山田さん
- 若手メンバーはみんな非常に優秀だし、これまでもこちらが指示した仕事には全力で対応してくれていたんです。だからこそ上司としては、もっと主体的に仕事を進めてほしい、わからないことがあれば聞きにきてほしい、というもどかしい思いがありました。ところが当事者側は、「上長からはいろいろ言われるが、自分が何をわかっていないのか、誰に何を聞けばいいのかもわからない」という状態だったのですね。
リーダーの覚悟とファシリテーターの介入で「本音で話していい」場をつくる
- 幾田
- メンバーから出てきた意見の中には、「それは若手個人やメンバー間で解決すべきことであって、部長が解決のために介入するようなレベルの問題ではないのでは?」と思えるような意見もあったのですが、そのことにソフィアが言及すると、山田さんが「いや、これは私の仕事だ」と言い切っていらしたのが印象的でした。磯﨑さんも同様のスタンスでしたね。
どんな意見が出ても否定せずにすべて受け止めたうえで、『マネジャー層は山の上から呼びかけるのではなく、ふもとまで下りて行って「一緒に登ろう」という姿勢を示すことが重要である』とおっしゃったことがターニングポイントになって、チームの今後に対するポジティブな雰囲気ができていったと思います。
- 山田さん
- 入社1年目のメンバーが、合宿を通してめざましい変化を見せましたね。それまでは先輩の後を一生懸命ついていく感じで、自分から意見を言う場面はあまりなかったのですが、先輩たちが本音で語っている様子を目の当たりにしたことで変わりました。
議論が行き詰ったときに彼女が「それはつまりこういうことですか?」と異なる角度から意見を出して、全員が「それだ!」と納得する、というような場面が何度もありました。私たちは彼女の新しい一面を見ることができて嬉しかったし、チームの一員として意見を出し、議論に貢献できたことは本人の自信にもつながったのではないでしょうか。
- 三上
- 本音で話すといえば、夕食後の焚火も盛り上がりましたね。火を囲んでワイワイと話し、皆さんの昔の話など普段の仕事の中では見えない一面を垣間見ることで、距離が縮まった気がします。
- 山田さん
- 2日目のグループワークでは会議室から出て、グループごとに湖畔を散策しながら意見を出し合ったのも新鮮でした。ソフィアさんのファシリテーションや、非日常的なロケーションの助けがなかったら、ここまでたくさんの率直な意見は出てこなかったのではないかと思います。
ブランドビジョンを体現し、現場に役立つ「攻めの総務部」へ
「ブランドビジョン推進」という答えのない問いに立ち向かうために、総務部共通の価値基準をつくる
- 幾田
- 合宿の2日目では、1日目での議論をもとに総務部の行動指針を作るワークをしました。そこで、総務部全体の方針を作ったうえで、個人目標も立ててもらったんです。合宿の成果を個々の業務につなげ、3か月後に振り返りの話し合いを行って、目標の見直しをする予定です。継続することでチームを形作り、チームの成長に応じて目標も今後進化させていきます。
- 磯﨑さん
- 合宿が終わってからは、若手メンバーの仕事への姿勢が変わったのを感じています。先輩の後についていくのではなく、自ら意見を出し、自分が主体となって仕事を進める場面が増えてきました。
- 山田さん
- 合宿を通じて、「自分の意見を言っていい」「わからないことはわからないと言っていい」という心理的安全性が確保されたのだと思います。
私たちの仕事はブランドビジョン推進のための施策を企画して経営に提案し、承認をもらって実行することですが、どうすれば取り組みがうまくいくかという正解は経営陣も持っていません。だからこそ自分たちがとことん考えて、「こういう理由でいまこの取り組みが必要です」と説得しなければならない。
先輩や上司に答えをもらいにいくのではなく、若手メンバーが自分で考えて伝えるんだという意識、経営の承認を得るために必要な準備や手順を学んでやろうという姿勢を、強く感じるようになりました。
- 幾田
- 合宿では、総務部内のチームアップ、そして三井不動産ビルマネジメントとソフィアという2社間のチームアップも図り、ブランドビジョン推進の取り組みを進める上での共通の価値基盤、共通言語を作りました。それを使って、いまはチーム内の足場を固めていっている感じですね。
- 山田さん
- 取り組みも3年目を迎え、「まずやってみる」という段階から、より会社にとってプラスになる具体的な取り組みを推進する段階に進んできています。私たちは「攻めの総務」と呼んでいるのですが、自分達の課題解決の経験を、顧客にも積極的に開示・共有していこうとしております。
私たちのビジネスはB to B型で、お客様側の窓口となる部署はほとんどが総務部です。そして、総務部が持っている悩みや課題は、多くの企業で共通しています。だから、私たちが社内コミュニケーションやビジョン推進において先進的な取り組みをして、それを発信することが、お客様にとってのヒントにつながる可能性もあるのです。お客様の悩み事を聞いた現場部署が「そういえばうちの総務がこんなことやっていますが、話を聞いてみますか?」と声をかけてくれるようにしていきたいと思います。
- 磯﨑さん
- 具体的なアクションはまだこれからですが、これまで進めてきたWeb社内報などは通常業務として継続しつつ、総務部の取り組みを社内だけでなくお客様の支援にもつなげていけるといいですね。ブランドビジョンを自ら体現することで、総務部メンバーの誇りややりがいにもつながっていくと思います。
社内にはない視点で提案し、連携プレーで結果を出してくれる存在
「ソフィアさんは業務委託先というよりもチームの一員」
- 磯﨑さん
- 今回の合宿では、ソフィアさんのファシリテーションに大いに助けられました。幾田さんは全体を見ながら進行しつつ、出てきた意見を少し面白い表現で付箋に書いてくださったり、森口さんが時々突っ込みを入れながら議論のながれをグラフィックレコーディングのように視覚化してくださったり、竹内さんも参加者がリラックスできる暖かい場づくりをしてくださいました。
- 山田さん
- それぞれに異なる強みを持った方が連携プレーをしてファシリテーションする様子を見ていて、「何としてでも参加者に成果を持って帰ってもらう」という意気込みを感じましたね。これまで以上にソフィアさんのファンになりました。
- 三上
- 私たちも、山田さんと磯﨑さんの、リーダーとしての覚悟を目の当たりにして、お二人のファンになりました。
- 山田さん
- 先ほど幾田さんもおっしゃっていたとおり、合宿を通して2社の距離が縮まったのを感じます。ソフィアさんはこれまでも、業務委託先というよりもチームの一員であり、私たちが持っていない能力や機能を提供してくださるメンバーという認識でいます。私たちが気付かないところを指摘してくれて、私たちが手を出せないところを手伝ってくれる存在としてサポートいただければと思っています。
- 幾田
- 色々とご相談いただきありがたく思います。刻々と変わる状況に対応できるよう、コミュニケーションを密にしながら尽力していきたいと思います。本日はありがとうございました!
- Editor’s Eye
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- 今回の取材を行ったのは、東京の日本橋にある三井不動産ビルマネジメントの本社オフィス。取材後には総務部長の山田さんにご案内いただき、オフィス見学ツアーへ!オフィスのいたるところに社内コミュニケーションを促進する仕掛けがあり、同社が提案する「コミュニケーション」「チームワーク」「コラボレーション」の三要素を中心とするワークスタイル変革の姿を実感することができました。